「在宅ワークがしやすい家にしたい」
「仕事ができる環境の家が欲しい」
建築士の仕事をしていると、このような声を聞くことがとても増えるようになりました。
新型コロナウイルスが在宅で仕事をするきっかけとなり、今現在もIT関係の仕事を中心に大手でも出社を減らして在宅ワークを中心にするという企業が増えています。
このような働く環境の変化に合わせて家で仕事をする環境を整えたいという方が以前よりも増えているんですね。
その一方、在宅で仕事をするからと言って安易に「とりあえず家のどこかに仕事ができるカウンターを作っておきたい」というパターンは実際に使って見て後で「失敗した!』と後悔しやすいポイントでもあります。
仕事をする場所をどう作るかで仕事のパフォーマンスというのは大きく変わってきますし、在宅ワークになって以前よりも仕事の効率が落ちたり成果が上げられないようになるのはやはり避けたいですよね。
では、在宅ワークでしっかり成果を出せる家にするにはどうすればいいのでしょうか?
また、どうせ仕事をするなら快適で楽しく仕事をしたいですよね。
そこで今回は在宅ワークしやすい家について詳しく見ていきたいと思います。
在宅ワークをしている方や、これからも在宅ワークをする可能性があるという方はぜひご覧ください。
あなたが仕事しやすいのはどんな環境?
在宅ワークをしやすい家を作る場合、まずはあなたが家でどれくらいの頻度仕事をするのか、またどんなスタイルで仕事をすれば一番仕事がしやすいかをハッキリさせるのが1番の近道となります。
たとえば在宅ワークと言っても在宅がメインで必要な時だけたまに出社するという方もいれば、週に数日だけ在宅で仕事をして半分以上は会社で仕事という方もいますし、基本は出社でたまに家で仕事をする方など様々な働き方があります。
また、仕事のスタイルとして個室など静かな環境で仕事をした方が集中できて捗るという方もいれば、仕事できる場所があれば周りの環境はそれほど気にしない方もいますし、育児もあるので家の様子も見ながら仕事をしたいという方など、ベストな仕事環境は人によって違ってきます。
このように、まずはどのようにどれくらい家で仕事をするかで在宅ワークできる家の作り方というのは大きく変わってくるんですね。
特に在宅ワークが増えると仕事をしている姿は見えないので評価の基準はどれだけ成果を出したかという部分がより目立つようになってきます。
これまでは会社が用意した仕事場で仕事をしてきましたが、在宅ワークの場合は「自分で成果を出せる仕事場を作る」というのが重要になってくるんですね。
もちろん、仕事の成果以外にも子育てをしながら合間に仕事をしたいなど色んな仕事のスタイルがあります。
一番もったいないのはあなたに合わないワークスペースを作ってしまい、そこに無理に合わせて仕事をするようになってしまうということです。
そうなると、仕事の効率が落ちてしまいますし、疲れも溜まりやすくなってしまいます。
在宅ワークできる場所を作ったけども、仕事がしにくくて成果が下がったり疲れるようになったというのは絶対に避けたいことです。
そうならないよう、どんな環境であれば仕事がしやすいかしっかり把握した上で家づくりを進めることがとても大事になってなるんですね。
仕事をする場所を作る
Photo:https://ienakanote.com/member/63/record/1049/
在宅ワークできる環境を作る場合、大きく分けて2つの方法に分けられます。
仕事場として個室を作るのか、それともリビングやホールなどに仕事ができるスペースを作るのかという2つの方法です。
そして、どちらの方が良いかは仕事のスタイルによって分かれてきます。
たとえば、オンラインの会議やミーティングなどが多い場合は個室の方が音を気にせずに仕事をすることができますし、機密事項などをよく扱う場合はセキュリティー的にも個室の方がベターとなります。
また、まわりに人がいない方が集中できるという場合も個室の方が効率よく仕事ができる傾向があります。
たとえば共有スペースにカウンターを作った場合だと仕事をしている周りに家族がいることもよくありますし、TVなどの生活音もよく聞こえます。
その辺りが気になるかどうかというのが仕事場を個室にするかどうかの大きな判断材料となってくるんですね。
(私自身も仕事に集中している時は周りの環境はまったく気になりませんが、後ろで人がごそごそ動いている環境よりも専用スペースの方が仕事がしやすく感じます)
その一方、まわりに何かある方が仕事がしやすいという方もいます。
たとえばカフェで仕事をするのが好きな人は静かな環境よりも少し物音のする雑多な空間の方が集中できるという方も多いですし、一人の空間で仕事をしていると気が緩んでしまって中々集中できないというというケースもあります。
また、お子さんの様子を見ながらという場合はやはりリビングに仕事ができるスペースがある方が良いですし、リビングよりもう少し落ち着いた場所の方がいいという場合はリビングと少し距離を取ったり、半個室のような外の気配は分かるけども仕事専用に使えるスペースを作るというのもいいですね。
