家づくりをしていると、「内装打合せ」というの呼び名の打合せがあります。
その「内装打合せ」の時に壁の色などを決めるのですが、実は「内装打合せ」で壁の色を決めるだけではとてももったいないんです。
内装材には様々な種類がある上に、それぞれ特徴が違うので、何を使うかで家の雰囲気だけでなく性能に影響が出てくることもあるんですね。
「最初から何も知らずに色だけをきめた場合」と「いろんな材料がある事を知った上で色を決めた場合」では、家が出来てからの満足度は大きく違ってきます。
場合によっては家を建築中や家ができてから他の素材があることを知り後悔したという声や、家の契約をしてから色んな素材があることを知ったけども、その会社では対応していなくて後悔したという声もよく聞きます。
内装は家づくりの終盤に決めることですが、家づくりの初めの段階で知っているかどうかで家づくりを後悔するかどうかがかなり変わってくるんですね。
そこで今回は、家の内装材で一番使う壁紙の選び方を中心に、塗り壁などその他の素材をご紹介したいと思います。
それではどうぞご覧ください。
壁紙
ビニールクロス
日本の住宅で一番使われている壁紙がビニールクロスです。
一般的にクロスと言えばビニールクロスのことを指していることがほとんどで、ビニールクロスはそれだけ多く使われている壁紙なんですね。
それではまず、ビニールクロスのメリットを見てみましょう。
ビニールクロスのメリット
ビニールクロスのメリットを挙げるとすると、安価で破れにくく、施工性も高いことが挙げられます。
安価なので家の価格を抑えて提供することができるので、ローコスト住宅の壁紙ではほとんどビニールクロスが使われていますし、ある程度の価格がする住宅でも壁紙がビニールクロスであることも多いです。
ビニールクロスを施工性の面で見てみると、壁紙を施工する際は、下地となるボードの継ぎ目をキレイにするパテ処理というもの行う必要があるのですが、この下地処理をしておかないとクロスがキレイに貼れなかったり、あとで不陸が起こる原因になってしまいます。
ここが工務店や住宅会社の悩みとなってしまうのですが、ビニールクロスはクロス自体にある程度の厚みを持たせることができるので、下地処理が多少簡略化しても対応できることが多いですし、家が完成してからも柱や梁等の構造材が動いても壁紙が破れにくいので、施工しやすく後でトラブルになる可能性も低くなります。
どちらかというと施工者にとっても大きなメリットがあるのも、ビニールクロスが広く使われている要因の1つなんですね。
また、素材自体がビニールなので水に強い壁紙が多く、汚れにも強いという特徴があります。
ビニールクロスのデメリット
一方、ビニールクロスのデメリットを挙げると、名前の通り素材自体がビニールのため通気性はないので、適切な換気を行わないと結露やカビの原因となる場合があったり、燃焼時にダイオキシンといった有毒ガスが発生するのでもしもの火災の際は危険であったりと、化学物質がメインであるための弊害もあります。
また、壁紙を貼る時の糊も含めてニオイがきつい家になることもあるので注意が必要です。
化学物質やニオイに敏感な方にとっては、できればビニールクロス以外の材料も検討したいですね。
エコクロス
Photo:http://www.toli.co.jp/digital_catalog/collection2016-2019/index.html
壁紙にはビニールクロスの他に「エコクロス」という壁紙もあります。
エコクロスと言う名前はあまり聞き慣れないかもしれませんが、エコクロスとは天然素材を原料にした壁紙のことを言います。
壁紙の原料に珪藻土(けいそうど)や竹パルプ、コットン、和紙などの天然素材を使用しているのがエコクロスなんですね。
では、エコクロスのメリットについて見てみましょう。
エコクロスのメリット
エコクロスのメリットを挙げると、例えば珪藻土が原料のエコクロスなら消臭効果、コットンが原料の場合は通気性が向上するなど天然素材が持つ特性を持った壁紙になるという点です。
家の中でも壁の面積はかなり広いので、プラスαの効果があるのは大きいですね。
また、肌触りもビニールクロスよりも良い物が多いです。
その他では、エコクロスを使う場合は壁紙を貼る時の糊も化学物質ではなく天然素材がメインになっていることが多いので、家が完成した時のニオイはビニールクロスと新建材ばかりを使った家と比べるとかなり違ってくることも多いです。
エコクロスのデメリット
一方、エコクロスのデメリットを挙げると、汚れや傷がつきやすいことが挙げられます。
天然素材を原料に使っているので、クロス自体に強度を持たせたり、防汚機能をつけるのが難しいんですね。
