「勝手口を付けるかどうか迷っています。勝手口があれば便利なように思うけども、無くても不便はないかも。」
このような質問を家を建てる方からよくいただきます。
勝手口とはキッチンに併設されている出入り口のことで、昔の家では勝手口がある家が当たり前でしたが、最近の家では勝手口が無い家も多いですし、賃貸で多いアパートやマンションでは勝手口がないケースがほとんどなので、実際に勝手口が必要か迷ってしまうことも多いんですね。
では、実際に勝手口は作った方が良いのでしょうか?
今回はそんな勝手口について詳しく見ていきたいと思います。
勝手口を作るかどうか気になっている方はぜひご覧ください。
勝手口って必要?
冒頭でもお伝えした通り、昔は勝手口があるというのが普通で、最近の家では勝手口のある家というのは減っています。
では、どうして勝手口のある家は減少傾向にあるのでしょうか?
それは、現在と昔の家の間取りについて見てみるとよく分かります。
まず、今の家はLDKを一体で作るなどあまり限り区切らず、広く開放的な空間にしてリビングだけでなくキッチンも快適な空間にするという考え方が主流になります。
その一方、昔の家はキッチン(台所)が独立していて北側など奥まった場所に作り、居間を光の当たる南側に作るという間取りがほとんどでした。
家族がくつろぐスペースと家事をするスペースが明確に分かれていたんですね。
そのためキッチン(台所)に外から直接アクセスできるというのは結構重要な意味を持っていました。
ゴミを出すのもそうですし、外で買ってきた食料品を勝手口を通じて台所へ運ぶなど、キッチンの出入り口という役割が大きかったんですね。
たとえばひと昔前の家の代表格と言えるサザエさんの家であれば台所に勝手口があり、酒屋さんが商品を運び入れたり注文を取っている場面も見かけますよね。
このように、以前は玄関は面の出入り口、勝手口は家事用の裏の出入り口というように明確な役割を持っていたんですね。
その一方、現在になるとキッチンもLDKという名前のように独立して作るのではなく、リビングと一体で作られることが多くなりました。
また独立キッチンにする場合でもすぐ近くにダイニングやリビングを配置しますし、明るさや快適性なども配慮したキッチンにするのが一般的です。
このように、間取り自体に勝手口の必要性というのが以前よりは少なくなっているんですね。
とは言いつつも、勝手口にはメリットというのも当然あります。
次に勝手口のメリットについても見てみましょう。
勝手口のメリット
Photo:https://www.hbk8.com/
ゴミ出しがしやすい
勝手口の大きなメリットとしては、キッチンに溜まったゴミをすぐ外に出せるということが挙げられます。
勝手口の近くにゴミ箱を置いている家もよく見かけますよね。
家の中にあまりゴミを溜めたくないという場合、勝手口は大きな味方になってくれます。
また、勝手口からすぐ道路に出れるようにしておけば、ゴミ捨ての場合も玄関からグルッと回らずにゴミを捨てられるというのも魅力の1つです。
キッチンへの動線が増える
キッチンに勝手口があることで、外から直接キッチンにアクセスできるようになります。
たとえば、車を降りてすぐに勝手口があれば、買い物をした物もすぐキッチンへ運べますし、庭に家庭菜園があれば、家庭菜園で収穫したものをすぐにキッチンへ持っていく事もできます。
また、キッチンのすぐ横に魅力的なスペース、たとえば庭が広がっていたり、2階リビングですぐ横に広いバルコニーがあれば、やはりキッチンから外に出れると便利なものです。
このような勝手口を通してキッチンと外が上手く活きる動線を作ることで、勝手口の魅力というのはより大きくなるんですね。
勝手口のデメリット
それでは次に、勝手口のデメリットも見ておきましょう。
勝手口にはどんなデメリットがあるのでしょうか?
