「賃貸住宅だと家賃がもったいないという話をよく聞きますが、実際には賃貸と持ち家ではどちらの方がお得なのでしょうか?プロの方の意見を聞かせてもらえるとありがたいです」
読者さんからこのような質問をもらいました。
確かに、「賃貸と持ち家どちらがいいのか」という話はよく耳にしますね。
そのような場合、ファイナンシャルプランナーなどお金の専門家の方がどちらがお得か答えられている場合が多いですが、家の専門家からの回答はあまり聞くことがありません。
そこで今回は、建築士の立場から見た「賃貸と持ち家どちらがお得か」という質問にお答えしたいと思います。
賃貸派の方も、持ち家派の方もぜひご覧ください。
賃貸と持ち家のメリット
まずは賃貸と持ち家、それぞれにどのようなメリットがあるか見てみましょう。
賃貸住宅の場合、物件を所有する訳ではないので、住む家を自由に変えられるというメリットがあります。
自由に変えられるというのは、住む場所や家の大きさ、予算に合わせて家を選べると言うことですね。
これは転勤が多い人や、同じ場所だけでなく色んな場所に住みたいという人にとっては大きなメリットですし、その時の生活スタイルや家族の人数に合わせて家を選べるというのも賃貸住宅のメリットです。
一方で、賃貸はあくまで賃貸なので家賃を払い続ける必要がありますし、引越しや更新料といった費用も発生します。
では次に持ち家のメリットを見てみましょう。
持ち家の場合は、「マンションや建売住宅」と「注文住宅」の2つに分けられます。
マンションや建売住宅は、まさに物件を買う。
注文住宅は作るという感じですね。
この2つの違いは、あなたに合わせた家にするのか、それとも家にあなたを合わせるのかという違いになります。
→建売住宅と注文住宅の違い。どっちも造った建築士が分かりやすく解説します。
このようにマンションや建売住宅と注文住宅では中身がかなり変わってきますが、どちらも持ち家なので所有権を持つ。
つまりあなたの物となるのはメリットになります。
その他に持ち家のメリットとしては、住宅ローンが終わった後の月々の金銭的負担はかなり軽くなるのもメリットと言えます。
将来、家賃を気にせずに生活できるというのは、年金生活になった時に心のゆとりにもなります。
一方、持ち家のデメリットを挙げると、家を所有することにより転勤や劇的に収入が下がるといった特殊な事態に対応しづらい事と、また、メンテナンスの費用や税金といった自分の物だからこそ必要な経費も見ておく必要があります。
では以上のことを踏まえた上で、読者さんからいただいた質問のように「賃貸と持ち家ではどちらがお得なのでしょうか?」
その答えを見てみましょう。
賃貸と持ち家、どちらがお得?
まず、金銭的な結論を言うと、賃貸と持ち家ではそんなに大きな差はありません。
[aside type="normal"]賃貸の条件として、夫婦2人から子供が小さい頃は少しコンパクトな賃貸住宅に。
そして子供が巣立つまでもう少し大きな賃貸に住み、子供が巣立つ頃にもう少しコンパクトな住宅に移動。
一方の持ち家は、建てた家で35年間ずっと住んで、住宅ローンを毎月払い続けると想定し、メンテナンス費用を計上しています[/aside]
35年くらいのスパンで見たときは賃貸でも持ち家でも同じ金額ぐらいになるようになっており、家賃や家の価格と言うのは上手いようにできているんですね。
例えば、利便性の高い土地に家を建てれば、それだけ家の総額も上がりますが、同じように賃貸住宅の家賃も上がるので、比較した場合は大した影響はありません。
また、どちらかがかなりお得であれば需要の関係で調整されていくので、どちらが金銭的にお得かということは市場に大きなゆがみが発生しない限り大きな差は発生しません。
(例外として、値上がりを期待する投資目的のマンションなどは、バブルになれば実需とはかけ離れます)
