家に和室を作る場合、最近ではリビングの隣に和室を設けるというケースがかなり多くなりました。
独立した和室だと誰かが泊まりにきた時の客間に使うなど用途がかなり限られますが、リビングの隣に和室があるとリビングと一体で使うことができるので家の中が広く見えますし、必要な時だけ客間としても使うこともできます。
独立した和室よりもリビングの近くに和室があることで和室の用途の幅が広がるんですね。
また、しっかりした和室ではなくLDKの一角に畳コーナーを設けるケースもよく目にします。
そんなLDK横にある和室や畳コーナーですが、迷ってしまうのが小上がりにするかどうかということ。
今回はそんな小上がり和室についてのメリット、デメリットと、小上がり和室にした方が良いケース、止めた方が良いケースについて見ていきたいと思います。
和室や畳コーナーを検討しているという方はぜひご覧ください。
小上がり和室とは
小上がり和室とは、文字通り和室の床を一段高くして、リビングなどフローリングの床よりも床が高くなった和室のことを言います。
リビングに和室を作る場合は小上がり和室を希望される方も結構いらっしゃるように、小上がりの和室はかなり人気があります。
では、実際に小上がり和室にはどんな魅力があるのでしょうか?
まずは小上がり和室の魅力とメリットについて見ていきましょう。
小上がり和室のメリット
小上がり和室のメリットとしては、
- 段差が付くことでLDKに馴染む和室となる
- 段差に座るなどソファや椅子代わりにも使える
- 空間にメリハリが付き、和室に籠り感が出る
- 床下収納を作ることで収納が増える
この辺りが小上がり和室の代表的なメリットとなります。
それでは具体的に見てみましょう。
段差が付くことでLDKに馴染む和室になる
LDKの近くに和室を設けた場合に一番気になりやすいこと。
それは椅子やソファに座って生活することが想定されたLDKと、床に座って生活する和室で視線の高さにズレが出やすいことです。
家具に座る生活と床に座る生活では、視線の高さが違ってくるんですね。
例えば、ダイニングの近くに和室があるとすると、和室に座っている時は視線の先にダイニングテーブルが常に目に入ってしまい圧迫感を感じる原因となってしまいます。
また、和室はゴロゴロするのにも使いたい場所ですが、すぐ近くにテーブルなどある程度の高さの物があると圧迫感を感じることもあり、ゴロゴロしていても落ち着かない空間になる原因ともなります。
このように、和室、LDKという生活する高さが違う空間が並んでしまうと、思った以上にストレスに感じてしまったり、住みにくい空間になってしまうことがあるんですね。
一方、和室を小上がりにすることで床が一段高くなるため、和室に座った時にソファにいる人やダイニングテーブルにいる人と視線の高さが合うようになりますし、ゴロゴロしていても圧迫感を感じることは無くなります。
和室を小上がりにすることで視線の高さがLDKと近くなり、馴染みやすくなるんですね。
これは小上がり和室の大きなメリットと言えます。
段差に座るなどソファや椅子代わりにも使える
段差に座れるというのも小上がり和室が人気の理由の1つです。
小上がり和室の段差が椅子やソファの代わりになってくれるんですね。
そのため、段差に腰掛けながらTVを見たり、ソファにいる人と会話をする時など、小上がり和室の段差はちょうど良い腰掛けに早変わりします。
また、小上がり和室の段差を利用して掘りごたつにするのも楽しいもの。
こたつを置いてテーブルとして使うこともできますし、カウンターを設けて書斎やスタディーコーナーにするなど、段差の使い方はアイデア次第で様々です。
その他、大人数の集まりの時にダイニングテーブルと小上がり和室のテーブルをくっ付けて、大きなテーブルにしてしまうなんてこともできます。
こんな感じですね。
このように、小上がり和室の段差の使い道は様々。
小上がり和室にする場合は段差をどれだけ活かせるか考えてみると、より価値のある小上がり和室にすることができます。
空間にメリハリが付き、和室に籠り感が出る
小上がり和室にすることで空間にメリハリが付くようにるのも小上がり和室のメリットです。
同じフロアの床の高さが変わることで空間にメリハリが付くんですね。
たとえば、最近のホテルや温泉旅館では和室と洋室がミックスされた和洋室という部屋も多いですが、その場合も落ち着く空間にするために和室やタタミスペースに段差をつけていることがよくあります。
段差を付けることで空間にメリハリをつけているんですね。
また、和室などは座ることを前提に作られた空間なので、天井が高すぎるとバランスが悪く見えてしまうケースも。
そのため小上がり和室というのは天井高を抑えるのにちょうど良いですし、実際に和室に座ってみると天井が低い方が落ち着くことが分かります。
このように小上がり和室にすることで空間にメリハリが出るようになるのも小上がり和室のメリットなんですね。
小上がり和室にすることで収納が増える
小上がり和室は段差部分を利用して引き出し収納をつくることもできます。
特にリビング周辺は物が多くなりがちな場所なので、少しでも収納が増えるというのは嬉しいものです。
