「こんな家にしたいという要望をいくつか伝えて間取りを作ってもらったんですが、作ってもらった間取りを見てもいまいちピンときません。確かに伝えた要望は入っているのですが・・、このままの間取りで進めていいのか迷っています。要望の伝え方が悪いのでしょうか?」
読者の方からこのような質問をもらいました。
間取りができたけれども、できた間取りに迷いがある状態になってしまっているんですね。
「こんな家にしたい」という要望は間取りに入っているのですが、何かしらの理由でその間取りがイマイチしっくりせず、自分たちが建てたかった家は果たしてこのような家なのか?という疑問が出てきてしまい、間取りをそのまま進めていいのかという点で迷いが出てしまっている状態と言えます。
今回のように感じる大きな原因としては大きく3つあり、
「こんな家にしたいという要望が上手く伝わっていない」、
「要望はあるけども、要望の優先順位がついていない」、
「そもそも間取りのクオリティが、要望を満たすレベルではない」、
このどれかが大きな原因となっているケースがほとんどです。
間取りのレベルについては、すでにいくつか記事を書いているので今回は置いておくことにして、今回は「家の要望」という部分にスポットライトを当てていきましょう。
→危険な間取りの3つの特徴。あなたの設計担当者はこんな人ではないですか?
満足いく間取りにするためには、何を担当者に伝えた方がいいのでしょうか?
家の要望を伝える前に
家を建てようと思った時、そこには家を建てようと思った何かしらの理由や目的があります。
例えばお子さんの誕生や学校への入学、今住んでいる物件の更新などの時期的な理由がきっかけで家を建てようと思うこともあれば、「ずっと家を建てるのが夢だった」、「自分たちに合った家に住みたい」などより人生を豊かにするために家を建てるという方もいらっしゃいます。
このように家づくりの初期段階の場合、どんな家にしたいかを自由に考えたり、どんな物が好きなのかをイメージしていくのが重要になってきます。
まずは、理想の家はどんなのだろうというのを制限を設けずに思い描いてみるんですね。
次に、住宅会社や工務店に行くようになり具体的な家づくりの話をする段階になってくると、それまで考えた理想の家をもう少しまとめる必要が出てきます。
これまで思い描いてきた「アレがしたい」「コレがしたい」という理想の家に対する要望に優先順位をつけていくことになるんですね。
この作業は意外と重要で、何でもかんでも家に取り入れると間違いなく予算オーバーになって何を削ればいいか分からなくなったり、何だかイロイロ入っているけども家づくりのコアの部分となる何のために家を建てるかがぼやけてしまうなんてことも起こってしまいます。
そのため、家の間取りを作ってもらう段階でこの辺りまで要望をまとめられると、かなり良い流れで家づくりが進んでいると言えます。
このように優先順位をつけて要望を伝えるだけでも、あなたに合った間取りができる可能性はとても高くなるからなんですね。
でも実は、要望をまとめて伝えるだけでは少し足りないことがあるんです。
いったい何が足りないのでしょうか?
それは、今の生活で不便に感じている事、不満に感じている事も合わせて伝えるという事が重要なんです。
今の生活の問題点を伝える
どんな物を買うにしても、その物を買うことで今ある問題や悩み、欲求を解決できるかどうか。
これが、物を購入するときに価値があるかどうかの判断材料になってきます。
家も同じなんですね。
基本的に私たちのように家づくりに携わる仕事をしている人は、家を建てたいと思っている人が日常生活で抱えている問題点を家づくりを通して解決し、ただ家を建てるのでなくプラスαの価値を提供したいと考えています。
家という箱だけでよければ建売住宅やマンションでもいいですし、極端な話なら別に賃貸住宅でもいいですね。
注文住宅を建てるなら、その人が今住んでいる家で抱えている問題を解決しないと意味がありません。
少なくとも今の生活で不便をしている部分は、新しい家では改善しておきたい必須項目と言えます。
その問題を解決するための方法が、今の生活で不便に感じていることや問題点を伝えるという事なんですね。
例えば、賃貸住宅に住んでいるなら玄関の狭さであったり、キッチンや食器棚の使い勝手、収納についてや毎日の生活動線など、いくつか不便をしているところは簡単に出てくると思います。
→その間取りは動線が考えられていますか?家の間取りと動線について
このような今の生活の問題点を伝える事で、家のプロはその解決策を提案します。
家の要望だけでは見えないことも、問題点を伝える事で新しい家に何が必要か分かるようになるんですね。
