「勾配天井にするかどうか迷っているのですが、勾配天井にはどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか?」
読者さんからこのような質問をもらいました。
勾配天井のある家は空間が横だけでなく縦にも広がるので普通の部屋とは違った雰囲気になりますし、何より開放感が出るので、勾配天井を作ることで家の魅力をかなりUPさせることも可能となります。
その一方、勾配天井にはデメリットもあるのでデメリットも頭に入れた上で勾配天井を採用するかどうか考えるのも大切なポイントになってきます。
そこで今回はそんな勾配天井の魅力と、勾配天井を作るときに注意しておきたいポイントをご紹介したいと思います。
それではどうぞご覧下さい。
勾配天井って何?
勾配天井というのはその名前のように、天井が屋根の勾配合わせて斜めになっている天井の事を言います。
勾配天井は本来は屋根裏としてデッドスペースになっているスペースを部屋の空間として使っている訳なんですね。
その分だけ天井が高くなりますし、場合によっては梁と呼ばれる家を支える構造材などが部屋に見えてくることもあります。
そのため、勾配天井の部屋と普通の平らな通常の天井とでは部屋の雰囲気が結構違ってきます。
ではまず、勾配天井ではない一般的な天井高さの部屋と比べてみましょう。
どうですか?先ほどの勾配天井のある部屋と比べて雰囲気がかなり違いますよね。
このように勾配天井にして天井の高さに奥行きをだすだけで、部屋の雰囲気は大きく変わることが分かります。
勾配天井のメリット
それでは次に、勾配天井のメリットを見ていきましょう。
勾配天井にはどんなメリットがあるんでしょうか?
部屋に開放感が出る
勾配天井の一番のメリットは部屋に開放感が出ること。
同じ広さの空間でも、勾配天井だとタテ(上部)に視線が抜けるので広くて開放感を感じるようになるんですね。
やはり開放感のある空間にできることは、勾配天井の一番のメリットと言えます。
部屋を明るくできる
その他の勾配天井のメリットとしては、部屋を明るくできるということが挙げられます。
天井を勾配天井にすることで、高い位置にも窓を付ける事ができるようになるからなんですね。
本来であれば窓が付けられなかった場所に窓が付くので、その分部屋を明るくすることができるようになります。
勾配天井に窓を設けることで、部屋を明るくする時によく使われるトップライト(天窓)に近い効果が得られるという訳なんですね。
また、高い位置に窓があると2階リビングだとさらにリビングが明るくなりますし、周りの家の影響で明るさを確保しにくい平屋の家なんかでも家の中に光を入れられるのでオススメです。
→平屋住宅のメリットとデメリット。知っておきたい平屋の真実。
視線が抜ける
勾配天井には視線が抜けるというメリットもあります。
本来は天井で隠れてしまう部分も部屋の空間になるので視線が抜けやすくなりますし、さらには高い位置に窓をつけてあげると外まで視線が抜けるようになるんですね。
しかも窓の位置が高いので、窓から見えるのはお隣の家など建物ではなく空が見えることが多いのも魅力の1つです。
家の中から空が見えると気持ちがいいですよね。
夜には窓から月が見えるので、家の中から見るお月見を楽しみにしているなんて方もいらっしゃいます。
通気が良くなる
勾配天井でできた高い位置に開けられる窓を付けてあげることで、部屋の中の通気が良くなり家の風通しが良くなるというメリットもあります。
理由は、暖かい空気は上へ。冷たい空気は下に動くからです。
そのため、家の一番高い位置に開けられる窓があると家の中の熱い空気を外に出すことができ、家の中で空気が動くようになります。すると、より新鮮な空気が家の中に入ってくるようになります。
部屋の中で風が抜けると気持ちいいですよね。
勾配天井に窓をつけてあげることで家を快適にしてくれる効果があるんですね。
2階リビングとの相性が良い
勾配天井は2階リビングとの相性が抜群に良いのも魅力の1つです。
たとえばリビングが1階の場合、勾配天井にできるのは平屋などリビングの上が屋根になっている場合に限られてしまい、総2階の家なんかではリビングを勾配天井にすることができません。
その一方で2階リビングの場合、リビングの上は全て屋根になるので勾配天井にするのも容易なんですね。
また、勾配天井が作りやすい上に、高い位置に窓を設けても見えるのは隣の家ではなく「空」である場合がほとんどです。
その結果、2階リビングの家に勾配天井を作ることで、より開放感のあるリビングにすることができるんですね。
このように、2階リビングと勾配天井はとても相性が良いと言えます。
