こんにちは、O型建築士です。
先日、読者さんより
「家に取り入れたい物が沢山あり過ぎるため、間取りもいまいち上手くまとまらず、予算も足りなくなってしまいます。このような場合、家づくりをどう進めていけば良いのでしょうか?」
という内容の相談をもらいました。
これは、せっかくの家づくりだからとイロイロ家に取り入れてしまう「アレもコレも家に取り入れたい病」が原因ですね。
家づくりを始めると次々とやりたい事が出てくることが多く、特に間取りの初期段階ではついつい入れたい事を全部取り入れた家にしようとして、予算がオーバーしてしまうことがよくあります。
このように「アレもコレも家に取り入れたい病」というのは厄介な反面、この「アレもコレも家に取りいれたい」と思う事は、実は良い家を建てる秘訣がいっぱい詰まっている部分でもあるんです。
今回は、そんな「アレもコレも家に取り入れたい病」の対応方法と良い家を建てるための秘訣についてお話したいと思います。
それではどうぞご覧ください。
それは本当に家に必要?
先日、数年前に引渡しをしたお客さん(旦那さん)と街中でばったり出くわす事がありました。
長期間打合せをしていたお客さんだったので、私もお客さんも気心知れた仲だったので、しばらく立ち話をしてしまいました。
そのお客さん(旦那さん)は予算内で家を建てたいという考えが強い方。
一方、奥さんはアレもコレも家に取り入れたいという方でした。
家づくりの場合、旦那さんや奥さんなど誰かが最終的な決定権を持っていることがほとんどです。
そのご家庭は旦那さんが決定権を持っていたので、最終的には予算内で家を建てる事を重視した家づくりをする事になりました。
でも、家を建てるのに「アレもコレも」となっていては予算内で収めることができなくなってしまいます。
その時に重要だったのが、仕分け作業です。
コストに対して満足度が高い物を優先的に採用して、コストが高いけど使う頻度が少ない物は採用しない、又は代用できる物に変更するという作業のことですね。
その方の当初の計画の中で一番コストが掛かっていたのが屋上でした。
屋上を造る理由を聞いてみると、
「今住んでいるマンションから年に一度近所の花火大会が見える。だから新しい家でも花火大会を見たいんだけれども、購入した土地は周りに家が建っていてバルコニーから花火は見えない。だから屋上をつくって花火を見たい」
というのが1番の理由でした。
ちなみに、そのケースでは屋上をつくるために必要な金額は100万円を軽く超えていました。
旦那さんは屋上はいらない。奥さんは屋上が欲しい。
ご夫婦で意見が分かれてしまいました。
そこで、屋上をつくるのに必要な金額を弾き出して、本当に金額と見合う価値があるのか聞いてみました。
あまり生々しい数字を出すのもなんなので、ここでは屋上一式300万円と仮定します。
[voice icon="https://iiietsukuru.com/wp-content/uploads/2015/07/10.jpg" name="O型建築士" type="l fb"]屋上をつくるのに必要な費用は300万円ほどです。30年間毎年花火を見たとして、1回あたり10万円の計算になりますね。[/voice]
[voice icon="https://iiietsukuru.com/wp-content/uploads/2015/07/9990bb36a92874d6e36eecd831b1c160.png" name="奥さん" type="r fb"]1回あたり10万円ですか!?[/voice]
[voice icon="https://iiietsukuru.com/wp-content/uploads/2015/07/10.jpg" name="O型建築士" type="l fb"]有料観覧席を毎年家族で購入したとしてもそちらの方がお得です。屋上から花火を見ることだけが目的であれば、一度、他の方法を検討されてみるのもいいかもしれませんね。[/voice]
[voice icon="https://iiietsukuru.com/wp-content/uploads/2015/07/9990bb36a92874d6e36eecd831b1c160.png" name="奥さん" type="r fb"]今の話を聞いて考えが変わりました。花火に10万円も掛けなくていいです。屋上は無しでお願いします。[/voice]
こうして屋上をつくる事は取り止めになり、予算内に収まる形で家が完成しました。
ちなみに、旦那さんに家ができてから花火はどうしているのかを聞いてみると、近所の河原に毎年家族仲良く花火を見に行っているそうです。
こういう話は家づくりではよく出てきます。
特に今回のような屋上なんかはよくある例ですし、高級な設備なんかもそうですね。
迷った時は、さっきの花火大会のように1回あたりいくらで使う事になるのか計算してみると、かなり分かりやすくなります。
見積もりで1式〇〇万円というイマイチ具体的に想像がしにくい金額から、リアルに想像できる金額に変わってくれるので、それだけお金を掛けて欲しい物かどうかがイメージしやすくなるんですね。
例を挙げてみましょう。
例えばお風呂にサウナをつくったとします。価格を仮に100万円と設定します。
耐用年数20年、週2回使うとして計算してみると・・、1回500円。光熱費を入れて600円くらいといったところですね。
この金額が価値に見合うのかどうか。
もっとサウナに入るなら価値は高くなって満足度も上がりますし、そんなに入らないなら近所のスーパー銭湯のサウナを使う方がメンテナンスや掃除も必要ないので便利と言えそうです。
キッチン等の設備も同じですね。
50万円と100万円のキッチンで迷ったとします。
耐用年数を20年として考えると、月々で約2,000円の差額になります。
「月々に2,000円」と「お気に入りのキッチンを手に入れること」、どちらが価値が高いか考えてみると、より効率的に予算を配分することができます。
どうでしょうか?
