「いくつかの会社さんに見積もりを出してもらったのですが、坪単価の計算方法がバラバラでよく分かりません。何か良い方法を教えてもらえないでしょうか?」
読者さんからこのような質問をもらいました。
確かに、坪単価と一言でいっても、住宅会社や工務店によって坪数や坪単価はバラバラなことが多いですよね。
そこで今回は坪単価の計算方法と、住宅のプロでもあまり知らない坪単価の注意点をお話したいと思います。
家の価格の面で知っておいた方が絶対に便利ですので、家の価格が気になる方はぜひご覧ください。
坪単価を知ることのメリットとは?
坪単価の計算方法の前に、まずは坪単価を知ることのメリットを見てみる事にしましょう。
坪単価を知る大きなメリットは、住宅会社や工務店の価格を比較する場合、坪単価を基準にして簡単に比較しやすくなるということが挙げられます。
同じような仕様やつくりの2社があるとすると、
A社:2,000万円(30坪)
B社:2,200万円(35坪)
の場合、総額ならなA社の方が安く見えますが、坪単価を基準にすると、
A社:66万円
B社:62万円
というように、B社の方がコストパフォーマンスが高いという事実が見えてきます。
坪単価が分かると、本当の家のコストパフォーマンスを把握しやすいんですね。
このように坪単価は、家の価格を客観的に見るためにとても役立つ指標と言えます。
このことを踏まえながら、具体的な坪単価の計算方法を見てみることにしましょう。
坪単価の計算方法
坪単価の計算方法は、実はとても簡単です。
「家の本体価格」を「家の坪数」で割れば、坪単価を計算することができます。
「家の本体価格」 ÷ 「家の坪数」 =「家の坪単価」
ということなんですね。
では、具体的な例を見てみましょう。
本体価格が2,000万円、坪数が40坪の家があるとすると、坪単価は
2000万円 ÷ 40坪 = 50万円
となるんですね。
家の本体価格と坪数が分かれば坪単価を出すのは簡単なんですね。
このように坪単価を計算すること自体はとても簡単なのですが、では何故、読者さんのように坪単価がよく分からないとなるのでしょうか?
それは「家の本体価格」と「家の坪数」に秘密が隠されています。
それでは次に、坪単価を出すのに必要な「家の本体価格」と「家の坪数」について見てみることにしましょう。
家の本体価格
「家の本体価格」というのは家の見積もり書や資金計画書を見ることで、知ることができます。
そのため簡単に知ることができるのですが、必ず注意したい点が1つあります。
それは、住宅会社によって「家の本体価格」に含まれている物が違うと言う点です。
照明器具やカーテンなども「家の本体価格」に含まれているという住宅会社もありますし、照明器具やカーテンは「家の本体価格」とは別途という会社もあります。
また、家を建てるのに役所に申請が必要な確認申請などの申請費用も「家の本体価格」に含めている住宅会社もありますし、「家の本体価格」に含めない住宅会社もあります。
そのため全く同じ家だとしても、「家の本体価格」にいろんな物が含まれている方が、価格は高く見えてしまうんですね。
そうなると同じ条件で比べることができなくなってしまうので、2社以上で「坪単価」や「家の本体価格」を比べる場合、「家の本体価格」に含まれる物はお互い同じような条件にしておく必要が出てきます。
ちなみに私のオススメは、とにかく家を建てるための最低限のものを「家の本体価格」として見ることです。
「家の本体価格」をシンプルにしてあげると、「家の本体価格」にいろいろ含めている会社と、「家の本体価格」にあまりいろんな物を含めない会社があったを比べる場合でも、「家の本体価格」から余分なものを引いてあげるだけでいいので簡単に同じような条件にできるんですね。
家の坪数
家の坪数というのは、簡単にいうと述べ床面積を坪という単位に換算したものです。
ただ、住宅会社や工務店が出している坪数は延べ床面積の他に、いろいろプラスαされていることがほとんどです。
坪数が大きい方が坪単価は安く見えるのが大きな要因です。
またそれだけでなく、「延べ床面積」だけを基準にしてしまうと、延べ床面積に入らない「吹抜け」がある家であったり、大きな「バルコニー」がある家なんかだと、家は大きいのに「述べ床面積」が小さい家という、家の実態にそぐわないケースも起こってしまいます。
そんな事を防ぐために活躍するのが、「施工面積」というものです。
→床面積と施工面積ではどっちが重要?数字に惑わされない家づくりの方法をお伝えします
「施工面積」の解説は上の記事に書いていますが、「施工面積」を見ると家の実態にあった面積を出しやすいというメリットがあるんですね。
施工面積の注意点として、先ほどの「本体価格」と同じように「施工面積」も住宅会社や工務店によって計算方法が違っています。
そのため、統一した施工面積の出し方を決めておくと便利です。
私のオススメの「施工面積」の出し方は、「述べ床面積」+「バルコニー面積」+「吹抜け面積」+「玄関ポーチ面積」という計算方法です。
その他にインナーガレージなど造るのに手間が掛かる物があれば+するという感じですね。
このあたりを「施工面積」に入れておくと、かなり実態に近い面積を出すことができます。
このように施工面積を住宅会社や工務店任せにするのではなく、自分でルールを持っていると、どんな会社の家でも簡単に比較する事ができるんですね。
坪数のまめ知識
ちなみに先ほど出てきた「坪数」という言葉ですが、「面積」を坪数に換算する方法は、実は2つあります。
1つは「述べ床面積」を「3.3124」で割る方法。
もう1つは「述べ床面積」に「0.3025」を掛ける方法の2種類です。
なぜ2種類あるかというのは話が脱線してしまうのでここでは置いておきますが、簡単に言うと
- 「述べ床面積」を「3.3124」で割るのは住宅会社が多い。
- 「述べ床面積」に「0.3025」を掛けるのは不動産会社が多い。
という特徴があります。
前者の場合は家の坪数を計算する時に使いやすく、後者の場合は土地の坪数を計算するのに使用します。
土地の場合はほぼ100%後者の方法で坪数を出すのが特徴です。
それでは100㎡の家を例に、坪数がどう違ってくるのか見てみましょう。
前者の場合は、
100 ÷ 3.3124 = 30.19坪。
一方、後者の場合は
100 × 0.3025 = 30.25坪となります。
微妙に違ってくるんですね。
同じ家でも住宅会社よって坪数が違う場合は、間違いなく坪数の計算が原因です。
そのため、坪単価を出すときは同じ計算方法にしてあげる必要があるんですね。
知っておきたい坪単価の注意点
ここまで読んでいただいたあなたであれば、坪単価は簡単に出せるようになっていると思います。
では、ここで1つ引っ掛け問題を出したいと思います。
本体価格が2,000万円。坪数(施工面積)が40坪の家の場合、坪単価は50万円になります。
では、この家が10坪小さくなった場合、「家の本体価格」はいくらになるでしょうか?