このように、仕事場に求めるものは何なのか。
まずはこの部分を明確にしておきたいですね。
在宅ワークの環境
それでは次に、在宅ワークをする場合に必要な広さについて見てみましょう。
個室として在宅ワークできる場所を整える場合であれば、小さくても2帖くらいの広さは欲しいところ。
2帖というとこんな感じですね。
畳2枚分の広さなので、机と本棚を置くとスペースが一杯になるという感じです。
一方、3帖くらいのスペースが取れればデスクと本棚以外も置くスペースを作ることができるようになります。
こんな感じですね。
部屋が広ければ広いほど色んな物が置けるようになりますが、実際に1人が作業する場合にスペースが増えるのは3帖くらいまでなので、この部分を意識しながら仕事場の広さを決めると無駄なくスペースを活用できるようになります。
そのほか、普通の仕事場にするのではなくソファベンチなどを置いて遊んであげるのもいいですね。
ノートパソコンを持ち込んで仕事をしたり本棚にある本を読んだり、たまにはゴロゴロしたりと空いていれば家族の誰でも使えるようなスペースを作ってみるのも楽しいものです。
ちなみに、仕事をする場合はカウンターやデスクの大きさというのも意識しておきたい部分です。
仕事として考えるなら幅は1人あたり1mは欲しいですし、奥行きも60㎝ほど確保しておくとパソコンで作業しても問題のない広さとなります。
もし会社と同じような環境が使いやすい、もしくは使いにくいと感じるなら今のデスクの大きさを測ってみて、それより広くするか小さくするか検討してみるのも効果的ですよ。
たとえばパソコンメインで仕事をする場合はモニターの大きさで仕事のしやすさも変わってくるので、会社からノートパソコンが支給されていても在宅で作業する場合はモニターを接続できるようにするなど、作業環境をより使いやすくするのも大切なポイントになります。
何を机の上に置くのか。
そして、どんな作業をするのか。
この部分を洗い出して使いやすいワークスペースにしたいですね。
迷った場合は必ずしも造作で作り付けのカウンターを作る必要はなく、これから転職する可能性があるなど仕事環境が大きく変わる可能性がある場合は家ができた時に机を購入し、仕事のスタイルによって机の大きさを変えるいう方法もあります。
(机が大きければ大きいほど家や部屋の中に入りにくくなるので、大きな作業スペースが必要な場合は作り付けの方がベストです)
→造作(ぞうさく)であなた好みの家に!造作のポイントとオススメの造作場所
また、長時間座ることになる椅子もできれば意識しておきたいもの。
少しお値段は高くなりますが、作業しやすい椅子で仕事をするのと座りにくい椅子で仕事するのでは疲れ方にかなりの違いが出てきます。
一方、椅子を選ぶ場合に注意しておきたいのがリビングやホールなど共用スペースで仕事をするという場合です。
デスク用のチェアは機能性重視であることが多く、見た目と部屋のバランスが崩れやすくなってしまうんからなんですね。
その場合にオススメなのはお洒落なダイニングチェアをうまく使うという方法です。
ダイニングチェアなので座り心地が考えられた物が多いですし、部屋のインテリアにも馴染みやすいんですね。
特に長時間使う場合は座面にクッションが付いていたり、クッション性のある素材の椅子を選ぶと長く座ってもお尻の負担が少なくなります。
Photo:https://www.pinterest.jp/pin/684758318318440439/
→おすすめの名作チェア12選 + おしゃれな椅子をご紹介します
そのほか在宅ワークをする場合、部屋の明るさというのも意外と重要なポイントとなります。
会社では窓が有ってもブラインドで全部閉めていてあまり外の明るさは関係ないという職場もありますが、それは蛍光灯を多用して明るい空間を作っていること、またある程度の広さがあるので閉塞感を感じないという点が大きくなります。
一方、在宅ワークの場合は個室であれば部屋が小さければ小さいほど窓が無いと狭さをより感じますし、毎日照明を付けないと暗い空間の中で仕事をするというのは精神衛生上あまり気持ちの良いものではありません。
これは在宅で仕事をする時間が長ければ長いほど影響を受ける部分なので、部屋の明るさというのもしっかり考慮しておきたいですね。
あまり光が取れない場合は出入り口の扉をガラス張りの物にしたり、引込み戸にして必要ない時は扉を開け放てるようにしておくという方法も効果的ですよ。
→どんな建具を選べばいい?ドアや引戸を選ぶときに知っておきたいポイント
家に仕事場を作るコストパフォーマンス
それでは次に、家の仕事場を作る時の費用とコストパフォーマンスについて見ていきましょう。
リビングの一角に作業スペースを作る場合はカウンターを作るだけなのでそれ程コストが掛かる訳ではありませんが(広めのカウンターだけであれば10万円もあれば十分作ることができます)、専用のスペースを作ったり個室の仕事場を作るとなるとやはり予算面でも気になるところです。
では、具体的に2帖の仕事場を作った場合にはどれくらいの費用が掛かるのでしょうか?
