「ホンマにこの家建てるの?」
これは間取りを見ていてたまに思うことです。
生活したら不便な生活をするのが目に見える間取りなのですが、そんな間取りが普通に提案され、家が建っているんですね。
家が「良い家」になるのも、「ホンマにこの家建てるの?」という家になるのも、担当の設計者次第で変わってきます。
そこで今回は、これまで数多くの家を設計してきた経験と、これまでお問い合わせいただいた多くの間取り相談の内容から、満足いく間取りができない「危険な設計者の特徴」についてお話したいと思います。
それではどうぞご覧下さい。(すでに工事着工中や家が完成済の方は閲覧ご注意ください)
間取りは設計者の腕次第
自分の家の間取りを、あれこれと考えるのは楽しいものですよね。
どこにどんな部屋を作ろう、あんなスペースが欲しいななど、色々と夢が膨らむものです。
そんな家づくりの醍醐味とも言える家の間取りですが、実際に間取りがどのようにできるのかというと、基本的には
- どんな家にしたいかという要望を設計士に伝える
- 設計士が要望を元に間取りを作る
- その間取りを元に間取りの打ち合わせをして詳細を決めていく
このような流れになります。
間取りの最終決定権はもちろんお施主さんにありますが、出てくる間取りや、間取りの打ち合わせ内容というのは設計者の力量というのが大きいんですね。
もちろん、腕の良い設計士の方も大勢いるのでそこまで身構える必要はありませんが、最初は腕が良いか悪いのかというのは中々分からないものです。
言い換えると、どんな担当者が付くかはゲームのガチャのように「設計士ガチャ」と言っても過言ではありません。
ただ、どんな担当者が付くかは分からなくても、避けたい設計者がどういう特徴があるのかを知っていれば、設計者を変えてもらったり、その住宅会社を選ぶのを止めるなど対策をとることができるようになります。
間取りで失敗しないためには、まずは失敗しやすい設計者を避けると言うのがポイントになるんですね。
そして、そんな避けたい設計者の特徴としては大きく分けて4つあります。
その4つとは、
- 基本的に受け身な設計者
- 片手間に間取りを作成する営業マン
- 人の話を聞かない設計者
- 土地を見ずに間取りを作る設計者
以上の4つです。
このような担当者が間取りを作るというのはできる限り避けたいところなんですね。
それでは、順番に詳しく見ていきましょう。
受け身で言った事しか対応してくれない
「設計者が受け身で言った事しか対応してくれない」
これは特に家づくりで不満に感じやすい部分で、間取りが上手くいかない大きな原因となります。
では、受け身な設計者とはどういう事なのでしょうか?
たとえば、あなたが少し間取り図を描けるとします。(ちゃんとした図面でなく、ざっくりした間取り図)
設計士と打合せすることになったので、その作った間取りを持って行きます。
そして、「こんなのを考えてみたんだけど」と自分で作った間取りを参考に、どんな家がいいか話をして打合せは終わりました。
そして間取りが出てくる日・・、完成した間取りを見てビックリ!
この前見せた間取りがそのまま清書されて出てきました・・。
これは笑い話でなく、普通によく聞く話です。
もちろん、自分で作った間取りが気に入っていてそのまま形にして欲しいと依頼される場合なんかもレアケースとしてあります。
でも普通は「素人が作った間取りで参考程度に持って行ったのに、そのまま出てきても・・」って思いますよね。
良い所は良い、悪い所は悪いでプロの意見やアイデアを取り入れて間取りを出すのがプロの仕事ですが、「言われたまま出せば問題ないだろう」と考える受け身な設計者だと、ホントに見せた間取りがそのまま出てくるんですね。
他には、
何気ない会話に見えますが、このケースにも問題が隠されています。
パッと見では意見をよく聞いてくれる設計者に見えますが、これが続くようだと良い間取りにならない可能性がとても高くなります。
「〇〇したい」と聞いた場合、「〇〇は◇◇だからいいですね」とか「〇〇するならもっとこうすれば良いですよ」、もしくは「〇〇した場合、△△というデメリットもありますよ」というプロとしての意見やアドバイスを普通は言いますし、家を建てる人も自分が言った事が正しいかどうかは分からないのでプロの意見も聞きたいと思うことがほとんどです。
でも、先ほどのケースだと、受け身な設計者は思考が停止していてただ言った事がそのまま反映されるだけなんですね。
こうなってくると設計者ではなく、ただの製図屋さんです。
間取りがしっくりきていないのでアイデアや意見が欲しいのに、こちらから言った事しか対応してくれないのであれば、間取りがよくなる訳ないですね。
もちろん無理な要望や現実的でない要望もありますが、それはそれでデメリットをしっかり説明した上で、お施主さんに納得してもらうというのが設計者の仕事です。
そして、この「納得してもらう」部分が抜け落ちていると、間取りだけでなく家づくりに不安を覚えてしまう事が多いんですね。
このように、受け身な設計士は一見言うことを素直に聞いてくれるのでイイ人に最初は感じてしまいがちですが、実は家づくりでかなり危険な存在と言えます。
