「スペースの関係で水回りを2階に配置するかどうか迷っています。水回りを2階にすると家事などでちょっと不便かなと思うのですが、実際にはどうなのでしょうか?」
先日、間取り診断を依頼された方からこのような質問をもらいました。
2階に水回りがある生活というのは、確かにイメージしにくいですよね。
たとえばお風呂や洗面所は1階に配置することが多いですし、マンションやアパートの生活だと同じフロアに水回りがあるのが普通なので、「2階に水回りがあるのも良さそうだけどちょっと心配」と思う気持ちというのもよく分かります。
では、実際に水回りに2階がある間取りの使い勝手ってどうなのでしょうか?
実は2階に水回りと言っても、使いやすいかどうかは間取り次第と言っても過言ではありません。
今回はそんな2階水回りを使いやすくする方法や、2階水回りと相性が良い間取りの事例について見ていきたいと思います。
水回りは1階と思っていても、2階に水回りを配置することで間取りがグッと良くなるケースもあるので、間取りが気になる方はぜひご覧ください。
2階水回りはリビングの場所で大きく変わる
2階の水回りの間取りを検討する場合、まずはリビングが1階にあるのか、それとも2階にあるのかで状況は大きく変わってきます。
たとえば1階リビングで水回りを2階に配置した場合はLDKと水回りが離れることになりますし、2階リビングで水回りを2階に配置した場合はLDKと水回りは近くなります。
このように、前提条件としてリビングがどこにあるかで2階水回りの意味合いは大きく変わってくるんですね。
それではまず、1階リビングで2階に水回りを配置するケースについて見ていきましょう。
2階水回りのポイント(1階リビングの場合)
「リビングはできる限り広くしたい」という場合や、「リビング以外に和室や仕事部屋、ファミリークロークなどを1階に作りたい」という場合、水回りを2階に配置するのはとても効果的な方法となります。
その理由は、1階と2階の大きさのバランスが良くなるから。
1階に広いスペースを取ったり部屋をいくつか作ると1階のボリュームが大きくなりすぎてしまいますが、2階に水回りを持っていくことで1階のボリュームを減らす事ができ、結果的に家全体のバランスが整うようになるんですね。
もちろん、1階に水回りも含めていろんなスペースを配置することもできますが、その分だけ1階の面積が大きくなって廊下など各部屋に移動するためのスペースも必要になり、また家の価格も上がるようになります。
また、広い敷地であれば問題ありませんが都市部など土地が限られている場合は1階を大きくすることで駐車スペースが取れなくなったりなど、デメリットが出ててきてしまうケースも良く目にします。
そんな時に家全体のバランスを整える方法として2階水回りというのは有効なんですね。
もちろん、バランスを整える以外にも2階水回りには色んなメリットがあります。
たとえば2階に水回りがあるということは光が1階よりも入りやすい水回りにすることができます。
明るい水回りというのは気持ちの良いものですし、お風呂にカビも生えにくくなるという効果や、洗面室に自然の光が入ることで身だしなみを整える時も自然な表情が鏡に映るというのも魅力の一つです。
(光が入る水回りを実際に見てみると、気持ちいい水回りスペースと感じる方がほとんどです)
敷地の周りに高い建物がなければ、ちょっとした目隠しを作りつつお風呂の外に坪庭を兼ねたバルコニーを作って遊びを演出するなど、水回りをアレンジしてみるのも楽しいですね。
その他、「洗濯」→「干す」→「収納する」という動線が同じフロアで完結できるというのは、やはり便利なものです。
2階に水回りがあると「家事動線が非効率になるのでは」と感じることも多いですが、実は洗濯から片付けるまでの一連の流れを見ると、すべてコンパクトに動線がまとめることができるので実際に不便に感じることは少ないんですね。
洗濯機を毎日何度も回すという場合はLDKなど長時間いるスペースと行き来する必要はありますが、今ではスマホで洗濯機の操作や運転状況が分かるので、無駄に何回も洗濯機を確認するという心配もありません。
では、2階に水回りを配置する時には間取りでどんなことを意識すればいいのでしょうか?
まず、水回りが2階になるので玄関付近には手洗いなど汚れを落とせる場所は必ず設けておきたいもの。
男の子が多い家庭だと外で遊びまわってきたり部活などで汚れて帰ってくることも増えるので、大きめの洗面ボウルで手洗いを作っておくと後々も便利です。
また、2階に水回りがある場合で必ず確認しておきたいのが階段の位置。
水回りが2階にあるということは、子供部屋や寝室だけが2階にあるよりも確実に階段の行き来が増えるので、どこからでも使いやすい位置に階段は配置しておくのが必須なんですね。
一番避けたいのは玄関からかなり遠い場所に階段を配置してしまうというケース。
家の中を行ったり来たりウロウロする原因となってしまうので、毎日の生活で不便ない場所に階段があるかどうかは必ず確認しておきたいですね。
その他、1階にも汚れ物を入れられるカゴなどを用意しておき、洗濯の時に2階に持って上がれるようにしておくというのも便利なものです。
タオルなど意外とLDK付近では汚れた物が出やすいものですよね。
目立たない場所や作り付けの食器棚などにそのようなカゴを置けるスペースを作っておくとかなり便利になります。
ちなみに、実際に水回りを2階に持っていくことで各部屋の広さやボリュームはどれくらいになるのでしょうか?
