家を建てるなら家の外観は少しでも良い方が毎日の暮らしが楽しくなりますし、周りから悪い意味で目立つ外観ではなく、周りの景色に馴染むような外観の家にしたいものですよね。
そんな時に注目したいのが家の「軒高」について。
「軒高」を上手くコントロールすることで、家の外観の洗練度はかなり違ってくるからんですね。
今回はそんな家の軒高について詳しく見ていきたいと思います。
家の外観が気になる方はぜひご覧ください。
家の軒高って何?
家の軒高と聞いてピンとくる方はかなり家について勉強されている方。
軒高という言葉は日常生活でまず使わないので、「軒高って何?」と思う方も当然多くいらっしゃると思います。
そこでまずは、軒高とは何なのかを見ていきましょう。
軒高は骨組みの絵を見てみると分かりやすいので、まずは下の絵をご覧ください。
この絵には、木造の住宅で使う主な部材が描かれています。
そしてこの中で今回注目したいのが「軒げた」について。
名前に「軒」という感じが付くように、この「軒げた」の上端が家の軒高になります。
具体的に家の外観で言うと、この部分が家の軒高になるんですね。
右側の家は片流れ屋根で屋根が高くなっているので高い部分が軒高のように感じてしまいますが、実は軒げたの上に「束」という物を建てて屋根を支えているため、軒高は図の位置となってきます。
→片流れ屋根はどうすればオシャレにできる?片流れ屋根の特徴と効果的な使い方を建築士が解説します
ちなみに、この軒高というのは基本的に自由に設定することができ、基本的に工務店や住宅会社があらかじめ設定しています。
そして、軒高を高くしたり低くすることで、家に色んな影響が出てきます。
たとえば、軒高を高くすれば家の中は広くできますが、その分だけ構造材などの費用が必要になってきますし、軒高が高くなる分だけ家の高さも高くなるので台風など強風が吹いた時に風の影響を多く受けるようになります。
軒高が高いと家の体積を沢山取れて良さそうですが、一概にそう言う訳ではないんですね。
その一方、軒高を低くし過ぎると生活スペースが圧迫されてしまい生活に支障が出てきてしまうことも。
そのため軒高は高過ぎず、低過ぎずという上手いバランスに設定する必要があるんですね。
では、ここでクイズを1つ。
軒高は「高くする場合」と「低くする場合」、どちらの方が家を設計する難易度が高くなるでしょうか?
答えは「軒高を低くする場合」です。
その理由は、軒高を低くすることで天井裏のスペースが少なくなってしまうというのが大きな理由です。
軒高を低くする場合、部屋の天井の高さは確保する必要があるので、必然的の残りのスペースとなる天井裏のスペースで調整する必要が出てきます。
家の天井裏には特に意味も無いようにも感じますが、実は梁などの構造材の他、配管や配線など家に必要な色んな物が収まっており、天井裏スペースというのは家で無くてはならない場所なんですね。
そんな天井裏のスペースが狭くなることで、構造材の大きさから配管経路まで細かい設計が必要となり、場合によっては間取りに影響してくるケースもよくあります。
その結果、間取りの難易度というのも高くなってくるんですね。
一方、軒高を高くした場合は構造材などのコストが上がったり構造計算に多少影響するようになりますが、それ以外は階段の段数が増えるといったちょっとした調整で対応することが可能です。
天井裏のスペースが十分確保されているので、後からの変更なども対応しやすく融通が効きやすいんですね。
そのため、一般的には少し余裕を持った軒高に設定しているケースを多く見かけます。
また、特に棟数を多く建てている住宅会社では効率重視で軒高は基本的に変更不可という場合もあるなど、軒高の設定というのは住宅会社や工務店の個性がよく出る部分でもあります。
では、このような軒高の基礎知識を踏まえた上で、軒高が家の外観に影響する理由を見ていきましょう。
軒高で家の外観は変わる
家の外観では、基本的に家は軒高を抑えた方が綺麗に見えるようになります。