防犯の弱点となることも
勝手口は家の裏手など見えにくい場所に作る事が多いので、防犯上の弱点となることもあります。
そのため、防犯性の高い勝手口を採用するというのが基本になります。
また、人が歩くと音が出る防犯砂利を敷いたり、人に反応する防犯センサー付きライトを設置するなど、プラスαの防犯対策を取るというのも有効です。
→家の空き巣対策はどうすればいい?家を建てる時に効果的な7つの防犯対策
費用が掛かる
勝手口を付ける場合、それなりに費用が掛かってきます。
たとえば、勝手口にする場合と代わりに窓を付ける場合では、10万円前後の価格差になるケースもよくあります。
また、勝手口を作る場合は外に出れるための足場も必要になってきます。
勝手口と地面では少なくとも60㎝くらいの段差があり、スムーズに外に出れるようにするためには土間を作るなどの対応が必要になりますし、勝手口の上に雨よけの庇を作れば数万円のプラスになります。
そういった費用や防犯対策なども含めると、意外と大きな金額になってくるんですね。
外観への影響が大きい
勝手口を道路からよく見える位置に作る場合、外観への影響というのも大きくなります。
一般的な勝手口は防犯用の格子が付いていて一目で勝手口と分かりますし存在感も有るので、外観を整えるのが難しくなるんですね。
そのため、道路からよく見える場所に勝手口を作る場合は格子を無くして窓のように見えるようにするなど、外観への配慮もしておきたいですね。
使わない場合に無駄が大きい
使わない勝手口という物ほど、無駄な物はありません。
これまで見てきたように防犯の手間や設置費用というのも掛かりますし、勝手口は窓としては大きなサイズなので、家の断熱性能を下げてしまうという側面もあります。
使わないのであれば、勝手口ではなく窓にした方がコスト面でも性能でも有利なんですね。
そのため勝手口は実際に使うかどうかというのがとても重要になります。
そしてその答えを見る場合、「生活スタイル」と「間取り」。
この2つが大きなポイントになってきます。
勝手口が必要かどうか判断する方法
生活スタイルを考えてみる
勝手口が欲しいという方で一番多い理由は、ゴミを置いたりゴミ出しの際に勝手口を使いたいというケースです。
キッチンのスペースは限られるので上手く外も活用していきたいというニーズはかなり大きいんですね。
では、ゴミ置きのために勝手口が必要かとなると、それは生活スタイルや地域によって大きく変わってきます。
たとえば、ゴミを外に置く場合に多いのが、缶やビン、ペットボトルといった生ゴミ以外のもの。
生ゴミを外に置くと暑い時期は臭いの原因ともなってしまいますが、缶やペットボトルなどであればそのような心配はありませんし、意外と場所を取る物なので外に置きたいというケースも多いんですね。
ただ、缶やペットボトルというのは家庭によって出る量はかなり変わってきます。
たとえば毎日のお風呂上がりのビールが楽しみという家庭であれば缶の量はかなり増えますし、空きビンも日本酒やワインが好きであれば本数も増えます。
同じようにペットボトルについても、どれだけペットボトル飲料を飲むかで量はかなり変わってきます。
このように、まずは勝手口に置く可能性があるゴミがどれだけ出るか。
この部分が勝手口を作るかどうかのチェックポイントになります。
その他、缶やペットボトルといったゴミの回収はどれくらいの頻度なのかというのも確認しておきたいところです。
たとえば週に1回ほど回収してくれる自治体もあれば、回収は月に1度という自治体もあります。
回収の頻度が高ければ小まめに捨てることができますが、月に1度だと溜まりやすくなってしまいますし、ずっとキッチンに置いておくのも邪魔なものです。
そうなると勝手口にゴミが置けるというのは大きな魅力になってくるんですね。
お隣同士の自治体であっても、ゴミの捨て方、回収の頻度というのはかなり違いがあります。
まずは住む地域のゴミの回収がどれくらいかというのは必ず確認しておきたいですね。
あとはゴミを勝手口から直接捨てに行くのか、それとも仕事に行くついでにゴミ出しも行うというスタイルなのかでも違いがあります。
たとえば出勤ついでにゴミ出しをする場合、勝手口にゴミを置いていると勝手口に出てゴミを回収するという手間が一つ増えてしまうので、あとで手間に感じてきてしまうこともあるんですね。
特に冬場や雨、雪の日などは一度外に出てゴミを回収して玄関から出勤するというのは結構手間となり、結局勝手口は使わなくなったというケースも起こります。
まずは実際に勝手口の有る生活をシミュレーションしてみる。
これが勝手口を作るかどうかで大切なんですね。
勝手口が使いやすい間取り
それでは次に、勝手口と間取りについても見ていきましょう。
勝手口を作る場合、基本的には3つのパターンが考えられます。
1つはキッチンのすぐ横に勝手口を作るケース。
勝手口というとこのような間取りを思い浮かべる方も多いと思いですよね。
一番スタンダードな勝手口の作り方になります。
次に、パントリーなどキッチン近くの収納に勝手口を作るというケースもあります。
買い置きをすることが多い家庭や、実家から野菜などがよく届いたり家庭菜園をしていてキッチンに直接勝手口があるよりもキッチン近くの収納に勝手口がある方が便利という場合、このような勝手口の方が便利なんですね。
最後に、キッチンの近くに水回りを集め、家事室などから外に出れるようにするという場合です。
たとえば洗濯物を室内干し、外干しどちらもできるようにしつつ、必要に応じてゴミ置場としても使えるという感じですね。
勝手口と言っても必ずしもキッチンの横に作る必要はなく、あれば便利な所に勝手口を作ることで利便性を高めることができます。
(ちなみに、風通しについては一般的な勝手口ドアは通風勝手口といって窓を開けられるようになっているので、窓の代わりとしても使うことができます)
まずはあなたに最適な勝手口はどれなのか。
この部分は頭の中に入れておいてくださいね。
また、勝手口が必要かどうかはキッチンと玄関までの距離や、キッチンの近くに勝手口以外で外へ出入りできる場所があるかどうかというのも影響してきます。
たとえば、キッチンから外へ出るのに家の中を玄関までグルっとまわる必要がある間取りだとどうでしょうか?
