「キッチンの天板はステンレスがいい?それとも人造大理石?」
これは読者の方からよくもらう質問です。
キッチンやお風呂など、住宅設備機器を選ぶ段階になると、打ち合わせの主役は大抵の場合奥様となります。
ショールームを見学にいっても目を輝かせているのは奥様で、あれも良い、これも良い、なんて際限なくうろうろしている間にご主人は少々手持ち無沙汰に・・なんていう光景をよく見かけます。
そして、せっかくの家づくりだから、と、一つ一つの設備を吟味して数社を比較検討したはいいけれども、その分だけ余計悩んでしまうなんて事も。
本日はそんな設備機器の中でも、お悩みの声が一番多い「キッチンのワークトップ(天板)」について「ステンレス vs 人造大理石」という視点で詳しく見ていきたいと思います。
ステンレスのキッチン天板
各メーカーともキッチンのシリーズにあわせていくつかの種類のワークトップ(天板)を発売していますが、主要な住宅設備機器メーカーのキッチンの場合、ステンレス製か人造大理石(人工大理石)製かの2つに分かれています。
その中でもステンレス天板は、今お住まいのキッチンや実家のキッチンなどで多くの皆さんが使った事のある代表的な素材となります。
それでは改めて、ステンレスの天板のメリットを見ていきましょう。
ステンレス天板のメリット
水や熱、錆に強い
ステンレスというのは英語で「Stain less」(=錆なし)という意味で、全く錆びないという訳ではありませんが一般的には水に強く錆にくい素材です。
しかも昔のステンレスとは違い、最近のステンレスはさらに錆びない成分について研究開発されているため、錆に対して非常に強くなりました。
このため、ステンレスは水を多く使うキッチンの素材としてはオススメの素材なんですね。
特にSUS304といって鉄に18%のクロムと8%のニッケルを含んだ18-8ステンレス素材は水や熱にも強く、強度も高くなります。
汚れに強い
ステンレスは汚れがしみ込みにくい素材でもあります。
そのため、表面を中性洗剤で拭き取ると汚れが落ちますので、お掃除が楽ちんです。
ガンコな汚れはメラミンスポンジやクレンザーなどで研磨して落とします。
臭いがつきにくく衛生的
ステンレスは医療器具にも使われる衛生的な素材です。
また、臭いもつきにくい事からキッチンの素材としても優れています。
ちなみに、キッチン全体の仕様で、木製のキッチンに比べオールステンレス製のキッチンはゴキブリの侵入率が1/8とも言われています。
表面加工によって見え方が違う
ステンレスはヘアライン加工(細かい線が入ったツルツルピカピカの加工)やバイブレーション加工(ちょっと波打っているようなマット質感の加工)、エンボス加工(細かい凹凸が沢山ある加工)など、いくつかの仕上げ方があります。
同じ素材でありながら表面の加工方法によっても様々なデザインがあるのもステンレス天板の特徴と言えます。
流し(シンク)とのシームレスな接合
天板をステンレスにすると流し(シンク)部分もステンレスになりますので、この場合はシームレスといって天板から流しまで継ぎ目の無い一体型のものが人気です。
もし天板を人造大理石(人工大理石)にしてシンクをステンレスにした場合、継ぎ目から汚れや錆が付着することがありますので注意してくださいね。
人造大理石(人工大理石)の天板に比べると少し安い
人造(人工)大理石の天板と比較した時にステンレスの方が少しリーズナブルな金額になる傾向があります。
そのため、設備機器の予算を抑える場合はステンレスの天板は強い味方となってくれます。
ここまで見てきたのがステンレスワークトップ(天板)の代表的なメリットなんですね。
ただ、ステンレスのワークトップにもデメリットはあります。
次はステンレスワークトップのデメリットを見てみましょう。
ステンレス天板のデメリット
無機質な雰囲気
人造大理石(人工大理石)のもつ明るい自然な風合いと比べると、ステンレスは非常に無骨で無機質な雰囲気を漂わせます。
そのため、ステンレスが好きな人と嫌いな人とで結構好みの違いが出てきます。
時間と共にステンレスの光沢が無くなる
家が完成した時はピカピカに輝いているステンレスですが、どうしても使って行くうちに光沢がなくなり、また水垢をそのままにしておくと水跡がつきやすくなります。
そのためマイクロファイバーの吸水性の高い布巾等でこまめに水気を拭き取るなど綺麗さを保つには小まめなメンテナンス事が大事なんですね。
「もらい錆」がつく
ステンレス自体は錆びにくい素材なのですが、鉄製の鍋などを天板やシンクに長時間置きっぱなしにすると、鍋の錆などが付着して「もらい錆」といって錆が発生してしまうことがあります。
もらい錆が付くと錆を取るのが大変なので、鉄製品の長期間置きっぱなしにしないようにしておきたいですね。
デザインによっては野暮ったい
ステンレスの加工方法によっては見た目が少し野暮ったくなることもあります。
オールステンレスキッチンのトーヨーキッチンなどの仕上げはすっきりとした見た目のヘアライン加工やバイブレーション加工ですが、大手メーカーのエンボス加工のステンレス天板は、どうしても汚れ・傷防止のエンボス加工など実用的なデザインに特化していることが多く、デザインの面で人造大理石(人工大理石)に変える方も意外と多くいらっしゃいます。
人造大理石(人工大理石)のキッチン天板
次に、人造大理石(人工大理石)の天板について見ていきましょう。
人造大理石(人工大理石)とは見た目が大理石のように高級感がある素材のことを言います。
ちなみに、ここまで人造大理石と人工大理石の2つを記載していますが、違いをご存知でしょうか?
