ここ最近、「玄関に手洗いが欲しい」という方がかなり増えています。
新型コロナ以降、家に帰ってくるとまずは手を洗って汚れを落とし、それから部屋に入るようにしたいというニーズが高まっているんですね。
実際に建築士である私の経験から、家づくりをしている方で玄関に手洗いを付けたいという方はコロナ前は2〜3割くらいでしたが、今では半分以上の方が玄関に手洗いを設置されています。
その一方、手洗いはただ作ればいいという訳ではなく、作り方によって使い勝手や玄関の雰囲気というのは大きく変わってきます。
今回はそんな玄関の手洗いの効果的な作り方と、手洗いを作らない場合の代用方法について詳しく見ていきたいと思います。
玄関に手洗いを設置するメリット
それではまず、玄関に手洗いを設置するメリットから見ていきましょう。
玄関に手洗いが欲しいという場合、次の3つが主な理由になってきます。
- 家に帰って手を除菌する(ウイルス対策)。
- 外の汚れを玄関で落としたい。
- 家に帰ってすぐ手を洗うことを習慣づけたい。
以上の3つですね。
では、この3つに玄関の手洗いはどれくらい有効なのでしょうか?
家に帰ってからのウイルス対策
やはり玄関に手洗いを付ける理由で一番多いのがウイルス対策に効果が大きいからという理由です。
実際に手を洗うことでウイルスを激減させることができるので、玄関で手を洗うと言うのはウイルス対策にとても効果があります。
また、玄関という家の入口で手を洗うことで家の中までウイルスの侵入を防ぎやすくなるというのも大きな魅力です。
外の汚れを玄関で落としたい
ウイルス対策以外にも、外での汚れを玄関で落としたいという要望は根強くあります。
特にお子さんがいる場合は外でどろんこになって帰ってきたり、運動部に入っていたりするとドロドロになって帰ってくることもよくあるので、玄関に手洗いが欲しいと思う気持ちはよく分かります。
もちろん、そんな時も玄関に手洗いがあると便利なのですが、玄関の手洗いで注意したい事が1つあります。
それは、玄関手洗いのサイズについて。
たとえばサイズが小さい手洗いでゴシゴシ洗うと、壁に水跳ねしてしまうケースもよくあるんですね。
そうなると、ドロドロの汚れは玄関で落とすのが難しく、最終的に洗面所でしっかり洗う必要が出てきてしまいます。
(実際、旦那さんが外仕事をされてて汚れて帰ってくるというご家庭では、玄関に手洗いではなく玄関横に洗面室が欲しいというニーズの方が高いです)
そのため外の汚れを玄関でしっかり落とす場合、大きいシンクのしっかりした手洗いを玄関に作るか、玄関横に洗面室を作るというのが正解になってくるんですね。
手洗いを習慣づける
家に帰って手洗いを習慣づける場合、やはり玄関に手洗いがあるというのはマストです。
(特に、医療系で働いている方など衛生面に気を使う仕事をされている方は、手洗いが習慣になっているので玄関に手洗いが欲しいという方は多いです)
このような場合は玄関に手洗いを設置する優先順位はかなり大きくなるので、ウイルス対策や汚れを落とす場合よりも玄関に手洗いがある価値というのは高くなってきます。
また、たとえば2階リビングで洗面室が2階にある場合など玄関から洗面室が遠い場合は玄関に手洗いがあればかなり便利なので、間取りによっても玄関の手洗いの価値というのは変わってくるんですね。
→2階リビングのメリット、デメリットをプロの建築士がまとめました【絶対保存版】
玄関に手洗いを設置する時のポイント
それでは次に、玄関に手洗いを設置する時のポイントについても見ていきましょう。
玄関に手洗いを設置する場合、
- 用途に合わせたボウルのサイズを選ぶ
- 玄関からよく見える場合は見た目にも配慮を
この2つがポイントになってきます。
たとえばボウルのサイズについて見てみると、小さいボウルはおしゃれな物やかわいい物など、見栄えの点でとても優れています。
その一方、小さな手洗いは軽く手を洗うのには良いのですが、石鹸でゴシゴシ手を洗うのにはあまり向いていません。