軒高を抑えることで家全体の高さを抑えることになり重心が低くなり、落ち着いた雰囲気が出てくるようになるんですね。
たとえば、平屋の家が落ち着いて見えるのは家の重心が低くなっているのが大きな要因です。
同じように、2階建ての家でも軒高を少しでも抑えることで重心が下がり、より落ち着いた雰囲気が出るようになります。
家の外観を人の顔に例えるなら、「軒高が高い家はちょっと無駄なお肉が付いた印象に、軒高を抑えた家は無駄な部分が無くスッキリ見える」という感じなんですね。
これは特に家の間口が広ければ広いほど影響が大きくなり、家がのっぺり見えたり、存在感が大きく重たく見えるという場合は、軒高を含めた家の高さが原因となっているのが非常に多くなります。
(軒高が高いために重たく見えてしまっているケースを本当によく見かけます)
そのため間口が広い家では軒高は必ず意識しておきたいポイントなんですね。
→間口(まぐち)って何?間口によって建てる家は変わってきます
家の高さは無駄に高くするのではなく、軒高をいかに上手く抑えるか。
そうすることで落ち着いた雰囲気の外観に、また周りの環境にも馴染んだ家になります。
軒高を意識するかしないかで、家というのは大きく変わってくるんですね。
(下の家は軒高を上手く抑え、広い間口にも関わらず圧迫感がなく、落ち着いた雰囲気の家になっています)
一方、軒高の影響を受けにくいという例外もあります。
たとえば間口がコンパクトで縦長の家になる場合は軒高の調整というのはあまり効果が出なくなります。
元から縦長なので少し高さが違っても見た目への影響はそれ程出てこないんですね。
もちろん家の側面から見れば違いはありますが、間口がコンパクトな家の場合はすぐ隣に家が建っているケースがほとんどなので、側面がよく見えることはあまり有りません。
また、3階建ての家の場合は軒高が9mを越えると法的な規制がかなり厳しくなってしまうので、その中に収まるように上手く階高を調整しているケースがほとんどです。
そのため、法的に軒高がシビアなケースでは設計士さんにお任せするというのがベストとなるんですね。
ちなみに、軒高は家を建てるお施主さんが決めるというケースはほとんどなく、基本的に住宅会社や工務店であったり担当の建築士が軒高を決めるので、図面が出てきた時に軒高がどれくらいの高さか知ることになります。
この場合に重要なのは、軒高の実際の数値よりも立面図や外観パースを見た時に重たく見えるのか、それともバランスよく見えるのか。
重たく見える場合は屋根や軒高を抑えて重さを軽減することができるのかという打ち合わせを行い、バランスが整っているのであればその軒高で進めるというのが家づくりの正解となるんですね。
家づくりをされている方とお話すると、軒高は決まっていて変えられないと思っている方も多くいらっしゃいますが、基本的に軒高は変えることができますし、家の大きさ、形によってベストな軒高というのは違ってきます。
外観がイマイチしっくりこない場合は、家の高さを抑えてみる。
そうすることで、新しい可能性を探ることができるんですね。
まとめ
今回は家の軒高について詳しく見てきました。
軒高というのは家づくりの中であまり目立たないため、住宅会社や工務店から提案されたものが全てのように感じてしまいますが、軒高は変更することができますし、軒高を意識するかしないかで家の外観はかなり変わってくるんですね。
また、腕の良い住宅会社や工務店、設計士は軒高を上手くコントロールしているという特徴もあります。
軒高を上手く使っているかどうか注目することで、住宅会社や工務店、設計士の腕を見ることもできるんですね。
その辺りも含めて軒高を見てみると、外観だけで無く家づくりの色んな面が見えてきて楽しいですよ。
家づくりの際は、ぜひ1度軒高にも注目して見てくださいね。
では。
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