「工務店に間取りを作ってもらいました。何となくこれでいいかなとも思うんですが、間取りを見るときにはどこに注目すれば良いのでしょうか?」
読者さんから、このような質問をもらいました。
私は建築士として仕事で間取りを作ったり間取りをチェックしたりする他に、希望される方へ向けて間取り診断というのもさせてもらっているので、ほぼ毎日間取りを書いたり見たりしている訳ですが、長い期間、間取りの事を考えていると、間取りを見るときにどこに注目すれば良い間取りになるかというポイントが見えてくるようになります。
今回は、そんな間取りを見る時のポイントについてご紹介したいと思います。
間取りのバランスが良いかどうか
間取りのバランスが取れた家。
実はこれ、家づくりでは物凄く重要な事なんです。
間取りと言うと、「部屋の広さがどれくらい」とか、「要望がアレコレなのでココはこうしたい」など、それぞれの場所による個別の話になってしまいがちですが、その個々を含めた全体のバランスの見善し悪しを判断する力というのが間取りの質を大きく左右します。
例えば間取りをパッと見たとき、バランスの良い間取りならスッと頭の中に入ってきます。
すんなりと間取りを受け止められるんですね。
その一方、変な間取りの場合、建築士なら「何か変だなぁ」と感じます。
「何か変だなぁ」と感じる原因をさがすために間取りを良く見てみると、実はその「何か変だな」と思う理由は間取りのバランスがおかしくなってしまっていることがほとんどです。
例えば、家が大きいのに玄関が凄く小さいと何だかバランスが悪い間取りになりますし、反対に家が小さいのに玄関が無駄に広いと家全体のバランスがとても悪くなります。
もし、玄関を広くしたいというのが強い要望なのであれば、玄関と他の部屋の機能を兼ねた玄関をつくってバランスを取るなど、バランス感覚に基づいて家を整えていく必要が出てくるんですね。
このバランス感覚が不足してしまうと、「要望で言われたことだけ詰め込んだ」ヘンテコな家が完成してしまいます。
家の要望で「〇〇が欲しい」と伝えるのは、住みやすくて使いやすい家にするため。
ただ単に要望が入っただけのヘンテコな家が欲しい訳ではないですよね。
本当は要望を踏まえた上で間取りを整えながら、住んでいて暮らしやすく楽しい家をつくって欲しいという人がほとんどだと思います。
その全体を整える力が、家づくりで言うバランス感覚なんですね。
このバランス感覚が欠けてしまうと、日当りの良い場所なのにスペースがあるからという軽い気持ちで収納にしてしまっていたり、微妙な場所に階段を持ってきているために家全体が上手くまとまっていないなど、ヘンテコな間取りになる危険性がとても高くなります。
ここにコレがあったら変になるというバランス感覚が働いていない状態なんですね。
間取りを見る時は、変な違和感が無いかバランス感覚を働かせる。
そして、何か違和感があったとき、何で変に感じたのかを検証して修正していく。
このように家のバランスが整っているということが間取りづくりでとても大切なことなんです。
もちろん、間取りを見てバランスが良いかどうか判断するのは、はじめて家を建てる方にとっては判断がしにくい部分でもあります。
また、場合によってはあまり優先順位の高くない要望を間取りに入れるために家のバランスがくずれてしまうということもあります。
そんな時は要望を優先するか、それとも家全体のバランスを優先するかなど、アドバイスを交えながら間取りの打ち合わせをしてくれる建築士というのは、あなたに合った間取りを作ってくれる可能性が高い建築士と言えます。
そのような建築士と家づくりができるかどうかも、住宅会社選びの際の1つのポイントになります。
広く見えるかどうか
形が違う広さが20帖の部屋が2つあるとします。
数字上は同じ20帖の部屋だとしても、家の間取り次第で20帖以下にも20帖以上にも見え方は違ってきます。
どうしてそうなるのでしょうか?
