家の見た目や外観が気になる場合、ついつい外壁の色や形に目が行ってしまうもの。
家の外観を考える場合、もちろん外壁をどうするかや家の形というのも大切な要素となりますが、それ以外に少し意識するだけで家の見た目がグッと引き締まる場所があります。
それは「軒裏」です。
軒裏を意識することは日頃あまり無いかもしれませんが、それだけ印象に残るような軒裏を作っている家が少ないことの裏返しと言えますし、軒裏を上手く作るだけで家の印象は大きく変わってきます。
では、軒裏を意識するだけで外観はどれくらい変わるのでしょうか?
今回は軒裏について詳しく見て行きたいと思います。
軒裏ってどこ?
それではまず、軒裏とはどの部分を言うか見ていきましょう。
軒裏とは、屋根が外壁から張り出している軒の裏部分になります。
屋根で言うとこの部分ですね。
軒裏の他にも軒天と呼ばれることがあります。
また、軒裏は屋根以外にも玄関ポーチの庇部分であったり、バルコニーの下側、インナーバルコニーの屋根部分など、家の中で意外と多く出てきます。
一般的には家の外にある天井部分をまとめて軒裏と呼んでいるんですね。
そんな軒裏ですが、日頃はあまり意識することは無くても実際には意外とよく見えている場所の1つとなります。
その理由は、家は下から見上げることが多いから。
道路から家を見た時は家の真正面が見えるのではなく下から家を見ることがほとんどですし、家に出入りする時も家の下側から家を見上げることになります。
このように、実は思っている以上に軒裏というのはよく見えているんですね。
そしてこの軒裏に一手間加えるかどうか。
これだけで家の雰囲気というのは大きく変わってきます。
そのため、デザインも意識している建築士にとっては、軒裏は結構重要なチェックポイントであったりまします。
たとえば私の建築士仲間がよく使う言葉が、
「軒裏はファッションでいうと靴のような物」。
オシャレは足元からと言うように、靴はパッと見た時に目立つ物ではありませんが、しっかり磨かれた靴を履いている人はオシャレに見える反面、よれよれの靴を履いていてはどんなに服がオシャレでも残念に見えてしまいます。
軒裏も同じような物で、軒裏はパッと見ではそこまで目立たないながらも、家全体の雰囲気を引き締める役割を持っているんですね。
ちなみに一般的に多い軒裏はどんな感じかというと、ボードの上に白い塗装がされているケースがかなり多くなります。
これは白だと癖があまり無いのでどんな家にも合わせやすいため白い軒裏にしていることが多いのですが、ただ何も考えずに軒裏に白を使うというのはやはりもったいない物。
家によって軒裏が目立つ家、目立たない家もありますし、屋根の色も形も様々です。
そのため、家に合わせて軒天を選ぶと言うのが正解になってくるんですね。
軒裏のデザイン
それでは次に、軒裏のデザインにはどんな物があるのか見て行きましょう。
軒裏のデザインのポイントは、素材、色、形の3つになります。
軒裏に木を貼る
軒裏に木を貼る。
これは軒裏デザインの王道とも言える軒裏の使い方になります。
軒裏に木を使うことで品が出ると共に、外観のバランスがとてもよくなるんですね。
また、軒裏なので雨や紫外線に当たることが少なくなるため、外壁やデッキで使う木よりも劣化が抑えられて外壁よりも木を使いやすいという特徴もあります。
(ただ、木材なので経年変化で色は変化していくため、色味が気になるなら定期的なメンテナンスとして塗装はしておきたいですね)
コストの面では普通の軒裏よりコストは上がってしまいますが、木を使った軒裏はどんな家にも合わせやすく、高級感を出しつつも柔らかみのある家にすることができます。
その他、軒裏に木を使った場合、部屋の天井にも木を使って素材を合わせることで、軒下空間と繋がりを出すのも効果的です。
こんな感じですね。
Photo:http://www.harada-kensetsu.com/
外と中が繋がっているように見えて空間に広がりが出るようになる他にも、外と中で天井の素材を揃えた時の見た目の綺麗さというのは抜群です。
リビングなど広い空間に木目の天井を使うと予算はそれなりに必要となってしまいますが、広い軒裏があるなら一度検討して見たいですね。
また、メンテナンス性を考えて、軒裏に本物の木ではなく「木目調」の物を使うと言う方法もあります。
メリットとしては、価格も抑えつつ雰囲気を出せるということ。
少し前までは質感もイマイチでしたが、技術の進歩で木目調の物でもかなり本物の木に近い質感を出せるようになったため、最近ではよく見かけるようになりました。
