「敷地の広さから3階建ての住宅を検討しています。3階建ての住宅を建てる時に気をつけた方が良いことがあれば教えていただけないでしょうか?」
このような質問を読者の方からいただきました。
家を建てると言うと一般的には2階建ての住宅が多いですが、都市部などでは3階建ての住宅も多く見かけますよね。
では、3階建ての住宅にはどんなメリットあって、どんなデメリットに気をつければ良いのでしょうか?
3階建ての間取りを見る際に気をつけたいポイントなどを見ながら、今回は3階建ての住宅についてスポットを当てて見たいと思います。
3階建ての家を建てる可能性がある方だけでなく、間取りを見る時のポイントが気になる方はぜひご覧ください。
3階建て住宅のメリット
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それではまず、3階建ての住宅のメリットについて見てみましょう。
3階建ての住宅のメリットとしては、
- 敷地を有効活用できる。
- 明るく眺望の良い家にできる。
- 都市部など地価が高い場所でも家を建てやすい。
この辺りが3階建てのメリットとしてあげられます。
それでは3階建ての住宅のメリットについて具体的に見ていきましょう。
3階建ての住宅は敷地を有効活用できる
3階建ての住宅の一番のメリットは敷地を有効活用できるということです。
例えば、2階建ての家だとスペースが足らずに1LDKくらいの家しか建てられない敷地でも、3階建てにすることで3LDKや4LDKなどの間取りにすることができるようになるんですね。
コンパクトな敷地でも上に居住空間を広げることで、家族で暮らすのに問題ない広さの家にすることができるというのが3階建ての住宅の最大のメリットになります。
特に狭小地では3階建ての家というのはマストな工法とも言えます。
また、敷地があまり広くなく駐車場を作ると家を建てる部分が少なくなってしまうような場合でも、1階をビルトインガレージにして駐車スペースを確保し、2、3階をメインの生活スペースにするという方法を取ることもできます。
特に駐車場代が月に数万円するような都市部であれば、自分の敷地内に駐車場を確保できるというのは大きなメリットになってきます。
同じように1階を店舗や貸店舗に、2、3階を居住スペースにしてしまうなど、立地条件によっては「住む」以外に土地の価値を引き出せるのも3階建ての住宅ならではの魅力と言えます。
→家でカフェを開くにはどうすればいい?店舗併用住宅をつくるなら必ず知っておきたい事
その他に敷地を有効活用する例では、家の建て替えの際にも2階建てから3階建てに変更するというケースもよく見られます。
昔は3階建ての家というのは少なく、また敷地にゆとりを持って家を建てていることが多かったので家族が増えると部屋数が足りないということもよくありましたが、建て替えの際に3階建てにして家の広さをしっかり確保するというのも効果的な方法なんですね。
また、必ずしも狭小地ではないけども3階建てにするというケースもよくあります。
二世帯住宅など、より広い空間が必要な時にも3階建てが活躍するんですね。
3階建ての住宅にすることで、例えば二世帯住宅の場合、親世帯は1階に、人数の多い子世帯は2階、3階を使うというようにすることも可能になります。
このように3階建ては敷地の可能性を広げるための有効な選択肢の1つとなるんですね。
3階建ては明るく眺望の良い家になりやすい
3階建ての住宅は家の高さがある分、明るく眺望の良い家になりやすいというメリットもあります。
まわりの敷地環境による部分もありますが、3階部分はまわりにマンションやビルがない限り見晴らしがよく明るい部屋になるケースがほとんどですし、LDKが2階にくることが多いので1階のLDKに比べて明るく眺望の良い家になりやすいんですね。
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また、3階建ての家は窓が配置しやすいという特徴もあります。
3階建ての家は階数がある分、1つの階に設ける部屋の数が少なくなるので窓が取りやすくなるんですね。
その分だけ、風や光を取り込みやすくなります。
その一方、3階建ての1階部分は暗くなりがちで、特に奥まった部分の部屋は光がほとんど入らないケースも多く、夜寝るためだけの寝室にしたり、あまり光が入らなくても問題の無い水回りにするなど割り切った使い方が必要になるという点は注意が必要です。
都市部など地価の高い場所でも家を建てやすい
家を3階建てにすることで、都市部など土地の価格が高い地域でも家が建てやすくなるというのも3階建ての住宅ならではのメリットです。
一般的な4人家族の家を建てる場合の土地の面積は4LDKの家が建てやすい100㎡(30坪)が1つの目安となってきますが、3階建ての住宅の場合は上に住居空間を広げるので土地の広さが100㎡よりも小さくても部屋数を確保できる家を建てることができるため、土地の価格を抑えることができるんですね。
