「白い家の記事を読ませていただきました。私の家では外壁を黒くした家を検討しているのですが、黒い外壁の家について記事にしてもらえないでしょうか?」
読者の方からこのようなリクエストをもらいました。
外壁が黒い家というのは10数年ほど前から人気の家で、私(建築士)も1年のうち2〜3割くらいは外観で黒をベースにした家を建てています。
では、黒い外壁の家にする場合はどのような点を押さえておけばオシャレな家になるのでしょうか?
また外壁を黒くする場合、どんな注意点があるのでしょうか?
今回はそんな黒い外壁にした時のメリット、デメリットを見ながら、黒い外壁の家を綺麗に見せるポイントについて見ていきたいと思います。
家の外観が気になる方はぜひご覧ください。
黒い外壁の家のメリット
それではまず、外壁に黒を使った時のメリットについて見ていきましょう。
黒い外壁の家にした時のメリットとしては、モダンで落ち着いた印象の外観になるということが一番に挙げられます。
たとえば黒い外壁の家は、素材の使い方や家の形によってクールな都会的な印象の家にすることもできますし、落ち着いて品のある家にすることもできます。
黒はもともと洗練された高級感や重厚感のある色がある色ですが、黒を家の外壁に使うことで家の個性をいろいろ引き出すことができるんですね。
また、黒い外壁を単体で使うだけでなく、他の色や素材と組み合わせることでいろんな表情を作れるのも外壁に黒を使う時の魅力の1つです。
たとえば黒と正反対の白色を組み合わせることでそれぞれの色をより際立たせることもできます。
これはモダンな家にする時に特に効果的で、白と黒の対比がよりモダンな印象を与えてくれるんですね。
少しモダンな印象を減らしてやさしい印象にしたい場合は真っ白ではなくすこしグレーかかった色を入れるなど、合わせる色味次第で表情はかなり変わってきます。
その他、黒と木材や木目調の色を合わせても綺麗な外観の家にすることができます。
黒は少し個性的で存在感の強い色になりますが、木目がプラスされることで柔らかい印象の家にすることができるんですね。
そのため、落ち着いた印象の家にする場合は黒の外壁に木目を合わせるのも効果的です。
木目の使い方次第でモダンを目指すか、それとも和モダンを目指すというように変化をつけられるのもいいですね。
Photo:https://www.2g-design.com/works/iwatanoie.html
その一方で、黒を外壁に使うと重たそうな印象の家になってしまうのを心配される方もいらっしゃいます。
確かに黒は重たそうな印象がありますよね。
実は黒い色は白と違って後退色と呼ばれる色で、家全体のシルエットが引き締まって見えやすいという効果があり、黒い外壁を使っても重たい印象になるというケースは少ないのも特徴の1つです。
たとえば家の形がボテっとしている場合は白い外壁にするよりも黒い外壁の家にした方が家の圧迫感を減らすこともできるんですね。
(ただ、黒くて高さも幅もある大きな家だと威圧感があるように見えてしまうので、家が横に広い場合は高さを抑える、高さがある場合は狭小地など幅が狭い場合に限る、黒以外にアクセントの色も使うなど、黒は目立つ分だけ周りと調和するような家にすることも大切な要素となります)
ちなみに、家の外壁の色で迷った場合は白い外壁ベースの外観と黒ベースの外観を作ってもらって見比べて見るのも、かなり違いがあって面白いですよ。
黒い外壁のデメリット
それでは次に、黒い外壁にした時のデメリットについて見てみましょう。
外壁に黒を使った場合、一番のデメリットは外壁が熱くなりやすいということです。
黒は熱を吸収しやすいため、夏場は外壁が熱くなってしまうんですね。
そのため、小さいお子さんがいる場合はあまり外壁に触らせないよう注意が必要です。
(特にガルバリウムなど金属製の外壁材は熱を持ちやすいです)
ちなみに白い外壁と黒い外壁を比べた場合、やはり黒い外壁の家の方が家の中に熱が伝わりやすくなります。
多くの家では外壁通気工法と呼ばれる方法が採用されていて屋内と外壁の間には通気層があり、外壁の熱が直接家の中に入ってくるのを減らしていますが、黒い外壁の方がどうしても熱は伝わりやすくなります。
そのため黒い外壁を選ぶ場合は、断熱性能の高い家を建てる方がベターと言えます。
その他に外壁を黒にした時のデメリットとしては、白い外壁よりも劣化がしやすいということが挙げられます。
外壁は日光や雨風にさらされる部分なんので家の中でも劣化しやすい場所となりますが、外壁を黒にすることで紫外線の影響も受けやすくなり、劣化しやすくなってしまうんですね。
そのため、綺麗な外観を保つ場合はメンテナンスの周期も少し早めにしたり、耐久性が高い外壁材を選ぶなどの対策が効果的となります。
→家のメンテナンス費用はどれくらい必要で、修繕するタイミングはいつ?
