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北側斜線制限がある土地で家を建てる時は何を気をつけたらいいの?

「北側斜線制限がある土地で家の建築を検討しています。北側斜線制限がある土地で家を建てる時の注意点について記事にしてもらえないでしょうか?」

読者の方からこのようなリクエストをもらいました。

 

家を建てる時、家の高さを制限する法律がいくつかありますが、そのうちの1つが今回相談をいただいた『北側斜線制限』。

『北側斜線制限』は家への影響も大きく、家を設計する建築士にとっても『北側斜線制限』がある土地というのは間取りの難易度が上がる土地となるので、家を建てる方はぜひ頭に入れておきたいワードとなります。

そこで今回は『北側斜線制限』とはどういう物なのか、また『北側斜線制限』がある土地で家を建てる、または土地の購入を検討する時のポイントについて詳しく見ていきたいと思います。

北側斜線制限とは

それではまず、北側斜線制限とはどういう物なのか見てみましょう。

北側斜線制限は建物の高さを制限する法律の1つで、簡単に言うと「敷地北側の家の日差しを遮らないよう、建てる家の高さを制限する法律」となります。

 

たとえば、下の図のように敷地のすぐ南側に高い家が建つと北側の家の日当たりは間違いなく悪くなってしまいますよね。

場合によっては日当たりについて近隣トラブルになる恐れもでてきます。

そうならないように、あらかじめ北側斜線制限という規定を設けて家の高さを抑えるようにしているんですね。

 

一方、このような北側斜線制限はどの土地でも有るという訳ではありません。

北側斜線制限が有るのは「低層住居専用地域」、「中高層住居専用地域」という、主に住宅を建てる地域に限定されています。

たとえば駅前などの繁華街では家はほとんど無いので日照がトラブルの原因になることはほとんどありませんし、高さの制限が厳しいと駅前に高い建物を建てることができなくなり、発展の阻害になってしまいますよね。

そのため、日照権が重要視される住宅街に限って北側斜線制限は設定されています。

北側斜線制限の内容

それでは次に、北側斜線制限の具体的な内容について見ていきましょう。

北側斜線制限の目的は、日差しが遮られないように敷地のすぐ南側に高い家が建たないようにするのが目的なので、家の北側に高さの制限が掛かることになります。

簡単に図で表すと下のような感じです。

一定の高さ(5m or 10m)から北側斜線がスタートし、その勾配以内に家の高さを抑える必要があるんですね。

そのため、北側の家と距離を空けて家を建てれば建てるほど北側斜線制限の影響を受けることは少なくなりますし、北側以外はある程度の高さがある家にしてもOKということになります。

 

ちなみに、北側斜線は名前のとおり真北方向の影響を受けることになります。

ですので、真北にお隣の敷地がある場合はこんな感じですね。

一方、真北ではなく、北東や北西にお隣の敷地があるケースも当然あります。

そのような場合は真北だけでなく、西側や東側も北側斜線の影響を受けることになります。

図に表すとこんな感じです。

このように北側斜線制限がどのように家に影響してくるか見るときは、北側がどの方向になるかを見ることが重要になるんですね。

 

 

では、敷地の北側に道路がある場合、北側斜線はどうなるのでしょうか?

道路が北側にある場合、北側斜線は道路の反対側からスタートすることになります。

こんな感じですね。

北側斜線制限の目的は北側の家の日差しを遮らないことなので、北側に道路がある場合は北側斜線制限の影響というのはかなり緩くなります。

そのため、北側道路というのは北側斜線の影響を受けることが少なくメリットがある土地と言えるんですね。

北側道路の土地に家を建てる前に必ず知っておきたい事

 

では、ここでクイズを1つ。

北側に道路がある敷地だけども、方位が真北ではなく北西や北東に道路がある場合は北側斜線の影響はどうなるでしょうか?

答えはこちらです。

道路以外の場所は普通に北側斜線の影響を受けることになるんですね。

このように北側に道路がある場合でも、真北がどちらの方向に向いているかというのはとても重要です。

 

他にも細かい例外はありますが、ここまで見てきた内容が北側斜線制限の基本的な考え方となります。

では次に、北側斜線制限の影響を受けると具体的に家はどのようになるのか見ていきましょう。

北側斜線制限の影響

何度かお伝えしてきましたが、北側斜線制限がある地域だと家の北側を高くすることができません。

また、高くできないだけでなく、場合によっては屋根を低くする必要があることも有ります。

一般的な家の一番低い部分は6m強ほどなので、普通に家を建てるだけでは北側斜線制限を超えてしまうことがあるんですね。

 

そうなった場合、北側部分の屋根を下げて高さを抑える方法を取ることになります。

屋根を下げるとはこのような感じですね。

屋根の高さを左右で比べると右側の方が低くなっていることが分かります。

(右隣の家も屋根が下がっているように、北側斜線制限のある地域ではこのように北側の屋根が下がっている家をよく見かけるので、少し意識しながら見てみるとその地域が北側斜線制限がある地域なのかが分かります)

 

では、このように屋根が下がってくると家にどのような影響が出てくるのでしょうか?