2帖の仕事場を作る場合、単純に家の大きさが1坪増えるケースが多くなるので家が1坪大きくなった場合で見てみましょう。(1坪=2帖です)
たとえば坪単価50万円の家だとすると、1坪家を大きくすると50万円コストが増えるように感じますが実際にはそれ程増えることはなく、目安としては家を大きくすると坪単価の6〜7割くらいで家を大きくすることができます。
(坪単価の仕組みについては下の記事を参考にしてください)
坪単価の6割ほどで家を大きくできたとすると坪50万円の6割で30万円。
それにカウンターや本棚の造作をしたとして40万円〜50万円くらいで仕事場を作れることになります。
では、これはコストパフォーマンスとして高いのでしょうか?それとも安いのでしょうか?
比較する目安としては、実際に別の場所にオフィスを借りた場合はどれくらいの費用が掛かるかを比べてみると判断がしやすくなります。
たとえば、今はWeWorkなど仕事をするスペースを定額で借りられるコワーキングスペースが増えています。
そんなコワーキングスペースの1ヶ月の利用料を見てみると、月の利用額は2万円前後になっているのが一般的です。
言い換えると、一人が仕事をするスペースの相場が1ヶ月で約2万円なんですね。
それを先ほどの2帖の仕事場に当てはめると、50万円であれば2年くらいで元が取れる計算になります。
そうなると家で在宅ワークできるスペースを作るというのはかなりコストパフォーマンスが高いと言えそうですね。
もちろん光熱費などは必要ですが、家以外で仕事をするスペースを借りる事を思えばかなり魅力的な選択肢と言えます。
家に在宅ワークのスペースは作るべき?
家にしっかり在宅ワークができるスペースを作れるとベストですが、仕事部屋ではなく軽く仕事をできるスペースを作り、家以外の場所でメインに仕事をするという選択肢もあります。
家で仕事をするのが合う人もいれば、外で仕事をした方が集中できるという方もいるのがその理由です。
在宅ワークだと通勤がないのでオンオフの気持ちの切り替えは自分でする必要がありますし、家だと中々仕事モードに入れないというケースも耳にします。
そのような場合は無理に家に仕事スペースを作るのではなく、コワーキングスペースなど外部を利用するのも一つの方法です。
在宅ワークの場合は仕事ぶりが目に見えないのでより成果が求められますが、その成果が一番出る方法が何なのかが重要なんですね。
たとえばコワーキングスペースは街中に多く住宅街に少ないというのが難点ですが、日本全国どこでも使えるコワーキングスペースを数千店舗単位で作って働く場所にこだわらないスタイルを作ることを目指している「いいオフィス」という会社もありますし、銭湯にコワーキングスペースを作ってお風呂に入ったり食事もできるコワーキングスペースがあったりと、仕事をする場所の選択肢というのはどんどん増えてきています。
→小杉湯
外部に仕事を持ち出せないので家にしっかり仕事場を作るというのもいいですし、家に仕事場を作ってもたまに息抜きでこのような外のスペースを使ったり、家では軽い作業ができるくらいにして外で仕事をするというスタイルも有りです。
仕事は人生の中でも長い時間を使うものなので、できるだけ快適で楽しく、また効率よく仕事できるにはどういう方法があるのか。
この部分を意識しながら、家に最適な作業スペースを作る。
これがリモートで仕事をできる環境を作る時に一番大切なことなんですね。
まとめ
今回は在宅ワークで仕事がはかどる家にする方法について詳しく見てきました。
たとえば週の半分以上在宅ワークをするようになれば、家のリビングで過ごす時間よりも仕事をする時間の方が増えるようになります。
そんな長時間過ごす場所なのでしっかり環境を整えることが在宅ワークできる家を作る時の大きな成功ポイントとなるんですね。
そのため「家にとりあえず仕事ができそうなカウンターがあれば」ではなく、どんなスペースがあれば効率的に仕事をすることができるか。
この部分を一度意識してみた上で、それを家に落とし込んでいくのが大事なんですね。
仕事は人生の中でも大きなウェートを占めるものです。
ぜひ、快適に、そして楽しめるような仕事環境を作っていきたいですね。
では。
家の仕事環境については下の記事も参考にしてください。
→書斎はどう作ればいい?あなたに合った書斎を作るための5つの方法
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