「購入した土地が小さいため、いわゆる狭小住宅と呼ばれる家を建てることになりそうです。狭小住宅を建てる時の注意点やポイントがあれば記事にしてもらえないでしょうか?」
読者の方からこのようなリクエストをもらいました。
たしかに狭小住宅は家の中でも難易度の高い部類に入るため、うまく作れるかどうかで住み心地というのは大きく変わってきます。
では、狭小住宅を建てる時はどんな所に気をつければいいのでしょうか?
今回はそんな狭小住宅を建てる時のポイントについて詳しく見ていきたいと思います。
狭小住宅を検討されている方はぜひご覧ください。
狭小住宅ってどんな住宅?
Photo:https://archi-hopes.co.jp/
狭小住宅とはその名前の通り「小さな土地に家を建てた住宅」のことで、おおむね土地面積で20坪(約65㎡)、建坪(建築面積)で12坪(約40㎡)以下の住宅のことを言います。
このような狭小住宅は特に地価の高い都市部の住宅で見られることが多く、その土地に合わせたいろんな家が建てられています。
そして、狭小住宅は土地をフル活用するため3階建てにしたり、法律でクリアできる面積一杯に家を建てる事がほとんどです。
また、狭小住宅は建築家が手がけることもよく有り、雑誌やTVなどで見たことがあるという方もかなりいらっしゃると思います。
その他、昨今の建築費の上昇で家をコンパクトにしつつ価格と住み心地を両立するというニーズが増えており、狭小住宅は根強い人気のある住宅といえます。
狭小住宅のメリット、デメリット
では、そんな狭小住宅のメリットを見てみると、やはり都市部や駅近などの人気エリアでも家が建てやすいということが挙げられます。
坪単価が高い都市部でも土地の大きさがコンパクトなので土地の総額は抑えることができますし、たとえば間口の狭い土地なんかであれば家を建てる難易度が上がるため割安で土地を手に入れることも可能となります。
このように人気エリアで家を建てる場合、狭小住宅というのは魅力的な選択肢の1つとなってくるんですね。
→間口(まぐち)って何?間口によって建てる家は変わってきます
また、家がコンパクトということはランニングコストを抑えるという事につながってきます。
光熱費だけで無く、固定資産税なども抑える事ができるため、長い目で見て金銭的な負担が抑えられるというのも魅力の1つです。
その一方、狭小住宅を建てる場合は普通の家よりも少し割高になるケースが多くなります。
その理由としては、家を建てる場合は家が大きければ大きいほど坪単価は安くなり、家が小さいほど坪単価は高くなること、またコンパクトな土地に家を建てるので足場を作るのが難しかったり家を建てるのに手間が増えやすいということがコストアップにつながってくるというのが大きな理由です。
また、家と家との間のスペースもあまり取れないため、エアコンの室外機や給湯器など外に設置する物のスペースを確保するのは意外と難しく、将来故障してしまった時に取り替えられるかどうかも事前に確認しておきたいですね。
その他、狭小住宅では家のサイズが決まってくるため、限られた大きさの中でどれだけ生活しやすい環境を作れるかというのが大きなポイントになってきます。
言い換えると、狭小住宅では間取りや細部の作り方次第で暮らしやすさというのは大きく変わってくるんですね。
そのため、狭小住宅は普通の住宅よりも難易度が高く、作り手の腕によって左右されやすい住宅と言えます。
ただ、難易度が高いということはそれだけアイデアが盛り込みやすい家でもあります。
では、どうすれば狭小住宅を快適な家にすることができるんでしょうか?
次に狭小住宅を建てる時のポイントについて見ていきたいと思います。
狭小住宅を建てる時のポイント
縦の空間を利用する
Photo:https://www.an-ap.com/works/park-house/
狭小住宅を建てる場合、家を建てられる広さというのは限りがあります。
敷地からはみ出して家を建てることはもちろんできませんし、お隣とも最低限のクリアランスは取っておく必要があります。
そして、その残ったスペースをいかに工夫できるかが勝負となってくるんですね。
そんな家の大きさが限られる場合に上手く活用したいのが家の縦の空間です。
たとえばロフトを作って収納スペースを増やすのも良いですし、スキップフロアや中二階を作って空間に広がりを出すのも効果的です。
ロフトなら少しでも空いたスペースがあれば有効活用し、スキップフロアなら上下階に視線が抜けるようにして面積以上の広さを感じられるようにするという訳ですね。
また、どうしてもスペースが足りない場合などは半地下や地下室を設けるという方法もあります。
→ロフトのある家って実際どうなの?100棟以上見てきた正解がコチラです。
→スキップフロアをつくるなら知っておきたいメリットとデメリット
このように家の中というのは意外と使われていないスペースがあるものです。
狭小住宅の場合は家の断面を見て縦のスペースが十分活かされているかどうか。
この部分はしっかり意識しておきたいですね。
オープンなスペースを作る
狭小住宅ではできるだけオープンな間取りを心がけることも重要なポイントになります。
壁をたくさん作れば作るほど圧迫感が生まれてしまうからなんですね。
特に狭小住宅の場合は部屋の中に壁が1つあるだけでも視線が遮られて狭く見えてしまう原因ともなってしまうこともあります。
たとえば収納を作るのであれば壁が多くなり収納の中に通路部分も確保する必要があるウォークインクローゼットではなく、壁一面に壁面収納を作った方が壁面積も少なく視線の邪魔にならないので家全体が広く見えるという効果が期待できます。
→ウォークインクローゼットの失敗しない作り方とベストな収納方法
スペースを無駄なく使い、いかに不要な壁を減らせるかというか。
また、部屋にいる時に空間がどう見えるか。
狭小住宅ではこの部分がより重要になってくるんですね。
窓で抜け感を出す
