こんにちは、O型建築士です。
最近は家のインテリアをカフェのようにしてゆっくりお茶をする【家カフェ】が流行っています。好きなインテリアに囲まれながら家でお茶を飲めるのは、カフェ好きの人には最高の贅沢とも言えるかもしれません。
さらには【家カフェ】だけでは満足しきれずに、家にカフェをつくってお店をしたいという人もいるのではないでしょうか?
このように、自分の家にお店がついている家は【店舗併用住宅】と呼ばれます。今回はこの【店舗併用住宅】とはどのような家で、どのようなメリットとデメリットが隠されているのか見てみましょう。
店舗併用住宅とは
家に店舗が付いている【店舗併用住宅】の家は街中でも結構よく見かけます。たとえば、商店街の家を思い出してもらうといいかもしれません。
商店街のお店は、1階が店舗で2、3階は自分たちが住む住宅になっているケースがほとんどで、このように家の一部が店舗になっている住宅のことを【店舗併用住宅】と呼びます。
【店舗併用住宅】という言い方は建築業界では一般的なのですが、あまりなじみの無い言葉かも知れません。一般の方は、家に店舗が付いているので「店舗付住宅」と呼んでいる人も多くいます。
【店舗併用住宅】と言うと、大体は1階の大部分が店舗になっている家の事を言いますが、一部屋だけネイルサロンにするとかパン教室をするというのも厳密に言えば【店舗併用住宅】という事になり、一言で【店舗併用住宅】と言ってもお店の規模は様々です。
店舗併用住宅のメリットとデメリット
うちの会社にも時々【店舗併用住宅】の依頼がきます。
お店の中身は美容室とカフェ、パン屋といったお店が多いです。美容室の場合は、今はお店を借りているけど家を建ててお店と家を一緒にしたいというケースがほとんどです。一方、カフェをしたいという人は初めてお店をするという人が多い気がします。
それでは、【店舗併用住宅】のメリットを美容室を例に見てみましょう。
店舗併用住宅のメリット
【店舗併用住宅】の一番のメリットは家賃です。例えば美容室の家賃が月々20万円。家の家賃が月々10万円とします。美容室と家を合わせて合計30万円の家賃を月々支払っている事になります。そこで、土地2800万円、家4000万円の合計7000万円弱で美容室兼自宅を建てたとします。
そうすると月々の支払いは35年ローンで20万円くらいです。家賃と比べると月々の支払いを2/3にすることができます。
「家賃がもったいないから家を建てる」という人は結構いるかもしれませんし、住宅の営業マンはほぼ間違いなく「賃貸だと家賃がもったいないですよ」と言います。
ところが、「家賃がもったいないから家を建てる」ことでメリットのある人とは限られた条件の人だけしかいません。その条件にあてはまるひとつのケースが、【店舗併用住宅】の家になります。
金銭面以外にメリットをあげると、家と店舗が一緒なので通勤に時間とお金がかからないですし、近所に必要とされているお店であれば、近所の人から歓迎されることもあります。特にカフェなどの匂いがあまり出ない飲食店は喜ばれます。
店舗併用住宅のデメリット
【店舗併用住宅】の一番のデメリットは、【店舗併用住宅】を建てる場所を家を優先するのか店を優先するのか、どちらかを選ぶ必要があることです。
店舗が成功するかどうかは立地が大きく影響してきます。腕や味が良ければ裏通りや住宅地でも何とかなりますが、大通り沿いや駅の近くなど人が多く通って目につく場所の方が圧倒的に有利です。実際に、店舗の立地を優先する人がほとんどです。(反対に趣味で店をする場合は住環境を重視する傾向があります。)
店舗に有利な場所は住宅にあまり向かない場合が多く、大通り沿いなど人通りの多いところは、音や防犯面など住宅地としての環境はどうしても落ちてしまいます。
他のデメリットをあげると、お店が上手く行かなかった場合でも移転するのは難しい事があげられます。最悪の場合はお店を畳んで、店舗部分をテナントとして貸し出すなんて事も有り得ます。
さらに住宅ローンを組むのなら、店舗部分を家全体の床面積の1/2未満にしないといけません。(金融機関によります)。なぜなら、1/2を超えた場合、住宅ローンと事業ローンの併用となり金利が上がってしまう事になるからです。それだけ住宅ローンの金利が優遇されているからです。そのため、住宅ローンを使う場合は、店の大きさに注意が必要です。
【店舗併用住宅】のメリットとデメリットの次は、【店舗併用住宅】を実際につくり始める時に、必ず覚えておいて欲しい事をお伝えします。
何も知らずに【店舗併用住宅】を建てるのは、一言で言うと「ギャンブル」です。
これからつくるお店をその会社に依頼して大丈夫?
