みなさんこんにちは。ed-commons小林です。
春のお彼岸の季節ともなりますと、日差しも暖かく感じられるようになりましたね。
家づくりをしていると、雑誌やインターネットで調べた写真や画像をノートに貼って「こんなリビングにしたい」「このキッチンみたいな感じに憧れている」と明確なイメージをお持ちの方から、「どうすればいいのかわからない・・」と困った顔で相談に来る方まで、いろんな方がいらっしゃいます。
今日は、希望のインテリアのイメージを伝える上で大事なことをアドバイスしたいと思います。
人が思っているイメージ言語はちょっとずつ違う
仕様打ち合わせの時に、「ナチュラルな感じにしたいです」と、「○○の感じ」と言ってくださる方が結構いらっしゃいます。
ただ、この「ナチュラル」という単語、一見わかりやすいようでいて、「ナチュラル」にはたくさんの「ナチュラル」のイメージがあるのをご存知でしょうか?
例えばAさんは「ナチュラル」と言うと、白木に近い木目の床に、白に近い無地のシンプルな壁紙の壁や天井、パイン製の家具にマリメッコの鮮やかなカーテンが映え、ヤコブセンのアントチェアがちょこんと置いてあるような北欧風のような空間をイメージするかもしれません。
しかしBさんは「ナチュラル」と言うと、室内を見上げると木の大きな梁がかかり、板が貼ってある壁、といった、カントリー調の「木の部屋」に近いナチュラルな空間をイメージするかもしれません。
ナチュラルでもシンプルモダンに寄ったナチュラルもありますし、フレンチカントリーやシャビーシックに近いナチュラルもあれば、最近は無骨なカフェのイメージのあるポートランドスタイルに近いナチュラルが思い浮かぶ方もいらっしゃいます。
このように、同じ言葉でも人それぞれ想像するイメージがちょっとずつ違うことがよくあり、完成した後に「いや・・たしかにナチュラルと言ったけれど・・・こういうナチュラルじゃなくってさぁ・・・」と思われることがあります。
言葉って難しいですね。
希望のインテリアイメージの伝え方
言葉で「こんな感じ」にしたいと伝えるってなかなか難しいけれど、ここがずれると、せっかくの家づくりも台無しになりかねず・・。
だからこそ、「こんな感じ」の共有って非常に大事なことなんですね。
それでは、どのように希望のインテリアのイメージを伝えていくことが大事でしょうか。
そこで、いつも私がお客様と行っている、インテリアのイメージを正確に共有ため伝え方のポイントをお伝えしますね。
イメージを、形容詞で表す
ここで皆様に見ていただきたいものがあります。
色を勉強した事のある方や興味のある方はご存知の方も多いと思いますが、これは、カラーイメージスケールといって、日本デザイン研究所が開発した、日本人の価値観や生活習慣の中で育まれている形容詞のことばと色を心理学的に解析しリンクさせたマトリックスです。
左に行けば行くほど、温かみのある色となり、右に行けば寒々しい色になります。
上に行けば行くほど明るくソフトな色ですが、下に行けば暗くかっちりとしたハードな色です。
この色のマトリックスに配色イメージスケールを重ねてみます。
「エレガントな」「にぎやかな」「ダンディな」といった形容詞や形容動詞が、3色の配色パターンとともに並んでいます
黒い枠内に赤字で「カジュアル」「ゴージャス」などと書かれているのはイメージジャンルと言われるもので、これが大まかにいうとインテリアのジャンルに近いと思ってください。
これはどういうことかといいますと、このマトリックスに描かれているのは、多くの(100%ではありませんが)日本人がこれらの言葉を聞くと連想できる代表的な配色と言われています。(もちろんあくまで代表例ですので人によっては多少の違いはあります)
たとえば「子供らしい」というワードをみてみましょう。
配色イメージスケールでいくと左上の「プリティ」というジャンルにありますが、この3色は、多くの日本人が数ある色の中から「「子供らしい」を色で表現してください」と言われて一番選ぶ色とされています。
言われてみると「なるほど〜!」と思われる方も多くいらっしゃると思います。
しかし、なぜこれらの色を多くの人が選んでしまうのでしょう?
実は、私たちの社会や生活の中では、色というのは意図や意味をもって存在しています。
例をあげますと、バレンタインデー。
バレンタインデーというと何色を思い浮かべますか?
おそらく多くの日本人(日本で育ってきたり住んでいる人)は、すぐにピンクか赤をあげます。
しかし、どういうわけだかバレンタイン=緑色と連想する人はあまりいません。
これは、バレンタインデーというと「毎年2月14日に女性から好きな男性に向けてチョコレートを贈るイベント」であることを日本社会で生活しているほとんどの人が認識しており、毎年2月になるとハート型のチョコレートがピンクや赤のギフトボックスにきれいにラッピングされてお菓子売り場に並んでいるのを多くの人が知っているからです。
この時、デパートやスーパーの広告も意識的に、女性が好む、女性らしい色とされるピンクや赤の色を多用することで「バレンタインデー=ピンクor赤」という意識が消費者に生まれます。
逆に、クリスマスといえば「赤と緑」を連想する方が多いのは、赤と緑がクリスマスのモチーフとして多く使われているからなんですね。
季節のものだけでなく、実は、社会のいたるところで色は意味をもって存在しています。
色は心理的なイメージとそのものが非常にリンクしていることが多く、昔から社会の中で意図的な使われ方をしています。
コンビニでも「オレンジとグリーンがテーマカラー」「ブルーとホワイトがテーマカラー」といえばどこのお店?
