皆さんは「間接照明」という言葉をご存知でしょうか?
間接照明とは、光源を壁や天井にあてて間接的な光の空間をつくりだす照明手法のことで、部屋の雰囲気を大きく変える効果があります。
そのため、新しいお家に間接照明を導入したいという方は結構いらっしゃいます。
ただ、間接照明と聞くとオシャレな印象がありますが、実は間接照明には「良い間接照明」と「悪い間接照明」というのがあり、この違いを知っている方は意外と少ないのではないでしょうか。
間接照明を打ち合わせでなんとなく勧められて、なんとなく良さそうだと思って導入したけれど・・これって本当にいい感じ?いまいちな感じ?っていうのは分かりにくいものですよね。
そこで今回は間接照明を導入するならここを気をつけて!というポイントをお伝えします。
ぜひ、家づくりに役立ててくださいね。
間接照明とは
間接照明というのは、もともと日本の住宅では行灯や灯篭などで使われてきた照明手法で、昔の日本人は光の強弱や陰影を大事にし、ほんのりした光のグラデーションを楽しむ生活を送っていました。
舞妓さんたちのおしろいは、間接照明の薄暗さの中で女性を美しく見せるためのお化粧だったとも言われています。
一方で、近年の照明器具の発達により、「より明るく、より広い範囲で、より作業しやすく」の照明手法が主流となり、天井のシーリングライトのもとで作業したり本を読んだりという生活スタイルがすっかり定着しました。
そして現在では、照明器具の光源のパワーが上がり、間接照明でも十分生活空間が明るくなったことから「すてきな照明空間」「くつろぎの灯り」として改めて間接照明の人気が再燃しています。
では、間接照明をどう使えば、「すてきな照明空間」「くつろぎの灯り」にできるのでしょうか?
間接照明の手法の一番の特徴は「人に直接光が当たらないようにしている照明」と言えます。
ということは、どこを照らしているの?と思いますよね。
間接照明は、照明器具から放たれる直射光を壁や天井に当て、その光の反射や拡散を利用して「間接的に」空間を明るくする照明手法です。
Photo: Daiko
壁や天井に光をあててその拡散光が空間を照らしますので、壁や天井の存在は非常に重要で、照明器具自体を見えないように隠してしまったり、もしくはランプシェードのようなフード状のおおいを照明器具につけて、強い直接の光を柔らかい光にして空間を照らす事になります。
→その間取りは動線が考えられていますか?家の間取りと動線について
では、そんな間接照明の良い点と欠点について見ていきましょう。
間接照明の良い点
間接照明の良い点としては、
- 光の色や強弱の変化でドラマティックな空間を作ることができる
- 明るさ感や開放感が高まる
- 光源が直接見えないので、不快なまぶしさが無い
- 空間全体を均一に明るくできる
このような特徴が挙げられます。
照明で直接部屋を照らすのではなく、壁を照らす事で雰囲気だけで無く明るさもコントロールすることができるようになるんですね。
では次に、間接照明の欠点について見てみたいと思います。
間接照明の欠点
間接照明の欠点としては、
- 照明器具の種類によっては部屋全体が明るくならないため、照明器具の数が増えてしまう
- 建築的に加工が必要なことが多く、費用が発生する
- 天井に間接照明をつくる場合は、天井高に注意が必要
- 勉強したり読書するには手元照明などが必須
この辺りが間接照明の代表的なデメリットとなります。
照明器具の数や照明器具を隠すための部屋の加工といった手間が掛かってしまうんですね。
これは補足ですが、LED普及前は蛍光灯の光源を使っているケースが多く、数年でランプ交換が必要になった場合、大抵の間接照明はランプ交換が難しい位置にあるためランプ交換が非常に大変なケースもありました。
ただ、ここ数年はほとんどがLEDの間接照明に切り替わってきていますので、ランプの交換についての手間はかなり解消されています。
間接照明の代表的な手法
それでは次に、住宅でよくある間接照明の手法を見てみましょう。
間接照明の手法としては、以下のものが一般的です。
