家づくりをしているとよく耳にする「ロフト」という言葉。
「ロフト」とは家の屋根裏を利用した小部屋のことで、小屋裏というデッドスペースを有効活用できることから20年くらい前から「ロフト」を採用する家が増えてきました。
そんな人気の「ロフト」ですが、どういう作り方をすれば1番有効活用できるのでしょうか?
建築士という仕事柄、私はこれまで沢山の「ロフト」を見てきましたが、「ロフト」を最大限活用するも、「ロフト」をつくったはいいけど全く使わず廃墟と化するのも、「ロフト」のつくり方次第です。
それだけ「ロフト」をどう作るのかはとても重要なんですね。
今回はそんな「ロフト」のメリット、デメリットや費用、そして効果的な「ロフト」のつくり方についてお伝えしていきたいと思います。
ロフトって何?
ロフトとは小屋裏を利用したスペースのことを言います。
ロフトを作るにはいくつか条件があり、
- 天井は1.4m以下
- 面積はロフト部分直下階の2分の1まで(例えば2階の小屋裏にロフトを作る場合は2階の面積の半分まで)
- その他、各自治体による制限も有り(自治体によって大分違ってきます)
このような条件があります。
その中でも1番大きいのはやはりロフトの天井高の制限。
日本の建築基準法では高さ1.4m以下のロフトであれば階数に算入しなくてもいい事になっているので、ロフトでとれる天井の高さは最高で1.4mになります。(例えば2階建ての家にロフトが階として算入されてしまうと、ロフトがあるだけで家が3階建てになってしまい法規制や税金で不利になるので、1.4m以下のロフトにしているんですね)
ロフトの使い方としては物置に使用することが多く、部屋にロフトを設けた場合はロフトを寝室代わりに使うケースもあります。
賃貸住宅などではロフトが寝室になっている部屋はよく見かけますね。
それではロフトにはどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
まずはロフトを作った時のメリットについて見てみましょう。
ロフトのメリット
ロフトのメリットをあげるとすると、
- デッドスペースを有効活用できる
- アイデア次第で使い方が広がる
- 部屋が広く見える
この辺りがロフトの大きなメリットと言えます。
それではロフトのメリットを具体的に見ていきましょう。
デッドスペースを有効活用できる
ロフトのメリットとしては、やはり余っている空間を有効活用できるので、家をより広く使う事ができるのが1番のメリットになります。
本来であれば屋根裏となっているデッドスペースを使うことができるので、実際の床面積に加えて+αのスペースがあるというのは嬉しいものですね。
特にコンパクトな敷地で家を広げたくてもこれ以上広げられないという場合、ロフトがあるととても重宝します。
アイデア次第で使い方が広がる
ロフトの別名として小屋裏収納という言葉があるように、ロフトは収納に使われることが多いです。
特に季節家電など頻繁に出し入れしないけども置いておく場所も必要な物とは相性が良く、ロフトは家の収納力の向上に一役買ってくれます。
ただ、ロフトを収納だけのスペースとするのも良いですが、その他の使い道を考えてみるのも楽しいもの。
例えば趣味の部屋として使ったり、リビングと一帯にしてお子さんの遊び場にするのも楽しいですね。
また、書斎として使うと言う方法もあります。
このようにロフトの使い方は収納だけに止まらず、アイデア次第では色んな使い方が考えられます。
ロフトのある間取りを考える場合は、ロフトをどのように使うか考えながら最適な位置にロフトを配置したいですね。
部屋が広く見える
部屋の中にロフトを作った場合、部屋とロフトが一帯になり部屋が広く見えるようになります。
視線が遠くまで抜けることで空間に奥行きがでるんですね。
また、ロフトへ上がるためには天井が低いとロフトへ上がれなくなってしまうので、必然的に天井は勾配天井にする必要が出てきます。
勾配天井とロフトの奥行き感がプラスされることで、空間が広く見えるようになるんですね。
特にリビングと一体でロフトを作ると広く見える効果はより高くなります。
ロフトのデメリット
ここまでロフトのメリットを見てきましたが、それでは次にロフトのデメリットを見て見ましょう。
ロフトのデメリットとしては
- ロフトは熱がこもりやすい
- 費用が意外とかかる
- 天井がかなり低いケースもある
- ロフトを使わなくなることも多い
この辺りがロフトの大きなデメリットと言えます。
それでは、ロフトのデメリットを具体的に見ていきましょう。
ロフトは熱がこもりやすい
ロフトは小屋裏という1番屋根に近い場所につくるケースが多く、屋根に近い分だけ熱がこもりやすくなってしまうというデメリットがあります。
性能のあまり良くない住宅会社や工務店でロフトを作ると、夏は暑くてたまらないなんてことも。
