どうすれば失敗しない二世帯住宅をつくれるでしょうか?
二世帯住宅は、それまで住んでいた環境が違う大人が集まって同じ屋根の下で生活をはじめるので、生活習慣の違いや考え方の違い、気づかいなどでストレスが溜まりやすい環境になります。
何も考えずに二世帯住宅をつくると、ほぼ失敗してしまうと言っても過言ではありません。
それだけ二世帯住宅をつくるのは難しいんですね。
でも安心してください。
しっかりした手順を踏んで二世帯住宅をつくっていけば、同居してからも満足できる二世帯住宅ができあがります。
今回はその方法をご紹介していきます。
それではまず、二世帯住宅のメリットとデメリットから見ていきましょう。
二世帯住宅のメリット
金銭的なメリット
二世帯住宅を建てる場合、「家を建てる時」、「日常の生活費」という2つの金銭的なメリットがあります。
家を建てる時に親世帯、子世帯が共に費用を分担すれば、それぞれの費用の負担を抑えて家を建てる事ができますし、家へ使える予算も多くなります。
特に若くて収入が少ない頃は、住宅ローンでそれほどお金を借りる事ができません。そんな場合に二世帯住宅は特に有効と言えます。
また日々の生活費や光熱費も親世帯、子世帯が同居する事で別々に住むよりも削減する事ができます。
補足として、親の土地に家が建っていて、「家も古くなったので二世帯住宅に建替えてよう」というケースが多くあります。
この場合、都市部や土地の価格がある程度する場合はかなり効果的です。土地代にかかる数千万円の費用が必要ないからです。
一方、土地の価格がそんなにしない田舎の場合、家を取り壊す解体費用や古くなったインフラの交換費用などで、土地を買って家を建てるのとほとんど金額的に差がない場合もあります。
その場合、「土地があるから二世帯にする」という理由で二世帯住宅にした訳ですが、金銭的なメリットはほぼ無くなります。そのため本当に二世帯住宅にするのかどうかよく考えた方が失敗が少なくなります。(住宅会社は二世帯住宅の方が高単価なので、二世帯住宅を勧める傾向があります)
子供の事を見てもらえる
共働きの夫婦の場合、二世帯住宅だと子供を親に預けられるというメリットがあります。これは保育園に預ける手間や費用を考えると、かなり大きなメリットと言えます。
また、子供が幼稚園で発熱した場合なんかでも、お迎えをお願いするなんて事もできます。
子供が小さい場合、子世帯にメリットが大きいですが、親世帯にしても孫が近くにいるのは楽しいものです。
子供の事を見てもらえるのは二世帯住宅ならではのメリットと言えます。
家事を頼める
二世帯住宅の場合、親世帯と子世帯で家事を分担したり、お互い助け合う事ができます。
例えば、掃除なんかもそうですし、留守にする時や急な雨の時でも家に誰かいてくれれば安心です。
お互い助け合いながら効率的に家事をできれば、日々の負担を軽減できます。
二世帯住宅のデメリット
プライバシーの確保が難しい
お互いの生活空間が近くなるので、家族ひとりひとりのプライバシーを確保するのが難しくなってしまいます。
プライバシーを重視する場合は完全に分離した二世帯住宅にするなど、家づくりの段階での配慮が必要となります。
生活習慣の違い
二世帯住宅は、お互い違う生活をしていた人どうしが集まって1つの家で住む事になります。
そのため、どうしても価値観のズレや生活習慣の違いが気になってしまうものです。
今の生活をそのまま新居に持ち込むと間違いなくトラブルの原因となるので、お互い相手に配慮したルールづくりが重要となります。
二世帯住宅は兄弟が集まる家になる
例えば旦那さんの親と二世帯住宅にした場合、旦那さんに兄弟がいれば、建てた二世帯住宅がその兄弟の実家という事になります。
そのため、お盆やお正月には兄弟が集まります。(時には親戚も)
和気あいあいとした家庭なら良いですが、場合によってはこの家族の集まりがかなりのストレスとなる事もあるので、二世帯住宅を建てる前に必ず確認しておきたいポイントです。(この場合はお嫁さんが大変です)
親世帯の介護もいつか必要になる
二世帯住宅を建てたときは元気でも、20年もすれば介護が必要になる可能性が高くなります。
その場合どうするのかをあらかじめ考えておく必要があります。
いつ介護が必要になるかは分からないので詳細まで決める必要はありませんが、家で介護するのか、それとも施設に入る事も視野に入れるのかは確認しておきたいところです。
二世帯住宅を建てる時のポイント
二世帯住宅のメリットとデメリットを最初にあげました。
