家を建てる時、大きく分けて「土地がある人」と「土地を購入して家を建てる人」の2つのケースに分けることができます。
そして今回のテーマは土地ありの人が家を建てるケースについて。
たとえば土地ありの人であれば、
- 今住んでいる家を壊して新しい家を建てる
- 実家の敷地内に家を建てる
- 畑だった土地や空き地などに家を建てる
このようなケースを多く見かけます。
では、このように土地ありの人が家を建てる時はどのような事を頭に入れておくとスムーズに予算内に家を建てることができるのでしょうか?
今回は土地ありの人が家を建てる時のポイントについて見ていきたいと思います。
家を建てるのはどんな土地?
土地がある人と土地を購入して家を建てる人の大きな違い。
それはやはり、「土地を購入するかしないか」という点が大きく、家を建てる土地がある人は土地を購入する必要がないので家を建てる総額や予算の面でゆとりが出てきます。
一方、意外と知られていないのですが土地を購入しないという点でマイナス面も1つあります。
それは、土地の詳細情報が家を建てようと思った時点でハッキリしていないという点です。
たとえば土地を購入する場合、お隣さんとの境界には境界杭が入れられてどこが境界かハッキリしていることがほとんどですし、インフラの整備状況や家を建てるのにどういった工事や許可が必要かが明確にされています。
不動産会社が土地を売るのに「重要事項説明」という敷地状況を詳しく記したものが必要になるので、必要事項は不動産会社があらかじめ調べた上で売りに出されているんですね。
一方、土地がすでにある場合は土地の売買がないので土地情報に関しては曖昧な部分も出てきます。
たとえば、古い家や田舎の方の広い土地であればお隣との境界がハッキリしていないというケースもよくあります。
他にはどこがお隣との境界かは大体分かっているけども、境界杭など明確にどこが境界か分かる物が設置されていないというケースなど、敷地の位置について曖昧になっていることは結構多いんですね。(このケースは本当に多いです)
場合によっては道路との境界も曖昧になってしまっているなんてことも。(このようなケースでは役所に連絡して境界を確定させることになります)
また、郊外の家だと下水などのインフラを新しく入れ直す必要があるケースもよく見かけます。
たとえば下水道の無い地域では浄化槽と呼ばれる敷地内で汚水を浄化する設備を入れる必要がありますが、昔の家だと近くの水路に垂れ流しをしている場合もあったりなど、曖昧な形で下水処理しているケースもあるんですね。
一昔前の大らかな時代であればそのような事があったとしても、今の時代は汚水処理がしっかりなされていないと家を建てる許可はおりません。
また、近くに田んぼなどの農地が多い場合だと浄化槽で処理した水を水路に流すのに付近の農家の同意が必要になったりと、いろんな手続きが必要な土地もあったりするんですね。
その他、畑や空き地でこれまで家が建ったことのない土地では土地の前まで上下水道が整備されていないこともあります。
そのため、インフラの整備に思わぬお金や時間が掛かってしまい、最初の家づくり計画から大きくズレが出てしまうことも。
このようなケースは「市街化調整区域」で家を建てる場合に起こることがよくあるので、郊外の畑だった土地に家を建てる場合などは注意が必要です。
一方、街中で家を建てる場合ではどれくらいの大きさの家が建てられるかがポイントになってきます。
たとえば、家を建てる時は土地の大きさに合わせて建てられる家の大きさというのが決まってきます。
それを「建ぺい率」、「容積率」と呼びますが、家の前の道路が4m未満だと、今建っている家よりも小さな家しか建てられなかったり、思ったよりも家の高さを抑える必要が出てくることもあります。
→建ぺい率と容積率を知らずに土地を買うのはちょっと待って!家を建てる前に知っておきたい建ぺい率と容積率の話
→あなたの土地が狭くなる?道路のセットバックについて解説します
→北側斜線制限がある土地で家を建てる時は何を気をつけたらいいの?