ボウルが小さく水はねもしやすいからなんですね。
そのため、外の汚れをガッツリ落とす場合はある程度のサイズ感の物を選ぶというのが基本となります。
次に、手洗いが玄関からよく見える場合に気をつけたいのが、手洗いの配管について。
その理由は、配管というのは意外と目立ってしまうからです。
洗面室では配管はそれ程目立たず気になることは少ないのですが、玄関は床よりも一段下がっているので配管が目につきやすく目立ってしまうんですね。
玄関に入るとまずは手洗いの配管が目に飛び込んでくるなんて事も。
そんな場合は配管を隠すように手洗いを作ったり、排水を壁で抜くことでスッキリ見えるようになります。
排水を床ではなく壁で抜くだけでも印象がかなり違いますね。
玄関の手洗いは配管にも配慮を。
そうする事で、より自然に見える玄関手洗いのある家にすることができるんですね。
→壁排水?床排水?手洗いは排水方法で見え方が大きく変わります
玄関の手洗いの実例
それでは次に、玄関手洗いの実例について見ていきたいと思います。
玄関に手洗いをつける場合、
- 玄関土間
- 玄関ホール
- 玄関近くのスペース
というように3つのパターンに分けることができます。
まずは玄関土間に手洗いを設置したケースから見ていきましょう。
玄関土間の手洗い
Photo:https://wabika.com/
玄関土間に手洗いを作る場合、玄関収納と一体に作るというのは1番スッキリ見える方法です。
収納の上なのでスペースを無理に作る必要もありませんし、配管も上手く隠すことができるというのも魅力の1つ。
玄関収納に上手く馴染むボウルを選ぶと、より自然な見た目にすることができます。
Photo:https://gamp.ameblo.jp/61680318/entry-11946231275.html
玄関土間の片隅に作るというのも効果的です。
ベンチ代わりのスツールなど小物を合わせるのもいいですね。
スペースを有効活用できるというの魅力です。
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その他、スペースがあるならガッツリと手洗いを作るという方法も。
これくらいのサイズがあればガシガシ手を洗えますし、床がタイルなので水はねをあまり気にしなくていいと言うのも良いですね。
玄関ホールの手洗い
Photo:http://hughome.net/
玄関ホールに手洗いを作る場合、玄関収納の横というのは手洗いを設置しやすいスペースです。
玄関からも直接見えにくく、また壁で囲みやすいので水はね対策も取りやすいからなんですね。
(タイルを貼って水跳ねを防ぐというのも効果的です)
Photo:https://www.ecodeco.biz/
また、手洗いのまわりに壁を作らず、あえて無骨な感じで仕上げるのも雰囲気が出る作り方になります。
Photo:https://www.kotori-5to6.com/
あとは玄関収納ではなく玄関のベンチと揃えて手洗いを作るというのも綺麗に見えていいですね。
格子で緩やかに目隠ししているのも雰囲気作りに一役買ってくれています。
Photo:https://www.sanwacompany.co.jp/
その他、玄関収納と手洗いを玄関ホールに作るというのも、もちろん有りです。
玄関ホールが広いほど見栄えがするので、広い玄関ホールにするならこういう作り方も良いですね。
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また、玄関に小さい手洗いを設置する場合は、コーナー手洗いが便利です。
場所もコンパクトで済むので、変に存在感を出さずに上手く玄関に馴染んでくれます。
上の例では配管部分にウェルカムボードを置いて、配管の存在感を弱めているのも良いですね。
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その他、玄関の正面に手洗いがくる場合は敢えて存在感を出すという方法も。