営業マンが片手間で家の設計をしている
次に営業マンが営業の片手間で家の間取りをつくっているケースを見てみましょう。
営業マンが間取りを作っているケースというのは、実はよくあります。
会社の仕組みとして営業マンが間取りを作るようになっていたり、たたき台の間取りを作って打ち合わせをするというケースで多く見られます。
ただ、これも家の間取りが上手くいかない大きな原因となります。
理由はとても明確です。
営業マンが間取りを作る場合、営業担当者は数多くの業務をこなした上で、間取りを設計することになるからです。
営業マンが家の設計をする場合、家の設計は数ある営業の仕事の中の1つとなってしまうんですね。
他に業務がたくさんあるので家の設計にそんなに時間をかける訳にもいきませんし、まともな設計をした事ない営業マンがほとんどです。(ウソのようですが、間取りをちょっと書いた事があるくらいの人がお施主さんの家の設計をしているケースもあります)
実際にこれまで多くの営業マンの間取りを見てきましたが、まともな設計ができるのは元建築士であったり設計センスが抜群にある人などかなり限られるというのが現実です。
営業マンは、家づくり全体を見る力やお金、ローンの事についてはプロですが、設計のプロという訳では無いんですね。
家づくりの際、間取りは営業マンが作るけども、その後に設計士が出てくるケースもよくあります。
細かい打合せは設計担当者が出てきて打合せという仕組みの住宅会社ですね。
でも、本来は間取りあっての細かい打合せなので、間取りが微妙だとそこから良い家にすることは至難のわざになってきます。
ちなみに、私もときどき営業マンがつくったプランを元に打合せをすることがあります。
そんな時はどんな流れになるか、よくある例を見てみましょう。
1:営業マンがつくった間取りを元に、お施主さんとどんな家にしたいのか色んな話を聞く。
2:話を聞くと、この間取りではやりたい事が叶えられないと判明。
3:要望を元に間取りをつくり直す。
4:新しい間取りで家づくりをすすめる事に。
こんな感じになることがとても多いです。
これまで営業マンのプランのまま家づくりを進めたことは10件に1、2件くらいの割合でしょうか。
一方、営業マンがお施主さんの要望を聞いてきて設計士が間取りを作るという場合もあります。
規模の大きい住宅会社だとこのようなケースは多くなります。
そんな時、よくある例はこんな感じです。
1:設計士が要望を見て、疑問に思った事や聞きたい事を営業マンに聞く。
2:「理由は分からない」とか適当に何かしらの理由をつける。
3:とりあえず間取りをつくる。
4:間取りを元に営業が打合せ。
5:間取りの修正をする。
以下、何度か間取り修正の繰り返して・・。
6:詳細の打合せが始まる。
7:ベストではない間取りでも、間取りは決定しているのでその間取りを元に詳細を打ち合わせをしていく。
8:その結果、実際に生活してから不満に感じる家が完成する。
営業マンも建築士の資格を持っている人間も多いですし、住宅業界歴も長い人も多いですが、こういうケースが多く見られるんですね。
建築士の私としては、「間取りの話に営業マンが入るなら、大きな熱量を持っていい家にしたいと思っている人以外、間取りこっちに全て任せて欲しい」って思ったりします。
もちろん、営業マンが間取りを作るのが絶対ダメという訳ではありませんが、設計のプロでない人間が間取りを作るので、微妙な間取りになる可能性はどうしても高くなってしまいます。
あなたの建てたい家に営業マンが作る間取りが合致しているのかどうか。
この部分はしっかり確認しておきたいですね。
(注文住宅ではなく規格型住宅など間取りに制限が多くある場合だったり、こだわりがほとんど無い場合は営業マンの間取りも有りだと思います)
→あなたに合っている家はどれ?家は注文住宅だけでは無いんです
ちなみに、「建築士の資格」を持っている事と「家の設計力」がある事とはほとんど関係ありません。
資格があるに超した事はないですし、一定規模以上の建物は資格を持った建築士でないと設計することはできませんが、今まで私が見てきた限り、資格と設計力はほとんど関係がありません。
建築士と書いてある営業マンがつくった間取りだからといって、腕が保証されている訳ではないんですね。
(実は、建築士の試験には、住宅の実務に使えることはほとんど出てこないんです・・)
例外として、会社によっては「営業マン」兼「設計士」という営業設計という職種の人もいます。
このような場合、最終図面まで自分の責任で対応しているという人であれば、間取りの信頼度はかなり高いと言えます。
間取りだけでなく家づくりの最後まで対応するので、何が良くて何が悪かったというのが把握しやすいためスキルアップに繋がりやすく、その結果よい家を作れるという好循環になるからなんですね。
最後にもうひとつ。
もし営業マンが間取りを作った後に、おかしなプランである事に疑問を持たない設計士が担当であったり、わざわざ間取り変更をしないで効率を重視する考え方の住宅会社だとどうなるでしょうか?