二世帯住宅はメリットもありますが、デメリットも結構ありますね。
このデメリットをどれだけ小さくできるかが二世帯住宅を建てる時のポイントになります。
デメリットが小さければ、不満を溜めてストレスになったりトラブルになる可能性が少なくなるからです。
それでは、二世帯住宅を建てるときのポイントを見ていきましょう。
なぜ二世帯住宅にするのか明確に
二世帯住宅を建てる場合、なぜ二世帯住宅にするのかを明確にするのが重要です。
例えば、「高齢になった親をほっておけないので、二世帯住宅にする」とか「親が一人になったら、親の面倒を見たいから」など親御さんが気になる場合。
他には「共働きで子供の事を見て欲しい」といった理由や「土地があるから今の家を建替えて二世帯住宅にする」など様々な理由があります。
ここで重要なのが、親世帯と子世帯の距離感です。
誰かの世話や面倒を見るなど相手と近い距離感にないとダメなら、それに合った二世帯住宅に。例えば、親の様子を毎日見たいから二世帯住宅にしたのに、完全に分離した二世帯住宅にしてしまうと相手の様子が分からなくてダメですよね。
反対に、土地があるからという理由だけなら距離感は関係ないので完全分離の二世帯住宅の方が合っていると言えます。
このように、二世帯住宅にする理由を元に二世帯住宅の間取りをつくっていくのがポイントとなります。
お互いへ配慮した間取りにする
二世帯住宅の場合、一番注意したいのが音の問題です。
例えば、1階に親世帯、2階に子世帯という二世帯住宅にしたとします。
その場合の間取りは、親の寝室の上に水まわりやリビングなどを持ってこないのが基本的な考え方となります。
その理由は、若い世代と親の世代とでは生活の時間帯が違うからです。
夜、親世帯が寝室で眠りにつく頃に、仕事で遅く帰ってきた子世帯の家での生活が始まります。
水まわりが寝室の上にあれば、寝ているのにトイレやシャワーの音、キッチンの洗い物の音が聞こえてきますし、リビングでは子供の走り回る音やテレビの音などが寝室に響いてきます。
そうならないように、親世帯の寝室の上には子世帯の寝室。親世帯の水まわりの上には子世帯の水まわりを配置する。
そうすれば同じ用途の部屋が上下に重なっているのが一番気になりません。
また、1階と2階の間に防音材を入れるのも効果はあります。ですが、木造住宅の場合は振動で音が伝わるので完璧な対策とまではいかないので注意が必要です。
ルールを決める
二世帯住宅をつくる場合、設計の段階からお互いのルールづくりをしていくのが二世帯住宅では重要です。
例としていくつか挙げてみましょう。
- 光熱費はお互いどのように負担するのか。メーターは別々にして個別管理にするのか。
- 家や庭の掃除はどうするのか。
- 買い物や食費はどうするのか。
- インターホンは別々にするのかどうか。内線通話はできるようにするのかどうか。
- 食事は一緒にとるのか別々にするのかどうか。
- 洗濯は同じか別か。お互いの洗濯物を取り込んでもOKかどうか。
などなど、生活の中でルールを決めておきたい事はたくさんあります。
ルール決めをする際の分かりやすい方法として、間取りができたら朝起きてから夜寝るまでの行動をお互いにシミュレーションしてみるのが一番簡単です。
そこで出てきた事をお互い話し合えば、ルールづくりをする事ができますし、間取りに問題があれば修正する事ができます。
生活をシミュレーションする時のポイントは、できるだけ細かい事を想定するといいです。
例えばキッチンが共有だとして、忙しくて洗い物が溜まっていた。それを親御さんが洗ってくれた。その時奥さんが気まずいと思うなら「洗い物は子世帯がするからそのまま置いておいて」となりますし、素直にありがとうと思えるなら、忙しい時は洗い物をお願いすることもあるというルールをつくれば良い訳ですね。
ちなみにシミュレーションする時は、平日と休日の2パターンするのがおススメです。
ルールを決める一番の理由は、お互い一緒に住む前に意見をぶつけ合う事ができるからです。これから長い間一緒に住むのに、建前だけの生活はとても大変です。最悪意見が合わないなら、二世帯住宅を止めるという選択肢もあります。(家が建ってからでは遅いですが、間取りの段階だとまだ間に合います)
何より本音を見せないと、その人とは仲良くなれませんよね。
二世帯住宅の間取り
二世帯住宅と一言で言っても、いくつか間取りのパターンがあります。
そのパターンをご紹介していきます。
あなたにあった間取りはどれでしょうか?
