家づくりは家族にとっての一大イベント。
新しい家での暮らしを考えるのはとてもワクワクするものですよね。
今回はそんな家づくりの流れについて、建築士がポイントを押さえながら楽しく解説していきます。
家づくり中の方も、いつか家づくりがしたいという方も、家づくりが少しでも気になる方はぜひご覧ください。
家づくりは何から始める?
家づくりで最初にすること。
それは、「どんな家に住みたいのか」というのを明確にするということです。
新しい家での暮らしをイメージをすることで、家づくりの方向性が見えてくるからなんですね。
家づくりでは、途中で「これでいいのかな?」、「本当に大丈夫なのかな?」と迷ってしまうこともよくあります。
そんな時「どんな家に住みたいか」という目的がハッキリしていれば、家づくりの方向性がズレてしまっているのか、それともブレずに進んでいるかが判断できるので、もし家づくりで迷ってしまったとしても、その迷いを振り払うことができます。
「どんな家に住みたいか」というのが、これからの家づくりの道標となってくれるんですね。
そして「どんな家に住みたいか」というのは、できれば家族で一緒に話をしたいものです。
そうすることで家づくりが家族みんなのプロジェクトとなり、同じ方向を見て家づくりを進めることができるようになるからなんですね。
もちろん、お互い一人の人間ですので意見の食い違いや好みの違いというのも当然あります。
そして、場合によっては一悶着が起こってしまう場合も。
でも、一悶着起こるということは真剣に家づくりを考えている裏返しですし、本音で話すことでお互いに家についてどう思っているより分かるようになります。
お互いのこだわりたい部分は任せるなど、メインの担当を決めるのも良いですね。
家づくりは一人でできる物ではなく、また、家はそこに住む家族みんなが毎日楽しく過ごすための物なので、家族みんなの「納得感」というのはとても大事になります。
(納得感の少なさが、家が出来てから不満を感じる大きな原因の1つです)
このように、まずは「どんな家に住みたいか」。
細かい部分はもちろんその時点で決める必要はありませんが、大枠のテーマというのは家づくりを始める時に家族で共有しておきたい部分なんですね。
ちなみに家づくりでよく起こる失敗が、「どんな家に住みたいか」という部分がハッキリせずにモデルハウスに行ってしまうこと。
では、「どんな家に住みたいか」を家族で共有する前にとりあえず最初にモデルハウスを見にに行くとどうなるでしょうか?
ゼロからのスタートなので、目に入って気に入った物、良いなと思った物に目移りしてしまい、見た目の良い住宅会社が良い家を建てているように見えてきます。
そして「何となく良さそうだし、予算も合いそうな感じだからここで良いか」となってしまうんですね。
「そんな簡単に?」と思うかも知れませんが、住宅展示場に入っている住宅会社の営業マンは、基本的にしっかり教育を受けています。
最初の挨拶から家を契約するまでの流れが徹底的に訓練されているんですね。
そんな訓練された営業マンに、何も知らない人が営業を受けるとどうなるでしょうか?
しかも押し売りのような訪問販売ではなく、自分たちから興味を持って営業されに行った状態です。
説明された物が良いようにどうしても見えやすくなってしまいますよね。
その結果、「あとでこれが私たちの建てたかった家なのかな?」と疑問に感じてしまうケースがとても多くなります。
そうならないためにも、まずは「どんな家に住みたいか」という目的を家族でハッキリさせておくのが大切なんですね。
そうすれば、いろんな住宅会社を見たとしても「自分たちの建てたい家を作ってくれる会社はどこか」という視点で見ることができるので、変なセールストークで惑わされることもありません。
このように、実際に住宅会社に足を運ぶのは、家を建てる目的を明確にしてからでも全く遅くないんですね。
家を建てる土地
家を建てる場合、土地を探してから家を建てるというケースも多くあります。
では、そんな場合はどうすればベストなのでしょうか?
基本的に土地は「すでに売りに出されている土地」と、「新しく出てきた土地」という2つに分かれます。
そして土地は基本的には早い者勝ちで申し込んだ順番で購入者が決まります。
新しく出てきた土地が掘り出し物だった場合、いいなと思って不動産屋へ行った時点で売れてしまっていることもあるんですね。
ただ、土地を買うというのは大きな買い物ですし、そんなすぐに決断するのは難しい物です。
そのため、土地の購入の良し悪しを判断してくれるパートナーがいれば心強くなりますし、判断も早くすることができます。
では、そのパートナーは誰なのか?