また、黒い外壁の場合は白っぽい色の汚れは目立つという特徴もあります。
たとえば鳥のフンが付けば目立ちますし、土埃など色がついているものが外壁に付くと色褪せて見えることも。
白い家では雨だれなど黒い汚れが目立ちましたが、黒い外壁の家では反対なってくるんですね。
→おしゃれな白い家にするにはどうすればいい?外観と内装を白にする時のポイント
何を使って黒い外壁にする?
それでは実際に黒い外壁にするにはどのような外壁材を選べばいいのでしょうか?
次に素材別に雰囲気の違いやポイントについて見ていきましょう。
ガルバリウム鋼板
Photo:https://kabesite.com/contest/2017/index.html
黒い外壁にする時に一番よく使われるのがガルバリウム鋼板です。
ガルバリウム鋼板とは金属製の外壁材で、モダンな印象となる黒い外壁との相性がよく、また価格や耐久性とのバランスも良いので黒い外壁にする場合はポピュラーな素材なんですね。
色味も比較的濃いものが多いので、より引き締まった外観の家になるというのも特徴の1つです。
このように黒い外壁にする場合、まずはガルバリウム鋼板が選択肢に入ってきます。
(ガルバリウム鋼板の表面は金属が凸凹に波を打った感じで少しツヤのある物が多いです)
一方、金属製の外壁材となるため夏場は表面が熱くなりやすく、自転車置き場など日常使いする場所は少し外壁から離れた位置に配置したり日当たりの良い場所はできるだけ人が触れにくいようにするなど、外構計画も外壁が熱くなることを想定しておくと安心です。
ちなみにガルバリウム鋼板を使う場合は金属を貼り合わせていくことになるので、外壁の一部に継ぎ目が出てくるケースもあります。
この部分ですね。
細かい点になりますが、人によってはこの部分が気になったり、できれば継ぎ目がない方が好きという方もいらっしゃいます。
このように継ぎ目が気になる場合は継ぎ目が出ない大判のガルバリウムを使うことで継ぎ目を無くすこともできるので、こだわる場合ははじめに継ぎ目のない物を指定しておきたいですね。
(家ができてから初めて継ぎ目に気づいたというケースもよくあります)
塗装(吹付)
Photo:https://irzukuri.muragon.com/entry/1.html
外壁を塗装するというのも黒い外壁にする時によく使われる方法です。
塗装する場合、樹脂製の物から自然素材系の物まで様々な物がありますが、樹脂系の方が濃い色にすることが可能で自然素材系の方が黒といってもグレーに近い色になる傾向があります。(自然素材なので顔料を入れても色に限界があるため)
また、仕上げ方も様々で、仕上げや色味の組み合わせが一番多いのが塗装で黒くするという方法になります。
このように外壁を塗装する場合の特徴としては、色の種類が豊富で表面の仕上げ次第で家の見え方がかなり変わるということです。
たとえば表面の仕上げを抑えたスッキリとした外観というのは他の素材では難しく、塗装仕上げならではの方法となります。
(そのため、塗装仕上げというのはデザインにこだわる建築家も好んで使っています)
また、塗装の場合は真っ黒という感じよりも少し淡い感じの黒の方が得意になので、同じ黒でも柔らかい印象の家になりやすいという特徴もあります。
一方、塗装の場合で注意しておきたいのが時間が経つと白っぽくなりやすいことと、仕上げによってはクラックと呼ばれる小さなひび割れが出てきてしまうということです。
たとえば塗装が白っぽくなることはチョーキング現象と呼ばれ、よく看板などが劣化すると白っぽく見えてしまいますが、それと同じことが外壁でも起こります。
簡単に言うと塗装が劣化したために白っぽくなってしまい、外壁が黒色だとより目立ってしまうんですね。
そのため、塗装で外壁を黒色にする場合は少し金額が高くなっても劣化しにくい物を使うのが必須となってきます。
また、クラックも入ってしまうので定期的なメンテナンスは必ずしておきたいですね。
黒に塗装すると綺麗だけども、それだけ手間も必要になるという点で悩ましい外壁材と言えます。
サイディング(窯業サイディング)
サイディングも黒い外壁にする場合によく使われる素材です。
サイディングとはセメントを原料として工場生産された外壁材のことで日本ではかなり多くの家でサイディングが使われており、家の周りを見渡せば何件もの家で使われている素材です。
そんなサイディングの特徴としては色や形の種類が豊富で、黒い外壁にする時も気に入った色味や柄の物を選ぶことができるというのが最大の魅力となります。
また、木目調の外壁などもありアクセントでも使われることが多い素材です。