お子さんのおもちゃ箱代わりにするなど、引き出しそれぞれで用途を決めてしまうのも良いですね。
小上がり和室の下に収納を設ける場合、レール式で引き出しのようにする場合と小さなタイヤ(コロ)をつけて自由に移動できる収納にする2パターンが主流となります。
私のオススメはレール式の収納方法。
その理由として、コロを付けた場合は部屋の中を自由に移動させることができますが、その分、重いものを収納するとタイヤの後が床に付く場合があること、また、ソファやダイニングテーブルなど家具があるLDKでそれほど自由に収納を移動させる必要性はあまりないので、個人的にはレール式の収納の方がオススメです。
また、収納を設ける場合にはある程度の高さが必要となるので、小上がり和室の段差には最低でも30㎝くらいは必要となり、40㎝ほどあると余裕が出ててきます。
小上がりの高さは小上がり和室にした結果あまったスペースを収納にするのか、それとも収納を作るために小上がりする和室にするのかでも変わってくるので、小上がり和室にする理由を明確にして高さを決めたいですね。
小上がり和室のデメリット
ここまで小上がり和室のメリットについて見てきましたが、小上がり和室にはデメリットもあります。
それでは次に小上がり和室のデメリットについても見いきましょう。
小上がり和室のデメリットとしては、
- 段差があるのでバリアフリーにならない
- 小さな子供がいる場合は目を配る必要がある
- 小上がり和室にするのに費用が必要
- 外観のバランスが崩れることがある
この辺りが代表的なデメリットとなってきます。
では、具体的に小上がり和室のデメリットを見ていきたいと思います。
段差があるのでバリアフリーにはならない
小上がり和室は落ち着いてゴロゴロできる一方、将来歳を取って寝室代わりに使おうと思った時に段差が邪魔になってしまうこともあります。
また、ルンバなどの掃除ロボットを使う場合も小上がり和室は別に掃除する必要が出てきます。
このように小上がり和室の魅力である段差が、時にはデメリットになってしまうこともあるんですね。
ただ、小上がり和室を寝室代わりに使うケースというのは新築から数十年経った後となることがほとんどで内装にも傷みが出てきているためリフォームついでにフラットな和室に変更することもできますし、段差部分に手すりを設けるなどの対応を取ることも可能になります。
→家のメンテナンス費用はどれくらい必要で、修繕するタイミングはいつがいい?
そのため、将来もできる限り手を加えたくないか、それとも生活スタイルに合わせて家を変化させていくか。
どちらがあなたに合っているかで小上がり和室の価値というものは変わってくるんですね。
また、段差を付ける場合は少しだけ段差を付けるというのが一番危険なケースとなります。
小さな段差だと視覚的に段差があることを認識しづらくなり、大きな段差よりも躓きやすくなるんですね。
そのため、小上がり和室にする場合は最低でも20㎝くらいは段差を付けるなど、小上がりになっていることがハッキリ分かる高さに設定することも大切です。
小さな子供がいる場合は目を配る必要がある
Photo:https://suvaco.jp/room/uG4rQjdA6p
小さなお子さんがいる家庭でも小上がり和室には注意が必要となります。
まだハイハイしかできない場合や、歩き始めたばかりの小さい子供だと、段差から落ちて怪我をしてしまうことがあるんですね。
もう少し大きくなると段差を使って遊んだり飛び跳ねたりと小上がり和室は体も鍛えることができる遊び場として使うことができるのですが、それまでは小上がり和室で寝かせる時は頻繁に目を配るようにしたり扉をできるかぎり閉めて定期的に様子を見に行ったりするなど、小上がり和室から落ちないように配慮する必要があります。
小上がり和室にするには費用がかかる
普通の和室と比べると小上がり和室にするには一段高くする必要がある分だけ費用が必要となってきます。
この費用は住宅会社によってかなり違いがあり、オプションとして数十万円単位の費用が必要になることもあれば、10万円〜20万円以内でおさまることがあるなど様々です。
(ハウスメーカーでは費用が高く、工務店では10万〜20万円くらいのケースが多いです)
また、小上がり和室の下に収納を付けるかどうかでも価格は変わってきます。
そのため、小上がり和室にするのに必要な費用はどれくらいなのか知った上で、小上がり和室にするかどうかの判断ができると一番良いですね。
(例えば、小上がり和室の収納を作るのに何十万も掛かるのであれば、家を大きくして収納を作るなど他の方法も考えられます。まずは必要な費用を明確にしておくことで判断材料となってくれるんですね)
外観のバランスが崩れることがある
これは小上がり和室が道路側など外からよく見える位置にある場合のケースですが、小上がり和室は段差がある分だけ窓の設置位置が高くなり、外観のバランスが崩れることがあります。
どういうことか具体的に見てみましょう。
例えば、次のような外観の家があるとします。
では、この家の正面から見て左側の位置に小上がり和室を配置すると窓はどう変化するでしょうか?