コーブ照明
照明器具からの光を天井に反射させる間接照明です。
ホテルのロビーや寝室などでよく見かける、折り上げ天井の中に棒状の照明器具を設置する手法で非常に高級感があります。
ダウンライトなどに比べると、光源が点ではなく面で伸びてきますので、室内が柔らかい雰囲気になるのが大きな特徴です。
コーニス照明
光を壁面に反射させる間接照明のことです。
壁やカーテンに当てた照明の光がカーテンのように徐々に陰影をまといながら下に降りてくる様は非常に幻想的です。
以前、吹き抜けの壁にコーニス照明を採用された方は、完成後にお邪魔した際に「夕方にこの照明のスイッチを入れて見とれるのが日々の楽しみなんです」とおっしゃっていました。
壁に光を当てることで雰囲気を出しやすいんですね。
その他、壁付けのブラケット照明でも、光源を壁面にあてて間接光を楽しむタイプがあります。
間接照明を作る上でのコツと失敗事例
それでは、間接照明を作る上での注意事項も見ておきましょう。
間接照明は、ポイントを知っているかどうかで成功、失敗の可能性が大きくかわってきます。
「この間接照明を取り入れたら空間がどうなるのか」、「どう見えるのか」。
基本を知っているだけで打合せのときもスムーズにいきますし、思いどおりの空間をつくることが可能になりますよ。
照らす面(壁面や天井や床面)を確保する
先ほどお伝えした通り、間接照明は壁や天井に光をあててその拡散光が空間を照らしますので、壁や天井の存在は非常に「重要」です。
当てている壁面や天井の表面には何も無いことで、光がグラデーション状に美しく伸びます。(これは非常に重要です)
どういうことかと言いますと、次の失敗事例をみてください。
失敗1:エアコンや給気口がムーディーに照らされている!
美しく伸びる光のグラデーション。
ほんのりとムーディーな光を目で追っていくと・・、あっエアコンがっ!
エアコンがほんのりとした光に照らされてムーディーに佇んでいるじゃありませんか。しかも陰影までつけて・・。
エアコンだけじゃありません。
給気口、トップライト、建具、煙感知機、コンセント・・間接照明の光の先にありませんか?
解決策
照明の光を壁や天井に当てる際は、極力、壁や天井に何も無い状態にしておくか、またはカーテンのように「面」になるようにしておくのがポイントです。
失敗2:家具やカレンダーをドラマチックに照らしている!
間接照明をエアコンや建具など、家を建てる時に取り付けたもの以外にも、壁に家具やカレンダーや時計など、住んでから取り付けてはいませんか?
家具やカレンダーなどが壁についていると、せっかくの間接照明がもったいないということにもなりかねません。
解決策
こういうことが無いためにも、家具の配置は打ち合わせで十分検討しておくのがポイント。
時計の配置にも注意が必要です。
光源を上手に隠すこと
間接照明は文字のごとく「間接的な光」ですので、基本的に照明器具の光源自体を隠すことになります。
(電球が見えない状態です)
実は、間接照明ができ上がった時に気付く失敗が多いのが特徴です。
それでは光源の失敗について詳しく見ていきましょう。
失敗3:光源(照明)が見えている・・
隠されているはずの照明器具がひょっこり見えている・・実は意外と多いケースです。
手品も、素晴らしい芸であったとしてもタネが丸見えだったらちょっと格好悪いですよね。
原因としては、設置場所の検討不足や照明器具のサイズの検討不足があげられます。
この写真では、玄関ドアを開け玄関土間に入った目線で玄関収納の下に間接照明の器具がチラっと見えています。
間接照明器具の中には、器具の表面を白いボックス状にして光源が見えないように隠されているものもありますが、この場合は光源が見えないようもっと奥側に設置するか照明器具のサイズを小さくするかなどで格好よくなります。
解決策
照明器具や手法にあった配置や建築的なおさめで光源がみえないように処理されているか、設計士やインテリアコーディネーターさんに念のため確認してみるのがベストです。
失敗4:床や窓ガラスに光源の器具や形が写り込んでいる!