そのため壁に何かぶつかったり、手で触れることが多い部分は汚れが目立ちやすいです。
また、エコクロスはビニールクロスと比べて厚みが薄いため壁の下地処理も丁寧に行わないといけないですし、木が動きやすい家が完成して数年は壁紙が破れやすくなってしまうので、アフターフォローも必要になってしまいます。
(木の動きが納まった頃に破れた部分を補修するという工務店が多いです。ある意味、それだけ丁寧な工事をする会社でないとエコクロスは使えないということにもなります)
水まわりもビニールクロスの方が強く、エコクロスは丁寧な使い方を求められる壁紙と言えます。
(エコクロスにも水まわり用の物がありますが、見た目や質感はビニールクロスとあまり変わらない物となります)
また、価格についてはエコクロスの方がビニールクロスよりも高いです。
壁紙の選び方
「壁紙を選ぶのが大変だった」
これは家づくりをした方からよく聞く言葉です。
壁紙は選択肢が多いので、迷ってしまうとかなり大変になってしまうんですね。
そんな一例を1つご紹介します。
壁紙を選ぶ際、壁紙のカタログというのは実際にクロスの切れ端がカタログに付いているのがほとんどなので、1冊1冊がかなり分厚く大きいのですが、たまにその分厚いカタログを手渡され「気に入った物を選んでください」と言う工務店もあります。
「そんな分厚いカタログをいきなり渡されても」と途方に暮れてしまいますよね。
(本来は壁紙もプロが提案、アドバイスするべき物ですが、工務店によって壁紙の決め方は違います)
でも大丈夫です。
そんな場合も色味だけを見た上で、できるだけシンプルな物を選べば間違いないんです。
どうしてでしょうか?
ここで1つ質問をしたいと思います。
「あなたは、あなたの今住んでる家のはどんな壁紙か覚えていますか?」
どうでしょうか?
実は正確な壁紙の柄を覚えている方は意外と少ないんです。
それだけ壁紙の柄というのは、かなり特徴的な色や柄でなければ記憶に残らないものなんですね。
特に部屋のベースとして使う白い壁紙はその傾向が強く出ます。
そのため、細かい柄をアレもコレもと比べたり細めに壁紙を変えるよりも、シンプルな物に統一してベースを決めてしまうのが一番キレイに見えるんですね。
その分、遊びを入れたい場合はアクセントクロスで雰囲気をつくるのがお勧めです。
アクセントクロスを使い部屋の印象を変える場合は、壁1面、もしくは天井の色を変えるケースが多く、できるだけ同じような色の組み合わせの実例を見せてもらうと失敗がありません。
ベースはシンプルに。
アクセントはプロのアドバイスを聞きながら、あなたの好みの空間を目指したいですね。
塗り壁
ここまで壁紙について見てきました。
それでは次に内装を塗り壁にした場合について見ていきましょう。
珪藻土(けいそうど)
珪藻土とは、簡単に言うと藻類の化石のことです。
この化石を1度粉末にした上で内装材として家に使った物が、いわゆる建築材料の「珪藻土」と呼ばれているものなんですね。
では何故、わざわざ化石を部屋の内装に使うのかと言うと、それだけのメリットが期待できるからなんです。
それでは珪藻土のメリットについて見てみましょう。
珪藻土のメリット
珪藻土の一番の特徴というと、高い調湿効果が挙げられます。
珪藻土には無数の小さな穴が空いており、そこで湿気を貯めたり出したりすることで快適な湿度の部屋にできるんですね。
珪藻土は他の自然素材と比べてこの調湿効果がとても高いので、珪藻土を施工している工務店や建材メーカーでは珪藻土に霧吹きで水をかけて調湿効果を体験したり、濡れたコップでもすぐ乾くコースターを作ったり等、調湿が体験できるような物が用意されていることが多いので、気になる方は一度体験されてみてもいいかもしれませんね。
また、珪藻土には消臭効果もあります。
湿気を調整するのと同時に、ニオイも消してくれるんですね。
もちろん何でも消してくれる訳ではなく、湿気が減った時にニオイを感じにくくなるという特性を活かしたものなので限界はありますが、部屋のニオイが気になる方には魅力的な内装材となります。
このように、普通の壁紙では期待できない効果があるのが珪藻土の魅力なんですね。
珪藻土のデメリット
では次に、珪藻土のデメリットについて見てみましょう。
珪藻土のデメリットとしてはまず、水汚れがついた時に吸着してしまうことが挙げられます。
例えば何かの弾みでお醤油を壁にこぼしてしまったとすると、ビニールクロスならすぐに拭き取れば何とかなることがありますが、珪藻土ではほぼ間違いなく染みになってしまいます。
調湿効果がある小さな穴ですが、汚れを吸い込んでしまい取れなくなってしまうんですね。