実はそのパートナーは不動産屋ではありません。
家を建てる住宅会社がベストなパートナーとなってくれるんですね。
たとえば土地が出た時にあなたの建てたい家について詳しく知っている住宅会社であれば、その土地が希望を叶えることができる土地なのかどうか判断するのは難しいことではありません。
たとえ土地の条件が悪くても設計の工夫でカバーできるという情報をもらうこともできれば、一見良さげな土地に見えても法規など規制で希望を叶えるのが難しい土地というようなアドバイスをもらう事も可能なんですね。
その結果、スピーディーに土地購入の判断ができるようになります。
そうすることで、あなたにとって価値の高い土地を手に入れられる可能性もグッと上がるんですね。
多くの方の家づくりに携わる建築士の私の経験上、土地探しは本当に縁とタイミングというのがとても大きいと実感します。
そのチャンスを活かすために、土地探しから家づくりを始める場合は土地探しと並行して家を建てる住宅会社も探していく。
そして一緒に家を建てるパートナーが見つかることで、土地探しをよりスムーズに進めることができるようになるんですね。
一方、家を建てる土地がすでにある場合はまた違った視点で土地を見る必要があるので、そのポイントをうまく押さえるのが家づくりで重要になってきます。
→まずはコレ!土地ありの人が予算内で家を建てるために知っておきたいこと
家の間取り
ある程度家を建てる住宅会社が絞り込まれてくると、次は間取りについての打合せをすることになります。
そしてそんな間取りの打合せ方法については住宅会社によって様々です。
たとえば、設計士が同席して要望を色々とヒアリングしてくれるケースもあれば、営業マンに希望を伝えて設計士が間取りを作るなど、住宅会社によって方針が様々なんですね。
ベストはもちろん間取りを作る設計士が直接ヒアリングしてくれるケース。
そして一番不利なのは、営業マンなどの人を介して設計士に要望を伝えるケースです。
たとえば設計士が間取りを作るためにもう少し聞きたいことがあるとします。
それを設計士が営業マンに聞いても、あなたが本当に思っていることと同じ回答をするとは限りません。
そうなると出てくる間取りというのは、本当にあなたが住みたいと思っている家と違ってくることになるんですね。
伝言ゲームになればなる程、良い間取りができる可能性が下がるというのは、意識しておきたい部分と言えます。
その後、伝えた要望を元に間取りが作成されます。
そして、いよいよ間取りがお披露目の日。
やはり、この家に住みたいなと思える良い間取りと思える間取りに出会いたいものですよね。
その一方、残念ながらイマイチしっくりこない間取りが出てくることもあります。
では、間取りは何を見て判断すればいいのでしょうか?
良いと感じる間取りには、必ず理由があります。
そして、イマイチと感じる間取りにも必ず理由があります。
間取りが出てきた時は、この家が良いと思える理由があるかどうか。
この部分をしっかり見てみると、このまま進めて良い間取りか、それとももう一度やり直した方がいい間取りかの判断が付きやすくなります。
ちなみに少し余談となりますが、間取りを作る建築士は一からやり直しになる回数が多いほど見ていて疲弊していきます。
間取りの作成二回目はこんな感じでも、
三回目になるとこんな感じに。
それ以降も続くとこんな感じになっていきます。
間取りが上手くいかないというのはお施主さんだけでなく、設計士にとってもダメージは大きいんですね。
ただ、間取りを一からやり直しというのは、建築士の私から見ると基本的に二回くらいまでが限度のように感じます。
二回でも間取りの方向性がしっくり来ない場合、だいたい理由は次の3つ。
- 設計士との相性が悪い
- 設計士の実力不足
- 住宅会社の設計方針が合わない
二回も間取りの方向性が合わない場合、上の三つのうちのどれかに当てはまることがほとんどなので、設計士を変えてもらう、もしくは他の住宅会社を検討するなどの判断をするのも一つの方法と言えます。
間取りが出てくる時というのは家づくりの中でも一番ワクワクする時間です。
そんな時間を楽しませてくれるように日頃から考えている担当者、会社なのかというのも、会社選びの重要なファクターだと私は感じます。
家のお金のこと