家の雰囲気に馴染むような作りにすることで、手洗い自体がインテリアの一部となってくれます。
玄関近くの手洗い
Photo:https://suvaco.jp/
手洗いを玄関に直接設置するのではなく、ワンクッション挟んだスペースに作るというのも落ち着いた雰囲気が出て良いものです。
玄関からは見えないので、大きめの手洗いを設置しても重たく見えないですし、洗面台としても使える物を設置するのもいいですね。
横に脱衣室やお風呂を配置すれば、家に帰ってすぐに汚れを落とせる動線の家にする事も可能です。
Photo:https://www.matsufuji-co.com/
また、シューズクロークから使える手洗いにするという方法もあります。
玄関から見えないので手洗いの存在感を消すことができますし、手洗いの前に窓を付けてあげれば収納内の明かり取りにもなるので一石二鳥です。
収納に余裕があるなら、中に手洗いを設置してあげるのも良いですね。
玄関に手洗いを設置しない場合の除菌方法
それでは最後に、玄関に手洗いを設置しない場合についても見てみましょう。
玄関に手洗いが有ると便利ですが、では必ずしも玄関に手洗いが必要かと言われると、実はそういう訳でもありません。
ここで玄関に手洗いがある場合の除菌についてシミュレーションしてみましょう。
たとえば、もしカバンなどの荷物を持って出かけた場合、帰宅した時の流れはどんな感じになるでしょうか?
- 「家に帰ってくる」
- 「カバンを下ろす」
- 「手を洗う」
- 「またカバンを持って部屋やLDKに行く」
大体こういった流れになってきますね。
ウイルス対策として考えると、ウイルスを落とすために手を洗ったのに、またウイルスが付いている可能性があるカバンを持つというのは、少し変な感じもしてしまいます。
であれば、玄関に手洗いを設置するのではなく、今ではお店などに普通に置いてある除菌スプレーで対応するのも1つの方法になってきます。
- 「家に帰ってくる」
- 「除菌ボトルで手を消毒」
- 「部屋やリビングに荷物を置く」
- 「洗面で手洗いをする」
こんな感じでウイルス対策することもできるんですね。
ここ最近、これまで家を建てられた方から玄関に手洗いの設置を検討しているという相談も時々いただきますが、実際にこのお話をさせてもらうと「無理して手洗いスペースを作るなら消毒で十分対応できそうだね」という話で終わるケースも多くあります。
ウイルスの除菌対策が目的なので、必ずしも手洗いである必要が無いからなんですね。
このようにウイルス対策だけで見るなら、無理してまで玄関に手洗いを設ける必要はかなり低いと言えます。
その代わりに、ちょっとオシャレなボトルに入れた除菌スプレーを置ける場所を作る。
そうすることで手洗い以外でウイルス対策を取るという事もできるんですね。
特に玄関付近は手洗いよりも収納などにスペースを使った方が日常生活に便利なこともあるので、手洗いを作ることで間取りや収納力に無理をしていないかどうか。
この部分もしっかり確認した上で、手洗いを設置するかどうか決めるのがベストなんですね。
まとめ
今回は玄関に手洗いが必要かどうかについて詳しく見てきました。
玄関の手洗いと言っても、作り方で使い勝手や玄関の雰囲気は大きく変わってくるんですね。
また、スペースや予算に余裕がある場合は玄関に手洗いを設置するのがベストですが、そうでない場合も出てきてしまいます。
その場合は手洗いは何に使うのか、またニーズに合った手洗いなのか。そして、スペースを取るだけ優先順位の高いものなのか。
この部分を一度考えてみる事で、玄関に手洗いが必要かどうか分かりますし、後悔しない価値の高い手洗いを作ることができるんですね。
玄関の手洗いは有ると便利ですが、予算もスペースも必要な物です。
その分だけ、作るなら使いやすい手洗いを作りたいですね。
では。
手洗いや玄関についてはこちらも参考にしてください。
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