「『埋蔵文化財包蔵地』となっている土地の購入を検討しています。『埋蔵文化財包蔵地』で家を建てる時の注意点があれば記事にしてもらえないでしょうか?」
このような質問を読者の方からいただきました。
たしかに「埋蔵文化財包蔵地(まいぞうぶんかざいほうぞうち)」と書いてあっても、イマイチどういう物なのか分からないですよね。
でも、「埋蔵文化財包蔵地」で家を建てる場合、家の工事をスタートするのが遅れてしまったり工事がストップしてしまうこともあるなど、家づくりの計画が大きく変わってしまうなんてこともあります。
では、どうしてそんな事が起こってしまうのでしょうか?
今回は埋蔵文化財包蔵地とはどういう土地なのか見てみましょう。
埋蔵文化財包蔵地とは
それではまず、埋蔵文化財包蔵地とはどのような土地なのか見ていきましょう。
埋蔵文化財包蔵地とは簡単に言うと、昔、人が住んでいて住居の跡があったり、土器や石器などが埋もれている可能性がある土地のことを埋蔵文化財包蔵地と言います。
何かしらの遺跡があった場所が埋蔵文化財包蔵地に指定されているんですね。
そんな遺跡が出てくる場所なんてそんなに無いだろうと思う方が多いと思いますが、この埋蔵文化財包蔵地に指定されている場所はかなり多く、日本全国で約40万〜50万カ所もあります。
特に、奈良や京都など古くから多くの人が住んでいた場所では埋蔵文化財包蔵地は広範囲に広がっています。
たとえば奈良であれば、奈良時代に平城京がありました。
平城京は当時の都なので、かなり広さがあります。
すると、平城京があった場所が埋蔵文化財包蔵地に指定されることになります。
そうなるとめちゃくちゃ広範囲ですよね。
また、埋蔵文化財包蔵地の土地というのは珍しいことでも何でもなく、普通に家が建っている場所が埋蔵文化財包蔵地ということもよくあります。
このように埋蔵文化財包蔵地は意外と身近なものなんですね。
では、埋蔵文化財包蔵地は家づくりにどういう影響を及ぼすのでしょうか?
次に埋蔵文化財包蔵地で家を建てる時の注意点について見ていきましょう。
埋蔵文化財包蔵地の影響
家づくりで埋蔵文化財包蔵地に出会うケースとしては、買った土地が埋蔵文化財包蔵地だったというケースが多くなります。(土地を売買する際の重要事項説明書や土地の販売図面にも基本的に記載されています)
→土地購入の注意点がたくさん載っている!土地の販売図面の見方を解説します。
では、埋蔵文化財包蔵地で家を建てる場合の流れを見てみることにしましょう。
埋蔵文化財包蔵地で家を建てる場合、まずは工事開始の60日前までに国へどういう工事をするのか届出を出す必要があります。
実際には各市町村の教育委員会にどういう工事をするか届出を出すことになるのですが、教育委員会がその届出を元に現場確認や協議のうえで、家を建てる際にどういう対応が必要なのか決まってくることになります。
たとえばすでに遺跡が残ってなかったり工事が埋蔵文化財に影響しないと分かれば、注意して工事を進めるよう指示があるだけという場合があります。
これは家を建てる方にとっては一番ラッキーなケースですね。
他には、工事着手の時に立ち会いを行い、何か遺構が出てこないかどうか確認するというケースもよくあります。
もちろん、その時に何か出てくれば工事はストップして発掘が行われますが、実際に遺跡が出てきたケースは私(建築士)は一度も遭遇したことはありません。
基本的にこの2つであれば家を建てるのに大きな影響はありませんが、場合によってはこれ以上の手間が必要になってくるケースもあります。
たとえば家の工事が遺跡に影響を及ぼす可能性が高い場合、本格的な発掘調査を行うことになります。
こうなってくると、家の工事は完全にストップするしかありませんね。
ここでネックなのは発掘の期間で、発掘は短くて1、2ヶ月。長くて数ヶ月に及ぶこともあります。
