「気になる工務店があるのですが、口コミを見るとあまり良いことが書いてありません。口コミサイトに書いてあることが本当のことのようにも感じますし、実際に話を聞くと少し違うような気もします。家の口コミサイトはどれくらい信用度があるのでしょうか?」
読者さんからこのような質問をもらいました。
今では建てたい住宅会社があると、インターネットでホームページを検索するのが当たり前になりましたが、住宅会社名で検索すると口コミが書いてあるサイトもよく目につきます。
そして口コミサイトを見てみると、そこにはいろんな事が書いてありますよね。
良いことも悪いことも書いてあるので、どれが本当に信じていいか迷われる方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、家を建てる時や住宅会社を選ぶときの口コミサイトとの付き合い方について見ていきたいと思います。
それではどうぞ、ご覧ください。
口コミサイトの内容を信じていい?
まず最初に結論を書いておきますね。
私が建築士として多くの方の家づくりに携わってきた経験から見ると、「家の口コミサイトは軽い参考程度くらいに思っておいて、あなたに合う住宅会社かどうかは住宅会社を訪れて、実際の家を見たり話を聞いて判断するのがベスト」という事です。
もちろん、口コミという仕組みは実際のユーザーさんの声なのでとても参考になります。
食事に行くときなんかはGoogleや食べログなどでお店の評判を口コミサイトで調べるのも当たり前のようになりましたし、amazonや楽天で買い物する時なんかはレビューを参考にすることも多いですね。
口コミの評価が高ければ良いお店であったり良い物である可能性が高くなるので、店選びや商品選択の失敗の確率が低くなるため、口コミを参考にされている方も多いのではないでしょうか。
このように、口コミを上手く使えば口コミは確かに貴重な情報となってくれます。
では、口コミについて家づくりでも同じことが言えるのでしょうか?
実は家づくりと口コミの相性はそんなに良くないんです。
家づくりにも口コミが上手くマッチするかと言うと、そういう訳ではないんですね。
どうしてでしょうか?
その理由を見ていきましょう。
家は人によって求める物が全く違う
口コミが家づくりで大きな役に立たない理由の1つとして、まずは家は人によって求めている物が大きく違うことが挙げられます。
良い家を建てるという目標は家を建てる全ての方が持っていると思いますが、「良い家」の定義が人によってかなり違ってくるんですね。
たとえば家を建ようと思った時、デザインを重視する人もいれば、家の性能を重視する人もいます。
また、人によっては家の価格であったり住宅会社の対応やアフターメンテナンスを重要視するという方もいますよね。
そして、デザインを重視する人が性能は高いけどもデザインが得意でない会社で家を建てれば不満がでますし、反対にデザインよりも家の性能を重視する人のとってはその会社で家を建てると満足のいく家が建てられる可能性が高くなります。
これは当たり前のようですが、家づくりでは意外とこういったミスマッチが起こることが珍しくありません。
では、どうしてこういう事が起こるのでしょうか?
例えば、よく口コミが活用される飲食店を例に見てみましょう。
飲食店の場合、最終的な目標はある程度決まってきます。
和食が食べたい、洋食が食べたいという目的に合わせて、和食屋であったり洋食メインのお店を選ぶのがとても効果的ですよね。
その他にはデートで行くためのお店だったり、宴会をするためであったりと目的がかなり明確です。
パッと見ただけで何を得意にしているお店かすぐに分かるので絞り込みが楽ですよね。
ここである程度の好みは選別できるので、ミスマッチはかなり少なくなります。
ところが家づくりの場合、味が濃いめの洋食を食べたいのに和食の店に入ってしまい、そこで出てきたのがさっぱりしたお寿司だったので悪い店という評価になるということが普通に起こります。
住宅会社や工務店を決める段階で何を重視(何を食べたいか)が決まっていない事も多く、その住宅会社や工務店が何が得意か(何料理店か)もイマイチ分からないことが非常に多いんですね。
そしてこの事に家が完成してから気付いてはもちろん手遅れですし、家の打合せ中だとしても一度家の契約をしてしまってからでは手付金の放棄や打合せが進んだ分の費用が発生したりなど、会社を変更する労力と費用はかなりの負担となってしまいます。
このように家を建てる際は、最初の入口の段階でミスマッチが起こりやすい上に、あとで変更するのが難しいんですね。
そのため、人によって評価がバラツキやすくなります。
そして何より料理というのは人それぞれ味覚が違うとしても、そこまで大きな違いがありません。
美味しい物は美味しいですし、不味い物はほとんどの人が不味いと感じます。
ここが大きなポイントで、料理は毎日食べるものなので客観的に評価しやすいんですね。
その一方、先ほどご紹介したように家の善し悪しは人によって感覚が大きく違いますし、何より家を建てる経験というのはほとんどの人にとって一生に1度あるか無いかなので経験という部分でも評価が難しくなります。
その結果、客観的に評価がしづらく偏った意見になってしまうことが多くなってしまいます。
このように、家づくりというのは客観的な評価をしにくいんですね。
ここが家の口コミの評価が難しくなる大きな理由です。
家の価格の評価は正しい?