答えは、下の画像のように窓の高さが他の窓とズレるようになります。
また、小上がり和室の段差の分だけ地面からも高くなるので、小上がり和室から外に出るようにする場合はウッドデッキなど足場となる物も必要になってきます。
このように、小上がり和室は高さが違う分だけ窓の位置も変わり、外観や外構にも影響が出てくることがあるんですね。
先ほどの外観の家は小上がり和室以外の窓をできる限り揃えたり、バルコニーの手すりを軽く見せるなど外観が整うように描いているので小上がり和室の窓がズレても外観に影響が出にくいようにしてありますが、実際に他の窓が大きくズレたりバルコニーの手すりが野暮ったくなってしまった場合は外観のバランスは大きく崩れてしまいます。
そのため、小上がり和室が道路側など目立つ部分にくる時は、窓の配置や外観のバランスなどを全体的に整えてあげる必要があるんですね。
これは小上がり和室の位置や外観にこだわるかどうかにもよりますが、小上がり和室にする場合は頭に入れておきたい事と言えます。
小上がり和室が合うケース、合わないケース
それでは最後に、小上がり和室が合うケースと合わないケースについて見てみましょう。
小上がり和室が合うか合わないかの判断基準としては、和室の広さが大きく関係してきます。
例えば、4.5帖くらいの和室であったり、それより小さな畳コーナーを作るという場合では、小上がり和室にした方が断然空間に馴染むようになります。
LDKでは居心地のよい場所をどれだけ沢山作れるかで家族が集まるLDKになるかどうかが変わってきますが、天井の低い小さなスペースというのは籠り感も出て落ち着く居心地のよいスペースになりやすいんですね。
(特に畳コーナーくらいの広さであれば小上がりにした方が良いケースがほとんどです)
一方、広い和室の場合は小上がり和室にすると面積の割に天井高が低くなってしまうため、小上がりにすることで返って圧迫感を感じる原因ともなってきます。
また、和室に居る人とソファやダイニングテーブルといったLDKに置いてある家具からも距離が離れるので視覚的にも家具に圧迫感を感じることは無くなるため、小上がり和室にするというメリットもかなり小さくなります。
そのため、和室を広く取るのであれば小上がり和室にせずにフラットな和室にした方が見た目、使い勝手共に向上します。
このように、まずは広さによって小上がり和室が合うかどうかが変わってくるんですね。
Photo:http://tagle.jp/house/sks00000070021
また、ダイニングテーブルを置くかどうか、ソファは置かずに床に座って生活するかなど、生活の重心をどれくらいの高さに設定するかでも、小上がり和室が合うかどうかも変わってきます。
LDKで床に座る生活をするのであれば、和室もフラットな方がバランスが良くなりますし、リビングだけ1段下げるという場合なんかでも、和室はフラットの方がリビングとの距離感が近くなります。
その他、小上がり和室にする場合に気をつけたいのが和室の配置について。
小上がり和室にする場合は小上がりにした角の部分が生活の邪魔にならないかどうかもチェックしておきたいポイントなんですね。
たとえば下の画像は小上がり部分の角を斜めにして足をぶつけにくいようにしているなど配慮されていますが、何も考えず動線の重なる部分に小上がりの角が出てきてしまうと怪我の原因にもつながるケースもあります。
Photo:https://www.ohno-sekkei.com/original10.html
そのため、小上がり和室にする場合は小上がりにして危険ではないのかどうか、シックリくるのかどうかを予めチェックしておきたいですね。
→その間取りは動線が考えられていますか?家の間取りと動線について
このように小上がり和室は段差が魅力になる反面、段差がデメリットになるケースもあるので、段差が付くことでその空間の魅力がどれだけ増すのかどうか。
この部分を考えてみると、小上がり和室が合うか合わないかの判断がしやすくなりますよ。
まとめ
今回は小上がり和室について見てきました。
和室を小上がりにするかどうかの判断基準としては、まずはその和室が広いのか、それとも広くないのかで小上がり和室にする価値はかなり変わってきます。(小さければ小さいほど小上がりにした方が空間に馴染みやすいです)
その上で小上がり和室のメリットに魅力を感じるかどうか。
これが小上がり和室を検討する時に大事なことなんですね。
同じフロアに段差があるというのは結構楽しいものです。
小上がり和室にする場合は、その段差をいかに楽しいものにできるかどうかを考えてみると、より遊び心のある小上がり和室にすることができます。
小上がり和室にするなら、ぜひ魅力的な楽しい小上がり和室を目指してみてくださいね。
では。
和室についてはこちらも参考にしてください。
→和室、畳コーナーの広さはどれくらい必要?2畳から8畳まで比べてみました
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建築士が実際に見てきた全国の優良工務店を掲載。
家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
→注文住宅を建てる前に必ず知っておきたい!注文住宅のメリットとデメリット
建築士が教える今日の問題解決
小上がり和室のメリット、デメリットって何?
- 小上がり和室は段差ができることで空間にメリハリを付けることができ、家具が多いLDKと相性が良い。
- 段差ができるので、老後や小さな子供がいる場合に注意が必要。
- 狭い和室は小上がり和室が、広い和室はフラットな和室が合う。
- 小上がり和室は段差をどれだけ活用できるかがポイント。