「先日、注文住宅を建てる契約をビルダーとしたのですが、その際にかなりの額の値引きをしてもらいました。値引きをしてもらうのは正直ありがたいのですが、もしかしたら誰にでもこれだけ値引きしているのかなという疑問も浮かんでしまいました(私たち夫婦は値引きの交渉などは上手くありません)。注文住宅ではこれくらい値引きしてもらうということはよくあるんでしょうか?」
このような質問を読者さんからもらいました。
注文住宅を建てる時、確かに値引きしてもらうのはうれしいものですが、果たしてそれが本当にお得なのかどうかは家を建てる人にとっては謎ですよね。
注文住宅という定価のない物なので果たしてお得だったのかモヤモヤとした気持ちが残ってしまうのも分かります。
そこで今回は、今回の読者さんのような値引きが注文住宅では普通なのかどうか、またお得だったかどうかの判断の方法について詳しく見ていきたいと思います。
注文住宅の契約前や、これから注文住宅を建てるという方はぜひご覧ください。
注文住宅の値引きのタイミング
住宅会社が家を値引きしてくれる場合、それは「あるタイミング」の前である事がほとんどです。
では、「あるタイミング」というのはいつでしょうか?
そうです。家の契約前ですね。
家の契約書にサインをすることではじめて、家を建てたり買うことに効力が発生することになります。
家の契約後に住宅会社や工務店を変えることも可能ですが、契約後に解約をする場合は手付金の放棄などかなりの金額が必要となるため、一般的には一度契約した住宅会社や工務店で家を建てることがほとんどなんですね。
このような背景があるので、住宅会社や工務店、ハウスメーカーにとっては契約が1つの区切りとなり、契約前にいくつかの住宅会社や工務店と競合していれば自社を選んでもらうための1つの材料として、または背中を押す意味で契約前に値引きという話がよく出てきます。
そのため、注文住宅の契約後に値引きと言う話はまず出てくることはなく、注文住宅の値引きの話は家の契約前という事になります。
今回ご質問いただいた読者さんもこの例にもれず、注文住宅の契約前に値引きを受けていますね。
では、一般的には値引きを受けると「うれしい」と感じることがほとんどですが、ご質問のように値引きに疑問を感じてしまい素直に喜べないのはどうしてでしょうか?
次に注文住宅の値引きの実状について見ていきましょう。
注文住宅の値引きはお得なの?
今回の読者さんのように注文住宅の値引きで疑問を感じてしまう1番の原因は何でしょうか?
それは、注文住宅の価格設定は住宅会社の仕様や工法に色んな種類があるため、〇〇円という明確な定価がないことが大きな原因です。
例えば、注文住宅の価格を100万円値引きしてもらったとします。
その100万円は住宅会社や工務店、ハウスメーカーが利益を削って値引きをしたケースも考えられますし、反対に100万円を値引きしても全く問題無い価格を最初に提示していれば、住宅会社や工務店にとっては値引きをしても全く懐を痛めることはありません。
後者のケースでは予め本体価格に値引き分の利益が含まれているからです。
もちろん、契約を取りたいために利益を削って大幅な値引きをするというケースもありますが、その実際のところは住宅会社や工務店にしか分からないので、どうしても疑問が残ってしまうことがあるんですね。
身近で高額だけども値引きがよくある物というと車が思い浮かびますが、家と違い値引きに対して疑問が出ることは圧倒的に少なくなります。
車の場合は定価が分かっていますし比べるのも全く同じ車なので、単純に値引きの額だけを見れば問題ないからです。
一方、家の場合は定価がなく仕様もバラバラなので、値引きしてもらって実際にどれだけお得だったのかという実際の所は分からないんですね。
注文住宅の値引きは必ずされるもの?