これもよくあるケースです。艶やかで光を反射しやすい床の素材(鏡面調タイルやつるっとした塗装の床)ですと、せっかく間接照明を隠してあっても反射して光源が映り込んでしまうんですね。
似たような現象として、夜間、窓ガラスにダウンライトの照明がポツポツと映り込んでいるお家もよく見かけます。うう、残念。。
この場合は、グレアレスランプといって光の反射を抑える光源に変更するか、床の素材を光の反射が起きにくいものに変更するかで解消されます。
解決策
間接照明にする場合、光源を光の反射を抑えるものにするか、床材に反射の少ない物を。
特に床面は照明器具が反射して見えやすいので、必ず確認しておきたいポイントです。
失敗5:カットオフラインが出てます・・
間接照明で作った光の面をよく見ると、光の明暗の差が線としてくっきり出ていることがあります。簡単にいうと、光のグラデーションが線でぶつっと切れてしまう状態です。これをカットオフラインといいます。
本来、間接照明とは、光が壁や天井に徐々に伸びてグラデーションを作り出すことが目的なのですが、くっきり光と影の境界線(カットオフライン)が出てしまうと、せっかくの本格的な素敵空間が台無しに。
これは照明器具を隠すための幕板の高さが照明器具とあわず影を作ってしまうことに原因がありますので、幕板の高さが照明器具の高さと合っているか、造作図面での確認が必要です。
解決策
カットオフラインが出ない位置に照明器具を配置するのが基本。
先ほどの例であれば、たとえば照明器具をもっと埋め込むことでカットオフラインは出なくなります。
失敗6:壁に伸びた間接光が窓で分断されている!
これも、思わずやりがちな失敗の一つ。
窓は壁面にできたせっかくの光のグラデーションを分断し、光を逃してしまいます。
そのため、間接照明で得られる照度が確保できず少し薄暗くなったり、何より見栄えが残念になってしまいます。
間接照明を作る壁や天井は窓や建具など遮るものが何もないのがベスト。
照明が照らす面に付いてもいしきしておきたいですね。
解決策
間接照明が照らす場所には、基本的には何も設けず、壁や天井が綺麗に照らされるようにするのがベストです。
失敗7:あれ!室内の照明が窓ガラスにうつりこんでいる!
Photo: Daiko
夜、ふと室内から窓ガラスを見やると、室内の照明が映りこんでいることはありませんか?
特に繊細な間接照明で室内の照度を落として庭の夜景を楽しみたい場合、室内と外の明るさのバランスが重要になります。
この時、ガラス面に映り込んで庭の風景と重なり会わないようにすることが大事なんですね。
解決策
夜景を楽しみたい場合は、ウィンドウトリートメントやグレアレスダウンライトで室内の光の映りこみを極力おさえることで、外の風景がよく見えるようになります。
まとめ
今回は家の間接照明について詳しく見てきました。
間接照明を作る場合、
- 光で照らす面(壁面や天井や床面)には、エアコンやコンセント、家具などを配置しない
- 建築的なおさまりを十分検討して、美しいグラデーションが映える照明設計をする
こうすることで、綺麗に見えるようになるんですね。
すてきな家は照明計画が左右するといっても過言では無いくらい、照明計画はとても大切です。
間接照明のある部屋は光がキレイで素敵ですが、作る側と住む側が目的をもって間接照明を導入しないと、結局使わなくなってしまったり、せっかくの光がうまく生かされない事態になりかねません。
間接照明をつくる目的は、お部屋の雰囲気をおしゃれで素敵なものにするためのものです。
間接照明を上手く使って、すてきなお部屋を作ってくださいね。
照明についてはこちらも参考にしてください。
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