家の建築士として最近感じるのが、
「バルコニーやベランダはいらない」
という方は年々増えているという事。
10年ほど前であれば2階建て以上の家であればバルコニーを作るのが当たり前という感じでしたが、ここ最近はバルコニーを作る人は減ってきているんですね。
では、どうして「バルコニーやベランダがいらない」という人が増えているのでしょうか?
また、バルコニーやベランダは本当に必要ないのでしょうか?
今回のテーマは、
「バルコニーはいるのか、それともいらないのか」
これについて詳しく見ていきたいと思います。
バルコニーがいらない人が増えている理由
まず最初に、バルコニーは家に必ずしも必要な物という訳ではありません。
たとえば平家の家であればバルコニーはありませんし、バルコニーが無くて生活できないという訳でもないですよね。
そうなんです。
2階建て以上の家だと何となくバルコニーが有るのが普通のように感じてしまいますが、それを1回リセットして本当にバルコニーがあなたに必要かどうか検討するところがスタートなんですね。
その結果、「バルコニーはいらない」という結論を選ぶ方が増えているというのが実際のところです。
では、バルコニーが必要かどうか決めるには実際にどんな事を検討すればいいのでしょうか?
次に、バルコニーが必要かどうかの具体的なチェックポイントについて見ていきましょう。
バルコニーの有無を決めるポイント
バルコニーの有無を検討する場合、次の5つの視点から見てみると判断しやすくなります。
その5つとは、
- 洗濯物や布団の干し方
- バルコニーにプラスαの価値があるかどうか
- バルコニーの費用
- バルコニーの掃除やメンテナンス
- 使いやすいバルコニーにできるかどうか
以上の5つです。
それでは具体的に見ていきましょう。
洗濯物や布団の干し方
ひと昔前は、洗濯物や布団というと庭やベランダに干すというケースがほとんどでした。
今ほどドラム式洗濯機や乾燥機は普及していませんでしたし、室内干しするための間取りでも無かったので、多くの家庭が外に干すという一択だったんですね。
でも、今は乾燥機を使う事も多くなりましたし(特にガス乾燥機はかなり便利ですよね)、共働きといった生活スタイルや花粉対策などで室内干しや布団乾燥機を使うというのも普通になっています。
このように、昔よりも選択肢というのは増えているんですね。
その上で洗濯物や布団の干し方をどうするか。
その結果、バルコニーに干す場合はバルコニーの価値は高くなりますし、バルコニーはほとんど使わないという場合はバルコニーの優先度は低くなるんですね。
バルコニーにプラスαの価値があるかどうか
Photo:https://www.desusarchitects.com/
バルコニーは洗濯物を干す以外にも、庭のように使ったり眺めを楽しみながらくつろぐスペースにするなど、プラスαの価値を付けることもできます。
たとえば2階リビングであればバルコニーはマストとも言える存在です。
2階リビングの横にゆったりしたバルコニーを作ることで庭のように使う事もできますし、リビングもより広く感じることができるからなんですね。
さらにはバルコニーなので道を歩いている人や周りからも見えにくく、よりプライベート感が出るというのも大きな魅力です。
→2階リビングってどうなの?メリット、デメリットをプロの建築士がまとめました【絶対保存版】
また、都市部のコンパクトな土地もバルコニーとは好相性です。
敷地的に家を広くできない場合でも、バルコニーは空中の空いているスペースに作ることができるからなんですね。
バルコニーを作ることで土地をより活かすことができます。
このように、バルコニーがより活きる間取りや敷地の場合、必然的にバルコニーの価値というのは高くなるんですね。
ちなみに、「広いバルコニーがあればいいな」くらいの優先順位であれば、バルコニーを作るのではなく他の物に予算を使った方がベターです。
「あれば多分使う」くらいだと、結果的に使わなくなってしまう事が多いからなんですね。(実際にこういうケースをよく見かけます)
その他、年に1回くらいの行事、「たとえば花火が見えるから広いバルコニーが欲しい」というのも後で使わないバルコニーになりがちです。
たとえば、花火の場合は有料観覧席を利用するなどバルコニーを作るよりもはるかに費用も手間も掛からずに済ます代替方法があるからなんですね。
年に1回の行事ではなく、日常使いとしてこの土地を活かすにはバルコニーがマストと思えるかどうか。
これが重要なんですね。
バルコニーの費用
バルコニーを作る費用というのも意外と掛かる物です。
目安としては、坪単価の半分くらいがバルコニーを作る時の相場になります。
たとえば坪単価50万円の家であれば、バルコニーを1坪作るのに25万円くらい掛かるという感じですね。
バルコニーにそれだけ費用を掛けても欲しいと思えるのか、それとも家の他の部分にその予算を使いたいと感じるのか。