【店舗併用住宅】をつくる場合、「家を建てたいなぁ」と思った住宅会社に依頼してはいけません。住宅と店舗は全くの別物だからです。
住宅会社とは、基本的に家は得意ですが、店舗も得意かと言うとそうではありません。中には家以外つくった事が無い会社もあります。
まぁ、普通は自分の会社の店舗やショールームは自社で設計して工事をするので、全く店舗をした事がない住宅会社は少ないかもしれませんが、同じ店舗でも「ショールーム」と「美容室」で必要な知識と経験は別ものですし、「カフェ」などの飲食店に必要な知識も住宅とは全く別のものになります。
要は、「住宅の設計」と「店舗の設計」は全くの別物であり、「店舗の設計」でも業種によって全く違う知識と経験が必要になってくる訳です。
そのため、気に入った住宅会社に得意な「住宅」を依頼するのであれば何の問題もありませんが、その住宅会社が「店舗」も得意としているのか、もしくは全くつくった事がないのか、それとも何件かやった事があるので出来ないことは無い程度なのかで、店舗の出来具合は全然違うものになってきます。
店舗併用住宅を依頼するなら
【店舗併用住宅】を依頼する場合、一番の理想は何件も店舗をつくった事がある会社に依頼する事です。ただ、こういう会社は大手ハウスメーカーか【店舗併用住宅】をメインにしている会社以外あまりありません。ハウスメーカーは年間で建てる棟数も多く、【店舗併用住宅】の依頼件数も必然的に多くなるので、いろんな店舗の実績をつくる事ができるからです。
でも、私のブログの読者の皆さんはハウスメーカーで無いところで建てたいという人が多くいらっしゃります。
そんな方は、建てたい会社の店舗実績を必ず確認してください。そして最低でもできた写真を見せてもらうようにしてください。そして、可能なら実際の店舗を見せてもらい、実際に建てた人の感想を聞かせてもらえると尚良いです。
また、店舗実績は全くの別業種ではなく、似たような業種のお店を見せてもらうようにしてください。全く別の業種だとほとんど参考にならないからです。
店舗の業種の違い
店舗の業種にとっても、必要な席の幅や配置、調理する場所の確保、必要なデザインは全く違ってきます。
細かい話になってきますが、カフェとスイーツショップでは席の配置が違ってきます。カフェは皆さんコーヒーを飲みにきているのでまわりにコーヒーの香りが漂っても問題ありませんが、スイーツショップはスイーツの販売がメインで、スイーツを店で食べるのではなく持ち帰る人もいるため、コーヒーの香りがまわりに広がらないように席を配置しなくてはいけません。
このように、似ている業種でも、必要な配慮が違ってきます。業種が違ってくるなら尚更です。そのため、同業種の設計施工経験は必須と言えます。
さらには、どれだけ店舗実績がある会社でも言える事ですが、担当者は必ず店舗設計の経験者をつけてもらうようにしてください。(もしくは店舗設計者とタッグを組むようにしてもらってください)。
いくら会社に実績があっても、担当者に経験がなければ意味が無いからです。
店舗併用住宅を建てる時の奥の手
店舗の実績は全くないけども、家を建てたい会社があるという場合もあるかと思います。
そのような場合は諦めるしかないのかと言うと、そうでもありません。家とスケルトン状態の店舗、いわゆる箱物は住宅会社にお願いして、店舗の内装は店舗設計をしている会社に依頼するという方法もあります。
そのため、どうしても建てたい住宅会社がある場合は、店舗の内装を店舗設計の会社に依頼するのが可能か聞いてみるのも1つの手です。動きの良い住宅会社であれば、店舗設計の会社との連携もそつ無くこなしてくれるはずです。
デメリットとしては、費用が高くなるのと、打合せの手間が増えてしまう事でしょうか。
店舗のデザインにこだわるなら、このように住宅は気に入った住宅会社、店舗部分は店舗が得意な会社に依頼するという方法もおススメです。
まとめ
家の一部が店舗になっている【店舗併用住宅】。家とお店をまとめる事で、月々の家賃を抑えられるというのが一番のメリットになります。
もちろん、お店は本業が順調である事が一番で、「家賃が安くなるから」という理由だけで【店舗併用住宅】を建てるのは褒められる事ではありませんが、月々の固定費を下げてお店ができるというのは大きいです。それだけ損益分岐点を下げる事ができるからです。
損益分岐点が低い上に、腕や味が良ければお店が成功する確率はかなり高いと言えます。最悪のケースはお店を初めてやるけども、立地の悪い場所に【店舗併用住宅】を建ててしまった場合です。
そのため、これから【店舗併用住宅】を建てたいと思う場合、お店をやるのに相応しい土地を見つける事ができるかどうが【店舗併用住宅】で成功するのに一番大事なことになります。腕を上げたり味を良くする事は出来ますが、店の場所は変えることができないからですね。
【店舗併用住宅】と一言で言っても、店舗の内容は幅広いですし、依頼する会社を選ぶのは難しいものです。
まさに「餅は餅屋」ということわざが店舗の設計に当てはまります。
住宅会社に店舗併用住宅を依頼しに行って「うちは店舗がつくれません」などと言う事はありません。そして、設計担当者が四苦八苦しながら何とか店を形にしていくのが目に浮かびます。そして、それが果たして良い店舗かどうかは出来上がるまで分かりません。これを一言で表すとすれば「ギャンブル」です。
でも、今回の内容を頭に入れておけば、店舗併用住宅をつくるのに何も問題はありません。あとは、楽しい家とお気に入りの店舗が出来上がるのを待つだけですね。
最後にひとつだけ。住宅会社の営業マンは家のエキスパートですが、お店のエキスパートではありません。事業計画はあくまでご自身で立てる必要がありますので、そこはご注意を。
では。
家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
建築士が教える今日の問題解決
店舗併用住宅って何?
- 家の一部が店舗になっている家のことを店舗併用住宅と言う。
- 家に店舗があるので、店舗の賃料を抑えることができる。
- 家、店舗どちらかを優先した立地となる。
- 店舗併用住宅を建てるなら、お店をやるのに相応しい土地を見つけるのが重要。
店舗併用住宅を依頼する時の注意点とは?
- 同業種の店舗実績がある会社に依頼する。
- 店舗設計の経験者に担当してもらう。
- 店舗部分は店舗設計の会社に依頼するという方法もあります。(おススメです)