「一軒家を建てる予定の者です。間取りができたのですが、間取りを見ると良い間取りのようにも感じるし、何か物足りないようにも感じます。間取りの何を見れば良い間取りなのか判断ができるようになるのでしょうか?」
読者の方からこのような質問をいただきました。
一軒家を建てる時、自分の家の間取りを見るというのはとても楽しいことですし、ワクワクしますよね。
でも、今回質問をいただいた読者さんのように自分の間取りを真剣に見るからこそ、その間取りが良いのかどうか判断に迷うことがあります。
そこで今回は一軒家の間取りを見る時にチェックしたい7つの項目についてご紹介していきたいと思います。
一軒家の間取りでチェックする7つの項目とは、
- 玄関と階段の場所を確認する
- 廊下など無駄なスペースが広くないかどうか
- 生活をシミュレーションしてみる
- 部屋の見え方を考えてみる
- 収納の使い勝手をチェック
- 家具を間取りの中に入れてみる
- 窓の位置と大きさ
の7つです。
暮らしやすい家になっているかどうかのポイントを建築士がまとめていますので、新築の一軒家を建てる方だけでなく、建売や中古の一軒家を検討されている方もぜひご覧ください。
玄関と階段の場所を確認する
一軒家の間取りを見る時にはLDKや部屋の大きさといった目立つ部分についつい目がいってしまいますが、間取りでまずチェックしておきたいのが、「玄関の位置と階段の位置について」です。
「玄関は家に入る場所なのでチェックするのは分かるけども、LDKじゃなくてどうして階段の位置をチェックするの?」
こう疑問に思う方もいらっしゃると思います。
でも実は、玄関と階段の位置関係というのは間取りの良し悪しをとても大きく左右する場所なんですね。
例えば、次の2つの間取りを見比べてみましょう。
同じ様な間取りになっていますが、右と左の間取りで階段の位置がかなり違っているのがお分かりになると思います。
一方は家の真ん中あたりに階段が、もう一方は家の端に階段が来ていますね。
では、実際にはどちらの間取りの暮らしやすい間取りなのでしょうか?
答えは左の間取り(階段が家の真ん中あたりにある間取り)です。
その大きな理由は玄関と階段の位置が離れれば離れるほど、玄関から2階の部屋へ行く距離が遠くなってしまうからなんですね。
場合によっては玄関から2階の寝室へ行くまで家の端まで行って階段を登ってから、さらに家の端の寝室まで移動するという間取りになっているケースもあります。
暮らしやすい家というのは、日常生活でストレスが感じないものです。
でも、毎日家の中を端から端まで移動しないとダメな間取りで生活するとどうでしょうか?
お世辞にも暮らしやすい家とは言えなくなってしまいますね。
このように階段と玄関の位置関係というのは家の中の移動距離に直結する部分となり、一軒家の間取りではとても重要なチェックポイントになってくるのが分かります。
また、間取りがいまいちシックリ来ないという場合は階段の位置が影響していることも多くあります。
一軒家の間取りを検討する時、階段の位置はそのままでLDKや部屋の位置などに手を加えることがよくありますが、それでも上手くいかない場合は階段の位置が最適でないので間取りが上手くいかないケースがほとんどです。
そのような場合、階段の形や場所をもう一度見直すことで間取りを改善できるできるようになるんですね。
一方、玄関の位置はどこに配置するのが良いのでしょうか?
家の中の移動のことを考えると基本的に家の真ん中付近に玄関があると便利です。
どこへでも移動しやすく、廊下も少ない家にできるからなんですね。
特に平家など1階の面積が大きくなればなる程、真ん中付近の玄関というのは大きな効果を発揮してくれます。
その一方で、家の端に玄関を作るというのも決して悪いわけではありません。
玄関が家の端にあれば、LDKを広々作れるなどのメリットがあるからなんですね。
特に敷地がコンパクトな場合は、玄関は端に配置した方が間取りをまとめやすくなります。
玄関のベストな位置というのは敷地や家の大きさによって変わってくるんですね。
そしてどちらの場合も意識しておきたいのが、「玄関と階段が離れすぎていないかどうか」。
これだけは必ずチェックしておきたいポイントになんですね。
まずは玄関の位置が各部屋へアクセスするのに支障のない位置なのか。
もし離れすぎている場合は、家のゾーニングを再検討してみるのも良い間取りにするための効果的な方法となります。
廊下など無駄なスペースが広くないかどうか
先ほど玄関と階段の位置について見てきましたが、玄関と階段の位置がおかしいと家の中の移動距離が長くなるという話がでました。
では移動距離が長くなると発生しやすい物って何でしょうか?