数万円くらいの物だと感覚的に高いか安いか判断しやすいですが、このように価格が高くて高いのか安いのかピンとこない場合、1回あたりいくらかを換算すると、どれくらいの価値があるのか分かりやすくなるんですね。
このように計算すると、お金を出す価値があるものか分かりますので、予算の関係で迷ったら、1回あたりの金額を出してみると判断しやすくなるのでオススメです。
優先順位を考えてみる
要望に優先順位をつける。
実はこれ、家づくりで物凄く重要なことなんです。
先ほどのように1回あたりの価格を出すことの他に、「アレもコレも」と出てきた要望の優先順位をつけることも、家の満足度を大きく高めてくれるんですね。
優先順位というと1つずつ順位が高い順に並べていくイメージが強いですが、そこまで厳密に仕分けなくても大丈夫です。
どういう風に優先順位をつければ良いかというと、必ず叶えたい項目(must項目)とできれば叶えたい項目(want項目)に分けてあげるのがポイントです。
必ず叶えたい項目となる「must項目」は家をつくるための理由とも言えるので、最優先するべき項目です。
「must項目」は家を建てる理由とも言えるので、これが叶わないのなら家づくり自体を再検討してもよいくらい重要な項目なんですね。
次に、できれば叶えたい「want項目」は、「must項目」までいかないけども、家にあると嬉しい項目のことを言います。
「must項目」が100%だとすると、60%くらいが「want項目」の目安です。
そして、「must項目」にも「want項目」にも漏れた「何となくあるといいな」くらいの要望は、思い切ってカットしてしまう。
実は、それくらい優先順位の低い項目は家ができてから思い出す事もないくらいのことがほとんどなんです。
私たち建築士にとっても、家を建てる人の優先順位を知ることはとても重要と言えます。
私も家の間取りをつくる場合、まず最初にどんな家にしたいか沢山お話を聞きます。
まず最初に思っている事を全部出してもらうんですね。
ただ、それだけでは良い家はできません。
色んな要望がごちゃ混ぜになっているんですね。
そこで次に、仕分けの作業に入ります。
先ほどのように、何が「must項目」で何が「want項目」なのかを1つずつ明確にしていくんですね。
私自身、家を建てる人の「must項目」と「want項目」が分からない場合、動線や光の入り方などを考慮した、とりあえずの間取りをつくることはできますが、それがそのご家族に合った間取りだと自信を持ってオススメすることはできません。
それくらい、優先順位を付けるという事は家づくりで重要なんですね。
逆を言えば、優先順位を聞かれないであなたに合った良い間取りができることはまずありませんし、
「どうやってその間取りをつくったんだろう?」
という疑問すら浮かんできます。(十中八九、あなたのための間取りではなく、その設計者が勝手に想像した間取りと言えます)
私たち家をつくる設計士の主な仕事はどちらかと言うと間取りづくりや図面づくりというイメージが強いですが、実は「バラバラになっているいろんな要望をまとめる」というのがとても重要な仕事で、それを間取りであったり図面として形に表現しているんですね。
→設計士さん次第で、どうしてこんなにも違うの?その理由をお答えします。
このように優先順位というのは家づくりでとても重要な役割をもっているので、ぜひ一度、あなたの優先順位をまとめてみてくださいね。
きっと、あなたの建てたい家の全体像が見えてくるはずですよ。
優先順位の付け方についてはこちらも参考にしてください。
まとめ
「アレもやりたい、コレもやりたい」となってしまった場合、効果的なのは今回ご紹介した2つの方法です。
1つはコストパフォーマンスの視点で見てみること。
家の金額はよく分からないことが多いですが、1回あたりに換算すると、それが高い物なのか。それともコストパフォーマンスに優れたものなのかが分かります。
そして、要望に優先順位をつけること。
優先順位をつけると、どんな家を建てたいのか頭の中が整理されてスッキリしますし、なんで家を建てるのかも改めて気付くきっかけになってくれます。
工務店選びでも、家の間取りでも、家を建てる理由を叶えるための手段に過ぎません。
まずは大きな視点で家づくりを見ていくことが、ブレない家づくりの秘訣となってくるんですね。
では。
こちらも家づくりの参考にしてください。
建築士が実際に見てきた全国の優良工務店を掲載。
家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
家づくりで失敗したくない!そんな方こそ、間取りが重要です。
建築士が教える今日の問題解決
家づくりの予算で困った時はどうすればいい?
- コストに対して満足度の高い物を採用すると、お金をあまり掛けずに満足いく家になりやすい。
- 1回あたりのコストを出してみると、高いか安いかの判断がつきやすい。
- 優先順位をつけて、本当に必要な物を考えてみる。