「住宅会社選びをしております。その中で『省令準耐火構造』が標準仕様になっている会社となっていない会社があるのですが、やは『省令準耐火構造』が標準になっている会社を選んだ方がよいのでしょうか?」
読者の方からこのような質問をもらいました。
省令準耐火構造の住宅とはあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、家の防火性能を表す言葉となります。
では、省令準耐火構造の家とはどんな家なのでしょうか?
今回は省令準耐火構造の特徴やメリット、デメリットについて見ていきたいと思います。
分かりやすい表現を使っていますので、一緒に省令準耐火構造について勉強していきましょう。
省令準耐火構造って何?
それではまず、省令準耐火構造とはどのような物なのでしょうか?
住宅の中には火災に強い構造を持つ家があり、いくつかの基準が定められています。
その代表的なのが「耐火構造」や「準耐火構造」、そして今回の「省令準耐火構造」の住宅です。
これは「準耐火構造」に準ずる防火性能を持つ構造として住宅金融支援機構が定めた基準に適合する住宅のことを言います。
では、省令準耐火構造の家にはどのような特徴があるのかというと、
- お隣などから火が出ても家に燃え移りにくい
- 家の中で火災が発生しても一定時間部屋から火を出さない
- 万が一部屋から火が出ても家全体への延焼を遅らせる
以上のような3つの大きな特徴があります。
図で表すとこんな感じですね。
Photo:https://www.flat35.com/files/100163462.pdf
上記のような3つの特徴を持った家が省令準耐火構造の家となります。
火事に対して強い家になるので、万が一の場合でも安心感がありますね。
ただ、普通に家を建てるだけでは省令準耐火構造とはなりません。
たとえば周りの家からの「もらい火」を防ぐためには外壁や屋根、軒裏など家の外回りは防火性の高い構造である必要がありますし、部屋の中で火が出ても外に出さないようにするためには部屋ごと火が外に出にくいようにしないといけません。
また、火が家全体に燃え移るのを遅くするために、火の通り道となる壁や天井の内部の要所にファイヤーストップ材を設けて火が家の中を移動しないようにしておく必要があります。
このような火災に強い作りの家にすることで、初めて省令準耐火構造の住宅に認められるんですね。
そしてこのような省令準耐火構造として認められるのは、
- 省令準耐火構造の仕様で建てた木造軸組構法の住宅、または枠組壁工法(2×4工法)の住宅
- 省令準耐火構造として機構が承認したプレハブ住宅
- 省令準耐火構造として機構が承認した住宅、または工法
上記のどれかに当てはまる必要があるんですね。
たとえば省令準耐火構造を持つ住宅で多いのが枠組壁工法、いわゆるツーバイフォー工法の住宅です。
ツーバイフォーの住宅は壁を組み立てて家を作っていくので部屋それぞれを区画しやすい作りとなっており、省令準耐火構造に簡単にすることができるんですね。
そのため、ツーバイフォー工法で建てた家はほとんどの家が特別な設計や施工をすることなく省令準耐火構造に適合することができます。
これはツーバイフォー工法ならではのメリットです。
一方で木造軸組構法、いわゆる昔からある木造住宅の工法で省令準耐火構造の家を建てる場合は柱や梁で家を作っていくので、省令準耐火構造とするためには天井裏にファイヤーストップ材を設けるなど施工に一手間増やしたり材料を追加する必要があります。
そのため、省令準耐火構造にする場合は追加で費用が発生するケースが多くなってしまうんですね。
→木造住宅ってどんなメリットがあるの?木造住宅の実際のところを解説します
次にプレハブ工法の場合はどうなるでしょうか?