・人造大理石→天然の大理石を粉砕し、セメントや樹脂で固めた半人工素材
・人工大理石→アクリル樹脂やポリエステル樹脂を主成分とした人工素材。大理石の代用としてキッチンの流しや風呂に使用される事が多い。
このように名前は似ていますが、この二つの天板は似て非なるものです。
日本ではパソニックやLIXIL、TOTOなど多くの主要キッチンメーカーが人工大理石を採用していますが、トクラス(旧YAMAHA)では人造大理石を採用しています。
特にトクラスは人造大理石にこだわりが強く、ショールームに行かれた方はショールームのアドバイザーから熱く人造大理石の説明をされ、人造大理石のファンになる方も結構いらっしゃいます。
出典:トクラス
また、人工大理石の性能については、ポリエステル製よりもアクリル製の方が汚れが落ちやすい、耐候性・耐衝撃性に優れているとされており、価格もアクリル製の方が高いとされます。
人工大理石の天板を選ぶ場合は、メーカーにどんな素材を使っていてどのような特長があるのかを聞いてみるのもいいですね。
それでは、メリット・デメリットについては人造も人工もほぼ一緒ですので、まとめて見ていきましょう。
人造大理石(人工大理石)天板のメリット
色やデザインが沢山あるためインテリアになじみやすい
なんといっても一番の魅力は多彩なデザインです。
石目調、砂目調のデザインやマットでツルツルな質感まで、色・デザインともに沢山ラインナップが出ています。
キッチンやダイニングのインテリアに合わせやすいので人気があります。
キッチンの作業台というよりはインテリアのカウンターに近い感覚で使える
上記と同じく、インテリアになじむという点で「キッチンらしくない」インテリア性の高いキッチンをつくることが可能です。
壁に接していないアイランド型のキッチンや、キッチン天板の奥行きを90cm~1m程度にのばして作業側とテーブル側というように一枚の天板を広々使うカウンタータイプなども最近は人気があります。
こうしたインテリア性の高いキッチンは、「台所仕事は奥の仕事」という昔の文化習慣から、オープンタイプでお客様にもキッチンが覗かれることを意識した「家事のファッション化」を家にもたらしました。
人造大理石(人工大理石)天板のデメリット
熱や液体のシミで変色を起こす
これは皆さんが心配されるポイントです。
特に加熱機器をIHにした場合、五徳が無いため天板はフラットな状態です。
このため、調理が終わった鍋をさっと横の天板の方に移動させる・・といううっかり事故が多いのだとか。
そのため、熱い鍋は鍋敷きを敷いて使うようにするのが人大のきっちんにする場合は重要となります。
液体は、例えばお醤油を出がけに流しに垂れ流しておいてそのまま数日外出、なんてことをするとお醤油が流れたラインがくっきりとシミになって残っています。
シミのつくものを流した後は必ず水かお湯を流し、シンクに液体跡が残らないようにしておきたいですね。
メーカーによって耐性にも違いがあるので、シュールームに行った時に確認しておくとベストです。
固くて重たいものを落とすと天板が割れることがある
ステンレスの天板の場合は物を落としてしまった時には凹んだりして素材が衝撃を吸収しますが、人造大理石(人工大理石)の場合はまれに割れることがあります。
また、ワイングラスなどを天板の上に落として割ってしまったという話もたまに聞きますので、強い衝撃は与えないように注意しておきたいですね。
年数が経つと紫外線の影響を受けて若干黄ばんでくる
人造大理石(人工大理石)の天板は、時間が経つと少し黄ばんでくることがあります。
特に真っ白なタイプの天板を検討される方は、色の変化も頭の片隅に入れておきたいですね。
その場合、キッチンの照明計画もあまり明るい蛍光色の光ではなく、白熱色のように色味の着いた照明にすると、黄ばみも目立ちにくくなります。(また料理も美味しく見えるという効果もあります)
色の濃いデザインを選んだ場合、クレンザーなどで磨くとうっすら白く変色する
汚れがしつこいと、ついついメラミンスポンジなど汚れが落ちやすい物で掃除がしたくなってしまいますが、人造大理石(人工大理石)の場合は表面を削ると変色することがあります。