そう、廊下です。
部屋へ行くための距離が長くなり、廊下など無駄なスペースが広くなってしまいやすいんですね。
例えば下の間取りはとある建売住宅の間取りになります。
廊下が無駄に長くなってしまっているためLDKのスペースが圧迫され、家具を置くのが大変そうなLDKになっているのが分かりますね。
家の空間というのは限られたものです。
良い間取りというのは無駄なスペースがほとんど無く、スペースを有効活用している間取りであることが必須条件となってきます。
そのため、一軒家の間取り見るときは空間を区切るためなど理由がある場合は良いですが、そうではなく無意味に廊下が無駄に長くなっていないかどうか。
また、廊下以外でも使えない無駄なスペースが無いかどうかを確認することで、クオリティの高い一軒家の間取りかどうかの判断ができるようになるんですね。
生活をシミュレーションしてみる
これまで階段や玄関などを例に、人がどれだけ移動するのかについて見てきました。
そして、この家の中での人の動きを表すものに「動線」と言うものがあります。
この動線を見てみることで、あなたに合った間取りになっているのか、そうではない間取りになっているかが判断できるようになります。
動線が生活しやすい動線になっているかどうか。
これも一軒家の間取りをチェックする時のポイントになってくるんですね。
→その間取りは動線が考えられていますか?家の間取りと動線について
例えば、料理をしながら洗濯をする場合はどのような間取りだと生活しやすいでしょうか?
洗濯物の様子が簡単に見れるようにキッチンと洗面室は近い方が良いですよね。
また、お子さんが家に帰ってきてからすぐに手を洗う習慣を身につけて欲しければ、玄関付近に洗面室を配置したり、手洗いをリビングまでの動線上に配置した間取りにするなどの方法も考えられます。
このように家の中での生活というのは人や家族によって様々で、その間取りでの生活があなたに合っているかどうかが暮らしやすい間取りになっているかどうかの判断材料となってきます。
では、実際にどうすれば生活しやすい間取りかどうか判断できるのでしょうか?
それは間取りの中で朝起きてから夜寝るまでどのように動くかシミュレーションしてみることが一番効果的な方法となります。
その間取りでの生活を想定して見ることで、暮らしやすい間取りかどうかがすぐに分かるようになるんですね。
一軒家の間取りを見る場合は、一度その間取りで生活して暮らしやすいかどうかをシミュレーションしてみる。
これも一軒家の間取りを見る時に必ず行っておきたいチェックポイントです。
部屋の見え方を考えてみる
家の中で生活する時、同じ広さの一軒家なら狭くて閉塞感を感じて生活するよりも、広く開放的に見える家の方が断然良いという方がほとんどだと思います。
でも、実は同じ広さでも間取りの作り方次第でその広さの感じ方というのはかなり違ってきます。
例えば、簡単な実験をしてみましょう。
それでは、下の図をご覧ください。
上の図はどちらも同じ面積の四角形で、1つは正方形、もう1つは長方形になっています。
では、上の四角形をLDKの形だと想定すると、正方形のLDKと長方形のLDKではどちらの方が広く見えるのでしょうか?
答えは長方形のLDKです。
理由は長方形の方が対角線が長くなり、間取りで言うと視線がより遠くまで抜けるようになるからです。
対角線の長さが長方形の方が長くなるので、視覚的にも広く見えるんですね。
私が駆け出しの建築士だった頃、お施主さんの要望で正方形のLDKを持つ一軒家を設計したことがあるのですが、家が完成してLDKを見た時「面積の割に思ったよりも広がりを感じないLDKだな」と不思議に感じました。
そしてよくよくその原因を突き詰めると、LDKの形が正方形で視線の抜け感が甘いためにあまり広さを感じない家になっている事が分かりました。
家というのは部屋の形でも広さの感覚というのはかなり違ってくるんですね。
同じ様なことは視線の先が壁で終わるのか、窓でさらに外が広がっているのかでも違いが出てきます。
見えなくても良いものはできるだけ隠しつつ、外も含めて家の中の視線の抜けをさらに広げられているかどうか。
この部分も間取りの段階でチェックしておくと、より開放感を感じる一軒家にすることができるようになります。
また、家の中の凸凹というのも意外と家の中の見た目に影響する部分です。
例えば、下の図のような位置に収納があった場合はどうでしょうか?
