あなたは下屋(げや)という言葉をご存知でしょうか?
下屋とは屋根の一種のことで、母屋に付属した屋根のことを下屋と呼びます。
簡単に言うと、家の一番上ある屋根ではなく玄関の上などちょこっと載ってる屋根が下屋になります。
そして実はこの下屋。
家の外観にすごく影響するんです。
家を建てる時に家の外観が気になる方は多いと思いますが、建築士である私が家の外観でずっと気になっているのが下屋の使い方について。
下屋を変な形で作ってしまうと家の外観が大きく損なわれてしまうんですね。
今回はそんな下屋の注意点、下屋を作る時のポイントをご紹介したいと思いますので、家の外観が気になる方はぜひご覧下さい。
下屋のある家ってどんな家?
まずは、下の絵をご覧ください。
2軒家が並んだ何気ない絵ですね。
そして、下の赤丸の囲った部分。
この1階にかかっている屋根のことを下屋(げや)と呼びます。
家の上ではなく下の方に付いている屋根だから下屋なんですね。
そして、このようにちょこっと下屋がある家を街中で見かける事もよくあるのではないでしょうか。
どうしてこのような下屋ができるかと言うと、1階の方が2階よりも大きいので1階の部屋の上に屋根をかけて調整しているんですね。
そのため、総二階の家では下屋はありません。
→一番安く家を建てる方法をお教えします。コストパフォーマンスの高い家にする秘訣
また、ウッドデッキや縁側を作ってその上に屋根をかけたい場合にも下屋が活躍します。
下屋をつくることで雨が降っても濡れないスペースをつくることができるんですね。
Photo:https://ando-koumuten.com/
このように街中を見渡せば、下屋のある家というの意外とよく見かけるものなんですね。
そして、実はこの下屋、家の外観にとても大きな影響があります。
下屋のかけ方次第で家の外観というのはすごく変わるからなんですね。
それでは次に、下屋による外観の違いを実例で見てみましょう。
下屋次第で家の外観は大きく変わる
Photo:https://www.saho.co.jp/jirei/10203
上の家は、大きな下屋が印象的な家です。
下屋の面積は広いですが、下屋の存在感もそれ程大きくなく、家全体の見た目のバランスがとても整っていますね。
外観を意識して、下屋をきれいに見せるようにしているのがとてもよく分かります。
では、もう一度最初に見た絵を振り返ってみましょう。
バルコニーの先に下屋がちょこっと付いていますね。
どうですか?先ほどの下屋がキレイに掛かっていた家と比べると、何だか下屋を取って付けた感がすごくしませんか?
お世辞にもカッコいい家とは言えませんよね。
間取りを作っていて、少し余った部分があるからとりあえず下屋を付けたという感じがプンプンしてしまいます。
下屋の横にバルコニーがあるので下屋の変わりにバルコニーを広くすればいいのですが、バルコニーを広げる方が家の価格が高くなってしまうため下屋で調整しているんですね。
その結果、家に中途半端な感じが強く出てしまっています。
このように家の外観上、バルコニーのすぐ横に下屋がくると取ってつけた感じが強く出てしまい、見た目もあまりよくない家になってしまうケースが多いんですね。
また、小さな下屋が有ればある程、家の見た目はうるさく見えてしまう傾向があります。
家の外観を意識する場合は下屋の見え方がいかに自然に見えるかというのはとても大切なポイントなんですね。
では、下屋の他のケースも見てみましょう。
下の絵をご覧ください。
玄関ポーチの上に下屋がある家となっています。
こんな感じの家もたまに見かけますね。
玄関ポーチは家の鍵を出したり家に入るのに傘を畳んだりする必要があるため、通常は雨に濡れないよう何かしらの対策が必要になりますが、今回のケースは下屋で玄関ポーチの上を覆っているんですね。
では、外観の印象はどうでしょうか?
