ここ最近、家の「耐震等級」についての相談を読者さんからよくもらいます。
「耐震等級」というのは、簡単に言うと地震に対する家の強さを表しているものです。
日本は地震が多いので、やはり家と耐震性は切りはなせない内容なんですね。
そこで今回は、耐震等級に関係するいただいた質問を一挙まとめてご紹介したいと思います。
これから家づくりをされる方も、耐震がちょっと気になるという方もぜひご覧下さい。
それではどうぞ。
耐震等級って何なの?

耐震等級は、1〜3等級までの3つのレベルがあり、数値が大きい方が地震に強いことを表しています。
その強さの基準は、
- 耐震等級1:建築基準法と同程度の建物(全ての家は等級1を満たす必要があります)
- 耐震等級2:等級1の1.25倍の建物の強さ(長期優良住宅は等級2を満たす必要があります)
- 耐震等級3:等級1の1.5倍の建物の強さ
このように等級分けされています。
建築基準法と同等の耐震等級1が基準となっていて、その何倍強いかで耐震等級が決まっているんですね。
「そしたら、建築基準法の強さってどれくらいなん?」と言うと、建築基準法では、
- 数百年に一度発生する地震に対して、倒壊・崩壊しない。(震度6強から震度7程度を想定)
- 数十年に一度発生する地震に対して、損傷しない。(震度5強程度を想定)
このようなに想定しています。
耐震等級1の場合、震度6まではおそらく大丈夫だけど、そこを超えると家に被害が出る可能性があるといった感じですね。
なんだか曖昧なように感じますが、震度自体が地震に対する被害によって決まる数値ですし、地盤の強さなど土地により家の揺れ方も変わってくるので、明確に規定しにくい項目と言えます。
簡単に言うと、大地震でも家が倒れて人が閉じ込められないことが耐震の基準となっているんですね。
家の耐力壁
「大空間にすると耐力壁が足りなくなると言われたのですが、耐力壁ってどのような物なんですか?」
読者さんからこのような質問をもらったので、次に耐力壁についてみてみましょう。
家の耐震について考えるとき、一番効果的なのが耐力壁と呼ばれる壁を増やすことです。
耐力壁が多い方が、一般的には地震に強い家になります。
家の間取りで見ることにしてみましょう。

赤い線を引いた部分が耐力壁となります。
窓や扉などを除いた壁を耐力壁にすることができるんですね。
ただ、耐力壁を増やせばそれでいいという訳ではなく、壁のバランスも重要です。
昔の家は南側に縁側などがあり大きな窓を取っている家が多く見かけますが、家の壁が北側に集中してバランスが悪いので、地震に弱い家となってしまうんです。
こういう感じの家ですね。

南側が開口部ばかりなので、耐震性を考えるとかなりバランスの悪い家と言えます。
その他にも、基礎の設計や柱、梁といった構造材の大きさが問題ないかどうか。小屋裏や床にも一定以上の強さが求められます。
梁とはこの部分のことです。

床の強さをとるには、フローリングの下地に構造用合板と呼ばれる板を貼るのが一般的です。(現在の家では、ほとんどの家で構造用合板が床に貼られています)
そのため極端な例ですが、2階建ての家で2階の床をほとんど吹抜けにしてしまうと、床の強さが足りないために構造的にアウトなんて事も起こります。
床の強さについて分かりやすい画像があったのでお借りします。
Photo:http://emuzu.biz/40design/
このように、吹抜けの広さなども耐震等級に影響してくるんですね。
さらには耐力壁が足りなければ、壁を増やす必要がありますし、柱や梁の負担が大きい場所はかなり大きめの柱や梁を使う必要が出てきます。
耐震等級1 ⇒ 3と基準が厳しくなるので、耐震等級によって家の間取りが左右されることもあるんですね。
大きな窓をつけて部屋もオープンな大空間、さらにはでっかい吹抜けもとなると、高い耐震等級を取るのが難しくなっていくので注意が必要です。
このあたりは、空間の広さやデザインを重視するのか、耐震性を重視するのか相談といった感じになってきます。
耐震等級、ここを注意

