「今検討している土地がかなり細長く、家も必然的に細長い家となってしまいそうです。細長い土地に家を建てる時のアドバイスがあれば記事にしてもらえないでしょうか?」
このようなリクエストを読者の方からいただきました。
たしかに土地だけを見ていると、どのような家になるかイメージするのは難しいものです。
特に細長い土地など個性が強い土地ならなおさらですね。
でも、どんな土地にも家を建てる時のセオリーであったり、失敗しやすいポイントというのがあります。
その部分を頭に入れておくことで、実際に間取りが出てきた時にチェックすることができますし、その分だけ間取りで失敗する可能性というのを減らすことができるんですね。
そこで今回は、いろんな土地がある中でも細長い土地にスポットを当てて、細長い家になる時に確認しておきたいポイントについて詳しく見ていきたいと思います。
細長い土地を選ぶ時のポイント
細長い土地で家を建てるのを検討する場合、まずはその間口がどれくらいの広さがあるのかで建てられる家が大きく違ってきます。
(ちなみに、間口とは下の絵ように道路に面した長さのことを言います)
この間口に一定の広さがあるのか、それとも無いのかで間取りの難易度というのは大きく変わってくるからなんですね。
では、どれくらいの間口の広さが基準となるかというと「6m」というのが一つの基準となってきます。
6mあれば細長い家になっても必要な要素を上手く入れやすく、6mを切ると間取りのいろんな場所に支障が出やすくなってくるからなんですね。
たとえば6mあればこんな感じの間取りになります。
家自体は細長いですが、必要な要素は無理なく入る大きさになっているのが分かります。
その一方で、これより細長くなってくると部屋やLDKといったスペースをしっかり取るのが難しくなり、建てたい家が建てられないというケースなんかも出てきます。
もっと細長い家になると下のような間取りになることも。
こうなると家に合わせて生活するといった感じになってきますね。
そのため、まずは6mと言うのが細長い土地を検討する時に覚えておきたい数字となります。
例外としては、都市部では6mを少し少し切っても何とかなることもあります。
普通は家を建てる場合はお隣とは50㎝以上空ける必要がありますが、都市部ではすぐ隣に家が建っているというケースもあり、その場合は50㎝以上スペースを空けてなくても家を建てられるからなんですね。
その場合でも工事の足場などを考えると数十㎝くらいは必要なので、6mを大きく切るようだと間取りの難易度はグッと高くなります。
ちなみに、家の間口がかなり小さくなると間取りを普通に作るだけでは成り立たないことも多く、その分だけ間取りをその土地に合うように調整するなど色んな工夫をする必要が出てきます。
そうなると規格化が進んでいるハウスメーカーなどで家を建てるのは難しく、小さな住宅を得意としている設計事務所や工務店に依頼するのがベストな選択となってきます。
たとえば家の幅が2mくらいになると間取りの難易度は格段に上がりますが、下の間取りはお風呂は必要な時だけ間仕切りをして使わない時は通路として使えるようにしたり、キッチン、ダイニング部分を1つの広い空間にしつつ、開けた方角に窓を設けて視線が抜けるようにすることで狭さを感じさせないようにしています。
Plan:https://www.kmrmtmt.com/s_b.html
このように細長い土地に家を建てる場合は間取りのセンスや経験というのがとても問われるようになります。
そのため細長い家になりそうな時は、そのような条件が得意な設計事務所や工務店も選択肢にしっかり入れておきたいですね。
細長い家を建てる時のポイント
Photo:https://kentikusi.jp/dr/users/1788
それでは次に、細長い家を実際に建てる場合にどんな部分をチェックすればいいのか見ていきましょう。
まず、細長い家になる場合は物理的に横幅を広げることはできません。
その一方、細長いということは縦には長くスペースを取れることになります。
そして、実はこの長く取れるというのは家を建てる時の大きな武器になってくれます。
その理由は、家ではどれくらいの抜け感を出せるかで空間の見え方というのは大きく違ってくるからです。
たとえば壁ばかりある家と、奥まで視線が抜ける家だと、後者の方が広く見えますよね。
そうなんです。
細長い家というのは細長い分だけ抜け感を出しやすいという特徴があり、「長さを活かしてどれだけ視線を抜けるか」というのがとても重要となってくるんですね。
そのため、間取りを見る時も家の中が壁で分断されていないか、また視線が抜けるようになっているかどうかという視点を持つことで、実際の広さ以上に見える家にすることができます。