注文住宅の場合、値引きについては大きく次の3種類の住宅会社や工務店、ハウスメーカーに分けられます。
- 値引きを一切しない会社。
- 担当者や上司の裁量によって数十万程度の値引きは可能な会社。
- 顧客によって100万単位の値引きをする会社。
以上の3つです。
会社によって値引きに対する方針というのはかなり違うんですね。
それでは1つずつ見ていきましょう。
まず、値引きを一切しない会社というのは分かりやすいですね。
どの顧客に対しても値引きはしないので交渉や駆け引きといったことは一切必要無く、単純に見積もりの金額を見ることになります。
このように、値引きをしない住宅会社や工務店、ハウスメーカーは分かりやすくていいのですが、意外とこのような会社はあまり多くないのというのが悩ましい所です。
その理由として、何社か競合している場合、一般的には先に価格を出す方が不利と言われています。
値引きは後出しできること、またインパクトも強いため、全く値引きをしない住宅会社や工務店というのは交渉の材料が少ない状態とも言えるんですね。(その分、ムダな打合せに時間を使わず、自社で家を建ててくれる人に力を集中できるという側面もあります)
そのため値引きを一切しない住宅会社は、自社のブランドや建てる家が全て。
このような割り切りが必要になるんですね。
値引きは一切しないという判断は経営者として難しい判断ではありますが、分かりやすく、どんな人にも平等なので、個人的にはこのような住宅会社や工務店には好感を持ちます。
次に、担当者や上司の裁量によって数十万程度の値引きは可能な会社について見てみましょう。
これまでいろんな住宅会社や工務店を見てきた中で、このような数十万程度の値引きをする会社というのが1番多いように感じます。
注文住宅の見積もりとひとことで言っても、複雑でこだわった家は予想外のことが起こりやすく利益が出にくい傾向がありますし、会社によって利益が出やすい家の形や仕様と言うものもあります。
経験則からその金額の増減を見越しつつ金額を調整できるのが「数十万円」という金額になってくるので、このくらいの値引き幅であれば素直に値引きに対して喜んでも良いと思います。
最後に、100万円単位での値引きについて見てみましょう。
100万円単位での値引きの場合、その値引きの理由をしっかり確認するのがポイントとなります。
単純に考えて、100万円以上の値引きというのは利益率が数%下がることになるので、誰に対してもできるものではありませんよね。
どうしてそんな高額の値引きができるのか。
この部分が会社の信用を左右してきます。
例えば、大した理由の無い値引きが隣で打合せをしている人にはされているのに、あなたには値引きが無かったらどう感じるでしょうか?
そんな会社は信用できないですよね。
また、本体価格を取りあえず高くして後で値引きというのも、家を建てるという信用がとても大事な事に対してやるべき事ではありません。
このような会社も怪しく見えてきますね。
そのため、高額の値引きの場合はその理由を確認することで、会社の信用を見ることができます。
高額な値引きの場合の一例を挙げてみると、その住宅会社や工務店、ハウスメーカーにとって宣伝効果の高い家(デザインや立地など大きなウリがある家)は大きな値引きが引出しやすいですし、規模の大きな会社だと目標数字へあと一歩という場合も高額な値引きをしているのをよく見かけます。
また、家の規模が大きく見積もりが高額な家の方が値引きも高額になりやすい傾向があります。
高額な家の方が利益の額も大きいため値引きをしやすいという事もありますし、何より高額な家を契約したいと思う会社は多いので値引きにも力が入りやすいんですね。
上記のようなケースが当てはまる場合は、値引きの額が大きくても問題ないケースと言えます。
このように、注文住宅の値引きは住宅会社や工務店によって違ってくるので、その会社の姿勢や信用度を見る1つの指標にもなってきます。
値引きがある場合は、どうして値引きしてくれるのか。
その理由をしっかり確認しておきたいですね。
まとめ
今回は「注文住宅の値引き」について見てきました。
注文住宅は数千万円の買い物となるので値引きがあると単純にありがたい話ではありますが、住宅会社や工務店、ハウスメーカーによって値引きの姿勢はかなり違いがあるんですね。
特に月末は家の契約について迫られやすい時期でもあります。
→失敗に注意!どうして月末に家の契約を迫られることが多いの?
注文住宅は一度決めてしまうと簡単に変更ができないもの。
「値引き」という言葉に魅せられるのではなく、「どうして注文住宅を建てるのか」。
この部分がブレないように家づくりをしていきたいですね。
では。
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家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
建築士が教える今日の問題解決
家は値引きされるものなの?
- 値引きの有無、値引きの金額の大きさは住宅会社や工務店の考え方による。
- 値引きの理由を明確にすることで、値引きの妥当性や会社の信用が分かる。
- 「値引き」という言葉に惑わされるのではなく、「家を建てる目的」を常に意識した上で判断をする。