そのため、調湿効果が高いから水まわりに使いたくなってしまいますが、例えば汚れた手を洗っている時に水が飛び跳ねると中に吸い込んでしまうということが起こるため、壁に使うのはあまり相性が良くありません。
汚れが気になる場合は、上塗りをする必要が出てくるんですね。
また、珪藻土は壁に塗ることになるので、壁にぶつかるとポロポロと取れてしまうことがあります。
(実際、珪藻土の壁の近くでは、取れた珪藻土のかけらを見ることがよくあります)
さらには、木などの構造材が動くとクラックが入ってしまうことも。
(これはエコクロスも同じです)
この辺りは珪藻土のデメリットになるので、気になるかどうかは1度確認しておきたいですね。
価格も壁紙と比べると高くなります。
珪藻土を使う場合のポイント
珪藻土を使う場合、珪藻土の特性上、ツルっとした仕上げではなくザラザラとした仕上げになります。
そのため室内を出来るだけシンプルにしたいという方には、少し向かない可能性があります。
一方、ザラザラして仕上げが目立つ分、壁に陰影ができるようになります。
その雰囲気が楽しめるかどうかも、1度仕上げを見て確認しておきたいですね。
また、珪藻土と一言で言っても、珪藻土の成分が少ししか入っていないものから、ほとんど珪藻土で出来ている物まで様々な物があります。
珪藻土は自分で固まることができないので、つなぎ材を混ぜる必要があるんですね。
場合によっては、ほとんど合成樹脂で珪藻土はほとんど入っていない物なんかもあるので、成分がどうなっているかはシッカリ見ておきたいですね。
珪藻土は基本的にベージュのような色をしています。
白や赤、青など様々な色の珪藻土もありますが、それだけ顔料を混ぜて珪藻土の成分が少なくなってしまうので、珪藻土の効果を重用視しているから珪藻土を使うのか、それともある程度珪藻土の効果を受けつつインテリア性も高めたいのかどうかでも使う珪藻土が違ってくるので注意が必要です。
最後に余談を少々。
昔、珪藻土を製造している方に「どこに珪藻土を使うのがお勧めですか?」と聞いたことがあります。
すると、「天井に使うのがお勧めですよ。汚れも付きづらいし、水まわりでも使いやすいです。クラックが入った場合は補修しづらいですけどね。ガハハハハハ」と笑っていたのが印象的で記憶に残っています。
漆喰(しっくい)
漆喰は珪藻土と並んで良く使われる内装材です。
珪藻土は強度の関係で外壁で使うことはあまりありませんが、漆喰は外壁にもよく使われています。
白で眩しい家なんかは、漆喰の外壁を使っていることがよくあります。
漆喰は原料が石灰石なので基本的に白く、アルカリ性なのが大きな特徴です。
では、漆喰を家の内装に使った時のメリットについて見てみましょう。
漆喰のメリット
漆喰のメリットを挙げると、抗菌効果が高いことが挙げられます。
アルカリ性のため、防カビ、防菌効果があるんですね。
そのため、空気がキレイな空間を求めている人には最適の内装材と言えます。
また、漆喰は珪藻土と比べてツルっとした仕上がりになるので、シンプルな空間にする場合は重宝しますし、色自体も白なので余計な成分をあまり混ぜずに白くシンプルな空間にすることができます。
漆喰のデメリット
漆喰は伸縮性が少ないため、構造材が動くとクラックが入ることがよくあります。
特に漆喰は比較的ツルっとした仕上げになるため、余計目立ちやすくなってしまうので、細かなクラックが気になる方にはあまり向かない仕上げ材となります。
その他の塗り壁
塗り壁の代表的な物として、珪藻土と漆喰をご紹介しまいしたが、火山灰を使った「シラス壁」など塗り壁には様々な種類があり、それぞれ違う特徴を持っています。
漆喰には調湿効果があると言われていますが珪藻土と比べると調湿効果は落ちるなど、漆喰と珪藻土では同じ塗り壁でもかなり違う性質を持っているように、それぞれの特徴が違ってくるんですね。
どの塗り壁を使う場合でも、できればその塗り壁に慣れている工務店を選ぶのが一番です。
製品の特徴も分かっていますし、アフターメンテナンスもどうすればいいかも分かっているからなんですね。
使う塗り壁メインに工務店探しをしても良いですし、工務店が使える内装材からイロイロと塗り壁を選んでも楽しい物です。
塗り壁は壁紙と比べて高価ですが、それだけのメリットもあるものがほとんどです。
塗り壁を使う場合、あなたが家で「あったらいいな」と思う特徴と一致した塗り壁をぜひ選びたいですね。
ペイント
Photo:http://benjaminmoore.co.jp
ペイントと言うと日本では少し馴染みの薄い内装材ですが、壁の色をシンプルに楽しめるのがペイントの1番の特徴です。
壁にペイントするだけなので、壁紙や塗り壁と比べてシンプルな空間にすることができるんですね。