買い物帰りの重い荷物を持って家の中を移動するのは結構大変ですよね。
そんな時、駐車場からキッチンへすぐ移動できる勝手口があるというのは、家事という点でとても便利になります。
同じように、ゴミ出しの場合もゴミを持って家の中をウロウロするのか、それとも勝手口があればすぐゴミを捨てに行けるのかというのも確認しておきたいポイントですね。
また、勝手口の代わりに出入りできる窓がキッチンのすぐ近くにあれば、勝手口の必要性というのは当然低くなってきます。
たとえば、ダイニングに外に出れる引違い窓があれば、それで代用するという方法もあるんですね。
他の窓で勝手口を代用できるのであれば、その分他に予算を割り振ってコストパフォーマンスの高い家づくりを目指すというのも効果的ですよ。
(代用する場合、地面と家の床までは60㎝くらいの段差があり上り下りが大変なので、出入りしやすいようデッキや土間を作ると楽に出入りできるようになります)
勝手口を作る場合の注意点
それでは最後に勝手口を作る場合の注意点についても見てみましょう。
勝手口を作る場合、本体をドアにするか、それとも引き戸にするかを選ぶことになります。
そして勝手口を作る場合は断然ドアがオススメです。
その理由としては、玄関や勝手口に引き戸を使うとどうしても隙間ができやすく家の気密性が下がってしまい、その結果家の中の暖かい空気が外に逃げてしまう要因となってしまうからんですね。
お隣までの距離がない場合、ドアだと塀やフェンスにぶつかってしまうので引き戸にするというケースもありますが、そのような場合は家全体のことを考えて勝手口を作らないというのも英断と言えます。
また、靴や草履が汚れたり濡れたりしないよう、外だけでなく家の中にも土間を作るというケースもあります。
こんな感じですね。
そのような場合も寒さについては注意しておきたいところ。
土間は家の中でもかなり冷える場所ですし、断熱材を設置しにくい場所でもあります。
その結果、土間を作ることでキッチン付近が寒くなってしまうということが有るんですね。
そのため、土間を作る場合は全館空調など家全体を温めやすい作りにしたり、土間のある場所は扉をつけるなど冷気が少しでも家の中に入りにくいような作りにしておくなど、寒さ対策はしっかり取っておきたいですね。
まとめ
今回は家に勝手口は必要かどうかについて見てきました。
昔の家では勝手口は必須でしたが、今では生活スタイルや環境によって必要かどうかを判断するというのが正解となってくるんですね。
そして、勝手口を作るなら間取りとして勝手口が使いやすい間取りとなっているかというのもチェックポイントです。
たとえばドアがどちらに開くかでも使い方は大きく変わってきます。
勝手口から直接ゴミ出しをしたいのに、道路と反対側に勝手口が開くと使いにくいですよね。
また、ゴミを置くのであれば土間は広い方が物を多く置けるようになるなど、勝手口まわりも用途に合わせてアレンジするというのも効果的です。
(図面に書いてある土間の広さは最低限であることも多いです)
勝手口が必要か迷った場合、まずは勝手口が必要な生活かどうか検討してみる。
そして勝手口が必要な場合、その用途に合った間取りになっているかどうか。
これが使いやすい勝手口を作るときのポイントなんですね。
たかが勝手口、されど勝手口。
ある程度費用が必要な物なので、作るにしろ作らないにしろ、後悔しないようにしておきたいですね。
では。
キッチンや窓についてはこちらも参考にしてください。
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