ほとんどの方は、
坪単価50万円 × 10坪 = 500万円
この分だけ「家の本体価格」が安くなると思われるのではないでしょうか。
(ここだけの話を言うと、プロの建築士である私も昔はそうなると思い込んでいました。)
でも、実は違うんです。
答えは、「300万円くらい安くなる」となります。
見積もりにもよりますが、250万円から300万円くらい「家の本体価格」が下がるというのが現実的な数字です。
簡単に言うと、家を小さくしても坪単価の半分から半分強くらいの価格しか「家の本体価格」は下がらないんですね。
これは住宅業界で働いている人もあまり知らない落とし穴で、
お施主さん:「予算が合わないので困っています」
住宅会社:「では坪単価分、家を小さくしましょう」
その結果、坪単価ほど安くならなかった・・。
お施主さん:「なんであんまり価格が下がらないの?」
住宅会社:「実は〇〇で、さらに〇〇で・・・」
ということが起こり得ます。
しかも、ここでしっかりした説明を受けないと、「何だか信用できない会社」というレッテルを貼られてしまうトラブルもしばしば見られます。
当然といえば当然ですね。
話がその時によって違うとなってしまう訳です。(実際にこのような相談もよく受けます)
では、何で坪単価よりも下がらないのか?
次にその理由をご説明したいと思います。
家の価格の仕組み
家の価格というのは、大きく分けて2つの要素で構成されています。
- 固定費(どんな家でも必ず必要なもの)
- 変動費(家の大きさの影響を受けるもの)
以上の2つです。
詳しく見ていきましょう。
固定費というのは、どんな家でも必ず必要になってくる物のことです。
例えば、どんな家でもお風呂やキッチンなどの設備は必要になってきますし、玄関ドアなども家に入るのに必要になってきます。
これらが無い家というのはまず無いですよね。
この固定費というのがまずは家の価格のベースになってきます。
次に、変動費というのは家の大きさによって変わってくる物のことを言います。
例えば柱などの構造材も家が大きくなれば増えますし、外壁やフローリングも家が大きくなればなるほど必要になってきます。
変動費はその家の大きさによって影響を受けるんですね。
そして、先ほどの「固定費」と「変動費」2つを足すことで家の価格は出てくるようになります。
簡単に表すとこんな感じです。
固定費はずっと変わらず、変動費のみが家の大きさ次第で変わっていくんですね。
2,000万円、40坪の家を30坪にした場合、変動費の部分しか価格は落ちないので、1,500万円にならないという訳です。
そしてその変動費の目安として、坪単価の半分から半分強くらいを目安にしておけば大体大丈夫です。
その結果、40坪の家が30坪になると1,700万円くらいが目安となってくるんですね。
この固定費と変動費という考え方は家の価格を見る時にかなり重要で、先ほどの表を見てもらうと、坪数の少ない家の方が固定費の影響を大きく受けるので、小さい家の方が坪単価は高くなるというのはこういう理由なんですね。
反対に言うと、家が大きい方が坪単価は安くなっていきますので、価格を比較する際は家の大きさも考慮に入れる事ができるとベストと言えます。
このことは家の価格の把握にとても役立ちますので、あなたもぜひ覚えておいてくださいね。
まとめ
今回は坪単価の計算方法と、坪単価を使うときの注意点を、家の「固定費」「変動費」を交えながらご紹介しました。
このように坪単価をみるだけでも、かなり家の価格の仕組みが見えてくるんですね。
家の予算がオーバーしているので家を小さくしようと思った時も、思っていたよりも価格が下がらなかったという事を避ける事ができるので、無駄な時間を費やしたり、家の予算に対する悩みや不安を和らげてくれます。
ぜひ坪単価の計算方法と、その背景にある「固定費」「変動費」の仕組みを覚えて、コストパフォーマンスの高い家づくりをしてくださいね。
では。
家の広さについてはこちらも参考にしてください。
→住宅の坪数はどれくらいがベスト?理想の広さを知る方法を建築士がご紹介します
建築士が実際に見てきた全国の優良工務店を掲載。
家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
建築士が教える今日の問題解決
家の坪単価の計算はどうすればいい?
- 坪単価は「家の本体価格」÷「坪数」で出す事ができる。
- 「家の本体価格」は住宅会社によって含まれる物が違うので、統一する。
- 「坪数」はルールを決めた「施工面積」で計算するのがオススメ。
- 家の価格は「固定費」と「変動費」で成り立っているので、家を小さくしても坪単価の半分ほどしか価格は落ちない。