このように、家を建てる場合はいろんな法規制が影響してくるんですね。
このような事は土地を購入する場合は不動産会社が説明してくれますが、土地ありで家を建てる場合は調べて見ないと分かりません。
そのため土地ありで家を建てる場合は、家を建てる土地がどのような土地かを早い段階で知るのが最重要ポイントとなってくるんですね。
どうすれば土地のことが分かるの?
それでは、どうすれば土地の詳細が分かるのでしょうか?
土地の詳細情報に関しては、基本的には該当地の役所へ行くことで確認することができます。
ただ、土地の全てを知るには担当している課がバラバラで色んな所をまわる必要があり、一般の方にとってハードルは低くありません。
また、土地の実際の大きさは測量してみないと分からないなど、自分で情報を集めるのは限界があるんですね。
では、どうすればいいのか?
それは土地ありで家を建てる場合は早い段階で住宅会社や工務店に話を聞きに行くということです。
住宅会社や工務店に行くことで土地のことを見てくれますし、家を建てるのにどのような手続きや費用が必要か、またどれくらいの大きさの家を建てられるかが分かるようになります。
そして、それに合わせて家を建てるための総額が分かる資金計画書を作ってもらうことで、予算も含めた家全体の大枠が見えてくるようになるんですね。
→家を建てるには費用はどれくらい必要なの?建築士が教える家の費用のポイント
→家の資金計画はどうすればいい?資金計画書の見方と押さえておきたいポイント
反対を言えば、土地ありの場合は実際に住宅会社や工務店に行って敷地を見てもらい間取りと資金計画書を作ってもらわないと、どのような手続きが必要で家以外にどれくらい費用が必要になるか、どれくらいの家が建てられるかが分かりにくいのがネックと言えます。
そのため、家の建て替えをしようと思った場合、まずは1度住宅会社へ行ってみるのが家づくりの全体像を掴むための一番の近道になります。
土地ありで家を建てることのメリット
ここまで見てきたように、土地ありで家を建てる場合は土地の詳細情報を知るが難しいという点がありますが、土地ありで家を建てるからこそのメリットもあります。
それはまず、資金面が一番大きいメリットとなります。
土地の購入費用が必要ないので、その分だけ家に予算を掛けたり総額を抑えることができます。
(これまで見てきたように、田舎の土地などインフラが整っていない場合はインフラ整備に結構費用が掛かるケースもある点は頭に入れておいてくださいね)
また、土地ありで建て替えの場合や昔その土地に住んでいたという場合は、その場所に住んでいた人だからこそ分かる情報というのもあります。
たとえば、敷地内のどこが日当たりが良くて居心地の良い場所なのかも把握しやすいですし、近隣の家に配慮した方がよい場所が有るのか無いのかが分かるのも土地ありならではの情報と言えます。
その他、通常は土地を購入してからしか地盤調査を入れることはできませんが、土地ありの場合は早い段階で地盤調査を入れることも可能となります。
家の総予算に関わってくる部分なので、早めに地盤調査結果を知ることができるというのもメリットの1つです。
→地盤調査ってどんなことをするの?地盤調査結果を見る時のポイントを建築士が解説します
土地ありで家を建てる場合はこのようなメリットをしっかり活かしながら家を建てたいですね。
土地ありで家を建てる時のポイント
それでは最後に、土地ありで家を建てる時のポイントについて見てみましょう。
土地ありで家を建てる場合は大きく分けて3つのケースになります。
- 今住んでいる家を壊して新しい家を建てる
- 実家の敷地内に家を建てる
- 空き地や空き家が建っている土地に家を建てる
以上の3つですね。
それでは順番に見ていきましょう。
今住んでいる家を壊して新しい家を建てる
建て替えで家を建てる場合、今の家が寒い、暑いといった生活環境や、間取りで不便に感じているところなど、今家に住んでいるからこそ不便に感じている点がハッキリしてきます。
その結果、「新しい家ではこうしたい」という判断が付きやすいという大きなメリットとなってきます。
そのため、家を建て替える場合は家の情報や今思っている不満点を書き出しておくと、実際に家の打ち合わせが始まった時の有効な材料となってくれるんですね。
また、家の大きさも今の家を基準に大きい方がいい、小さい方がいいというのを決めることができるというのもメリットとなります。
日当たりなどもよく分かっているので、間取りを作ってもらう時に情報を伝えておくと、より満足いく間取りにすることができますよ。
→家の建て替えに必要な費用ってどれくらい?新築に建て替える時の5つのポイント
その他、今住んでいる家を立て替えることになるので、工事前に仮住まいを決めて引っ越す必要が出てきます。
引越しの段取りや、賃貸住宅であれば家賃なども必要なので、いつ頃工事が着工するのか、また家が完成して新しい家にいつ引越しできるのかというのも、早めに確認しておきたいポイントになってくるんですね。
実家の敷地内に家を建てる
実家の敷地内に家を建てるというのも土地ありで家を建てる時によくあるケースとなります。
では、実家の敷地内に家を建てる場合はどのような点を意識すれば良いのでしょうか?