この部分もバルコニーを検討する時に意識したいポイントです。
バルコニーの掃除、メンテナンス
バルコニーは外なので、基本的に結構汚れます。
土やほこりが飛んできて、放っておくとすぐに汚れが溜まってしまうんですね。
この掃除をどれだけ手間に感じるかどうかも、バルコニーで検討しておきたい部分です。
また、バルコニーは10年に1回はメンテナンスが必要な場所になります。
紫外線に晒されている場所なので劣化しやすく、放っておくと雨漏れの原因になるからなんですね。
(工法次第でメンテナンスを減らすこともできますが、その分イニシャルコストも上がります)
バルコニーは作って終わりではなく、家と一緒にずっと付き合っていく場所です。
掃除やメンテナンスを苦に感じず、バルコニーに愛着を持てるかどうかというのもポイントなんですね。
使いやすいバルコニーかどうか
バルコニーは作り方で使いやすさというのは変わってきます。
たとえば、間取りでよく見かけるバルコニーは奥行きがあまりない事も多くあります。
こんな感じですね。
洗濯を干すだけなど、あらかじめ広さが分かっている場合は問題ありませんが、実際に家に住んでから気づくと後悔しやすいポイントなんですね。
そのため、バルコニーは奥行きに少しゆとりがある方が使いやすくなります。
バルコニーを作る場合は空いたスペースにただ作るのではなく、より使いやすいバルコニーにできるかどうか。
間取りを見て使いにくそうだと感じる場合は、2階の間取りに手を加えてバルコニーの形や場所を変えるか、バルコニーを無くしてみるというのも効果的です。
バルコニーの無い間取りのポイント
それでは最後に、バルコニーの無い間取りにした場合のポイントについても見ておきましょう。
まずは洗濯について。
バルコニーが無いということは洗濯物は室内干しにするか庭に干すということになります。
そして洗濯物と言うと南側の陽の光が当たる場所に干すという印象が強いですが、実は洗濯物を乾かすのには日光はそれほど必要ありません。
適度な風と湿度を除去する事ができれば、洗濯物は問題なく乾いて衣類にも優しいからなんですね。
(反対に洗濯物を日光に当てすぎると衣類の劣化が早くなるという側面もあります)
室内干しをする場所では、除湿機と扇風機を組み合わせて使えるようにしたり、エアコンを付けられるようにしておくのも効果的です。
また、洗面室を室内干しスペースと併用するケースもありますが、洗面台を使う時やお風呂に入る時に邪魔にならないようにするのも重要です。
その他、室内干しスペースの近くにクローゼットを併用するのもいいですね。
あとは、敷地が広い家であれば水回りに近い庭に干す間取りというのも便利なものです。
基本は水まわりから洗濯物を干して収納するまでいかにスムーズになっているか。
この辺りは間取りで確認しておきたいポイントになります。
次に意識したいのが、家の外観について。
バルコニーをつくらないという事は、その分だけ下屋が増えるケースも増えてきます。
下屋とは下の赤丸部分ですね。
通常は2階の方が1階よりも小さいのでその分だけ下屋ができやすく、バルコニーが無い場合はより下屋が出てくる可能性が高くなります。
そしてこの下屋は上手く作れば綺麗に見えるのですが、取ってつけた感じになると家の見た目が悪くなるという、扱いが中々難しい物。
そのため、下屋のある家は設計士や住宅会社のセンスが大きく問われる部分になります。
Photo:https://creax-architect.com/otsunoie/
間取りが決まったあとで外観だけ手を加えるというのはとても難しくなるので、間取りと外観は必ずセットで確認しておきたい部分なんですね。
→下屋(げや)って何?下屋の作り方次第で家の外観はすごく変わるんです
まとめ
今回は、バルコニー(ベランダ)はいらないのか、それとも必要なのか詳しく見てきました。
巷にはバルコニーはいる、いらないという意見が色々ありますが、家に住む人や家を建てる土地、間取りによってバルコニーの価値というのは大きく変わってきます。
そこを踏まえた上で、バルコニーの優先順位はどれくらいなのか。
その結果、「バルコニーが必要」なのか、それとも「バルコニーはいらないのか」が決まってくるんですね。
当たり前のようにバルコニーを作るのではなく、まずはあなたにとって必要かどうか検討してみる。
そしてバルコニーを作る場合はより価値の高いバルコニーにできるかどうか、反対にバルコニーがいらない場合は洗濯動線と家の外観をどれだけ上手くまとめられるかがポイントになってきます。
そうすることで、より価値の高い家にする事ができるんですね。
では。
バルコニーについてはこちらも参考にしてください。
バルコニー(ベランダ)を失敗しないために必ず知っておきたい5つのこと
ルーフバルコニーのメリット、デメリットと活用するルーフバルコニーにする方法
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