私はここにも根深い問題がある気がします。
話を聞く力が無い
家の設計は、家を建てる方の話をよく聞くところから始まります。
要望を書いた紙を設計士が受け取ったとして、それだけで完璧な間取りをつくれる人は「設計の神さま」と言っても過言ではありません。
それだけ家づくりは、どんな家にしたいのかどれだけじっくり話すのが大切なんですね。
「〇〇したい」とか「〇〇が欲しい」と紙に一文が書いてあったとしても、理由も分からなければ、「いつ〇〇したいのか」や、「どこで〇〇したいのか」は分かりません。
このようなことを把握しているかどうかで、間取りは間違いなく変わってきます。
さらには、話がもっと広がれば「こうすればもっと良いんじゃないか」なんて事もよく有るからなんですね。
特に営業マンが間取りをつくる場合で多いのですが、
こんな感じで家の打合せが終わっていませんか?
これだと、ただ要望を入れただけの家になるだけで、あなたの本当に建てたい家とは違う家になってしまう場合があります。
こんな感じで打ち合わせが進んでいる場合は、どうしてその要望を家に入れたいのか理由も伝えるようにしてみてくださいね。
また、設計士が話をしっかり聞いてくれると家づくりの安心感にも繋がります。
たとえば、体の調子が悪くて病院に行ったとして、話も聞かず見ただけで処置されたり薬を出されるとどうでしょうか?
本当にこれで大丈夫か不安になりますよね。
反対に、親身に話を聞いてくれた上で処置をしてくれるお医者さんだと、とても満足感がありますし、話を聞いた上での処置なので安心感もあります。
家づくりも同じなんですね。
設計担当者はしっかり話を聞いてくれる人なのかどうか。
特に家づくりは時間もお金も必要になるものです。
この部分はしっかり確認した上で、家づくりを進めていきたいですね。
土地を見ない設計士
家の設計をする場合に切っても切れない物。
それが土地です。
土地の上に家を建てるので当たり前といえば当たり前のことですが、実は敷地条件というのは家の設計をする時にとても大切な物なんですね。
通常はまず最初に土地を見て、条件の良い部分、悪い部分を把握して光や風をどのように入れるかや、道路から玄関までをどのようにアプローチするかなどを考えていきます。
これを設計の世界ではゾーニングと呼んでいます。
このゾーニング次第で、家の良し悪しが決まってしまうんで、間取りをつくる上でゾーニングはとても重要なプロセスなんですね。
そして、良いゾーニングを作るには、土地のことを良く知るのが必須となります。
このように、間取りは土地を見るところからスタートするものなのですが、中には土地を確認せずに間取りからスタートしてしまうという設計士もいます。
敷地を見る手間を惜しんでしまっているんですね。
極端な話ですが、間取りは敷地の大きさと方位さえ分かれば、作ることができます。
でも、それが良い間取りかどうかは別問題です。
もしかすると、敷地をよく知っていれば他に良い方法が考えられたのに、敷地をよく知らないばっかりにベストではない間取りになっていることもあるんですね。
また、近隣のどこに窓があるかというのは家の設計をするのにとても大切な情報になりますが、それも頭に入れずに間取りを作る設計士もいます。
そうなると、家ができた時にお隣の窓が真正面にあって開けられないなど、せっかくの窓がただの無駄なものにもなりかねません。
これ以外にも土地には家づくりに大切な情報が沢山詰まっています。
あなたの担当者は、土地のことをどれだけ知っていますか?
間取りの説明を受ける時、近隣環境が○○だからこうしたという説明があるかどうか。
この辺りも、良い設計者かどうかを判断する1つの基準となってくれるんですね。
まとめ
今回は危険な設計者の特徴についてお伝えしました。
実は当初、「良い建築士の条件」という形で記事を書こうと思っていました。
でも、いろんな間取りを見ていると、良い建築士の見極め方よりもダメな間取りができる条件をお伝えしたほうが分かりやすくて読者の方の役に立つと思いなおし、今回の記事を書きました。
それだけ世の中には微妙な間取りの家が、数多くあるんですね。
もちろん、私も自分のつくった間取りを詳しい話も知らない人にいろいろ言われたくはないので(設計者は誰でもそうだと思います)、間取り相談では変更した方が間違いなく間取りにプラスになることを書くというスタンスを取っていますが、「ホンマにこの家建てるの?」と目を疑うような間取りを見かけることもあり、その場合はゾーニングからご提案する場合なんかもあります。
日本に良い家を増やすをモットーに、せっかくこのブログを読んでもらった読者の方には有益な情報をお伝えしていきますので、皆さんぜひ良い家を建ててくださいね。
では。
この記事に共感いただける方は、こちらも参考にどうぞ。
→設計士さん次第で、どうしてこんなにも違うの?その理由をお答えします。
家づくりに役立つ最新情報をTwitterでも発信しています。
建築士が実際に見てきた全国の優良工務店を掲載。
家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
家づくりで失敗したくない!そんな方こそ、間取りが重要です。
建築士が教える今日の問題解決
危険な設計者の4つの特徴って何?
- 受け身で言った事しか対応してくれない。
- 営業マンが片手間で家の設計をしている。
- 話を聞く力がない。
- 土地を実際に見ない。