家の満足度を見る場合、コストパフォーマンスという部分も大きなウェートを占めるようになります。
では次に、家の価格やコストパフォーマンスの口コミについても見ていきましょう。
家の見積もりの場合、家一式でいくらという見積もりが多く、使っている物がどれくらいの価格なのかとても分かりにくいという特徴があります。(良いことだとは思いませんが)
飲食店で言うと、ビール1杯であれば500〜600円前後というお店が多いのでビールの価格を見ればそのお店の価格が高めなのか休めなのかの判断がつきやすいですが、家の場合は価格が高いのか安いのか分かるような基準が無いんですね。
例えば飲食店であれば、ビール1杯が800円なら全体的に高め路線の店、400円ほどなら安いお店と想像がつきます。
一方、家の場合は総額だけ安く見えても、使っているものもスカスカで返って割高である場合もありますし、まずまずの値段がしていても使っているものは良いものでコストパフォーマンスを見るととても良い会社もあります。
さらには家の価格の場合は極端な話、見積もり上で何かを安く見せたければ、他の物に金額を上乗せして安く見せるという方法もあります。
たとえばキッチンを安く見せたい場合はキッチンの価格を下げて、柱や土台など定価の無い物の価格を高くするといった方法も取れるんですね。
定価のない物は、一般の方にはそれが高いか安いか分からないからです。
また同じような家に見えても、ちょっとした違いで見積もりの金額に大きな影響を及ぼす場合もあります。
そのため、実際に家が高いか安いかというのは見積もりを何社か取るなど、家のことにかなり詳しくなる以外方法が無いんですね。
→注文住宅に相見積もりは必要?相見積もりをする時の3つのポイント
また、同じ2,000万円の家でもキッチンなどの設備にお金をかけた2,000万円の家もあれば、設備は質素だけども構造材にお金をかけた家もあります。
そうなると同じ2,000万円の家でも、この2つの家の中身は全然違ってきますよね。
そのためパッと見で高いか安いかは、プロでも中身をしっかり吟味しないと高い家なのか安い家なのか判断が難しいと言えます。
このように家の価格は口コミだけで判断するのはとても危険で、家と口コミの相性が悪い一因にもなります。
家を建てる経験は一度だけ
家を建てることは、普通の人であれば一度あるか無いかがほとんどです。
何度も家を建てている人というのはすごく稀ですよね。
そのため、その一度の体験が家の口コミサイトに口コミとして書かれることになります。
もちろん、あくまで経験したことを書くので口コミなのですが、ここで1つ問題が出てきます。
それは、家づくりは一生に一度の経験なので基準となるベンチマークが無いということです。
先ほどのように飲食店と比べてみると、人生で一度しか飲食店に行かないなんてことはまず無いですよね。
あなたもこれまで相当の数の飲食店に行かれたことがあると思います。
その結果、良い飲食店や悪い飲食店といった自分の中の基準が定まってくるので、経験を積めば積むほど良いお店かどうかを判断できるようになっていきます。
一方、家を建てるのは一生に一度なので、このように判断をするための基準となる経験がほぼありません。
そのため基準となるものが圧倒的に少なく、良いか悪いかはその人の印象に大きく左右されてしまうことになるんですね。
そうなると飲食店など多くの方が何度も経験した結果から生まれた口コミよりも、家の口コミサイトはかなり人によるバラツキが大きくなってしまいます。
このことも、家の口コミサイトを鵜呑みにしない方がよい理由の1つです。
誰でも書き込める
どの口コミサイトでも同じですが、口コミサイトには基本的に誰でも書き込むことができます。
