ウッドショック

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ウッドショックはいつまで続く?ウッドショックの影響と、これからの見通し

「今年に入りウッドショックが起こっているという話を聞きました。今、家を建てるのはストップしておいた方がいいのでしょうか?それともこのまま続けた方がいいのでしょうか?」

このような質問を読者の方からいただきました。

「ウッドショック」とは住宅用の木材が品薄となり価格が高騰している状態のことで、今年に入ってから顕著に見られるようになりました。

住宅用の木材が高騰するということは家の価格の上昇にも繋がってきますし、品薄になれば家の工事にも影響してきます。

では、今のウッドショックの状態で家づくりは一度ストップした方がいいのでしょうか?

それともこのまま家づくりを続けても問題ないのでしょうか?

今回はウッドショックの影響と、これからの見通しについて詳しく見ていきたいと思います。

ウッドショックの現状

まず最初に、ウッドショックが起こった流れと住宅業界の現状について見ていきましょう。

ウッドショックの始まりは輸入用木材の不足が端を発しています。

(日本の建築用木材の半分ほどが輸入木材で占められているので、輸入木材が不足すると建築業界全体に影響が出てくるようになります)

そして、このような木材不足の背景としては新型コロナの影響によるアメリカや中国の木材需要の急増が大きく関係しています。

たとえばアメリカについて見てみると、新型コロナでリモートワークの普及や都市部に住む必要性が無くなった人が郊外に住宅を求めるようになった事、また経済政策による低金利も重なり新築の住宅需要が急激に増えるようになりました。

(アメリカではここ最近で住宅価格が5〜10%ほど上昇しています)

その結果、日本が買い付けていた輸入材がアメリカや中国に「買い負け」してしまう状態となり、輸入材の価格の高騰と木材不足の状況になってしまったんですね。

そして輸入材が不足してくると、代わりに国産材の需要が高まっていきます。

その結果、国産材も不足する事態となり、輸入材、国産材ともに価格が高騰して品薄になっているというのがウッドショックの現状です。(2021年7月現在)

 

ちなみに、家の価格の中で木材の締める割合というのはだいたい1割ほどで多くても2割くらいです。

(たとえば2,000万円の家とすれば木材の価格は200万円程。そして木材の価格が1.5倍に上がれば100万円ほど家の価格が上がるという感じになります)

 

また、現状では大手の住宅会社の方がウッドショックの影響が小さく、またずっと地域材を使ってきて製材所と繋がりが強い工務店なども影響が軽微に留まっている傾向があります。

ただ、家は多くの部材が必要で色んな場所から材料を仕入れており、一部の部材が入手しにくいというケースが多く見られ、住宅会社や工務店によって影響に違いはありますが、ウッドショックにより思ったように木材が手に入らないというのが現状です。

ウッドショックの影響

ウッドショックの影響

ウッドショックによる影響は住宅業界に幅広く影響していますが、特に目立つのが次の2点です。

  • 住宅価格の上昇
  • 工期の遅れの

この2つの影響が特に大きいんですね。

たとえば住宅価格について見てみると、最初は住宅会社の努力で木材の価格上昇分を飲み込んでいましたが、家というのは粗利で数百万円という世界なので木材価格の上昇で数十万円利益が消えてしまっては会社が成り立たなくなってしまいます。

そのため、徐々に住宅価格も上昇せざるを得なくなり、ウッドショック前と比べると数十万円価格が上がっているケースがほとんどです。

また、木材が品薄になるということは工事に必要な木材を揃えるのにも時間が掛かってしまいます。

家は木材が手に入らなければ工事を進めることができないので、予定していた工期が遅れてしまったり、家の工事を始められないというケースが増えているんですね。

そのためこのような価格上昇と工期にどれだけ納得ができるか。

ウッドショックの影響がある中での家づくりはこの部分がポイントになってきます。

 

その他、住宅に関係する部分を見てみると、ウッドショックの影響が出てきているのが家具業界です。

木材の価格が上がっているので、たとえば木のテーブルなど木材を多く使っている家具の価格も上昇傾向にあるんですね。

そのため、検討している家具があるなら早めに手に入れるというのも1つの方法と言えます。

ウッドショック対策:国産材を代わりに使えないのか

ウッドショックの国産材

日本の国土には多くの山があるので、輸入材が手に入らないのなら国産材で代替できないのか?