→住宅の坪数はどれくらいがベスト?理想の広さを知る方法を建築士がご紹介します
特に都市部や駅の近くなど地価の高い場所でまとまった広さの土地を確保するにはかなりの資金が必要となってきます。
そうなると総予算がオーバーしてしまい家が建てられなくなってしまうケースも出てくることになりますが、3階建ても視野に入れておくことで土地の価格を抑えて総予算内に収めることが可能となります。
→家を建てるには費用はどれくらい必要なの?建築士が教える家の費用のポイント
また、都市部では元から間口の小さな土地も多く、また相続で広い土地を分割して3階建ての住宅用に切り売りしたりなど、2階建てにするには少し小さいけども3階建てを建てるにはちょうど良いサイズの土地が出やすいという特徴もあります。
このように、都市部で家を建てる場合は3階建てを選択肢に入れておくことで家を建てやすくなるんですね。
3階建て住宅のデメリット
これまで3階建てのメリットを見てきましたが、3階建てにはデメリットもあります。
それでは次に3階建て住宅のデメリットについて見てみましょう。
3階建てのデメリットとしては、
- 階段の上り下りが大変。
- 意外と費用が掛かる。
- 間取りに制限が出ることもある。
- 家具、家電の搬入が大変。
この辺りが代表的な3階建ての住宅のデメリットとなります。
それでは詳しく見ていきましょう。
3階建ては階段の上り下りが大変
3階建ての住宅の最大のデメリットとしては、やはり階段の上り下りが大変に感じてしまうことが挙げられます。
日常生活で1階から3階まで階段を登ることになるので、若い時は良いですが歳を重ねると階段の上り下りが負担に感じられてしまうことがあるんですね。
特に1階で洗濯をして日当たりの良い屋上や3階に洗濯物を干すような動線の間取りになっている場合、毎日洗濯物を持って階段を1階から3階まで上がることになるなど、動線次第では毎日何度も階段を上り下りするということもあります。
→その間取りは動線が考えられていますか?家の間取りと動線について
そのため、3階建ての住宅の場合は間取りができた段階で1日にどれだけ階段を上り下りすることがあるのか、またそれが負担に感じないかどうかをシミュレーションしてみることが大切になってくるんですね。
また、スペースに少し余裕がある場合は階段近くに収納を設けておき、将来必要になった時にホームエレベーターを設けられるようにしておくという方法もあります。
将来、足腰が弱くなったらマンションなどに住み替えるのも視野に入れているというホームエレベーターまで場合は必要ありませんが、歳を重ねても家に長く住みたいという場合はいざとなった時にホームエレベーターが取り付けられるようになっているのは思いの他、心強いものになります。
→老後のためにホームエレベーターや階段昇降機は設置する?メリット・デメリットをご紹介します
3階建ては意外と費用が掛かる
3階建ての住宅は土地の取得費用を抑えられる反面、家に必要な費用は多くなる傾向があります。
例えば、3階建ての家の場合は構造計算というものが義務付けられており、通常の2階建ての家と比べると計算費用や審査費用というものが多く必要になってきます。
また、3階まで支えるだけの構造が必要になるので、柱や梁なども強度がある物が求められるケースもあり、家を建てる費用が高くなる要因となります。
(反対に、それだけ慎重に作られているとも言えます)
同じ様に、家を建てる際には敷地の地盤調査というものを行い、家を支えるだけの地盤の強さがその土地にあるかどうかを判定し、強さが一定に満たなければ地盤改良を行い、その上に家を建てるという流れになります。
同じ面積であれば2階建ての住宅よりも3階建ての住宅の方が重くなるので3階建ての住宅の方が地盤改良が必要かどうかの判定基準が厳しく、地盤改良が必要になった場合はコスト増の要因となってくるんですね。
(一般的には100万円前後のケースが多いです)
もっとも、2階建ての家でも地盤改良を行うことはよくあるので、こればかりは運次第という側面もあります。
(土地の購入前に地盤調査できるケースはほぼ無く、土地を購入してから地盤調査を行うことになります)
その他、建物が密集している都市部や駅前の地域では火事の際に火が周りに燃え移ると大災害につながってしまうため、建物に一定の耐火性能を求める「防火地域」や「準防火地域」に指定されている場所もあります。
そのような場合も窓ガラスが割れて火が家の中に入ってこないようにしたり、家の構造材が一定時間燃えても耐えられるようにするための費用が必要になり、これもコストアップの要因となってきます。
(2階建ての住宅も耐火性能が求められますが、3階建ての住宅の方が求められる基準が厳しくなります)
このように3階建ての住宅の場合は意外と費用が掛かってくるんですね。