間取りが出てくる時、基本的にはその間取りの家を建てるのにどれくらいの金額が掛かるか見積りも出てくることがほとんどです。
どれだけいい間取りでも金額が合わなければ家は建てられないので、見積もりも一緒に出てくるんですね。
そして多くのケースでは、見積もり金額と言うのは予算オーバーして出てくることほとんどです。
その理由としては、やはり家の最初の段階なので夢は膨らみますし、希望は余すことなく伝えたいと思うのが普通なのでいろんな要望を詰め込んだ間取りになり、その結果、予算オーバーしてしまうんですね。
もっとも、住宅会社側からしてもできる限り予算内に抑めたい物です。
間取りと見積もりを出す前に、予算内に納めるにはどんな方法が考えられるか担当者同士会議をしている姿もよく見かけます。
そしてそういった提案も受けながら、予算に合わせた家を建てるために間取りや仕様をブラッシュアップしていくことになります。
予算について家族会議を行うことになるんですね。
予算会議なのであまり楽しい物ではありませんが、実は予算会議をすることで「本当に必要な物」、「あれば良い物」というように家の中の優先順位がハッキリしてくるようになります。
時には採用を見送る物も出てくることもありますが、それだけ必要な物が詰まったコストパフォーマンスの高い家になるというのも事実です。
こうして、本当に必要な物が入った家というのが出来上がるんですね。
そして間取り、仕様、金額で合意が取れた住宅会社と「家の請負契約」を結ぶことになり、家づくりを一緒に進めていくパートナーとなります。
請負契約を結ぶタイミングは住宅会社によって様々で、早い段階で請負契約を結ぶ会社、パートナーとして家を建てる意思表示を早い段階でもらい最後に請負契約を行うなど、住宅会社の個性が出る部分でもあります。
ちなみに金額が合わない場合、月末や年度末だからと大幅な値引きを提示されることもあります。
建築士である私ととしては、「この人の家を絶対建てたい」などすごく納得できる理由がある場合は別として、月末だからなどの理由での値引きは微妙というのが色んな住宅会社を見てきた正直な感想です。
家の値引きについては下の記事にまとめているので、気になる方は参考にしていただければ幸いです。
→注文住宅は値引きしてくれるものなの?値引きについての本音の話
家の詳細決め
家の間取りが決まると、次は家の詳細を決めていくことになります。
たとえば床や壁の色であったり、キッチンといった設備の細かい部分を決めていくんですね。
そして、この決める部分というのは住宅会社によって様々です。
床や壁紙といった内装の色をいくつかのパターンの中から選ぶだけという事もあれば、床や壁紙の素材を何にするかという部分から決めていくこともあります。
そしてこの詳細決めは後でミスマッチに感じやすい部分です。
たとえば自由に決められると思っていた人にとっては色を選ぶだけだと物足りないですし、サクサク家づくりをしたい方にとっては何でも決める必要があるのは手間に感じることもあるからなんですね。
そのため間取り以外にどれくらいの事を決めるのか、そして打合せはどのくらい行うのかは住宅会社を決める前に必ず確認しておきたい部分になります。
(どれくらい決める事が有るのかは家の種類によって違いが出るので、あらかじめ頭に入れておくとよりスムーズです)
→あなたに合っている家はどれ?家は注文住宅だけでは無いんです
こうして家の全てが決まると最後に図面に確定のハンコをついて、いよいよ家の着工準備に入ります。
これまで決めてきたことにハンコをつくのは中々感慨深いものですし、家づくりの中でも一区切りつく場面となります。
それと同時に、住宅会社では設計した家を工事する許可を取るために役所関係に申請業務を行います。
家を建てる土地によっては様々な制約のある土地もあり、制約が多いほど申請に時間が掛かるようになるので、着工から引っ越しの大まかな予定というのは間取りが決まった段階で確認しておきたいですね。
また、国の補助金などをもらう場合も余分に時間が掛かる場合もあるので、どんな申請があるのか。
そして申請料は必要なのかなども合わせて確認しておけるとベストですね。
家の着工
家の工事の許可が下りると、いよいよ家の工事の着工です。
着工前のイベントとしては、地鎮祭と近隣の工事の挨拶というのが主なイベントになります。