こう思う方も多くいらっしゃると思います。

実際、木材の価格が高騰すれば日本の林業にとってプラスになるように感じます。

 

ただ、現実には国産材は急に増やすのが難しいというのが現状です。

たとえば木は植えた後は放っておいて育つのを待つのではなく、建材として使えるように手間暇を掛けて育てる必要があります。

さらには、日本の林業は木を伐り出して販売するだけでは経営していくのが難しく、多くの林業では補助金も含めた上で経営が成り立っています。

そして、その補助金を利用しながら計画的に木材を伐り出しており、需要が増えたからといって急に供給量を増やすというのは難しいという事情があるんですね。

 

また、木は伐り出せばすぐ家の木材として使える訳ではなく木を乾燥させる必要があります。

木を乾燥させることで木が変形するのを防ぐことができますし、建材としても強度も高くなるからなんですね。

そして、この乾燥というのも需要増に対応しにくい仕組みになっています。

たとえば、木の乾燥の方法としては自然乾燥と人工乾燥があり、主流は乾燥機を使って木を乾燥させる人工乾燥を使うケースが大半です。

人工乾燥の方が早く乾燥できるからなんですね。

(自然乾燥は乾燥させる場所が必要で1年以上は乾燥させる必要があるので価格も高くなります)

 

一方、人工乾燥の場合は乾燥機の中に入れて乾燥させることになるのですが、乾燥機で乾燥できる木の量というのは決まってきます。

普通は供給する木の量に合わせて乾燥機があれば十分なので、余剰に乾燥できる量はあまり無いからなんですね。

 

このように、木の供給、乾燥という2つの面で国産材を急に増やすのは難しく、価格の高騰と品薄に繋がっています。

このようなウッドショックがずっと続くのであれば新たに投資して木材の量や乾燥機も増やす事ができますが、今回は新型コロナの影響による木材の需要増なので、供給量を増やすというのは非常に難しいんですね。

ウッドショックの今後の見通し

それでは、ウッドショックは今後どうなるのでしょうか?

 

まず、コロナが収まると共に家などの「物」の需要から旅行などの「事」の需要へシフトしていくのでウッドショックは徐々に収まってくることが予想されていましたが、実際には木材価格は高止まりが続いています。

木材価格

これは木材先物価格のここ数年の値動きになりますが、2021年5月に最高値になった後に価格はかなり戻ったあと、2022年3月現在、再びかなりの高値になっているのが分かります。

実際には材木先物の価格で家を建てる木材の価格が決まるわけではありませんし、日本に影響が出るまでタイムラグもありますが、木材価格の先行きを予測する1つの数値が木材先物価格なので、すぐにウッドショックが落ち着くということはなさそうです。

 

また今後考えられるのが、ウクライナの復興です。

ロシアがウクライナに軍事侵攻することで多くの物が破壊されてしまいましたが、いつかは戦争が終わり復興が始まります。

そうなると木材だけでなく、その他の資源も含めて不足する事態が予想されます。

 

その一方、住宅需要が増えた一因として世界的な低金利というのが影響していました。

ただ、今後はアメリカのFRBによる利上げが始まる見込みで、それに伴う住宅ローン金利の上昇によってアメリカの住宅の販売数というのはある程度抑えられることになります。

この金利上昇については、木材価格にとっては抑えるためのプラス材料と言えます。

 

これらのことを踏まえると、木材に関しては品薄で価格も高い状態というのがしばらく続きそうですし、その他の建築資材も同じように材料不足、高止まりという状態が続くことが予想されます。

また、木材価格もウッドショック前の状態まで戻るという可能性は限りなく低く、ある程度高止まりしてそれがスタンダードな価格になるというのが大方の予想です。

今の家づくりはどうする?

それでは最後に、これから家づくりはどうすればいいかについて見ていきましょう。

ウッドショックが始まったころは一時的な可能性が高かったので様子見という選択肢もありましたが、ウッドショックから1年がたった今、落ち着きを取り戻したとはお世辞にも言えません。

住宅需要が極端に減らない限り、住宅価格が落ち着きを取り戻すには時間がかかりそうです。

 

一方、ウッドショックが始まった頃は木材価格の上昇に家の価格が追い付かず、家の契約の際に今後原価が大きく変わったら家の価格の変更も有りえるという合意書を交わすケースも多くありました。

ただ、今の木材価格は高値ではありますが大きな変動というのは少なくなっているので、家の総額というのは見えやすくなっています。

 

また、ウッドショック以降で家づくりが変わってきた点として、価格が上がった分だけ家をコンパクトにするという流れが増えてきています。

家の大きさを調整することで、価格上昇分を抑えるという訳ですね。

そうすることで家のランニングコストも抑えられるので、資源高にあった家づくりと言えます。

ウッドショックと上手く付き合っていく。

これがこれからの家づくりの1つのポイントと言えます。

まとめ

今回はウッドショックについて詳しく見てきました。

ウッドショックは一時的なものとも思われていましたが、様々な世界情勢により木材の価格も高止まりが続いています。

その中で、いかに上手くウッドショックと付き合って理想の家を建てるのか。

これからの家づくりには、この部分も重要な要素となってきます。

コストが上がった分だけ、間取り、性能含めてよりコストパフォーマンスの高い家にする。

これからは家づくりのパートナーとして相応しいビルダーを選ぶ目がより大切となってきそうです。

(ウッドショックについては、動きがありましたらTwitterで情報発信していきますね)

 

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O型建築士

地域の工務店で1,500万円〜5,000万円の物件を年間20棟ほど携わる建築士。 家の設計の他、 工務店に向けた設計セミナーを開催。 今までに訪れた工務店の数は200を超える。 趣味は工務店と温泉巡り。 一緒に素敵な家を建てていきましょう! プロフィール詳細はこちら

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