平屋住宅

よもやま話

水害に強い家にするために知っておきたい5つのポイント

「家づくりをしています。ハザードマップを見ると大雨が降った場合に1mくらい浸水してしまう可能性がある地域なのですが、水害に強い家にするために何か方法があれば教えてもらえないでしょうか?」

読者の方からこのような質問をもらいました。

ここ数年、大きな水害が続いていますが、やはり家を建てるなら家族を守るためにもできる限り被害は少なくしたいものです。

では、水害対策として家を建てる際にどのような点を気をつければいいのでしょうか?

今回は水害から家を守るための方法について詳しく見ていきたいと思います。

家を建てる土地の事を知る

災害について考える場合、まずはどんな土地に家を建てるのか地域の特性を知ることが第一歩となってきます。

地域によって洪水の被害が起こりやすい土地や土砂崩れの危険性がある土地など、様々な特性があるからなんですね。

そんな地域の特性を知ると時に役に立つのが自治体が出している「ハザードマップ」です。

(ハザードマップとは自然災害が起こった際、どのような被害が出る可能性があるかを地図にしたものになります)

たとえば、近年の大雨で多摩川による水害が起こった世田谷区のハザードマップを見てみると、下のように被害が大きくなりそうな地域に色付けがされています。

ハザードマップ

Photo:https://www.city.setagaya.lg.jp

このようにハザードマップを見ることで大雨が降った場合にどれくらい浸水する可能性が土地なのかが分かるんですね。

また、ハザードマップには水害以外にも土砂崩れなどについても記載されているので、家を建てる際や土地を購入する前には必ず確認しておきたい資料と言えます。

 

ちなみに先ほどの世田谷区のハザードマップでは10m以上浸水する地域がありましたが、10mと言うと3階建ての家の屋根が大体10mくらいなので2階建ての家であれば全て水没することになります。(2階建ての家の屋根で6mから9mくらいです)

そうなると屋根の上にも逃げることができないくらい浸水する地域となり、大雨の際は必ず早い段階で避難が必要な地域となってくるんですね。

川沿いの家は見晴らしが良かったり気軽に川沿いを散歩できたりとメリットも大きいですが、災害の際は大きな被害が出る可能性も高い悩ましい土地と言えます。

 

その他、洪水が起こる際は堤防から水が溢れる「外水氾濫」の他に、住宅地に降った雨水が下水などで処理しきれずあふれてしまう「内水氾濫」というものがあります。

内水氾濫

Photo:https://www.city.koriyama.lg.jp

内水氾濫では川から離れた場所でも起こることもあり、自治体によっては内水氾濫に対応したハザードマップを出しているところもあるので、「川から離れているから大丈夫だろう」と思うのではなく自治体からどんな情報が出されているかは確認しておきたいですね。

内水氾濫ハザードマップ

Photo:https://www.city.yokohama.lg.jp

家づくりで水害に備える方法

それでは次に、家づくりの際に水害対策する方法について見ていきましょう。

家づくりで水害対策をする方法としては、

  • 土地で水害対策をする
  • 家で水害対策をする

という2つの方法が考えられます。

では、具体的にどのような方法が考えられるか見ていきたいと思います。

 

土地で水害対策をする

土地の高さが低いほど浸水する可能性が高くなるので、盛り土をして土地の高さを高くするというのは効果的な水害対策となります。

下の絵のような感じで土地に盛り土をして高い場所に家を建てるという訳ですね。

水害に強い家1

道路よりも高い位置になるほど浸水の被害は受けにくくなるので、ハザードマップの浸水高さよりも土地を高くしておくことで浸水被害を防ぐことができます。

また、盛り土は擁壁を作ることで土留めの役割を果たすようになり、土が流れ出るのを防げるようになります。

 

一方、このような盛り土をする際の注意点としては、盛り土部分は強度が弱くなってしまうため地盤調査をした際に地盤の弱い土地という判定が出やすくなります。

その結果、地盤改良が必要となる可能性が高くなってしまうんですね。

そのため、盛り土をした部分に家を建てるのではなく、盛り土部分を避けて家を建てるのがベストと言えます。

地盤調査ってどんなことをするの?地盤調査結果を見る時のポイントを建築士が解説します

 

また、盛り土をする場合は周りの敷地にも配慮が必要となります。

周りの家と比べて自分の敷地だけ盛り土をして高くなると周囲の家の採光を遮ってしまうこともありますし、お隣との境界にも土留め用のブロック塀を作る必要があるなど、盛り土を増やしすぎと周りの家にも影響が出てきてしまいます。

そのため、近隣トラブルを避けるためにお隣が近い住宅地で盛り土をする場合はお隣の土地と比べて不自然で無いかどうかも配慮しておきたいポイントとなります。

その他、盛り土の量が多ければ多いほど擁壁も大掛かりなものになってしまうので、盛り土をする場合は50㎝程度くらいまでに抑えておくことでトラブルも少なくスムーズに家づくりを進めることができます。

 