しかも厄介なのが、ある程度の発掘工程は教えてもらえるのですが、明確にいつから建築工事に入れるかは分からないという点です。
発掘は天気次第なので、どれだけ聞いてもいつ発掘が終わるのか明確な答えは出てこないんですね。
そのため、工事の着工日は発掘工程からある程度余裕を持った日程にせざるを得ず、これまた家の完成時期に影響してきます。
さらに費用の面でも負担があります。
土地をローンで購入した場合、すでにローンの支払いが発生しているのに家の工事もできず、ただ待つしかないんですね。
家賃とローンの2つの支払が長期に渡ってしまうこともあり、家計にダメージとなってしまうこともあります。
さらには簡単な調査であれば自治体が費用を負担しますが、本格的な発掘調査となった場合は家を建てる人がその費用を負担する必要が出てきます。
条件を満たせば国から補助金を受けることもできますが、お金も必要だし発掘に時間が掛かるとなると、埋蔵文化財包蔵地で遺跡が出てきた場合は、家を建てる人にとってかなりの負担が掛かってしまうんですね。(学術的にはプラスなのかもしれませんが・・)
ちなみに、埋蔵文化財包蔵地ではなくても建築工事中に遺跡が出てきた場合なんかも工事がストップすることになります。
特にマンションやビルなど地中深く掘らないといけない場合は、遺跡が出てくる可能性は高くなります。
地域によっては掘れば必ず何か出てくるような場所もあり、そうなるといつまで経っても建物が建たなくなってしまうので、少し前までは暗黙の了解として見て見ぬ振りをしているというウワサも建築業界にいるとよく耳にしました。
埋蔵文化財包蔵地のメリット
何だか埋蔵文化財包蔵地だと家を建てるのに何もいいことが無い感じがしてしまうので、最後に埋蔵文化財包蔵地の場合のプラスの面を1つご紹介しておきます。
遺跡がある場所というのは昔から人が住んでいた場所となり、そのような場所は災害に強いという傾向があります。
洪水でしょっちゅう流される場所に、わざわざ集落を作ることはあまり無いですよね。
昔は自然災害に強い場所に住居を構えることが多く、そのような場所は地盤も強いというケースが多くなります。
そのため、埋蔵文化財法蔵置では地盤改良が必要とならないケースが多く見受けられます。(O型建築士調べ)
あくまで傾向があるというだけで確実な訳ではもちろんありませんが、災害や地盤が気になるなら埋蔵文化財包蔵地かどうか確認するのも1つの方法となってくるんですね。
→災害対策に役立つ!土地を買う前に見ておきたい厳選サイト、4選
まとめ
今回は工事がストップしてしまう例として、遺跡と埋蔵文化財包蔵地について詳しく見てきました。
埋蔵文化財包蔵地は発掘調査が必要かどうかは届出を出してみるまで分からず、自分の力ではどうにもできない事が起こりうる土地です。
もし、いつまでに引越しをしないといけないなど、家を建てる時期が決まっている場合はかなりリスクの高い土地となってしまいます。
土地情報には埋蔵文化財包蔵地かどうかが書いていますので、必ず確認してから土地は購入してくださいね。
また、埋蔵文化財包蔵地となっている土地を購入する前に、お隣さんなどすぐ近くの新しい家に家を建てる時に試掘調査などがあったか聞いてみるのも効果的です。
同じ遺跡であれば届出を出した時に同じような結果になることも多いからなんですね。
埋蔵文化財包蔵地の場所は市町村で調べることができるので、気になる場合は調べてみるのもいいですね。
では。
建築士が実際に見てきた全国の優良工務店を掲載。
家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
建築士が教える今日の問題解決
工事がストップする可能性がある土地ってどんな土地?
- 遺跡後などに指定される埋蔵文化財包蔵地で家を建てると工事がストップする可能性がある。
- 発掘調査を行うことになれば、数ヶ月にわたり工事がストップする。