たとえば地鎮祭は神主さんを呼んで工事の安全を祈願する儀式です。
地鎮祭を行うかどうかはお施主さん次第で、神主さんを呼んで地鎮祭をする方、自分たちで簡単に土地のお清めをする方、地鎮祭は行わない方というように分かれます。
自分の家の地鎮祭は一生に一度あるか無いかなので、個人的には一度体験されても良いと思います。
また、工事の近隣挨拶は基本的に住宅会社がしてくれますが、時間があれば住宅会社と一緒に挨拶をしておくとベターです。
近隣の人もどんな人が近所に家を建てるのか気になるところなので、あらかじめ顔見せをしておくだけでも安心感はかなり違ってくるからなんですね。
地鎮祭と一緒に行えば、時間の節約にも繋がります。
こうして工事の着工準備が終わると、まずは家の基礎工事から始まります。
そんな基礎工事で多くの方が感じるのが、
「家の大きさが思ったより小さく感じるけど大丈夫かな」
という不安。
家は基礎の段階だと平面的なので、どうしても小さく見えてしまうんですね。
でも、ご安心を。
家の柱や屋根ができると、急に大きく見えるようになります。
家が立体的になることで、平面以外の広がりを感じることができるようになるからなんですね。
そして、家が上棟した時のイベントが上棟式。
上棟式とは家の一番高い棟が上がったお祝いのことですね。
どれくらいの式をするかは住宅会社にもよりますが、職人さんを軽くもてなしたり餅まきをする事もあります。
上棟式も地鎮祭と同じように開催するかどうかはお施主さん次第ですが、大工さんと顔合わせできること、またお子さんの思い出にもなるので、個人的には開催された方が色々プラスの面が多いように感じます。
また、工事中に現場に行く時は簡単な物でいいので差し入れがあるとベターです。
もちろん、職人さんにしてもお施主さんにお茶を持ってきて欲しいと思ってる訳ではありませんし、そのような教育をしている住宅会社もまずありません。
でも、自分が職人のプライドを掛けて仕事をしている中で、お施主さんがお茶を持ってきてくれたり、ねぎらいの言葉を掛けてもらう事を嫌だと思う人はいませんよね。
このような小さな気遣いだけでも、現場との関係はとても良くなります。
工事現場というのは、実はこのような気遣いを大切にする世界なんですね。
→家の工事中はお茶を持って工事現場へ行くと良い家になる理由って何?
家の竣工
家の工事が順調に進んで最後に待っているのが、お施主さんによる「施主検査」です。
たとえば家が図面通りできているか。
気になる傷や汚れが無いかをお施主さんが確認するのが施主検査なんですね。
引越した後に傷に気づいても、工事の傷なのか引越しの傷なのか分からなくなってモヤモヤしてしまうので、施主検査の時にしっかり確認しておくというのはとても大切です。
こうして施主検査の手直しを終えると、いよいよ家の竣工、引き渡しとなります。
引き渡しの際はテープカットを行ったり引き渡し式をしてくれる住宅会社あり、これまで経験してきた家づくりの苦労や間取りでワクワクしたことが思い出される瞬間でもあります。
ぜひ、これまでの家づくりの思い出とこれからの新生活に思いを馳せながら引き渡しを楽しみたいですね。
そして、いよいよ新しい家での新生活が始まります。
まとめ
今回は家づくりの流れについて詳しく見てきました。
家づくりにはポイントがあり、その時々でポイントを押さえることでスムーズに家づくりを進めることができるんですね。
ちなみに、家は建築工事が終わると「完成」でなく「竣工」と呼ばれます。
その理由は、日本では人が暮らす事で家が完成していくという文化が昔からあるからです。
家づくりは完成して終わりでなく、住んでからが本当のスタートになります。
現代の家でも竣工した時が最高ではなく、時間が立つほどに魅力が出る家を目指していきたいですね。
では。
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建築士が実際に見てきた全国の優良工務店を掲載。
家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
→注文住宅を建てる前に必ず知っておきたい!注文住宅のメリットとデメリット
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