最近はメラミンスポンジなどで洗っても大丈夫とうたうメーカーもあり、研磨して汚れを落とすタイプのお手入れが大丈夫かどうかはキッチンのショールームの段階で必ず確認をしておきたいポイントです。
傷がつきやすい
年数を経るごとに細かい傷がつき、素材の中に汚れを残してしまいやすくなります。
人造大理石(人工大理石)の天板は色が黄ばむのもそうですが、長く使うと汚れなどが目立ちやすくなるので注意が必要です。
焦げのついた鍋など放置しておけばやっぱり「もらい錆」がつく
実は人造大理石(人工大理石)の「もらい錆び」というのは、意外と多いんです。
結局の所、ステンレスにせよ人造大理石(人工大理石)にせよ、使用した鍋をキッチンの天板やシンクに長時間そのまま置かないというのが基本となります。
シンクだけステンレス、またはシンクだけ人造(人工)大理石の色を変えると継ぎ目から劣化する
キッチンの天板とシンクというのは必ずしも同じ素材や色である必要はなく、シンクだけステンレスにしたり、シンクの色だけ変えるというように別々の素材を使う事も可能です。
ただ、どうしても異素材のもの同士を接着させる際にはつなぎ目が存在します。
長持ちを優先させるのであればつなぎ目はなるべく少ないのがベストとなります。
色や素材の組み合わせを楽しむのか、それとも長持ちさせたいのか、この辺りの優先順位を明確にしながらキッチンを選びたいですね。
1点ものの特注品には対応が難しい
人造(人工)大理石の天板を作る際、型に流して成形して作ります。
このため、オリジナルで特殊な形の天板を作ろうとすると非常に金額が上がります。
反対にステンレスの場合は比較的簡単にオリジナルの天板を作ることができるので、造作キッチンにする場合はステンレスの天板の方がサイズを自由に調整でき、価格も安く作ることができます。
万一燃えてしまった場合、不完全燃焼により一酸化炭素等のの有毒ガスを発生させる
人造(人工)大理石は可燃物です。
そう、燃えてしまうんですね。
そのため、万一火災が発生し、天板に火がうつった際は非常に危険になります。
人造(人工)大理石のキッチンが燃えた場合は、すぐにその場を離れるのが重要です。
キッチンの選び方の基準
ここまでステンレスキッチンと人造大理石キッチンの天板について、メリットとデメリットについて詳しく見てきました。
次に、色々ある天板を選ぶ際にぜひチェックしていただきたい点をご紹介します。
どのチェックポイントを重視するかによって最適なキッチンの選択は変わってくるので、キッチン選びの際は頭に入れておいてくださいね。
キッチン&ダイニングとの調和
きっと、多くの方がこの点で迷われていることと思います。
まず、キッチンエリアの床や壁の色や素材を思い浮かべてみましょう。
可能であれば、打ち合わせしている床材や壁紙のサンプルをショールームに持って行く事をお勧めします。
次に、キッチンの天板と扉面の面材の組み合わせが、自分が目指すインテリアの方向性に沿ったものかどうかをよく検討してみると、キッチンで失敗する可能性はとても低くなります。
料理の頻度や種類
料理の頻度や何を作るかを優先させたい場合でも、選ぶ天板は変わってきます。
一般的には、天板にステンレスを選ばれる方は、本格的に料理を作る方が多い傾向があります。
以前、お客様でオールステンレスのキッチンを導入された方がいましたが、輸入のガスオーブンを組み込んだりしてさすがだなと思った事があります。
また、ダイニングとの一体化、見た目のきれいさを優先させたい場合は人造(人工)大理石や天然石の天板を選ぶ方が多いです。
このキッチンでどんな料理をどのくらい作るのか。
この部分でもステンレスが合うのか、それとも人造(人工)大理石が合うのかは変わってくるんですね。
お手入れの頻度
お手入れというのもキッチンの大事なチェック項目です。
料理の頻度や内容にもよりますが、どんな料理が多いのかによってお手入れの頻度も変わってきます。