と聞かれれば思い浮かぶコンビニがありますね。
さらには、「都内のJR線のマークで緑色」といえば何線かが分かるように、また、公共トイレで使われている2色のどっちの色に行けば自分の性別のトイレにたどり着けるのかわかるように、色で「そのもの」を認識していることが非常に多いのです。
このように、色というのは非常に共有度の高いツールであることが分かります。
そして、この事を覚えておくと家づくりでもとても便利なんです。
ここで先ほどの配色イメージスケールが活躍します。
「この空間でどのような空間にしたいか?」
を形容詞で言う事で、それに合った色のイメージを簡単に伝える事ができるんですね。
「静かな(寝室)」「優雅な(キッチン)」「さわやかな(リビング)」「ポップな(子供部屋)」「モダンな(玄関)」「ダンディな(洗面所)」などなど。
「ポップな子供部屋」にしたいとき、濃くて暗い色や素材はあまり使いませんよね。
それよりも明るい赤や黄色、緑の色や素材を使いたいのではないでしょうか?
このように、どんな部屋にしたいのかを誰かに伝える時は、この形容詞や形容動詞とカラーイメージスケールをツールとして使うとより理解してもらいやすくなります。
このやり方は、家づくりの打ち合わせでも使えますし、家族間でどんな部屋にしたいかという話し合いでも使えます。
ご夫婦で希望のイメージがなんとなくしっくりこない場合は、この形容詞を使って「どんな空間に住みたいか」を話し合う事をお勧めしています。
私も、最初のヒアリングの際は「どんなお部屋にしたいですか?」と聞き、お客様から何気なく発せられる形容詞や形容動詞を特に注意して聴いています。
もちろん頭の中にはイメージスケールがありますので、発せられる形容詞がどのジャンルに属するものなのか、どんな配色なのかを判断して色や素材を提案するのですが、「ああ、そんな感じでお願いします!」とかなりの確率でゴーサインをいただけますし、その結果、完成後もお客様に満足していただいています。
家具屋や雑貨屋、カフェの固有名詞で表す
「こんな感じにしたい」をうまく伝える方法としては、具体的なインテリアショップや店舗の名前を出す事も有効です。
たとえば「無印良品の家具コーナーのような」「IKEAのカタログの一室のような」「ローラアシュレイのベッドルームのような」というと、設計士やインテリアコーディネーターはどのような要素があればそのショップのイメージに近づけるかを提案してくれます。
たとえばそれが建築で作る事が可能な壁や床だったり、システムキッチンだったり、照明器具だったり、カーテンだったり、家具だったり、と、いくつかの要素から具体的なご提案が生まれてきます。
私が以前担当したお客様で、ご主人が小学校の先生という方がいらっしゃいました。
ご主人のために書斎を間取りにいれた時、どんな風にここで過ごしたいですか?と尋ねると、ご主人が「スターバックスの雰囲気のカフェが落ち着くから好きなんです。だからスタバのような書斎で仕事をするのが夢だった」とおっしゃいました。
そこで、スターバックスで使われる色、素材を組み立て、床や造作の書棚を明るいこげ茶の木目調に統一し、窓には濃い深緑のウッドブラインドと同色のインダストリアルランプの照明などをご提案したところ、非常に喜んでいただき、完成した時に「ここにはこだわりのコーヒーメーカーを置きます」とおっしゃっておられました。
そこで、小物にオレンジ色のモザイクガラスの花瓶などやスウェードの座面のクッションスツールなどがあれば、よりスタバらしい空間になりますよというご提案もさせていただきました。
お客様は早速小物を買いに行かれたようで「これを買ったよ。家にいるのがすごく楽しい!」と喜びのご報告までいただきました。
ここまで具体的にご提案できたのも「スターバックス」というキーワードがあったからです。
もし「ここ!」と思うイメージの店舗がありましたら、ぜひ打ち合わせで伝えてみてくださいね。
雑誌やネットの画像を見せる
非常にこだわりのあるお客様ですと、スケッチブックにインターネットでひろってきた画像やインテリア雑誌の切り抜きなどをスクラップして「イメージブック」として持ってきてくださる方がいらっしゃいます。
お互いに目で見て雰囲気や質感を共有できますので、非常に話がスムーズに進む事が多いです。
ただ、「この雰囲気で」という形で持ってこられる方も多く、具体的にいうとしっくいの塗り壁のことなのか、床の色のことなのか、照明器具のことなのかを説明する必要があります。
打ち合わせで画像を見せる場合、その画像のどこが気に入っているのかを話してみるとより理想に近づけることができますよ。
まとめ
それでは今日のまとめです。
希望のインテリアのイメージをうまく伝えるには、
- 人が思うインテリアのイメージはそれぞれ。だからこそ同じイメージを共有することが大事
- どんな空間にしたいか、どんな空間で過ごしたいかを形容詞で表現してみる
- 家具屋や雑貨屋、カフェの固有名詞で表してみよう
- 雑誌やネットの画像を見せるときは「どこを気に入っているのか」を説明しよう
いかがでしたでしょうか。
内装やインテリアの打合せ上手くいかない場合、イメージが共有されていないのがほとんどです。
希望のイメージをうまく伝える方法を知ることで、なんとなくしっくりこないなと思っているお客様が
一人でも減って、皆さんがそれぞれの理想の家づくりを楽しんでくださいね。
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