そうなるとあまり使わないロフトへ早変わりしてしまいます。
ロフトを作るなら屋根の断熱材は厚くするか、断熱性能の高い会社で家を建てたいですね。
ロフトは意外とお金がかかる
ロフトは小屋裏というデッドスペースを活用するので、その分費用もあまり掛からないイメージがありますが、意外とロフトにはお金がかかります。
ロフトへ上がる階段なども含めると、ロフトを作るのに坪単価と同じくらいのコストが必要となるんですね。
そのため、場合によってはロフトを作るよりも家を広げてしまった方が良いのではないかというケースも見かけます。
天井がかなり低いロフトもある
先ほどロフトは天井高が1.4m以下とお伝えしましたが、この1.4m以下というのが実は結構くせ者になってきます。
ロフトは最高で1.4mの天井高となり、1.4mの天井高が確保されている訳ではないからなんですね。(普通の部屋は最低の天井高というのが法律で決まっています)
そのため、天井高が1.4m取れないロフトも多くあります。
屋根の形状によっては天井高が1mを切るなんてケースもあるので、どれだけ天井高さが取れるかどうかはロフトを作るなら必ず確認しておきたいポイントなんですね。
経験上、天井高が1mを切ると、ロフト内で頭を打つ確率が極端に上がってしまい移動がストレスになる可能性がグッと上がります。
ロフトを使わなくなることも多い
ロフトのよくある失敗例として、ロフトを作ったけども結局物置になって使っていないというケース。
ロフトは天井高さの制約があることや、階段での上り下りが億劫になってしまい徐々に使わなくなってしまうんですね。
そうならないためにも、ロフトは本当に必要かどうか、ロフトを使うのが手間に感じないかという部分を1度しっかり考えてみたり、リビングなどロフトを使おうと思うような場所にロフトを配置するなど、ただロフトを作るのではなくロフトを有効活用するように作るのがポイントになってきます。
ロフトをつくる時の本音
ここまで、ロフトのメリット、デメリットについて見てきました。
ここからは、私の経験だけでなく私の会社の設計部のロフトに対する考え方をお話ししたいと思います。
家の要望をお伺いする時、収納を増やしたいからロフトが欲しいという要望をよく伺います。
では、実際にその方はロフトのある間取りで家を建てたのでしょうか?
実際は半分くらいの方がロフトを作るのを止めて他に予算を使い快適な生活を送られています。
これはどういう事なのでしょうか?
答えはロフトを物置に使うという考え方にあります。
実は敷地が狭く家が大きくできないケースや、どうしてもロフトでなければいけない場合をのぞいて、ロフトを物置に使うというのは家全体のバランスを見るとかなりもったいないのが現実です。
物を置きたいという観点でお金をかけてロフトをつくるなら、同じ費用で家を大きくして収納をつくった方が価値があるんですね。
(詳しくはあとでご説明しますね)
それでもロフトをつくりたいという場合は、はしごで上がるロフトではなく、階段であがるロフト、もしくはスキップフロアの段差を利用したロフトも検討してみるとロフトの使い勝手は向上します。
はしごと違い、物を比較的簡単に出し入れできるからなんですね。
はしごだと重いものや大きい物をロフトに上げる時かなり危険を感じますし、下手したら大けがをします。
大人の男性でも重い物を持ってロフトへ上がるのは危険を感じるので、女性や子供ならどれだけ危険か分かっていただけると思います。
ロフトはただでさえ物の出し入れが大変なので、どれだけ出し入れしやすいロフトにしてあげるかがロフト成功の秘訣なんですね。
このようにロフトのあり方を最初に明確にすることで、出し入れが面倒になりほとんど使われなくなったロフトを見ることは無くなりました。
ロフトを収納に使う場合、まず収納としての機能を果たしているか。
この部分は必ず確認してみてくださいね。
ロフトを一番有効活用する方法
一方、ロフトを物置メインでなく、書斎代わりや子供の遊ぶスペースという風に多目的に使用したいという方もいるのではないでしょうか。
実は、ロフトをつくるなら物置ではなく、このような使い方をしたほうが価値があります。
この場合は、寝室や子供部屋といった個室ではなく、リビングなどにつくった方がロフトが効果的に使われています。
例えば子供部屋にロフトをつくっても、ロフトに登って子供が遊ぶことはあまりありません。
子供はだいたい、リビングなど人がいるところで遊ぶからなんですね。
こうした事から、個室にあるロフトは中途半端な物置と化してしまいやすい傾向があります。
そのため、個室にロフトをつくる場合、どちらかといえば部屋が狭いのでどうしても寝る場所や物を置く場所を確保したいといったケースくらいに留めておくのが無難です。
では、リビングにつながったロフトはどうでしょうか?
