「私は家のインテリアにこだわりたいので、家の大きさを小さくして、その分インテリアや内装に予算を掛けたいと思っています。大きな家具も置くわけではないので、問題なく生活できるとは思うのですが、小さな家にした時にデメリットがあれば教えてもらえないでしょうか?」
読者さんからこのような質問をもらいました。
家づくりは予算があるものなので、今回の相談内容のように総予算を調整するために家の大きさでバランスを取ることもよくありますし、反対に家にはある程度の広さが欲しいという方もいらっしゃると思います。
では、小さな家、大きな家のそれぞれのメリットとデメリットって何なんでしょうか?
今回は小さな家、大きな家をテーマに見て行きたいと思います。
家を建てるなら、あなたは小さな家、大きな家、どちらの家を建てたいと思いますか?
小さな家のメリット、デメリット
小さな家のメリット
それではまず、小さな家のメリットから見てみましょう。
(小さな家と言っても、狭小住宅と呼ばれるような小さな家から、30坪弱くらいの家まで様々なサイズの家がありますが、今回は住む人の人数に合わせた小さめの家という事で話を進めさせていただきます)
→家の間取り。4人家族の場合、最低限どれくらいの広さがあれば生活できますか?
まず、小さな家のメリットしては土地の大きさの影響を受けにくいことが挙げられます。
家自体がコンパクトなので、それほど広い土地でなくても家を建てることができるというのはやはりメリットとなるんですね。
特に都市部であれば広い土地というのは中々手に入りにくいもの。
敷地でゆとりが出た部分は車を出し入れのしやすい駐車場として使ったり、小さくても寛げるような庭にして家の魅力を上げるのもいいですね。
土地の大きさの影響を受けにくく、外部空間を有効活用できる。
これは小さな家の大きなメリットと言えます。
その他に小さな家のメリットを挙げるとすると、家の費用が抑えられることが挙げられます。
家の価格は大きく分けて「広さ」と「仕様」によって決まってきますが、「広さ」というのは家の価格で1番大きな影響を持っています。
「坪単価」という言葉も耳にしたことが有る方も多いと思いますが、それだけ家の大きさと価格の結びつきというのは強いんですね。
そのため、家をコンパクトにするというのは家の価格を抑えるのにとても効果的です。
家の大きさを抑えた分、家の仕様や設備に回して家の住み心地を上げるのも良いですし、必ずしも家に使うのではなく教育費などを充実させるために使うも良いですね。
家を小さくすることで、量より質を大切にした生活になるきっかけになってくれます。
さらには小さな家のメリットとして、家族と程よい距離感を持つことができるのも魅力の1つです。
人との距離が離れすぎないので、会話がしやすくなるんですね。
これは家族だけに限らず、気の置けない友達を呼んで食事などをする時でも、中途半端にお互い離れすぎるよりも膝を付き合わすくらいの距離感の方が会話がはずむようになります。
距離感が近いと一体感が出やすいんですね。
LDKには必ずしもダイニングテーブルとソファが必要という訳でもなく、あえてダイニングテーブルを無くしてリビングに少し大きめなローテーブルを置き、周りにグルッと人が集まれるようにしてしまうのも、小さな家を楽しむための1つの方法と言えます。
またはダイニング中心の生活にして、リビングにはソファは置かず好きな場所に座るというのもいいですね。
その他の小さい家のメリットとして、掃除がしやすかったり光熱費や税金があまり掛からないことも小さな家のメリットです。
家の面積が小さくなるので掃除の面積も少なくなりますし、冷暖房を使う時のエネルギーも少なくなるんですね。
小さな家のデメリット
これまで見てきたように小さな家にはメリットが多くありますが、では反対にデメリットって何でしょうか?
小さな家のデメリットとしては、小さな家になればなるほど家の設計が難しくなることが挙げられます。
大前提として小さな家と言っても生活する上で人や家具が邪魔で生活しにくいなんてことは必ず避けたいですよね。
生活が不便になってしまうのであれば、どうして家を建てたか分からなくなってしまいます。
そのためには単純に家を小さくするだけでは不十分で、住む人の生活スタイルをよく分かった上で家の設計をする必要があるんですね。
そのため小さな家にするためには、住宅会社や工務店選び目利きが、通常よりも必要になってきます。
その他の小さな家のデメリットとしては、大は小を兼ねますが、小が大を兼ねるのは難しいと言う点です。
例えば、家に頻繁に何人ものお客さんを呼ぶ場合なんかは、やはり小さな家ではLDKに入りきれないということも起こりえます。
人との繋がりは時が経てば経つほど広がりやすいもの。
人を呼ぶのが好きな場合は、LDKだけでも少し広めにしておくとやはり便利です。
→リビングの広さはどれくらい必要?16帖、18帖、20帖で比べて見ました
住みやすい小さな家とは
ここまで小さな家について見てきましたが、最後にどうすれば住みやすい小さな家にできるのでしょうか?