こちらも、お世辞にもカッコいい外観とは言えないですよね。
間取り上、下屋が玄関の上にくるケースも当然ありえますが、これも下屋の作り方次第で大きく変わってきます。
たとえば、ちょこっと下屋を作るのではなく、大きな下屋にして玄関ポーチに屋根を掛けるだけでも、家の雰囲気はかなり違ってきます。
このように、下屋は使い方ひとつで、家の外観を良くも悪くも大きく変化するんですね。
設計者が外観や間取りのバランスを意識しなければ下屋が悪者に見える外観の家になってしまいますし、下屋も含めてバランスをしっかり意識すれば下屋のある家はとてもオシャレに見えるようになる。
このような特徴が下屋にはあるんですね。
では、「どんなケースでも下屋を意識すればいいのに」と思いますが、実はそう簡単にいかない現状があります。
そしてそれは、下屋ができる理由に隠されています。
下屋ができる理由
下屋ができる理由は大きく分けて3つあります。
- 床面積の調整で下屋を使う。
- 家は1階の方が大きくなりやすいので下屋を作る。
- 高さ制限の厳しい土地に家を建てる場合、高さ制限をクリアするために下屋を使う。
この3つが下屋ができる時の大きな理由なんですね。
その中でも、下屋の見え方に大きく影響してくるのが1つめの「面積調整で下屋を使う」というケースです。
これは特に床面積や施工面積といった家の広さが重要視される建売住宅でよく見られます。
建売住宅の場合、家の施工業者に坪単価で工事を発注するケースが多いので、家の面積が特に重要になってくるんですね。
そして、面積を減らすために手軽なのが下屋を付けること。
その結果、外観を無視して下屋を取り敢えずつけている家が完成します。
→建売住宅と注文住宅の違い。どっちも造った建築士が分かりやすく解説します。
また、間取りを要望に合わせて造っていくと1階の方が2階より大きいという事がよくあります。
1階にLDK、水まわりに和室も付け加えると、どうしても1階のボリュームが大きくなってしまうからなんですね。
そうなると1階と2階の大きさの差を埋めるために、1階の上をバルコニーにしたり下屋にして大きさの調整を行うことが多くあります。
ただ、安易に下屋をつけると取って付けた感がハンパでない家が出来上がります。
一番最初の絵の家なんかはこのパターンですね。
このように、下屋というのは家を建てる時の住宅会社の姿勢というのが現れやすい部分です。
そのため、建売住宅を検討する場合は下屋の使い方にも注目してみてみると、間取りや外観に力を入れた建売会社なのかどうかの判断がつきやすくなりますし、家を建てるために住宅会社を探す際も、下屋の使い方を見てみると設計力がある住宅会社なのかどうか判断が付きやすくなるんですね。
それでは最後に、下屋を綺麗に見せる方法についても見ておきましょう。
下屋を綺麗に見せる方法
Photo:https://marumasa-w.com/
下屋を綺麗に見せる方法。
それは後付けで下屋を付けるのではなく、下屋を見せることを大前提で間取りを作成するということです。
間取りをつくる段階から家のシルエットがどのようになるかを想定し、いかに自然な感じで下屋を見せられるかが勝負になってくるんですね。
基本的には小さな下屋よりも大きな下屋の方が見栄えがするので、少しだけ下屋ができてしまう場合は下屋ができないように間取りを調整してしまうのも1つの方法と言えます。
また、どうしても小さな下屋ができるなら、道路からほとんど見えない位置に持っていくなど、下屋があまり見えないよう位置を配慮するのも重要になってきます。
このように家に下屋を作るのは意外に難しく、外観を意識して間取りを造るのと造らないのでは、家の見た目が大きく違ってくるんですね。
そのため、デザインに対して少しでも意識している工務店では、ここまで見てきた変な下屋の家は「有りえない家」となり、デザインを意識している工務店と意識していない工務店の差は大きな物となってきます。
(ちなみに、私自身、建築士の駆け出しの頃は間取りばかり意識していて、いざ外観を整えようと思った時にあまりの下屋の格好わるさにショックを受け、何度も間取りを書き直した記憶があります・・)
下屋をつくる場合は計画的に。
場合によっては1、2階のバランスを調整して下屋を無くすよう調整するのも効果的ですよ。
まとめ
今回は、家の下屋と外観の関係について詳しく見てきました。
下屋をつけると家の大きさを簡単に調整できるので便利ですが、適当につけた下屋は、家の外観のバランスを大きく乱してしまうんですね。
デザインにこだわる方は、住宅会社や工務店選びの際に施工事例の下屋の使い方を見てみると、デザインにどれだけ力を入れているかが結構分かるのでオススメです。
外観が気になる方はもちろん、そこまで外観を気にしていないという方も、下屋を見ることでいろんな事が分かります。
ぜひ一度下屋に注目してみてくださいね。
では。
家の外観が気になる方は、こちらも参考にしてください。
→片流れ屋根はどうすればオシャレにできる?片流れ屋根の特徴と効果的な使い方を建築士が解説します
→代表的な屋根材の選び方を、コスト、メンテナンス、デザインの面で解説します
→暮らしやすい玄関ポーチのつくり方。家の外観も高級感が出ます。
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→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
家づくりで失敗したくない!そんな方こそ、間取りが重要です。
建築士が教える今日の問題解決
外観で注意した方がいいことって何?
- 下屋を安易につけると、格好わるい家が出来上がる可能性がとても高くなる。
- 下屋を付けるなら、外観を意識するか、出来るだけ道路から見えない位置にもっていく。