そのため、家を建てる費用に関しては2階建ての住宅に軍配が上がります。
(敷地条件や家の広さにもよりますが、坪単価で言うと2階建ての住宅と比べて10万円ほどアップするケースをよく見ます)
3階建ての住宅は間取りに制限が出ることもある
3階建ての住宅の場合、広い敷地に3階建ての住宅を建てる場合はそれほど問題はありませんが、間口のコンパクトな土地に3階建ての住宅を建てる場合は間取りに制限が出る場合があります。
→間口(まぐち)って何?間口によって建てる家は変わってきます
家には耐力壁と呼ばれる家を支える壁が必要になるのですが、例えばビルトインガレージを作った場合は車を止めるために家に大きな開口部がポッカリ開くことになります。
そうなると、家の他の部分でその開口部を支えるための壁が必要となり、他の場所に窓を取りたいけども取れないケースが出てきたり、家の中の壁が邪魔に感じるので無くしたいけども壁を無くせないという場合も出てくるんですね。
(ビルトインガレージが無かったとしても細長い間取りの3階建ての場合は耐力壁のために壁が取れないことが多くあります)
また、3階建ての住宅の場合は1階から2階、2階から3階へ行くために合計で2つ階段が必要となりますが、スペースを有効活用するため基本的に階段は同じ位置に配置するのがセオリーとなってきます。
階段の上部や下部は高さが確保しにくいので階段を配置するのが一番効率が良いこと、また同じ階でバラバラの位置に階段があると部屋のスペースが狭くなってしまうのが主な理由です。
そのため、階段の位置次第で間取りが大方決まってくることも多く、必然的に間取りの選択肢というのも少なくなってくるという傾向があります。
3階建ての住宅の場合、間取りのアイデアよりも、パズル的な組み合わせのような要素が多くなってくるんですね。
その結果、間取りの選択肢というのは少なくなってきます。
(間取りで迷う要素が少ないというメリットもあります)
その他、地域によっては「北側斜線」や「高度斜線」と呼ばれる斜線制限で家を建てられる高さが制限されている地域もあり、3階の一部で天井の高さが下がってしまうこともあります。
場合によっては3階建てなのに3階にあまり部屋を作れないなんてケースも。
家を建てる時に始めて気づいたとならない様、このような高さ制限は一般の方では判断が難しいものでもあるので、土地を購入する前に住宅会社や工務店に相談しておくことが3階建ての住宅で失敗しないための必須項目となります。
家具、家電の搬入が大変
3階建てのデメリットで意外と気づきにくいのが家具や家電の搬入が難しいケースが多いと言うことです。
3階建ての場合は基本的にリビングは2階になるので、大きな家具や家電は2階に運ぶことになりますが、3階建ての住宅では居住空間を広く取るため階段のスペースをコンパクトに収めていることも多く、家具や家電が階段で上へ運べないなんてことがあるんですね。
そのような場合はクレーンなどで道路から直接2階へ家具や家電を搬入することになります。
引っ越しのときはまとめて搬入すれば良いですが、新しく家具を増やしたい場合や買い替えの時などは手間に感じてしまうこともあるので注意が必要です。
(引っ越しや家具を納品してもらう際も、階段で搬入できるか確認しておくと無難です)
3階建て住宅の間取りのポイント
ここまで3階建てのメリットとデメリットについて見てきました。
それではこれまでのメリット、デメリットを踏まえた上で、3階建ての住宅を建てる時の間取りのポイントについて見てみましょう。
階段の位置に無駄がないかどうか
3階建ての住宅の場合、階段の位置で他の部屋の配置が決まってくると言っても過言ではありません。
LDKの形も階段の位置や形状で決まってきますし、3階に廊下が多くなるのかどうかも階段の位置で決まります。
また、1階もスペースを有効活用するため玄関からあまり遠くない位置からスムーズに2階に上がれるようにする必要もあります。
このように3階建ての住宅は階段の位置がとても重要になってくるので、間取りを見る時にまずは階段の位置に注目してみるのが正解なんですね。
3階建ての住宅の場合、何だかシックリ来ないという場合は階段の位置が間違っている場合がほとんどです。
そのため、階段の位置がイマイチか、それとも綺麗に収まっているか確認した上で、LDKや他の部屋をしっかり見ていきたいですね。
水回りの動線
3階建ての場合、水回りの配置場所は3ヶ所考えられます。
「1階」、「2階」、「3階」の3ヶ所です。
よくあるケースとしては、コンパクトな敷地の場合は2階に配置したLDKの広さを確保するため水回りは1階に、少し広さに余裕がある場合は2階に水回りをもってきたり、洗濯機だけ2階に配置するケースもあります。
3階に水回りを配置するケースというのは少ないですが、眺めの良いお風呂を作る場合などは3階に水回りを配置することもあったりします。