先ほどのメリット、デメリットで代表的な例をご紹介しましたが、メーカーによって日々のお手入れ方法については違いがあるので、ショールームに行った際にメーカーに確認しておけるとベストです。
質感
ショールームに行ったら必ず天板は触ってみることをおすすめします。
キッチンはいろんなシチュエーションで使うものです。
普段の肌触りだけでなく、水に濡れたらまな板が滑りやすいか、固さはどうか等、何年か経った時にどうなるのか、質問してみるのもいいですね。
つなぎ目
つなぎ目は家が完成して実際に使いだしてから気になる部分です。
特に天板と流し(シンク)の素材や色を変える場合は、凹凸がないか手で触り、何年か経った時にどうなるのか。
この辺りをメーカーに確認して納得した上で選びたいですね。
キッチンの価格
キッチンの価格というのも総予算がある家づくりの中では大事なポイントです。
キッチンのショールームやカタログを見てみると、ビックリするくらいの価格がついていることがあります。
でも、ハウスメーカーや工務店で家を建てる場合、主要な国産メーカーから住宅設備機器を購入すると普通は割引価格で購入することができるのでご安心を。
ステンレスにした場合、人造(人工)大理石にした場合、どの程度の金額の変動があるのかを知りたい所ですが、各ビルダーによって出し値が変わるため、メーカー側は定価のみの案内となり、実際の価格はかなり変わってきます。
そのため、実際の価格の違いはメーカーに確認するのではなく、ビルダーの担当者に聞いて見ると実際の価格差が分かるようになります。
テンションがあがるか
最後に、キッチン選びでとても大事なこと。
それは
「このキッチンで料理をするとテンションが上がりそうかどうか」
ということ。
お施主さんが迷われている時、建築士の私はいつもこの質問をお客様に問いかけます。
このキッチンの天板の前で料理をしようとした時にご自身のテンションはどの位あがるか・・想像してみてください。
もちろん金額も大事な要素ですしお手入れ方法も重要です。
しかし、キッチンは一度購入したらリフォームするのは十数年も先の事です。
後々まで「あ〜あっちにすればよかったな・・」と思いながら料理をするのと、「高かったけれどこれにしてよかった。大事に使おう」と思いながら料理をするのとでは、どうでしょう?
何が自分にとって優先順位が高いのか、他を削ってでもこだわりたい場所なのか、じっくり検討した上でキッチンを選びたいですね。
→家の予算がオーバーしたときに1番効果的な方法をご紹介します
まとめ
それでは、本日のまとめです。
・ステンレス、人造(人工)大理石、天然石とそれぞれの特長をよく知る事がキッチン選びの秘訣
・天板を選ぶ際には、7つのチェックポイントで何を最優先するかを検討することで、自分にあった最適な天板選びができる
ステンレス、人造(人工)大理石、それぞれのキッチンにはメリット、デメリットがあります。
まずはその特徴を知った上で、あなたに合ったキッチンを選ぶことが満足いくキッチン選びの一番の方法となるんですね。
今回の内容を参考に、あなたにとってのベストな天板を選んでくださいね。
キッチンについてはこちらも参考にしてください。
→キッチンのレイアウトはどれが良い?あなたに合った使いやすいキッチンにする方法
→アイランドキッチンで後悔しないために知っておきたいメリットとデメリット
→キッチンに吊り戸棚は必要?吊り戸棚が合うキッチンと使いやすい吊り戸棚にする方法
→キッチンのサイズや大きさはどれくらいが使いやすい?キッチンを使いやすくする方法
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→キッチンの床をタイルにした時のメリットとデメリットを解説します
→おすすめの食器棚やカップボード、4選。あなたはどれがお好みですか?
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家の内装が気になる方はこちらも参考にしてください。
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