まず、実家の敷地内に家を建てる場合は実家との距離感というのが一番のポイントになってきます。
1つの敷地内に2世帯が住むことになるので、程よい距離感をいかに作るかが大切なんですね。
たとえば、旦那さんの実家の土地に家を建てる場合、家の配置があまりに実家に近すぎたり、日当たりが良いからと実家に向かって大きな窓を配置するというのはできれば避けたいところです。
奥さんにとっては旦那さんの実家に家を建てるのでどんなに仲がよくても多少は気を使ってしまうものですし、実家に住んでいるご両親さんにとってもあまり子供夫婦の家が見えてしまうというのも避けたいと考える方がほとんどです。
そのため、お互いの家に程よい距離感を取り、またお互いの家が丸見えにならないような配置計画や間取りにするというのが大切なんですね。
上記のようなケースでは奥さんが一番ストレスが掛かる立ち位置となり、場合によっては面と向かってほどよい距離感を取りたいと言えないケースもあります。
そのような場合、まわりの人がフォローするのを心がけたり、このような点も汲み取って設計してくれる建築士と家を建てるというのも重要なポイントです。
空き地や空き家が建っている土地に家を建てる
空き地や空き家を壊して家を建てる場合、一番のポイントはその土地に家を建てるのに何が必要かを早めに知るということです。
たとえば総額3,000万円で家を建てようと考えていても、インフラの整備や家を建てるまでの手続きにどれだけ費用が掛かるか分からなければ家に使える予算も曖昧になってしまいますよね。
特に空き地になっている場合はインフラが整備されていないことも多いので、早い段階で1度住宅会社や工務店に行ってどのような土地なのか、どれくらいの家が建てられるのかを知ることが重要になってきます。
また、空き家が建っている場合は解体工事が必要になりますが、解体工事についてはそこまで急いでする必要はありません。
遅くても家が着工する1ヶ月くらいまでに更地にしておけばいいからなんですね。
そのため、空き家がある場合は窓から何が見えるかや日当たり状況なども確認したり画像に残しておくと、間取りの打ち合わせの時に役に立ってくれますよ。
まとめ
今回は土地ありで家を建てる時のポイントについて詳しく見てきました。
土地ありで家を建てる場合は土地を購入する費用と土地探しの手間が要らないのは大きなメリットとなりますが、その分だけ土地の詳細情報というのは自分で調べたり、住宅会社に調べてもらう必要があるんですね。
そしてこの部分を把握することで、家を建てる期間や費用というのが明確になってきます。
そのため、家を建てる流れの中で住宅会社へ行くタイミングは少し早めたいですね。
また、土地ありで家を建てる場合は建て替えなどいくつかのケースに分かれてきます。
その特徴を頭の片隅に入れておきながら、土地ありで家を建てるメリットをより活かしてくださいね。
では。
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