一方、サイディングのデメリットを挙げるとすると、工場生産されたサイディングをつなぎ合わせていくため、サイディングとサイディングを繋いでいる場所は目地と呼ばれる継ぎ目が出てきます。
そしてこの継ぎ目というのがサイディングの見た目の一番のウィークポイントとなります。
先ほどご紹介したガルバリウム鋼板でも目地が出てきますがサイディングの方が目地が目立ちやすいんですね。
そのため、目地がどれだけ見えるかどうかは確認しておきたいポイントと言えます。
木材(焼き杉)
Photo:https://ameblo.jp/megg-339/image-12255786860-13888352918.html
外壁に黒を使う場合、木材(焼き杉)を使うという方法もあります。
焼き杉とは杉を焼いて表面を炭化させた板のことで、杉板の表面を炭化させることで耐久性が大幅にアップするため、焼き杉は昔から西日本を中心に使われている外壁材です。
(昔ながらの家が多い街では焼き杉で作られた街並みも見られます)
そして焼き杉は杉板を焼いているので木の色が黒くなり、黒い外壁にする場合は焼き杉で黒い家にするなんてこともできるんですね。
見た目も自然の風合いなので、黒い外観だけども優しい印象の家にすることができます。
ちなみに木を外壁に使うとすぐ腐ってしまいそうなイメージを持ってしまうこともありますが、焼き杉は炭化されているため木を腐らせる腐朽菌が繁殖するのに必要な栄養がないため、外壁に使っても腐らず長持ちさせることができます。
このように、杉板というのは焼くことですぐれた性能を発揮してくれるんですね。
→木造住宅ってどんなメリットがあるの?木造住宅の実際のところを解説します
一方、焼き杉は工業製品ではないため一定の防火性能が必要な地域では認定が取れず使うのが難しいこと、また表面にススが付くので手でさわると黒くなること、会社や工務店によっては焼き杉を扱っていない所も有ります。
このように使える場所に多少制限は出てしまいますが、環境にも優しい素材なので個性的な黒い外壁の家にする場合は焼き杉を使うのも面白いですね。
黒い外壁にする時のポイント
それでは最後に、黒い外壁にする時のポイントについても見ておきましょう。
まず、黒い外壁にした時の見え方の基本として、濃い色にした方が家が引き締まって見えるという傾向があります。
(濃い黒と薄い黒の外観を見比べた場合、濃い色の方がキレイに見えるというケースが多いです)
一方、濃い色にすると汚れがついた時や劣化した時に色落ちが目立つようになります。
そのため、メンテナンス性をとるか、それとも色の深み、どちらの優先順位が高いかというのが色味を選ぶ際の最初のポイントとなってきます。
また、黒を外壁に使う場合はできるだけ艶(ツヤ)は抑えた方が綺麗に見えます。
艶が濃くなるほど色に品が無くなっていってしまうため、艶をつける場合でも3分艶などできるだけ抑えた方が無難なんですね。
特にリフォームで黒く塗装する場合は艶はあまり出さないのが基本となります。
その他、外壁を黒くした場合でもサッシ枠や換気口のフードなど他にも色味があるもの見えてきます。
そして、黒い外壁にする場合はこのようなサッシ枠やフードも外観を整えるための大切な要素となります。
基本的にはフード部分は目立たせたくないので外壁に近く目立たない色に、サッシは目立たせる場合はシルバーや木製サッシなど外壁と違った色に、目立たせたくない場合は黒い色にしてバランスを取るのがポイントです。
たとえば下の家であればフードは目立たないように外壁に合わせた黒に、窓は少ししかないのでアクセントとするためシルバー系の色を使っているのが分かりますね。
このように外壁を黒にした場合は外壁の色についつい目が行ってしまいますが、このような細部を整えることでより綺麗に見える家にすることができるんですね。
まとめ
今回は家の外壁を黒い色にする時のポイントについて詳しく見てきました。
黒というのは個性的な色ですが、黒を外壁に使うことで家の見た目というのも普通の家とはちょっと違った家にすることができるんですね。
また、黒い外壁というのは素材によっても見え方がかなり違う家になってきますし、外壁以外の部分もいかに整えるかでも家の外観はかなり違ってきます。
黒というのは個性的で目立つ分だけ、どれだけ街中にうまく溶け込めるかも大事な要素です。
今回の内容を頭に入れておきながら、ただ外壁の色が黒いだけの家にするのではなく、綺麗に見えて品のある黒い外観の家を建ててくださいね。
では。
外観についてはこちらも参考にしてください。
→暮らしやすい玄関ポーチのつくり方。家の外観も高級感が出ます。
→おしゃれな白い家にするにはどうすればいい?外観と内装を白にする時のポイント
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