それは、居心地の良い場所をどれだけたくさん家の中に作れるかどうかということ。
例えばロフトなど、ちょっと天井が低い空間の方が落ち着きが出たり籠もり感が出ることもありますし、部屋の一角でもちょっとした工夫で落ち着ける魅力的な空間にすることもできます。
大きな家だと籠もり感というのは意外と出しにくく、これは小さな家だからこその大きな魅力と言えます。
このような居心地の良いスペースをどれだけ沢山作れるか。
この辺りを意識するかどうかで、小さな家のクオリティは大きく変わってくるんですね。
大きな家のメリット、デメリット
大きな家のメリット
それでは次に、大きな家のメリットについて見てみましょう。
大きな家のメリットとしては、スペースに余裕があるからこそできる広々とした感じは、大きな家でしかできない魅力的なメリットとなります。
これは大空間という、小さな家の工夫だけでは再現できない大きな家が持つ魅力と言えます。
やはり大きな家にする場合は、どれだけ大空間を魅力的に見せられるかにこだわりたいですね。
その他に、定期的に人が多く集まる場合も大きな家が求められる場合があります。
親族の繋がりが強く、法事や季節の行事など定期的に人が集まるという場合、人が集まれる大きな家というのはやはり魅力的です。
年に一度くらいであれば、家ではなく旅館かどこかに集まるという方法もありますが、親族との繋がりが強く、また本家などでは中々そうはいかないもの。
大きな家であれば誰かを泊めることも事も難しくはないので、色んな状況でも対応できるというのは大きな家の大きなメリットと言えます。
大きな家のデメリット
では、大きな家のデメリットは何でしょうか?
大きな家のデメリットの多くは小さな家のメリットの反対となります。
例えば、大きな家を建てるためにはある程度の広さの土地が必要ですし、建築費もそれだけ掛かることになります。
また、光熱費や掃除の手間というのも家の広さに比例して大きくなっていきます。
その他には、家はある程度の広さまで固定資産税の優遇がありますが、家が広いとその広さを超える分は固定資産税の優遇はありませんし、将来子供が巣立って夫婦2人になった時に、家の広さを持て余す可能性もあります。
リフォームで家を小さくリフォームする「減築」が増えているように、歳を取った時の広い家というのは負担になることもあるんですね。
住みやすい大きな家とは
大きな家を建てる場合に必ず意識しておきたいのが、家は広ければ広い程、生活動線を意識した間取りにする必要があると言うことです。
小さな家では多少動線が長くてもそこまで毎日ストレスになるというケースは少ないですが、大きな家で動線が長いと、広い家の中をアッチに行ったりコッチに行ったりと家の中を移動するのも大変。
そのため、大きな家であればあるほど、生活動線については必ず意識しておきたいですね。
→その間取りは動線が考えられていますか?家の間取りと動線について
大きな家も、大きな家にするのが目的ではなく、住み心地がよく住んでいて楽しい家にするのが目的です。
数字上の大きさを意識するよりも、無駄な部分はしっかりスリムにした上で、毎日の生活に不便を感じないかシミュレーションしてみるというのがとても大切なんですね。
小さな家と大きな家、どっちが良い?
ここまで、小さな家と大きな家のメリットとデメリットについて見てきましたが、それでは小さな家と大きな家、どちらの方がいいのでしょうか?
これは、人によって広さの感覚が違うため、人によって小さな家が合う人もいれば、大きな家が合う人もいるというのが、私が多くの方の家づくりを担当してきた中での感想です。
例えば、30坪弱の敷地を上手く活かした住みやすく快適な家があるとします。
では、そんな家で完成見学会をした場合、訪れた人はどのような反応をするのでしょうか?
これはきっぱりと2つに分かれ、家の見せ方やアイデアなどをとても魅力的と感じる方もいれば、そのコンパクトな家にあまり興味を惹かれない方もいます。
前者の方は、家には広さよりというよりも居心地の良さを求めているので、居心地の良い場所を沢山作る小さな家が楽しく魅力的で、見学している家のアイデアを沢山活かしながら自分たちに合った家を建てようと思う方がほとんどです。
一方、後者の方は小さな家のアイデアよりも、視覚的、感覚的にまずは満足できる広さの家を見てみたいと思っている方がほとんどで、どちらかというと視覚的な広さや見た目の高級感といった部分の優先順位が高いんですね。
このように、家のゴールは「暮らしていて楽しい家」だとしても、その楽しく感じる家というのは人それぞれです。
優先順位が人によって、また家族によって違うんですね。
そのため、あなたがまずは何に価値を感じて優先順位が高いかどうか。
この部分を整理することで、目指すゴールの「暮らしていて楽しい家」というのは小さな家が良いのか、それとも大きな家が良いのかというのがハッキリしてきます。
家の大きさで迷っている人や迷いがある人は、この部分を一度よく整理してみると、あなたにとって良い家というのが見えてくるんですね。
まとめ
今回は小さな家と大きな家というテーマで見てきました。
小さな家にも大きな家にもそれぞれメリット、デメリットがあるので、あなたが建てたいと思っている家はどんな家かによって小さな家があなたに合っているのか、それとも大きな家があなたに合っているのかが変わってくるんですね。
また、小さな家でも大きな家でも、1番もったいないのはムダなスペースが多く間延びしてしまった家です。
小さな家を目指す場合はムダなスペースというのは極力排除していくことになりますが、大きな家の場合も家が広くなればなるほど、広さに紛れて意外とムダなスペースというのも増えがちになります。
間取りが出来た時、その大きさが適切な大きさなのか一度見直してみる。
この部分があるかないかで、間取りのクオリティは変わってきます。
小さな家でも大きな家でも家の大きさは違えど、まず目指すのは住んだ時の住みやすさです。
ムダなスペースが無いかどうか意識しつつ、それぞれのデメリットができるだけ少なくなるよう意識しておきたいですね。
では。
家の広さについてはこちらも参考にしてください。
→住宅の坪数はどれくらいがベスト?理想の広さを知る方法を建築士がご紹介します
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建築士が実際に見てきた全国の優良工務店を掲載。
家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
→注文住宅を建てる前に必ず知っておきたい!注文住宅のメリットとデメリット
建築士が教える今日の問題解決
小さな家と大きな家、どちらが良い?
- 小さな家、大きな家、どちらにもメリットとデメリットがある。
- 家に何を重要視するかで、小さな家と大きな家どちらが良いかは分かれる。
- それぞれのデメリットをいかに消せるか、またムダなスペースを無くすのが大切。