実際に家ができるて部屋を見てみると、中途半端に凸凹があることで思った以上に煩雑な印象を持つ部屋となってしまうため、部屋の形は綺麗な形にするのが基本になるんですね。
そのため、上記のようなケースでは凸凹が目立たない位置に収納を配置した間取りが正解となります。
その他、間取り以外にも部屋のドアなどの建具や窓なども、高さがバラバラだと部屋に凸凹があるのと同じ様な印象を持ってしまうことがあります。
「神は細部に宿る」と言いますが、ちょっとした事で部屋の印象は大きく変わってきます。
間取りが決まってきた後は、より綺麗に見えるように家を整えることで、さらにクオリティの高い一軒家にすることができますよ。
収納の使い勝手をチェック
一軒家の間取りをチェックする時、収納もやはり確認しておきたいポイントです。
今の家の収納が足りないので、間取りを見る時は収納が気になるという方も多いのではないでしょうか。
では、収納について詳しく見ていきましょう。
まず、収納の量が足りているかどうかの目安として「収納率」と言われるものがあります。
一軒家の面積に対して、どれだけ収納があるかを表す数値が収納率なんですね。
例えば30坪の家に合計3坪の収納があれば収納率は10%ということになります。
→住宅の坪数はどれくらいがベスト?理想の広さを知る方法を建築士がご紹介します
ちなみに一般的な一軒家の収納率はどれくらいかというと、10%を超えるくらいが標準的な一軒家の収納率と言われています。
ただ、ここで注意点が1つ。
収納率はあくまで「収納の面積」だということです。
一軒家で生活するのに欲しいのは収納の面積ではなく、片付けやすくて使いやすい収納ですよね。
そして収納を作る目的は物が散らからないスッキリ片付いた家にするためです。
そんな家にするために注目したいのが、適材適所に収納があるか、また奥行きが適切かという点です。
例えば、LDKを見てみましょう。
LDKといえばリビングで使うちょっとした小物や郵便物、お子さんのおもちゃなど、いろんな物が存在する空間になります。
そのためLDK内にある雑多な物を収納できるようにするのは必須項目です。
片付く家にするために必ずLDK内には必ず収納は欲しいんですね。
(間取り上、どうしても収納が作れない場合は見た目の良く圧迫感の少ない収納家具を置くという手もあります。そんな時も間取りの邪魔にならない場所に家具を置けるかは間取りの段階でチェックしたいですね)
では、LDKにはどんな収納があると便利なのでしょうか?
それは奥行きが浅い収納です。
LDKでは小物や雑多な物が多いので、押入れのように布団を入れるために奥行きが深くなっている収納は返って使いにくくなってしまうんですね。
例えば下の間取りのような奥行きの収納があるとします。
このような奥行きの収納は間取りの空いたスペースに作りやすいのでよく見かけます。
でも、LDKの収納にこんなに深い奥行きはいらないですよね。
そのため、上記のようなケースで収納の奥行きを小物を入れやすいサイズに変更し、奥まった部分は反対側から使えるようにするのが正解となってきます。
また、収納の中に可動棚をいくつか設置しておけば入れる物に合わせて高さを調整できるので、物をより収納しやすくなるのでオススメです。
同じ様に服をメインに入れる収納であれば服に合わせた奥行きに、布団を片付けるのであれば押入れサイズの収納にするなど、収納は入れるものによって必要な奥行きは違ってきます。
このように収納は面積だけではなく、入れたい物が収納しやすいように作ることが大切なんですね。
→クローゼットで失敗しない!家のプロが教えるクローゼットの収納術
→ウォークインクローゼットの失敗しない作り方とベストな収納方法
家具を間取りの中に入れてみる
一軒家の間取りをチェックする時、家具を実際の図面の中に入れてみることも重要なチェックポイントになります。
例えば、ソファとひとことで言っても何人掛けかでサイズは大きく変わってきます。
間取りの中にサイズ別のソファを入れるとこんな感じですね。
また、家具を置いても人が通るのに邪魔になっては元も子もありません。
そのため、通路部分もしっかり確保されているかを間取りで見ておく必要があるんですね。
また、ダイニングテーブルも意外と場所が必要な家具となります。
ダイニングテーブルに座るときは椅子を出して座ることになるので、人が座っていても邪魔にならないスペースを確保して置く必要があるからなんですね。
椅子を出して座る部分であれば最低でも1mはスペースを確保しておきたい場所になります。