自分でも気軽にできるので、店舗やマンションのリノベーションなんかでもペイントはよく使われていますし、海外ではポピュラーな仕上げとして使われている国もあります。
ペイントは白いシンプルな空間にするのも簡単ですし、色でアクセントをつけることもできます。
また、汚れが目立つようになれば塗り直すこともできるのが大きな特徴です。
ペイント専門店もあるので、気になる方は一度実際に見てみてもいいかもしれませんね。
ペイントの注意点
ペイントは壁に塗料を塗っているだけなので、汚れがとても付きやすいです。
そのため、数年に1回は塗り直しをする必要がでてきます。
また、塗り壁と同じで木が動くとクラックが入ることもよくあります。
シンプルな分、塗り壁よりもクラックが目立つので工務店も嫌がる傾向があり、ペイントが可能かどうかは工務店次第という点が大きくなります。
その他にペイントを選ぶ場合、シックハウスの原因となるVOC(揮発性有機化合物)ができるだけ少ない物を選ぶのも重要です。
また、ペイントと言うと「ニオイがきつく気分が悪くなるのでは」という方もいるのではないでしょうか。
気分が悪くなるのはシンナーなどの溶剤が原因ですが、最近では水性で溶剤がいらない物がほとんどです。
念のため、しっかり成分の確認はしておきたいですね。
ペイントは壁だけでなく、扉を塗ったりと家のアクセントに使うことができる内装材です。
色を楽しんだり、アクセントに上手く使ってみるのもいいかもしれませんね。
(実際に無塗装の扉にペイントをするということもあります)
ビニールクロスか自然素材か
内装材はイロイロあるため、ビニールクロスにするかエコクロスにするか、それとも自然素材の塗り壁にするか迷う事もあります。
そんな時は、どれだけ自然素材、住環境にこだわるか。ここがポイントになってきます。
ビニールクロスは通気性は無いですが、汚れにくく破れにくいので、壁の汚れが気になる方に向いている壁紙と言えます。
一方、エコクロスは天然素材を使っているので汚れは付きやすいですが、プラスαの効果が見込めます。
さらには自然素材の塗り壁を使えば、エコクロスよりも大きな効果を得ることができますし、その分、価格も上がっていくことになります。
では、何を使うか本当に迷った場合どうすればいいか。
あくまで私の意見になりますが、それぞれを使って出来上がった家を見てみて、ニオイが気になるのかどうか。それとも気にならないかどうかを実際に体感してみるのが一番分かりやすくなります。
化学物質が苦手な人なら目や頭が痛くなることがあるので自然素材重視な家を。
全く何も感じないのであれば、他の優先項目を優先するという選択肢も。
人それぞれ感覚は違うので、ぜひ家族全員で体験しておきたいですね。
自然素材はこだわればこだわるほど、家の構造から変わってきます。
こだわるなら例えば構造材は無垢材、断熱材も紙が主原料のセルロースファイバー、床は無垢材、壁も天然素材というようになりますし、こだわりが全く無いなら集成材に内装は全て新建材でも良いということになります。
どこまで素材にこだわるか。
まずは家づくりのスタート時点で意識しておくと、後で「こうすれば良かった」と思うことが少なくなるのでおススメですよ。
まとめ
今回は家の内装材について見てきました。
壁紙や塗り壁もいろんな種類があり、イロイロと迷うこともあると思います。
でも、そんな色んな選択肢があることをあらかじめ知っておくだけで、家ができてから「そんな材料があったの!?」とか「そんな選択もできたんだ」という後悔を防ぐことができます。
せっかくの家づくりですので、日常ではふれることがあまりない色んな材料をぜひ見たりさわったりした上で、納得の素材を使った家づくりをしたいですね。
では。
内装、材料についてはこちらも参考にしてください。
→新築の内装はどうすればオシャレに見える?内装を決める時の6つのポイント
→内装に使う壁材ってどんなものがあるの?知っておきたい壁材のメリット、デメリット
→巾木の次第で部屋の印象はすごく変わる!巾木の種類と見え方の違い
→おしゃれな家は皆使っている!おすすめ無垢フローリング12選【保存版】
→キッチンの床をタイルにした時のメリットとデメリットを解説します
→対面キッチンはどれがおすすめ?5つの対面キッチンとメリット、デメリット
→代表的な屋根材の選び方を、コスト、メンテナンス、デザインの面で解説します
建築士が実際に見てきた全国の優良工務店を掲載。
家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
家づくりで失敗したくない!そんな方こそ、間取りが重要です。