Photo:https://www.an-ap.com/works/park-house/
狭小住宅では家の物理的な広さは限られてしまいますが、窓を上手く使うことで実際の広さ以上の開放感を出すことも可能になります。
視線の先が壁なのか、それとも窓で外まで視線が抜けるのかでは広さの感覚というのは大きく違ってくるんですね。
たとえば天井いっぱいに窓を付けてお隣の窓と高さを変えて視線の高さをズラすことも効果的ですし、窓の大きさを床から天井まで高さのある窓にすることで部屋の中がスッキリしてより洗練して見えるようになるなど、窓の使い方、選び方で家の雰囲気はかなり変えることができるんですね。
窓で抜け感を出す。
この部分も忘れずにチェックしておきたいですね。
また、住宅が建て込んでいる地域では窓を通して光が入ってくるかもチェックポイントの1つとなります。
光も風も入らない窓は無駄なコストになるだけで無く、家の断熱性能を下げてしまい暑さ寒さを感じやすくなるなど家にマイナスになる事が多いので、効果の無い窓は無くしてしまうというのがベターなんですね。
収納は造作で作るのも効果的
狭小住宅の場合、敷地に合わせて最大限活かせる大きさの家にすることが多いので、家の大きさというのは変則的になりがちです。
そして変則的になりがちということは、既製品を使うとサイズが合わなかったり無駄な部分が増えてしまうこともよくあります。
そんな時に効果的なのが造作でつくる収納。
たとえばちょっと空いたスペースがあれば造作で棚や収納を作ってあげればスペースを無駄なく使うこともできますし、先ほど出てきた壁面収納も造作で作るからこそ部屋の雰囲気を崩さずに自然な形で収納を作りつつ部屋に馴染む収納にすることができます。
このように面積が限られた狭小住宅だからこそ無駄のないように、またちょっとでも活用できるスペースがあるならその場所に合った造作を作って積極的に活用していきたいですね。
→造作(ぞうさく)であなた好みの家に!造作のポイントとオススメの造作場所
あちこちに居場所をつくる
狭小住宅を豊かにする方法。
それは「あちこちに居心地の良い場所を作る」ということです。
狭小住宅ではどうしても無駄なく合理的にまとめようとしてしまい、生活の潤いや楽しさといった遊びの部分がどうしても後回しになってしまいがち。
そうなると、せっかくの毎日を楽しく暮らすための家なのに何だかもったいないですよね。
あえて小さな家の中に小さな居心地の良い場所を作る。
そんな遊び心を持つことで、ともすれば狭小住宅で感じてしまう窮屈さを楽しい場所に変えてくれます。
ちょっとした隙間を利用した書斎や窓際のベンチ、季節の物を眺められる飾り棚などなど、遊び心を忘れないようにしたいですね。
→書斎はどう作ればいい?あなたに合った書斎を作るための5つの方法
ある程度は割り切る
家を建てる時、どうせなら「アレもコレも」取り入れたくなるもの。
でも、狭小住宅の場合は家として使える広さは決まっているため何でも家に取り入れてしまうとどっち付かずの中途半端で使いにくスペースになってしまうこともよくあります。
狭小住宅ではある程度割り切ってしまった方が良い家になることも多いんですね。
たとえば子供部屋であれば小さくても4.5帖ほどは確保することも多いですが、思い切ってベッドと机が置ける最低限の広さにしてしまいその分のスペースを他に使ったり、ソファ、ダイニングテーブルという形ではなく床座中心のスタイルにしてしまうと言った割り切りも効果的です。
とは言っても譲れないところはしっかり入れた家にしたいですよね。
そのため狭小住宅の場合は要望に優先順位を付けるというのがより大切になってきます。
→子供部屋の広さはどれくらいが最適?理想的な子ども部屋のつくり方
→それはモチベーションが上がるものですか?家の優先順位で迷った時に考えたいこと
家具は見た目の軽いものに
Photo:https://www.idee-online.com/shop/
狭小住宅では間取りも重要ですが、どんな家具を取り入れるかも家の使い勝手や空間の見え方に大きな影響を与える部分です。
そんな家具で気を付けたいのができるだけ見た目が軽いものを選ぶということ。
特に狭小住宅の場合は重たい家具が目に入るだけで部屋の中が雑多な印象にグッと引っ張られるようになります。
そのため、家具は小さめで軽い印象のものを選ぶことで空間に馴染ませることができるんですね。
たとえば、ソファであれば脚ができるだけ見えている物の方が軽く見えますし、デスクやチェストを置くのであれば奥行きは最低限の大きさに抑えるのが基本となります。
狭小住宅では家具は思った以上に大きく感じてしまうものです。
そのため空間のボリューム感に合ったものを選ぶというのは忘れないようにしておきたいですね。
まとめ
今回は狭小住宅について詳しく見てきました。
狭小住宅では家の大きさが限られてしまうという反面、人気のエリアでも家が建てられるため都市部では魅力的な選択肢の1つとなります。
また、実際に家の大きさを広くすることはできなくても、さまざまな工夫で広く感じさせたり、居心地よく感じられる工夫はすることは可能なので、狭小住宅を建てる場合はより間取りや細部の作り方というのが重要になってくるんですね。
そのため、狭小住宅を建てるのに慣れている住宅会社や工務店を選ぶというのも大切なことです。
また、普通に家を建てるのが難しそうな土地であれば狭小住宅を得意としている設計事務所で家を建てるのも良いですね。
(狭小住宅では敷地の難易度が高ければ高いほど、設計事務所に依頼するのが効果的となります)
ぜひ今回の内容を参考にコンパクトでも住みやすい家を建ててくださいね。
では。
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→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】