たとえば総2階の30坪の家だとすると、1階は15坪となります。
1坪は畳2枚分なので30畳分のスペースがあることになるので最低限必要な広さを割り出すと、
玄関 : 3畳
階段 : 2畳
トイレ: 1畳
収納 : 3畳
LDK :20畳
1階はこれくらいのボリューム感になります。
LDKもある程度しっかり取れて、収納などもゆとりがあるという感じですね。
ちなみに2階で部屋に使えるスペースはどれくらいになるかと言うと、
洗面室:2畳
お風呂:2畳
トイレ:1畳
階段 :2畳
ホール:2畳
この辺りを除くと20畳ほどになります。
寝室6畳、子供部屋4.5畳×2、収納5畳といった感じですね。
部屋はコンパクトになりますが、収納などもしっかり確保できる広さを確保できる広さと言えます。
スペースがあれば洗面横に明るいランドリースペースを作ったりアレンジするのも良いですね。
このように30坪くらいの家で広めのLDKが欲しいけども個室はコンパクトで良いという場合は、2階に水回りを配置することでちょうど良いバランスの家にすることもできます。
家全体をコンパクトに収める場合は上記の広さを参考にしてみてくださいね。
2階水回りのポイント(2階リビングの場合)
それでは次に、2階リビングで水回りを2階に配置するケースについて見てみましょう。
2階リビングの場合、やはりリビングと同じフロアに明るい水回りがあるというのは一番の魅力です。
キッチン側だとさらに使いやすいですね。
そのため、2階リビングの場合は水回りも同じフロアで検討される方も多くいらっしゃいます。
ちなみに間取りで見るとこんな感じですね。
その一方、水回りが2階に有ることでリビングの広さには制限が出るようになります。
限られたスペースの中で、水回りとLDKの広さを分け合うことになるからなんですね。
そのため、リビングに和室や畳コーナーを作りたいと言う場合はちょっと窮屈になってしまうケースも出てきます。
(広さにもよりますが、作っても畳コーナーくらいが無難です)
そのため、2階リビングで広々としたLDKにするなら水回りは1階にした方がベターと言えます。
ちなみに水回りの無い2階リビングだとこんな感じですね。
2階リビングならではの大空間が水回りを配置することで窮屈な空間になっていないかどうか。
この部分は必ずチェックしておきたいポイントです。
また、1階に寝室など個室がある場合は水回りの真下には収納など出来る限り音が気にならない部屋を配置するのがベストです。
特に家族の生活時間がバラバラの場合は音が気になってしまうことがあるので注意しておきたいですね。
その他、洗濯物を干す場所も一工夫しておきたいところ。
バルコニーにそのまま洗濯物を干すとLDKから洗濯物が丸見えというケースも起こってしまうからなんですね。
そのためLDKからできるだけ見えにくい場所に洗濯物を干せるようにするか、メインのバルコニーとは別の場所に物干しスペースを作っておくなど、実際に生活を始めた時の見え方も意識しておくとベストです。
また、1階にも手洗いを配置しておきたいですね。
ちなみに、2階リビングの場合も衣装部屋やWICなども水回りと同じ2階に設置できるといいですが、中々それほどのスペースを確保するのは難しいもの。
2階リビングではリビングを明るく快適にするというのが一番の目的になることがほとんどなので、まずはリビングの快適性が確保されているか。
その結果、スペースに余裕があれば2階に水回りを、そうでなければ水回りを1階にするなど柔軟に対応するのがポイントとなってくるんですね。
→2階リビングの間取りは何をチェックすればいい?建築士が2階リビングの間取りを解説します
2階水回りのデメリットはある?
それでは最後に、2階水回りのデメリットについても見ておきましょう。
2階水回りのデメリットとしては、
- 工事費が少し高くなる
- 歳を取った時に手間になる
- 排水音に配慮が必要
このあたりが主なデメリットになります。
たとえば工事費については、2階に水回りを配置する分だけ配管が長くなったり水漏れ防止対策が必要になるので、工事費は少し上がります。
ただ、大きく工事金額が上がるという訳ではないので、そこまで気にする必要は無さそうです。
次に、老後に2階に上がるのがつらくなった時について。
これは、将来1階に水回りを配置できるよう配慮しておいたり、ホームエレベーターなどの対応が考えられます。
あとは、1階への音への配慮を。
これは間取りの段階で、しっかりチェックしておきたいですね。
このように、2階水回りにはいくつかデメリットがありますが、その分メリットも多くあります。
メリット、デメリットを上手く比較しながら、2階水回りを検討したいですね。
まとめ
今回は2階に水回りを配置した間取りのポイントについて見てきました。
同じ2階の水回りでも、リビングが1階にあるのか、それとも2階あるのかでかなり違いがあるんですね。
1階リビングの場合は家のバランスを整えつつ洗濯の動線がコンパクトにまとるなどメリットが大きくなりやすく、2階リビングの場合はリビングの快適性が確保された上で水回りが配置できるかどうか。
この部分にまずは注目する必要があるんですね。
2階水回りは、水回りを2階に配置することで家全体にプラスになるかどうかというのが1番のポイントになります。
どちらかと言うと、2階水回りは目的ではなく「良い家にするための手段」という感じですね。
特に1階リビングの間取りでしっくり来ない場合は2階に水回りを配置することで間取りがとても良くなることも多く、またデメリットも少ないので積極的に検討してみるのも効果的ですよ。
ぜひ今回の内容を参考にしてくださいね。
では。
水回りに関してはこちらも参考にしてください。
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