このように、「〇〇したい」という要望だけでなく、今の生活で不便をしている問題点は必ず伝えるということが、あなた間取りにとってとても重要になります。
では、ここで生活の問題点を伝えるときのポイントも1つご紹介しておきたいと思います。
それは、生活の問題点を伝えた時、「どうして不便に感じたり不満に感じたりするか」という理由も一緒に付け加えるということです。
例えば、「玄関が狭くて不便」という一言をとっても、何で不便しているかは人によって色んなケースが想定されます。
たとえば、玄関の幅が狭くて一人ずつしか靴を履けないのが不満である場合もありますし、靴や物を置く場所が無くて不便という場合や、玄関が狭く真っ暗なのがイヤだということもあります。
時には今挙げたこと全てが該当するなんてこともあると思います。
同じ「玄関が狭くて不便」という一言でも、その人がそう感じる理由は様々なんですね。
この「なぜ?」という部分が抜けてしまうと、人によって受け取り方が様々になってしまい、結局は問題解決にならなかったということに繋がってしまいます。
こうならないように、一歩踏み込んだ「なぜ?」という理由まで伝えるのが重要なんですね。
本来であれば、生活の問題点を伝えると間取りでどう改善すれば1番良いかを知るために設計担当者がこの「なぜ?」を聞くのが当たり前なのですが、中には
「生活の問題点を伝える」→「分かりました」というだけの担当者もいます。
ここまで読んでくださった方なら、もうお分かりですね。
「分かりました」と聞くと「分かってくれたんだ」と思いますが、実は何も分かっていない状態なんですね。
あなたが言ったことに対して「はい。はい。」というご用聞きだけの担当者は、あなたの今の生活の不便さを解消しようなどという所までは考えが及ばず、とりあえず言われた物を入れておけば大丈夫という思考停止状態となっていることがほとんどです。
ベストはこのような担当者を避けるのが1番ではありますが、そう簡単に変えられないという場合もあります。
そのような場合は「なぜ不満なのか」という理由も必ず伝えるようにすることで、より正解の間取りに近づくことができるんですね。
そして間取りを見た時、その間取りで生活すれば今の生活の不満点が解消されているかを基準として見ることで、間取りの善し悪しを判断する時の力強い判断材料となってくれます。
まとめ
今回は間取りの要望を伝える時に大切な「今の生活の不満点」について見てきました。
新しい家を建てるなら、今の住まいの問題点は少なくとも解決する。
間取りではこれが重要なんですね。
冒頭の質問をいただいた読者さんに今回の内容をお伝えさせていただいたところ、
「一通り要望は伝えましたが、今の生活の問題点についてはほとんど伝えていませんでしたし、そんなこと一切聞かれることはありませんでした。間取りを見てみると、今の生活で不便に思っている所が改善されていないので、間取りがしっくりこないことが分かりました」
というお返事をいただきました。
今回、ご質問をいただいた方は間取り診断をご依頼された方で、間取り診断では間取りを判断するのに必要なかなり絞り込んだ項目のみを伺っているのですが、その最低限の項目も質問されずに間取りが出てきたとおっしゃっていました。
(そして、実際にこのような間取りは多くあります)
間取りの要望を伝える時は、「〇〇したい」と伝えるだけではなく、「□□という理由で〇〇したい」というように、その理由を伝えることで間取りのクオリティは大きく変わってきます。
また、どうして○○したいのかという理由が分かることで、時には思ってもみなかった解決方法を建築士が提案してくれるケースもあり、間取りの可能性もグッと広がってくることもあります。
間取りは少しでも多くの情報があることが良い間取りに繋がっていきますので、要望の優先順位と今の生活の問題点とその理由は必ず伝えるようにしてくださいね。
それが住んでから満足いく家にするための一番の近道になってくれますよ。
では。
間取りについてはこちらも参考にしてください。
→一軒家の間取りで失敗しないために気をつけたい7つチェックポイント
→リビングの間取りを見る前に知っておきたい!代表的なリビングの間取り5選
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建築士が実際に見てきた全国の優良工務店を掲載。
家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
→注文住宅を建てる前に必ず知っておきたい!注文住宅のメリットとデメリット
家づくりで失敗したくない!そんな方こそ、間取りが重要です。
建築士が教える今日の問題解決
家の要望を伝えるときはどうすればいい?
- 要望の優先順位と、今の生活の問題点とその理由を伝えるのがポイントです。