このように3階建ての住宅では水回りの配置に3つの選択肢がありますが、よく見かけるのは1階に水回りを配置するというケースです。
その理由としては、部屋ほどの広さが確保できない場所でも水回りであれば配置することができるので、玄関や駐車スペースでどうしても狭くなりがちな1階に水回りが配置しやすいこと、また万が一、水漏れがあっても被害を最小限に食い止める安心感があるからなんですね。
このように1階に水回りを配置した場合、洗濯物をどこで干すのかというのポイントになってきます。
できれば1階に室内干しできるよう少しでもスペースを確保したり乾燥機で乾かすことができればベストですが、難しい場合や乾燥機を使わない場合は2階や3階で洗濯物を干すことになります。
特に3階に干す場合、1階の端の洗面室から階段を登り、さらに家の端にあるバルコニーに洗濯物を干すことになると、家の中で一番長い動線が洗濯動線ということにもなりかねません。
そのような場合、洗面室、バルコニー共に階段の近くに配置するなど、少しでも動線を短縮できる方法が無いかどうかは必ず確認しておきたいですね。
スキップフロアにしてみるのも有り
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一般的な3階建ての場合、1階、2階、3階というように完全に区切られた空間になることがほとんどです。
そのような場合、各フロアでメリハリが付くというメリットが有りますが、独立しすぎて他のフロアの様子が分からないというのがデメリットに感じることもあります。
そんな時に有効活用したいのがスキップフロアです。
例えば、1階、中2階、2階、中3階、3階というように繋げていけば、1つの巨大な空間を作ることも可能になるんですね。
そうなると、3階建てのデメリットに感じていた階段の多さも、緩やかに各フロアを繋ぐための装置に変わってきます。
もちろん、スキップフロアを活かすだけの設計力やコンパクトな3階建てだと階段や吹き抜けにスペースが取られて生活空間が逆に狭くなってしまうこともあるなど超えるハードルも高くなりますが、3階建てでこだわった家を建てるのであればスキップフロアは魅力的な選択肢になってくれますよ。
屋上や広いバルコニーを設けてみる
3階建ての魅力の1つである眺望。
その眺望をさらに楽しむためのスペースが屋上や広いバルコニーです。
自宅にいながら広い空や景色を眺められるスペースがあるというのは、思った以上に心を豊かにしてくれます。
周りに3階建ての住宅が建っている地域であっても屋上であれば周りの家で視界が遮られることはありませんし、斜線制限などで部屋をつくれない場合でもバルコニーであれば作れるケースもよくあります。
3階建ての住宅の場合はメインの生活スペースが2階以上になるため庭のスペースは駐車場として使うだけのことが多いですが、広いバルコニーや屋上を設けることで庭代わりのスペースになるだけでなく、明るく眺めが良くプライベートな屋外空間も作ることができるんですね。
もちろん費用はそれだけ必要となり、使わない屋上ほど無駄なことはありませんが、屋上があれば天気の良い日は毎日のように使うという方はぜひ1度検討してみてくださいね。
階段のデザインや機能にこだわる
3階建ての住宅で毎日使われる階段。
せっかくならそんな階段をもっと魅力的な物にするというのも3階建ての住宅ならではの楽しみ方になります。
一例をあげると、階段を1階から3階まで螺旋階段にして、上の階から1階まで光が入るようにするという方法などがあります。
3階建ての住宅であれば1階は暗くなってしまいがちで、ましてや階段の1階部分はあまり光が入ってこないこともよくあります。
でも、そんな暗く2階に上がる機能だけの階段ではもったいないですよね。
そんな階段をオープンな螺旋階段にすることで家のアイキャッチとするだけでなく、光も1階へ落とすという役割も持った階段に変えることができるようになります。
3階建ての住宅は2階建ての家と比べて階段の存在感が大きいものです。
そんな階段のデザイン性にこだわるのも良いですし、光を落とすなどの機能を追加して階段の魅力を高めるなど、階段のアレンジをより楽しむことができるのも3階建ての住宅ならではと言えますね。
まとめ
今回は3階建ての住宅のメリット、デメリットを見ながら、3階建ての特徴について詳しく見てきました。
3階建ての家はデメリットもありますが、都市部では土地の広さを抑えながら家を建てることができるのはやはり魅力的な選択肢と言えます。
そのため、デメリットをいかに少なくして家を建てられるか。
この部分が3階建ての住宅では重要になってくるんですね。
3階建ての住宅は家の中でも個性が強い住宅です。
ぜひこの個性をうまく活かしながら家づくりをしてくださいね。
では。
建築士が実際に見てきた全国の優良工務店を掲載。
家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】