その他、細長い家の間取りで多いケースとしては、家が細長くなってしまうので南面が広く取れないというケースも出てきます。
特に南道路の場合であれば、玄関が南側に来ることでLDKに十分な光が入ってこないということも。
特に間口がコンパクトになればなる程影響が大きくなり、場合によっては玄関が邪魔してLDKの形が歪になってしまうなんてことも。
そのような場合は玄関を道路側に配置するのではなく、少し奥まった位置に配置するという方法も効果的です。
そうすることで、本来一番明るさの欲しいLDKに光を入れることができるようになり、その結果、住み心地のよい家にすることができるんですね。
玄関を例に挙げましたが、玄関でなくても同じことで、光を入れる場所をLDKにしっかり確保する。
細長い家の場合は光が入る場所が限られることも多く、薄暗い雰囲気のLDKにしないためにも、この部分は必ずチェックしておきたいですね。
また、細長い土地の周りでは、周辺のの土地も細かく区分けされていることが多く、その分だけ住宅が密集した状態になりがちです。
そうなると普通に家を建てるだけでは周りの家で日差しが遮られ、家の中に光が入って来るのは太陽の高さが高い夏場などに限定されてしまうこともあります。
一番日差しが欲しい冬に光が入ってこないと言うのは辛いですよね。
そうならないよう、LDKを2階に配置したり勾配天井や吹き抜けなど上の方から光が入ってくるような工夫もとても効果が高い方法と言えます。
また縦方向に広がりが出るのという点も大きなメリットです。
→吹き抜けのメリット、デメリットと失敗しない吹き抜けの作り方
その他に細長い家の間取りを大きく左右するものとしては、駐車場をどう作るかというのも影響してきます。
たとえば奥行きがかなりある土地であれば普通に車を止められるようにするだけで十分ですが、そうでない場合は道路に平行に車を止めるようにするか、家をL字型にして車を止めるようにするかという選択肢になってきます。
道路に平行の場合はこんな感じに。
家をL字にして止める場合は下のようになります。
このように車をどう止めるかで間取りはかなり変わってきますが、特に注意したいのが道路に平行に車を止めるというケースです。
図面の中には綺麗に車が収まっていますが、実際に車を出し入れする場合は何回も切り返しが必要になってしまう間取りというのも非常に多く見かけます。
間取りを描く場合はクリックひとつで車を入れられるので、安易に車を配置して実際の車の軌道まで考慮されていない間取りというのも多くあるんですね。
図面を描くときにCADというソフトを使いますが、CADには車の車種を入れれば車の軌道を入れられる物も多いので、車の駐車スペースが窮屈な場合は切り返しが必要になるかあらかじめ確認しておくというのも後で後悔しないためのポイントとなります。
次に、L字型の場合はどうなるでしょうか?
L字型に車を止める場合は必要な間口というのが間取りによって違ってきます。
たとえば下の図ように1階にリビングを作るとなると、最低でも7.5mくらいの間口は欲しいところです。
LDKの広さをしっかり確保するためには、これくらいの間口が必要になってくるんですね。
その一方で、リビングを2階に配置すればそれほど間口がなくても間取りを作ることは可能となります。
一般的な部屋とLDKでは必要な大きさが違ってくるからなんですね。
1階部分は小さくても、2階部分を跳ね出して作ることで2階に広い空間を確保することが可能となります。
このように家が細長くなるほど、広さが必要になるLDKは2階に配置した方が間取りが綺麗に収まることが分かります。
リビングを1階にするか、それとも2階リビングにするかはよく悩むポイントでもありますが、このように細長い家の場合は土地と間取りを一緒に考えることで、どちらの方が相性が良いかと言う判断材料となってくれるんですね。
→2階リビングのメリット、デメリットをプロの建築士がまとめました【絶対保存版】
まとめ
今回は細長い家を建てる時のポイントについて詳しく見てきました。
細長い家は間取りの難易度は高くなりますが、その分土地も安く手に入りやすいですし、細長い部分を活かすことでとても魅力的な家にすることも可能となります。
その一方、土地が細長くなればなるほど間取りのセンスや経験も問われるようになるので、細長い土地で家を建てる場合は設計力の高い住宅会社に依頼する。
この部分もしっかり意識しておいてくださいね。
では。
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家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】