理由は様々で、部屋の壁が原因で狭く見えることもありますし、部屋の形によっても部屋が広く見えたり狭く見えたりしてきます。
例えば、細かく区切った部屋が多い家は狭く見えやすいように、家が広く見えるかどうかというのは視覚に大きく影響されるんですね。
他にも窓の配置次第で家の中の広さの見え方に影響することがあったりと、部屋が広く見えるのかどうかは理屈と経験がとても重要になってきます。
すごく簡単に言うと、視線が抜ける間取りにすれば、家の中は実際の広さよりもずっと広く見えるようになるんですね。
でも、世の中には狭く見える家や部屋が沢山溢れています。
どうしてでしょうか?
それだけプロの建築士でも部屋の広さや見え方を意識している人もいれば、意識していない人もいるということなんですね。
平面図上に20帖と書いてあったら20帖の空間があると思いますし、プロが書いているから大丈夫だろうと普通は思います。
けれども決してそれで大丈夫な訳ではなく、その20帖の部屋は本当に20帖の価値がある部屋なのか見極める必要があるんですね。
先ほどのバランス感覚と、部屋が広く見えるような間取りをつくれるようになるかどうかは、これはもう訓練を積むしかありませんが、間取りや実際の家をたくさん見ることで感性が研ぎすまされていきます。
できるだけ多くの間取りを見るように心がけるだけでも結構見方が違ってくるので、家を建てようと思う方はできるだけ多くの間取りを見てみるのがオススメです。
窓の形と位置
家づくりで意外と大きな影響を持っている窓。
窓はかなり重要なので、これまでも窓の記事はいくつかご紹介させてもらいました。
そんな家づくりで重要な窓ですが、間取りを見ていてよく見かけるのが、「とりあえず必要そうだから付けた」という窓です。
特に、家の外観や気密性、風通しに影響のある引違い窓を何も考えずにとりあえず付けている間取りをよく見かけます。
そうなると、家の外観も微妙になってしまいますし、家の気密性も微妙、何だか明るさも中途半端で風通しも悪い家が完成します。
住んでいて楽しそうなイメージが全然湧かないですよね。
けれども、こんな家が本当にたくさんあります。
窓をつけるのに、設計者の意図を感じないんですね。
一方、窓についてしっかり考えている間取りを見ることも、もちろんあります。
「ここは風通しを重視したい」「ここは目隠ししつつ光を入れたい」など、それぞれの窓に、なぜその窓を付けているのかという意図が感じられるんですね。
また、窓をしっかり考えている家は窓の配置も家の中がキレイに見えるように配置されています。
そのような間取りは、よく考えられた良い間取りであることが多く、間取りを見ていても安心感があります。
たかが窓かもしれませんが、窓が考えられていないのに完成したら良い家になるという事はあまり考えられません。
窓ひとつ取れば小さな物ですが、そんな小さなものにも細かな気遣いができるということが、良い間取りをつくるには重要なんですね。
まとめ
今回は間取りを見るのに重要なことを3つご紹介しました。
「始めから良い間取りかどうか判別することはかなり難しく、かなり鍛錬をつまないと良い間取りか悪い間取りなのかを判別するのは難しい」
という部分はありますし、他にも間取りづくりには大切なことはありますが、上記の3つは間取りを判断するのにとても重要なヒントになります。
質問をいただいた読者さんから、「良い建築士に出会うことが良い家づくりの第一歩なんですね」という声をよくいただきますが、まさにその通りなんですね。
少なくとも、今回ご紹介した3つの重要性を理解した建築士に間取りをつくってもらう。
これが良い家をつくるための秘訣なんですね。
間取りの不安を無くして、一緒に価値のある家を日本にたくさん増やしていきましょう。
では。
間取りについてはこちらも参考にしてください。
→一軒家の間取りで失敗しないために気をつけたい7つチェックポイント
→リビングの間取りを見る前に知っておきたい!代表的なリビングの間取り5選
家づくりに役立つ最新情報をTwitterでも発信しています。
建築士が実際に見てきた全国の優良工務店を掲載。
家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
→注文住宅を建てる前に必ず知っておきたい!注文住宅のメリットとデメリット
家づくりで失敗したくない!そんな方こそ、間取りが重要です。
建築士が教える今日の問題解決
間取りを見るときにはどこに注目すれば良い?
- 家のバランスを見る。
- 部屋が広く見えるようにつくられているか見る。
- 窓を考えて配置しているか見る。