「間取りが決まって建築確認を申請中、設計者の方から壁を増やさないといけないと言われました。こんなことってあるんでしょうか?」
耐力壁が耐震等級に満たないケースですね。
なぜこのようなことが起こるのか見てみましょう。
耐震等級は、構造計算をして審査機関から合格のお墨付きをもらうことで等級が決まります。
そのため耐震等級の確定は、家の打合せ終盤、もしくは打合せが終わってから最終確定することになり、高い耐震等級を取る場合、構造計算をして耐力壁が足りなかったり、審査期間から指摘されて耐力壁を追加しないといけない事態が起こる可能性があります。
なぜこんな事が起こるのかと言うと、構造計算書をつくるのに時間がかかるのが大きな原因です。
構造計算をするにはかなりの時間がかかるため、通常は簡易計算をして間取り上、問題ないかの確認を行います。
そして、間取りがもう変わることが無いと分かった時点で最終的に構造計算を行い、申請資料を揃えるのが一般的です。
そのため、マレに簡易計算と構造計算でズレが生じたり、当初は大丈夫だったけども打合せで壁が少なくなってしまうことで、最後に壁や柱を増やす必要が出てくることがあるんですね。
基本的にはこのような事が起こらないように配慮している設計者がほとんどですが、起きる可能性は0%ではないので、構造計算により壁や柱が増える可能性があると一言説明する会社が多いです。
一方、耐震に対してあまり気にしない設計者というのもたまにいます。
高い耐震等級を取りたいのに、あまりにオープンな間取りになっている場合、本当に大丈夫なのか早めに聞いてみるのが無難です。
耐震等級に対して釘を刺すことで、あとあとの間取り変更トラブルを回避することができますよ。
耐震等級〇〇相当

「耐震等級3の家と思っていたら、あとでよく話を聞くと耐震等級3相当の家ということでした。耐震等級3と耐震等級3相当の違いって何ですか?」
住宅会社によっては、耐震等級〇〇相当と書いてある会社もあります。
読者さんの相談にあった、「耐震等級3相当の家」という感じですね。
この場合、実際に構造計算して耐震等級を取っている訳ではないので、あくまで参考程度くらいで頭に入れておくのが無難と言えます。
この「相当」というのが結構くせ者で、耐力壁の量だけ耐震等級3と同じで、あとは特に配慮無しということもあります。
そのため、地震が気になる方は何が耐震等級3相当なのか確認しておくのも重要です。
もちろん、耐震等級3相当ですので、地震保険の割引などは受けることができません。
「てっきり耐震等級が取れていて地震保険が割引されると思っていた」というトラブルもあるので、「相当」という言葉には注意が必要です。
このように見てみると、耐震等級〇〇相当というのは強いのか弱いのかよく分からない表現ですよね。
なぜこのようなことが起こるのかというと、構造計算をするにも費用が発生するので、希望する人にだけ耐震等級を取るというケースが多く見られます。(構造計算費用や申請費は、基本的に家を建てる人の負担になってしまいます。)
そのため耐震等級2や3の強さは会社の基準として取っているけども、費用削減のため申請しないだけというケースや、耐力壁など一部で耐震等級をクリアしているなど、耐震等級〇〇相当というのはかなり会社によって違いがあります。
まとめ
今回は耐震等級について、読者さんの相談を元にお伝えしました。
耐震等級は、家を建てる人が最終的に選ぶことになります。
間取りが完成してから耐震等級を上げると、間取りがどんどんつまらない物になっていく傾向にあるので、間取りを依頼する前に耐震等級をどれくらい取りたいのか決めるのがベストと言えます。(壁が増えていくので、ガッカリ感が増すんです)
特に旦那さんは耐震等級を高めに、奥さんはデザイン優先という傾向が強いので、耐震等級について一度話し合ってみるのもオススメですよ。
個人的には最低でも耐震等級2くらいを目安にすると、ある程度間取りの自由度がありながら耐震性も高い家にすることができるので、バランスが良い家になりやすいと感じます。
では。
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家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
建築士が教える今日の問題解決
耐震等級って何?
- 耐震等級は1〜3まであり、3が一番強い。
- 耐震等級が高いと、間取りに制約がでることがある。
- デザインと耐震性、どちらを優先するのか始めに考えるのがポイント。