また、ダイニングテーブルは存在感もあるので、ソファなどリビングでくつろいでいる時にすぐ近くで目に入ると圧迫感を感じやすくなります。
そのため、家具を入れた時にどう見えるかというのも確認しておきたいポイントです。
→我が家にぴったりのダイニングテーブルのサイズを決める5つの方法
その他、一軒家の間取りに家具を入れておくメリットとしては、コンセントやスイッチを配線する時に家具と被らないようにできるというメリットもあります。
特にコンセントは家づくりの際に失敗しやすい代表的なポイントとなので、間取りに家具を配置して置くことで少なくとも家具が邪魔で使えないコンセントというのは防いでおきたいですね。
→【間取りの失敗まとめ】よくある間取りの失敗と後悔しない秘訣
窓の位置と大きさ
一軒家の間取りを見る時、どこに窓が付いているのか、どんな大きさでどんな種類の窓が付いているのかも頭に入れておきたいポイントになります。
窓から日がどう入るかで家の明るさは変わってきますし、部屋から見た視線の抜け方も変わってきます。
また、窓の種類や場所によって家の中の風通しが変わることがありますし、窓の高さを調整することで外から家の中が見えにくくするなど視線をコントロールすることも可能になります。
このように、ただ家の窓と言っても使い方次第で一軒家の住み心地というのは大きく変わってくるんですね。
具体的な窓のチェックポイントを挙げると長くなってしまうので詳しくは後でまとめて紹介している窓に関する記事を参照いただければと思いますが、簡単に良い窓か判断する方法としては、設計者が意図を持って付けたの窓なのかということです。
意図がある窓なのか、それとも特に考えずポンっと窓を付けたのか。
この部分が良い窓かどうかの大きな判断材料となるんですね。
意味のある窓は家が完成して一軒家に住んでからも役割を果たしてくれますし、ただ付けた窓は何となく光を入れ、何となく風が入ってくる窓になり、場合によっては住み始めてから「どうしてここに窓があるんだろう」と思うケースも見受けられます。
もちろん、一般の方が一軒家の間取りをチェックする時に窓のサイズや種類を完璧にするのは経験という点でどうしても難しい部分もありますが、少なくとも意図を持って付けられた窓なのか、それともとりあえず付けられた窓なのかは設計者に確認することができます。
意図があり綺麗な窓というのは、一軒家をとても素敵なものにしてくれる物です。
窓は家の魅力を上げてくれる効果的な素材となるので、一軒家の間取りを見る時には窓にも少し意識を持っていきたいですね。
Photo:http://www.takachiho-shirasu.co.jp/case/select/detail.php?id=20
まとめ
今回は一軒家の間取りを見る時の7つのポイントについて見てきました。
一軒家の間取りというと、「LDKの形をどうする」とか「どれくらいの広さなるか」といった目立つ部分についつい目が行ってしまいますが、LDKの形は敷地条件と要望から最適な形が導き出される物ですし、家や部屋の広さも予算と要望から最適な形ができる物です。
また、一軒家の間取りでは家全体のバランスが取れているかどうかがとても重要になってきます。
そのバランスをコントロールするのが玄関や階段の位置、廊下などのスペースの広さとなり、その中で動線が生活しやすいかどうかが間取りのベースになってくるんですね。
そして収納の使い勝手や部屋の見え方、家具のバランス、窓の使い方と言ったアクセントが上手く効いているかどうか見ることで、一軒家の間取りのクオリティというのはグッと良くなります。
自分の家の間取りを見るのは基本的にとても楽しいことですし、ワクワクするものです。
その楽しさを住んでからもっと楽しくするためにも、間取りの段階であなたに、そしてあなたの家族にあった間取りなのかをしっかり確認するかしないかで、間取りのクオリティというのは大きく違ってくるんですね。
今回の内容を覚えておくだけで間取りの失敗というのはグッと減っらすことができるので、ぜひ頭の片隅に入れておいてくださいね。
では。
家づくりの参考になる情報を発信しています。
建築士が実際に見てきた全国の優良工務店を掲載。
家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
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→注文住宅を建てる前に必ず知っておきたい!注文住宅のメリットとデメリット
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