そのため、例えば競合する住宅会社の人間が悪い評判を書き込むこともできますし、自分の会社のことを良い会社だと書き込むこともできるということを意味します。
実際にこのような書き込みはよく目にすることがありますし、口コミサイトの運営会社もかなり悪質な誹謗中傷で無い限り消すことがありません。
要は、情報の信頼性というところで大きな疑問符がついてしまうんですね。
家の口コミはほとんどが匿名です。
一般的に、匿名で発言している人の口コミは信用度が低いですし、極端な話、匿名だと自作自演で褒めたり貶したりすることもできます。
そんな信用度の低い情報で、もしかしたら、あなたととても相性の良い住宅会社との出会いが無くなるというのはとても惜しいことですよね。
「信じるか信じないかはあなた次第」というフレーズが昔に流行りましたが、家の口コミサイトの場合は信じる信じないでなく、「こう思う人もいたんだな」くらいのただの軽い参考程度に留めておくのが1番の得策です。
そして口コミで先入観を持つのではなく、あなたが実際に見てみて合うか合わないかを感じてみるのがベストなんですね。
そのため口コミの情報よりも、たとえばインスタを見て建てている家が好みかどうか見る方が断然その住宅会社との相性が分かります。
また、家を建てる場合は住宅会社の口コミよりも、実際に住宅会社を見て、住宅会社を見る目を鍛えるのが1番です。
たとえば、工務店を見る目を養うなら闇雲に見るよりも一定の基準を元に工務店を見てみると、良い工務店かどうか、またあなたに合っている工務店かどうかを判断しやすくなります。
→住宅会社、工務店選びで失敗しない!必ずチェックしておきたい8つのポイント【絶対保存版】
その他で言うと、これは私が今まで多くの工務店を見てきた感想ですが、紹介のお客さんが多い工務店は良い工務店である確率がとても高くなります。
紹介すると言う事はそれだけ家に満足しないとあなたの大切な友人や家族を紹介しようとは思いませんよね。
ましてや一生に一度くらいの高価な物なら尚更です。
そのため、どれくらいの割合で紹介で家を建てている人がいるのか実際に聞いてみるというのは、口コミ以上の効果を発揮してくれますよ。
(大きな工務店ほど宣伝力があるので紹介の比率は下がり、小さな工務店の方が紹介の比率は大きくなる傾向はあります)
まとめ
今回は家の口コミサイトについて見てきました。
家の口コミサイトは情報の信頼性というところで疑問がある上に、家づくりの特性上、口コミの精度というのも他の口コミよりも偏った意見になってしまうんですね。
そのため、軽い参考程度にするくらいであれば良いですが、その口コミに左右されるのはとてももったいない事と言えます。
もしかしたらその人の価値観に合わなかっただけで、あなたにとても合う工務店かも知れないからなんですね。
それでも口コミが気になるなら、工務店の担当者に直接口コミについて聞いてみるのも良い方法です。
きちんとした工務店であれば、あくまで噂レベルであれば疑問を払拭できるきっかけになりますし、本当のクレームであればそれを踏まえてどういう改善を施すようになったかを正直に話をしてくれるはずです。
(反対に適当にごまかす場合は要注意です)
口コミに惑わされず、ぜひあなたの目で確かめて良い工務店と出会ってくださいね。
では。
家づくりの流れはこちらも参考にしてください。
家づくりに役立つ最新情報をTwitterでも発信しています。
建築士が実際に見てきた全国の優良工務店を掲載。
家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
建築士が教える今日の問題解決
家の口コミサイトは信用して大丈夫?
- 家の口コミサイトは軽い参考程度に。自分の目で確かめるのが1番です。