プレハブ工法というと大手ハウスメーカーがよく仕様している工法で、工場で部材を作って現場で組み立てる工法となります。
このようにプレハブ工法の場合は各住宅メーカーで仕様が違うため、それぞれの工法で省令準耐火構造に適合するよう認定を取っています。
ただ、選択した仕様の組み合わせ次第では省令準耐火構造の住宅にならない場合もあるので、プレハブ住宅を提供するハウスメーカーに確認しておくと安心です。
最後に住宅会社や工務店によっては、自社で建てた家が省令準耐火構造になるように独自に認定を取っているケースもあります。
その場合、その会社で家を建てる場合は基本的に自動で省令準耐火構造にすることができ、「ウチで建てる家は省令準耐火構造の家で火災に強いですよ」とうたっていることが多いです。
冒頭でご紹介した読者さんの質問も、このように独自で認定を取っている会社かツーバイフォー工法で家を建てている会社である事が予想されます。
省令準耐火構造のメリット
それでは次に、省令準耐火構造にした時のメリットについて見てみましょう。
省令準耐火構造の住宅のメリットとしては、これまで見てきたように火災に強い家になるということが挙げられます。
特に自分の家で万が一、火事が起こってしまった場合でも火の回りが遅くなるので逃げ遅れることが少なくなり、命を守る役割を果たしてくれるんですね。
また、このように火事に強い住宅になることで他にもメリットが出てきます。
それは、「火事に強くなるので火災保険の金額を安くすることができる」ということです。
住宅ローンを組んで家を建てる場合は基本的に火災保険に入ることになりますが、火災保険料というのは家の構造によって金額は変わってきます。
耐火性能が高い家の方が火事の影響が低くなるので火災保険料が安くなるんですね。
火災保険料の算定基準となる建物の区分は「M構造」、「T構造」、「H構造」の3つに分けることができ、「M構造」が一番火災保険料が安く、次に「T構造」、そして「H構造」というように続きます。
そして省令準耐火構造の住宅は「T構造」に当てはまります。
表で表すとこんな感じですね。
Photo:https://www.sumai-fun.com/money/post-14/
木造住宅の場合は火災のリスクが高いとみなされて「H構造」となりますが、省令準耐火構造の住宅の場合は木造住宅であっても「T構造」に評価されるんですね。
これは鉄筋コンクリート造の建物や鉄骨造の建物と同じ区分となります。
省令準耐火構造の住宅はそうした建物と同じ耐火性能があると評価され、火災保険が割安に設定されているんですね。
→住宅にはどんな工法がある?工法ごとの違いとあなたに合った家の選び方
ちなみにどれくらい火災保険が安くなるかというと、普通の木造住宅と比べて半分程度になるケースが多いです。
火災保険は安くない金額になるので、割引の効果というのは結構大きくなるんですね。
省令準耐火構造にする場合のデメリット
これまで見てきたように、省令準耐火構造にすると火災に強くなり保険料も安くなるなどメリットも多いですが、省令準耐火構造の家にする場合は注意点もあります。
それは、省令準耐火構造にするためには色んな基準を満たす必要があるということです。
そして、それは家の作りやデザインという部分に影響してきます。
たとえば、ツーバイフォー工法であれば最初から省令準耐火構造に適合できるような作りになっているので、特段手を加えることもなく省令準耐火構造の認定を取ることができます。
一方、在来軸組工法の住宅の場合は、ファイヤーストップ材を設置するなど追加で工事が必要になってきます。
また、木造住宅の場合は構造材の柱や梁を見せて家を作ることがありますが、省令準耐火構造にするためには壁や天井が燃えにくい仕様にする必要があるため、基本的に木の柱や梁を見せることはできなくなります。
木の柱や梁とはこんな感じですね。
このように無垢材を構造材に使っているから柱や梁を出したいという場合も、省令準耐火構造とは相性があまりよくないので注意しておきたいポイントです。
また、壁や天井に木材を使う場合も下地は燃えないようにしておく等、一手間必要となってきます。
(木の柱や梁を出しても省令準耐火構造の家になるよう、独自の認定を取っている住宅会社や工務店もあります)
その他、追加費用が必要になるということは火災保険料が安くなったとしても追加工事の費用の方が高くなってしまうというケースも起こりうるので、火災保険料が安くなるから省令準耐火構造にする場合はあらかじめ費用面で比較しておくことも大切になります。
このように省令準耐火構造の住宅にするためには追加費用が必要になったりデザインに制限が出るという点は頭に入れておきたいですね。
まとめ
今回は省令準耐火構造の住宅について詳しく見てきました。
省令準耐火構造の住宅は火災に強い家になり、それに合わせて火災保険料も安くなるというのがメリットになりますが、省令準耐火構造の住宅にするには一定の基準をクリアした構造にする必要が出てきます。
このメリット、デメリットを踏まえながら、省令準耐火構造の住宅にするかどうか判断したいですね。
省令準耐火構造の住宅を検討する場合は「火災に強い」「火災保険料と追加費用」「デザインの制約」という3つがポイントです。
また、火災に強い家を目指すのであれば、省令準耐火構造を標準としている工務店や住宅会社にプラス評価を付けるという方法もあります。
(ただ、工事を追加すればほとんどの会社で省令準耐火構造の住宅にできるので、優先順位としてはあまり大きくなくても良いと思います)
このようなことを踏まえながら、満足いく家を建ててくださいね。
では。
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