全部共通型
水まわり(キッチンやお風呂など)をすべて共有にして、親世帯の部屋だけつくるパターンの二世帯住宅です。
この場合のメリットは、部屋を増やすだけなので二世帯住宅にしてもそんなに大きな金額がかからない事です。
さらには、最初は子世帯で住むけども、いづれ親を引き取るかもしれないという場合でも活躍します。部屋を1つ多くつくっておけば親との同居も可能です。
一方この場合のデメリットは、プライバシーが少ないのでお互いにストレスにならない生活スタイルやルールをしっかり決めておく必要があります。
水まわりの一部を共有する
水まわりの一部を共有にする方法です。
例えばキッチンはそれぞれ別々だけど、お風呂は共有とか、反対にお風呂は別だけどキッチンは共有といった二世帯住宅です。
全て共有だけど、ミニキッチンをどちらかの世帯に配置する場合もこれに当たります。
水まわりというのは生活スタイルがかなり出る場所です。人によっては聖域なので他の人に使われたくないという事もあるでしょう。その場合にこだわりのある場所だけ独立する事ができます。
デメリットは設備が増える分だけ費用が掛かかってしまいます。
玄関のみ共通、もしくは家の中で繋がっている
水まわりやリビングなど全て別々だけど、玄関のみ共有するパターンです。
玄関も他の部屋も別々だけど、家の中の扉を開ければ相手世帯の中へ入れるといった場合もこれに含みます。
ほぼ完全分離の二世帯住宅と同じですが、実はこのような二世帯住宅をつくる家庭はかなり多いです。
理由は、玄関も別々にしたり、家の中で繋がっていない完全二世帯住宅にすると、家の価格が上がってしまうからなんです。
なぜかと言うと、完全分離の二世帯住宅の場合、賃貸としても貸し出せるのでアパートと同じ基準で家を建てる必要があるため、家に必要な費用が増えてしまうからです。
完全分離型
玄関も別、家の中も全部別なのが完全分離型の二世帯住宅です。
プライバシーも確保しつつ、頼りたいときはお互いを頼れるので人気の二世帯住宅です。
完全に分かれているので、どちらか一方の世帯を賃貸に出すという方法も可能なので、将来的にも扱いやすい二世帯住宅と言えます。
デメリットは家の価格です。完全分離型の二世帯住宅にすると共同住宅となって費用がかかってしまいますし、下手をすると家を2軒建てるのと変わらない金額になってしまうので、二世帯にする金銭的メリットがかなり少なくなってしまいます。
まとめ
今回は二世帯住宅についてお送りしました。
二世帯住宅は大人が大勢集まるので意見をまとめるのも大変ですし、住んでからも気遣いであったりと大変なところはありますが、実際に上手くいけば、かなり便利で合理的な生活スタイルだと言えます。
二世帯住宅はいろんな形があって迷ってしまう?
では、私から1つアドバイスを差し上げます。
私がこれまで二世帯住宅を見てきた中で、「奥さんの親御さんと同居するのか」と「旦那さんの親御さんと同居するのか」で、おススメの二世帯住宅は違ってきます。
奥さんの親御さんと同居する場合は共有部分が多い二世帯住宅、旦那さんの親御さんと同居する場合は完全分離や玄関のみ共用の二世帯住宅にしていることが多いです。
やはり奥さんの親御さんと同居の場合は、水まわりなどお互い親子なので歩み寄りやすいので共有で十分という場合がよくあります。
一方、旦那さんの親御さんと同居の場合は奥さんに配慮して気を遣わない二世帯住宅を選ぶという傾向があり、実際に上手くいっているケースが多いです。
最後に、二世帯住宅をつくる時に任せて大丈夫な住宅会社かどうか心配な方はご連絡下さい。
上手く行く二世帯住宅をつくっている会社がやっている、ある特徴をお伝えいたします。
しっかりルールづくりをしつつ、あなたに合う二世帯住宅を選ぶ。
そして便利で楽しい二世帯住宅をつくってくださいね。
では。
家に必要な大きさについては、こちらを参考にしてください。
→家の間取り。4人家族の場合、最低限どれくらいの広さがあれば生活できますか?
あなたが家の間取りにしっくりこないなら、こんなのが原因かもしれません。
家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
建築士が教える今日の問題解決
二世帯住宅を建てるときのポイントって何?
- 二世帯住宅のメリットとデメリットを知る。
- なぜ二世帯住宅にするのか明確に。
- お互いの生活に配慮する。
- 住む前にルールを決める。
- 自分たちに合った二世帯住宅にする。