リビングにつながったロフトはかなりの確率で有効活用されています。
まず、リビングとロフトがつながっていると、リビングもロフトも広く見えて開放感が出ます。
さらにはロフトからリビングの眺めも良いのでロフトに求心力が出てきます。
ロフトの居心地がよくなるんですね。
そのためロフトに行く事が増えて、廃墟になるのではなくて価値のあるロフトになる事が多くなります。
このようにリビングとロフトはかなり相性がいいんですね。
リニングにロフトを作るケースとしては2階リビングや平屋にした場合にリビングにロフトを作ることができるようになります。
2階リビングや平屋の場合はロフトを1度検討してみるのも結構楽しいですよ。
→【保存版】2階リビングのメリット、デメリットをまとめました
リビングにあるロフト
ロフトをつくるのに必要な費用
ロフトは空いたスペースを有効活用するので経済的なイメージがありますが、ロフトをつくるのは意外にお金が必要になってきます。
単純に小屋裏に階段で上がるロフトをつくるとすると、普通に部屋をつくるのと変わらないくらいの費用が必要になってくるんですね。
いくら床材や壁の仕上げを安くしたとしても、人が入って物を置く事になるスペースなので部屋と同じようにしっかりした構造が必要になりますし、ロフトへ上がるための階段も必要になってきます。
このように必要な物を考えると、結局は普通に部屋をつくるのと変わらないくらいの費用が必要になってくるんですね。
そのため、ロフトに価格的なメリットはほとんど無く、狭小地でタテの空間しかスペースを取れない場合や、2階リビングでリビング空間をより広く見せるといった、ロフトでないとダメな場合であったりロフトがあるからこそ活きてくる空間なら価格に見合った効果を発揮してくれます。
一方、そうで無い場合は普通に家を大きくして高さをしっかりとった収納をつくってあげたり部屋を広くとる方が効果的です。
お金を掛けた割にロフトを使わなかったとならないように、このあたりのロフトの経済性も踏まえながら、ロフトをつくるかつくらないかを判断したいですね。
まとめ
今回はロフトについて詳しく見てきました。
ロフトは物を置くのがメインのロフトと書斎など多目的に使うロフトの2パターンがあります。
物を置くロフトが活きてくるのは、土地が小さくて家がもう大きくできなくて余剰スペースを有効活用する場合。
反対に、土地に余裕があるなら無理にロフトをつくらずに、そのぶん家を大きくして収納を増やした方が使い勝手も上がって価値が高くなります。
一方、ロフトを収納メインではなく趣味室など多目的につくるなら、リビングにリフトを作るのがオススメです。
リビングにつながったロフトをつくる場合は、平屋か2階にリビングがあるケースに限られてるとい制限がありますが、それだけの価値があるロフトになってくれます。
リビングのそばにあるロフトは開放感と実用性をかねそなえたロフトなので価値が高いロフトとなります。
さらには、はしごではなく階段であがるロフトにするなど、ストレスが少なく快適な空間にする事がロフトの廃墟化を防ぐ方法なんですね。
多少ロフトに辛口になってしまいましたが、作った意味がないロフトほどもったいないことはありません。
(ロフトをつくるにも結構なお金が必要になるので、それならキッチンに力を入れるなどよく使う場所に予算を使った方が価値が高いですよね)
ロフトの価値は作り方と、ロフトの特性をどれだけ知っているかで変わってきます。
あなたもロフトをつくる際はよく検討した上で、あなたに合った価値のあるロフトをつくって下さいね。
では。
ロフトは家の性能しだいで居心地がかなり変わります。
ロフトはこちらも参考にしてださい。
→ロフトへは階段で行く?それともハシゴ?あなたに合った階段の選び方
家の内装が気になる方はこちらも参考にしてください。
→新築の内装はどうすればオシャレに見える?内装を決める時の6つのポイント
家づくりに役立つ最新情報をTwitterでも発信しています。
建築士が実際に見てきた全国の優良工務店を掲載。
家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
家づくりで失敗したくない!そんな方こそ、間取りが重要です。
建築士が教える今日の問題解決
ロフトって実際どうなの?
- 物置用のロフトは土地が狭く家を大きくできない場合に有効。
- 物置用のロフトは階段で登れるなど出し入れにストレスのかからない形状に。
- 土地が広いなら、ロフトにかかる費用で家を大きくして収納を増やす方がいい。
- リビングにつながったロフトは開放感が出て、価値が上がる。
- ロフトをつくるなら、階段で登れるリビングにつながったロフトがベスト。
- 高さがどれぐらいとれるか必ず確認する。