このような木目調の軒裏にする場合の注意点としては、やはり本物の木よりも質感が少し落ちてしまうこと、また物によって質感が大きく違ってくるので、サンプルや実例を見て安っぽく見えないかどうかは必ず確認しておきたいですね。
軒裏を塗装する
軒裏で一番多い仕上げ方が、軒裏を塗装するというケースです。
実際に白く見える軒裏も、仕上げとして白い塗装がされているんですね。
また、塗装の色も白だけでなく、実際にはいろんな色を使うことが可能となります。
たとえば、屋根に合わせて軒裏も同じ色で仕上げるというのも有りです。
屋根に濃いめの色を使って軒裏も色を合わせて落ち着いた雰囲気にするなど、アレンジの方法は様々。
反対に外壁が白であれば同じ色合いの白い塗装をするなど、屋根や外壁に合わせてまずは軒裏をどれだけ自然に見えるようにするかが基本となります。
その一方、軒裏を敢えて目立たせると言うのも1つの方法です。
たとえば家のテーマカラーが有るならそれに合わせて軒裏に色を使うということも。
色を自由に選べるというのは塗装ならではなので、家の一部の雰囲気を変えるなど遊び心で使って見るのもいいですね。
ちなみに、住宅会社や工務店では軒裏は白が当たり前で色の変更も聞かれないというケースも有るので、「軒裏にも手を加えてみたいかも」という場合は早い段階で確認しておくと安心です。
軒裏をそのまま見せる
Photo:http://www.ytake.net/kurume2.html
軒裏に木を使う場合や塗装をする場合は軒天井を貼って仕上げているのですが、軒天井を貼らずに軒裏をそのまま見せるという方法もあります。
このような方法はお寺や神社などでよく見かけるように、昔は軒裏を見せることで木造建築ならではの雰囲気を出していたんですね。
そして、このような方法はもちろん現代の住宅にもよく合います。
家に木組みが醸し出す美しさがプラスされることで、日本ならではの独特の雰囲気を持った家にすることができるんですね。
このように軒裏をそのまま見せるというのはとても効果的な方法ですが、その一方で設計力や施工力も問われるようになります。
綺麗に木組みを見せるためのデザインや、木の加工、施工力など、いろんな面で腕が必要となるんですね。
その分、綺麗に作った時の美しさは格別なので、木のスタイルが好きな方はぜひチャレンジしてみてくださいね。
外壁と同じ仕上げにする
軒裏に木を使ったり塗装する以外にも、外壁と同じ物を使うという方法もあります。
たとえば外壁を吹き付け仕上げにした場合、軒裏にもそのまま吹き付けを使うということもできるんですね。
その場合、軒裏は外壁と同じ色見、仕上げになるのでより自然な仕上がり方となります。
木を使う場合は見た目のアクセントになっていましたが、外壁と同じ仕上げにすることで目立たないながらも高級感溢れる落ち着いた雰囲気にすることができます。
軒裏にも使える外壁の仕上げという条件は付きますが、その分の価値は十分にある軒裏の仕上げとなります。
軒裏が無いケースもある
家を建てる場合、どの家にも軒裏があると言う訳ではなく、軒があまり無いケースや軒が無い家というのも存在します。
たとえば、都市部の住宅地であれば地価が高く敷地いっぱいに家を建てることが多いので、軒を出すスペースというのがそれ程取れないことがよくあるんですね。
また、モダンな印象の家などはデザインの関係上、あえて軒を出さない家という場合もあります。
軒裏に手を加える場合は、やはり軒はある程度出ていないと効果は薄くなってしまいますし、逆に少しだけ手を加えると変に目についてしまいバランスが崩れてしまうこともあります。
そのため、軒裏に手を加える場合はできるだけ軒のある家にする。
そうすることでより大きな効果を発揮してくれるんですね。
(見た目だけでなく、軒が有ることで雨や紫外線から外壁を守ってくれるので、メンテナンス性や耐久性を考えると軒はしっかり作った方が家は長持ちします)
まとめ
今回は軒裏について詳しく見てきました。
日頃生活している分には軒裏に注目することはあまり無いかもしれませんが、実は軒裏というのは家の印象を大きく左右するものなんですね。
(軒裏が目立たないというのは、それだけ軒裏を上手く作っている家が少ないという事情もあります)
また、軒裏は家全体のバランスを取ってくれる場所なので、軒裏を上手く作っている家は家全体が引き締まって見えるようになります。
家の外観が気になる場合は、軒裏についても意識して見る。
それだけで家の印象は大きく変わってきます。
ぜひ、軒裏も意識しつつ、トータルのバランスが取れた素敵な見た目の家を作ってくださいね。
では。
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