 

まず、家の外観についてはある程度の制限が出てくることになります。

北側の屋根を高くすることができないので、必然的に北側付近の屋根は低くすることになるんですね。

屋根の形というのは家の外観を作る上で重要な部分で、例えば四角い外観の家にしたいという場合も北側斜線の影響で四角い家にできないというケースも出てきます。

そのため、外観にかなりこだわりが有る場合は、土地を決める前に好みの外観にできる土地なのかどうか確認しておけるとベストと言えます。

 

また、屋根が下がるということは家の内部(部屋)の天井も下がってくるということになります。

こんな感じですね。

部屋の右側部分の天井が下がって斜めになっています。

ただ、思ったよりも天井は低くなっていないですよね。

北側斜線制限の影響を受ける部分は限定的なので、部屋の天井が一部下がってもそれ程大きな影響を受けることは少ないんですね。

(念のため、どれくらいの天井高になるか高さを確認しておくとベストです)

また、天井が下がる部分は天井の高さがそれ程無くても問題のない場所、たとえばトイレや収納、階段などを配置することでより影響を少なくすることもできます。

 

このように北側斜線制限の影響はどちらかというと家の外観の方が影響が大きく、家の内部で受ける影響というのはそこまで大きくありません。

そのため、北側斜線制限がある土地でもあなたに合った間取りの家にすることができるので安心してくださいね。

北側斜線制限のある土地のメリット、デメリット

ここまで北側斜線制限はどのような物か、また家にどんな影響があるのかについて見てきました。

では、北側斜線制限のある土地にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?

 

北側斜線制限のある土地は良くも悪くも斜線制限の影響を受けます。

自分の家を建てる場合は北側を低くする必要がある反面、家のすぐ南側にも高い家が建たないことになるんですね。

そのため、南側にある程度の庭を確保できれば陽の光が入る家にすることができるのはメリットと言えます。

一方、屋根の形の選択肢は少なくなるため、家の外観は必然的にある程度決まってくることになります。

そのため、窓の形や外観に使う素材、外構などで形を整えることを心掛けたいですね。

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また、北側斜線制限は「低層住居専用地域」「中高層住居専用地域」の2つの地域で設定されているとお伝えしましたが、一般的な家で影響が大きいのは「低層住居専用地域」で「中高層住居専用地域」で家を建てる場合はほとんど影響がありません。

「中高層住居専用地域」の北側斜線のスタートの高さは10mとなっていますが、3階建ての家でも10m以内に高さを抑えることが多く、「中高層住居専用地域」の北側斜線制限はマンションだと影響を受けることが有っても一般的な住宅では気にする必要はほとんど無いんですね。

(このような「低層住居専用地域」「中高層住居専用地域」というのは「用途地域」と呼ばれ、その地域の役所で確認することができます。また、土地探しをしている場合に北側斜線制限の影響があるかどうか知りたい場合は周りの家の北側の屋根が下がっているかどうか確認するのも効果的です)

 

それでは最後に、北側斜線制限のある土地で必ず確認しておきたいことを1つご紹介しておきたいと思います。

家の高さ制限にはいくつか種類がありますが、北側斜線制限に似た高さ制限に「高度地区制限」と呼ばれるものがあります。

この2つはどのような違いがあるのかと言うと、北側斜線制限は建築基準法で決まっているので全国どこでも同じになりますが、高度地区制限は自治体が決めるものになるので地域によって規制の度合いに違いがあるというのが大きな特徴になります。

また、基本的に北側斜線制限も高度地区制限も北側の家の日差しを遮らないための規制となりますが、北側斜線よりも高度斜線の方が厳しいのが一般的です。

高度地区制限は自治体がより北側の家の日照権を守るという理由で設定されていることが多いからなんですね。

たとえば大都市の東京でも、かなりの広範囲に高度地区が設定されています。

上の図は東京都の高度地区制限の図になりますが、北側斜線制限よりも厳しい制限があることが分かりますね。

たとえば東京都で一番厳しい「第一種高度地区」の場合、北側斜線制限よりも厳しく家の内部(部屋)の天井の高さも広範囲に渡って下がってしまうことがあるので、北側斜線制限だけでなく高度地区制限もある場所なのかも必ず確認しておくのはとても重要なんですね。

(高度地区制限も自治体で調べられます。またホームページに高度地区どうか分かるよう地図形式で載っている自治体もあるので、土地を決める前に確認しておくとベストです)

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まとめ

今回は北側斜線制限について詳しく見てきました。

北側斜線制限は家の高さに関する制限で、日照権のトラブルを防いで良好な住宅環境を作るために定められているんですね。

北側斜線制限で受ける主な家の影響は、主に外観と2階の天井高さが一部低くなるということです。

特に外観の受ける影響は大きいので、こだわりが有る場合は注意したいですね。

 

一方、北側斜線制限のある土地に家を建てる場合、敷地の南側にもあまり高い家が建たないというメリットもあります。

北側斜線制限がある土地に家を建てる場合、このようなメリット、デメリットを踏まえながら家づくりをしていきたいですね。

また、北側斜線と一緒に高度地区かどうかも忘れずに確認してくださいね。

では。

 

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O型建築士

地域の工務店で1,500万円〜5,000万円の物件を年間20棟ほど携わる建築士。 家の設計の他、 工務店に向けた設計セミナーを開催。 今までに訪れた工務店の数は200を超える。 趣味は工務店と温泉巡り。 一緒に素敵な家を建てていきましょう! プロフィール詳細はこちら

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