また、リビングにロフトを付けたい時なんかも勾配天井が活躍します。
勾配天井で開放感が出る上に、ロフトがあることで奥行き感もプラスされて相乗効果が生まれるんですね。
ロフトを作る時に1番もったいないのは使わないロフトになってしまうことです。
勾配天井を通してリビングとロフトが繋がることでロフトが子供の遊び場になったり書斎のような使い方ができたりなど、ロフトの使い方の幅が広がるのも魅力の1つです。
→ロフトのある家って実際どうなの?100棟以上見てきた正解がコチラです。
勾配天井のデメリット
ここまで勾配天井のメリットを沢山見てきましたが、勾配天井にはデメリットも存在します。
それでは次に勾配天井のデメリットについて見ていきましょう。
高いところのメンテナンスに手間がかかる
勾配天井にした場合、気をつけたいのが天井の高い部分のメンテナンスに手間がかかるということです。
特に高いところに付いた照明は掃除や取り替えが結構大変。
今はLED照明が主流なので頻繁に電球が切れる事はありませんが、照明の位置が高い場合が多いので電球の取り替えの際はよく注意しながら交換するか、家を建ててもらった住宅会社や工務店に依頼する必要があります。
また、梁などが出ている場合は梁の上にホコリが溜まる事もあるので、ホコリが溜まりにくいように空気を頻繁に動かすか、ホコリが溜まらないようにマメに梁の掃除をしておきたいですね。
その他、壁紙を張り替える時も普通の天井よりも手間が掛かってしまいます。
お金がかかる
勾配天井は平天井と比べるとお金がかかります。
単純計算で考えても勾配天井にすることで壁の面積が増えるので、その分コストアップになりますし、天井が高くなると壁紙を貼ったりする仕上げ作業に足場が必要となります。
天井が高いとさすがに脚立では危険ですし作業効率も上がらないので家の中に足場を組むことになるんですね。
このあたりの費用がプラスされるので、勾配天井にするとコストアップに繋がってきます。
照明計画が難しい
勾配天井の場合、天井が高くなるので部屋としての空間が広くなります。
そのため普通の部屋よりも照らす部分が多くなり、照明計画をしっかり作らないと中途半端な空間になってしまうことがあります。
また、どこに照明を配置するとか、部屋の明るさを確保しつつどこを照らして雰囲気のいい空間をつくるなど、普通の部屋よりも照明計画の難易度が高くなります。
その他にも勾配天井の照明計画で気をつけたいのが地震対策について。
上の写真は勾配天井を上から眺めた写真ですが、天井から吊るされている照明器具に何やらワイヤーのようなものがついているのが分かるでしょうか?
これは、地震のときの振れ止め用のワイヤーです。
かなり高さのある勾配天井の場合、天井から照明器具を吊るすとコードがかなりの長さになってきます。
何も無ければそのままで問題ありませんが、日本は地震の多い国です。
ひとたび大きな地震が起こると、天井から吊るされた照明器具は家が揺れる事でグルングルンと回ってしまう事があるんですね。
特に照明器具が割れてしまうと部屋にいる人にとって凶器になってしまってとても危険な状態になります。
そうならないようにワイヤーで照明器具を固定しているんですね。
このように勾配天井にした場合、照明計画は光の照らし方はもちろんのこと、安全性も考えるのが大切になってきます。
勾配天井にする時に気をつけたい事
ここまで勾配天井のメリット、デメリットを見てきました。
では、そんな勾配天井の特徴を踏まえた上で、実際に勾配天井にする時に気をつけたい事について見ていきましょう。
勾配天井は意外とクセがあるので、勾配天井が合うケース、合わないケースというのは意外とハッキリ分かれてきます。
個室は勾配天井じゃなくてもいい
勾配天井にする場合、部屋の上が屋根なら勾配天井にすることは可能になりますが、注意したいのがどこでも勾配天井にすれば良いと言う訳ではないという事。
特に寝室や子供部屋などの個室は勾配天井にしない方が落ち着く空間になりやすいです。
寝るのがメインのそんなに広くない空間で天井だけが高いと、何だかアンバランスで落ち着かない空間になってしまうんですね。
逆に天井の高さを抑えた方が落ち着いた空間になり、「寝るための部屋」という用途を考えると天井が高い必要はありません。
ですので、寝室や子供部屋を勾配天井にしたりロフトをつくる場合、本当に必要か一度振り返ってみるのも大切です。
→ロフトのある家って実際どうなの?100棟以上見てきた正解がコチラです。
リビングでは効果が大きい勾配天井も個室では勾配天井にする意味はあまり無いんですね。
それなら勾配天井分の予算を他に使った方がコストパフォーマンスの高い家にすることができます。