家で水害対策をする

それでは次に、家で水害に備える方法について見ていきましょう。

家で水害対策を取る場合、まずは家にどこから水が入ってくるのかを知ることで対策を取ることができるようになります。

たとえば木造住宅の場合、基礎はコンクリートで作るので大雨の際に水の高さが基礎部分であれば水の侵入を防ぐことができます。

一方、基礎と土台の間には基礎パッキンと呼ばれる通気層があり、床下に湿気が溜まらないように家が建てられているケースが多くなります。

そのため基礎を超えるようになると家に水が侵入することになってしまうんですね。

家の浸水場所

厳密には玄関ドアも基礎の高さよりも少し下がった部分に付きますが、基礎の高さを水が超えるかどうかというのが水の被害の目安となってきます。

では、基礎の高さは一般的にはどれくらいかというと、建築基準法では30㎝以上の高さが必要とされていて、実際の家では40㎝くらいに設定されていることが多いです。

逆を言えば30㎝以上なので基礎の高さは構造上問題なければ高く作ってもいいんですね。

そのため、基礎を高く作っておくというのも洪水対策に効果のある方法となります。

水害に強い家2

基礎を高くすることで床下の点検の時も通りやすくなったり、床下にあまり使わない物を置いておくなど浸水対策以外のメリットもあり、その一方でコスト以外にデメリットが少ないので比較的取り入れやすい方法なんですね。

 

また、基礎を高くする場合のコストは工務店や住宅会社によっても結構違ってきます。

その理由は基礎の作り方に要因があり、通常は基礎を作るのに型枠と呼ばれる枠組みを作ってコンクリートを流し込み、基礎を作ることになります。

型枠とはこのような部材ですね。

基礎

そして基礎を高くする場合は高さのある型枠を持っていれば1回で作ることができますが、一般的な住宅で使う型枠しか持っていない場合は2回に分けてコンクリートを打つなど手間が増えてしまいます。

そのため、高い基礎を打つのに慣れている会社かどうかでコストというのは結構変わってきます。

少し基礎の高さを高くしたい場合は、あらかじめどれくらいコストアップするかを聞いてみるのもいいですね。

 

このようにコストアップするという面もありますが、基礎の高さを高くするというのは比較的簡単にできる浸水対策と言えます。

(基礎には給排水の配管を通すための開口もあり、その部分は基本的には水が入ってこないように塞ぎますが、浸水対策をしっかりしておきたい場合は念のためしっかり塞いで欲しいように伝えておくのも一つの方法です)

 

その他、さらに水害対策を強化する場合は1階をRCのガレージに、2階以上に部屋を作るという方法も考えられます。

こんな感じですね。

水害に強い家3

外階段を作って2階に玄関を作れば2〜3mくらいの浸水まで対応できるようになり、盛り土や基礎の高さを上げるのに比べるとかなりの高さまで浸水対策を取ることができますし、ガレージ部分自体が重いので家が流されるというケースも減らすことができます。

その一方、たとえば1階をRC、2階以上を木造住宅で作ったとしても普通に家を建てるよりもコストは掛かるようになってきますし、家が縦に伸びるようになるので郊外の広い敷地というよりも都市部に合った家の建て方となるので、ある程度場所を選ぶ建て方と言えそうですね。

 

また、コンクリート以外の浸水対策としては、ピロティのある家を建てる方法もあります。

ピロティとは家を柱で支える方法で、イメージとしてはこんな感じですね。

水害に強い家4

このようなピロティのある住宅は1階を駐車場にして上を住まいにするという家で都市部でよく見られますが、一昔前は鉄骨の柱がむき出しという家というのが一般的でした。

ところが最近では柱の形も洗練されとてもスタイリッシュとなり、ピロティのある家はモダンな印象が強い家が多くなりました。

水害に強い家5

Photo:http://hamada1.jp/works/5_tayuzaki.html

では、実際にピロティは水害に対してどうかと言うと、このようなピロティのある家は1階部分は浸水しにくいという特徴がありますが、洪水の時は車や家など大きな物も流れてくることがあり、それが柱にぶつかった場合のダメージは気になるところです。

そのためピロティのある家は水害対策としてよりも、土地を有効活用したりデザイン性を楽しむような家という位置付けといった方が良さそうですね。

まとめ

今回は家の洪水対策について見てきました。

基本としては、まずはハザードマップを見てどれくらいの浸水の可能性がある地域なのか。

まずはこの部分を把握した上で、浸水しても影響を受けない高さまで対策を取るようにしたいですね。

その一方で、ある程度までは家で浸水対策が取れても一定以上を超えると浸水の被害が出てしまうことがあります。

そのため土地探しの段階で大きな災害が起きない場所を選んだり、建て替えのタイミングで他の土地も視野に入れるといった家を建てる場所を意識するというのもとても大切なことになります。

家は家族を守るためもの。

この部分を意識しながら家づくりをしていきたいですね。

では。

 

災害についてはこちらも参考にしてください。

地震が来てもあなたの家は大丈夫?家の耐震性能について知っておきたいこと

災害対策に役立つ!土地を買う前に見ておきたい厳選サイト4選

家づくりに役立つ最新情報をTwitterでも発信しています。

建築士のTwitter

建築士が実際に見てきた全国の優良工務店を掲載。

GOOD BUILDERS

家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。

まるで教科書!理想の家をつくる方法【絶対保存版】

土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】

家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

O型建築士

地域の工務店で1,500万円〜5,000万円の物件を年間20棟ほど携わる建築士。 家の設計の他、 工務店に向けた設計セミナーを開催。 今までに訪れた工務店の数は200を超える。 趣味は工務店と温泉巡り。 一緒に素敵な家を建てていきましょう! プロフィール詳細はこちら

-よもやま話

Copyright © BUILD WORKS , All Rights Reserved.