それでも個室を勾配天井にしたいという場合、これくらいの広さがあると勾配天井の効果が出てくるようになります。
個室を勾配天井にするなら広い部屋を勾配天井に。
あまり広くない部屋は、本当に必要なのかよく検討する。
これが勾配天井で失敗しないためのポイントなんですね。
屋根の勾配が低いと効果が少ない
勾配天井にする時に意外に忘れがちなのが、屋根の勾配と勾配天井の関係です。(屋根の勾配とは屋根の角度の事を言います)
勾配天井は通常、屋根の勾配に合わせて天井をつくるので、屋根の勾配次第でどれだけの高さが取れるかが決まってきます。
そのためせっかく勾配天井にしても、屋根勾配が低いとあまり勾配天井らしさは出なくなってしまいます。
たとえばこんな感じですね。
勾配のある場合と比べると一目瞭然ですね。
そのため、勾配天井にする場合はどれくらいの高さがとれるのか事前に確認しておくと失敗が少なくなります。
また、勾配が奥へと伸びるほど広がりが出るようになるので、屋根の向きというのも勾配天井にする時のポイントの1つです。
その他、勾配天井は屋根の形の影響を大きく受けます。
屋根が片流れ屋根なら一方向に高い勾配天井に。
屋根が真ん中で折れ曲がっていたら、部屋の真ん中が一番高い勾配天井にという風に、勾配天井の形は屋根の形次第になってきます。
そのため、勾配天井は屋根の形も重要になってくるんですね。
勾配天井の範囲は広い方がいい
勾配天井にする場合、通常はどれだけの広さを勾配天井にするかを決めることになります。
構造的に支障がなければ広範囲を勾配天井にすることも可能となりますし、その一方で構造的に少しの範囲しか勾配天井にできない場合なんかもあります。
また、予算の関係で一部分を勾配天井にするというケースも。
このように勾配天井の範囲というのは色んなケースがありますが、勾配天井はでfきれば広く、また綺麗な形にすると、雰囲気の良い勾配天井を作ることができるようになります。
例えば、部屋の真ん中の一部分だけが勾配天井になっていると天井が凸凹に見えてしまい、お洒落な空間にするために勾配天井にしたのに返って逆効果になってしまうなんてことも。
そうならないためにも勾配天井がどう見えるのかどうか。
この部分は必ず確認しておきたいですね。
家の性能が問われる
勾配天井の家にする場合、部屋の容積が増えるので家の断熱、気密性能が問われるようになります。(断熱、気密を家のどこで取っているかでも変わってきます)
これは吹抜けでも同じですね。
そのため、断熱性能の悪い住宅会社で勾配天井をつくってしまうと部屋がなかなか暖まらないなんて事も。
一方、性能のいい家は平天井と比べると部屋が暖まるのに多少時間がかかりますが、勾配天井のせいで寒いなんてことにはならないのでご安心を。
勾配天井の場合、高い位置の窓にはカーテンをつけることはあまり無いので、簡単に家の性能をあげるなら窓のグレードを高い物にしてあげるのもいいですね。
このように、勾配天井をつくるなら家の性能が高い会社を選ぶ事が重要です。
まとめ
今回は勾配天井についてメリット、デメリットを踏まえながら詳しく見てきました。
勾配天井は部屋が開放的になるので、家を建てる時にはかなりおススメの手法と言えます。
特に2階リビングにするなら天井は勾配天井を採用すると雰囲気が格段に良くなります。
もちろん勾配天井にもデメリットはありますが、しっかり注意しておけばそんなに問題になる事はありません。
皆さんもぜひ一度、勾配天井を検討してみてくださいね。
では。
家の内装が気になる方はこちらも参考にしてください。
→新築の内装はどうすればオシャレに見える?内装を決める時の6つのポイント
勾配天井の照明についてはこちらの記事もご覧ください。
家づくりに役立つ最新情報をTwitterでも発信しています。
建築士が実際に見てきた全国の優良工務店を掲載。
家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
→注文住宅を建てる前に必ず知っておきたい!注文住宅のメリットとデメリット
家づくりで失敗したくない!そんな方こそ、間取りが重要です。
建築士が教える今日の問題解決
勾配天井のメリットとデメリットって何?
メリット
- 部屋に開放感が出る。
- 部屋が明るくなる。
- 通気が良くなる。
- 2階リビングと相性が良い。
- ロフトも一緒につくると、より相乗効果が生まれる。
デメリット
- 高いところのメンテナンスに手間がかかる。
- お金がかかる。
- 照明計画が難しい
- 個室など、狭いスペースを勾配天井にすると落ち着かない。
- 屋根の勾配に注意が必要。
- 性能が高い家にしないと、冷暖房の効率が悪くなる。