このように、金銭的な面だけで見ると賃貸と持ち家は大きな差はないんですね。
でも、実は重要な部分が1つ抜けています。
それは、同じ金額を支払ったとしても、「賃貸と持ち家で住宅の質が大きく違う」と言う点です。
次は賃貸と持ち家の質の違いについて見ていきましょう。
賃貸と持ち家の差
先ほど、賃貸と持ち家では金銭的な差に大きな差はないとお伝えしましたが、家の質では持ち家の方が圧倒的に上になります。
その理由は、賃貸住宅の置かれている状況をみれば見えてきます。
例えば家の費用を見てみると、持ち家は住宅会社に対して家の建築費を支払うだけになりますが、賃貸住宅は大家さんが住宅会社へ家の建築費を支払い、さらに大家さんに利益が出る必要があります。(住宅ローンを組む場合は、そこに金融機関も加わります)
誰も利益が全く見込めないのに、賃貸住宅を作ろうとは思いませんね。
持ち家と賃貸住宅を比べると、その大家さんの利益分、家賃を多く取るか、家の質を下げる必要が出てきます。
ここに、持ち家と賃貸住宅の大きな差が生まれるんですね。
支払い総額が同じであれば、持ち家の方が広い家に住めますし、家の断熱性能や住み心地と言った点も持ち家の方が高くなることがほとんどです。
自分で住宅会社を決めて家を建てるという少なくないリスクを取る以上、賃貸住宅と持ち家の質が同じであれば誰もリスクを取って家を建てることはありませんよね。
反対に、賃貸で持ち家と同じだけの質の家を借りたい場合、当然賃貸の方が割高になり、金銭的なメリットは持ち家の方が大きくなります。
要は、家にこだわりがあればあるほど、また家で快適な生活を送りたいと思う人ほど、持ち家の方がメリットがあるんですね。
賃貸と持ち家を金銭面だけで比べる場合、家賃や家の総額の設定次第でどっちがお得かは変わってくるので人によって意見が分かれてきますが、同じ金額なら持ち家の方がほぼ間違いなく暮らしの質は高くなります。
このように、家にこだわりが強い方にとっては賃貸よりも持ち家の方がお勧めと言えます。
一方、家にこだわりが無いのであれば、家を建てるメリットというのはあまり無く、賃貸住宅で十分とも言えます。
要は、人によって持ち家が良いか賃貸が良いのか変わってくるんですね。
家のこだわり以外でも、家がいつでもお子さんが帰ってこれる場所とするなら、建てた家でずっと暮らすことに大きな価値が出てきますし、子供が独立したら広い家はいらないので家を売却や賃貸に出して好きな場所に住むというのも1つの考え方になります。
持ち家も賃貸も、暮らし方の大きな括りの1つであり、一生でどちらか1つしか選べないということでもありません。
選択肢としてあなたが何を重要視しているか。また、その選択が全てではなく、将来考え方や暮らし方が変わった時に身動きが取れるように柔軟な選択肢も用意しておく。
どこに住むにしても、この言を意識しておきたいですね。
まとめ
今回は、賃貸と持ち家、どちらがお得かという観点で見てきました。
賃貸と持ち家を比べた場合、金銭的な面だけ見れば賃貸と持ち家では差がありませんが、家の質という観点で見てみると、持ち家の方が断然快適な暮らしができるようになるんですね。
もちろん、だからといって持ち家にした方が必ず良いと言うつもりは全くありません。
人によって、何を重要視するかが違ってくるからです。
その人のライフスタイルや家に対する考え方というのも当然考慮する必要があり、自由に移動できることが価値と感じるなら賃貸のメリットの方が大きくなりますし、家で隣を気にせず自由に子供を遊ばせてあげたかったり、暖かく快適な家に住みたい場合は持ち家の方が価値が高くなります。
賃貸と持ち家では、同じ金額では家の質が大きく違ってくるということを頭に置きつつ、あなたがどういう生活を送りたいか。また価値を感じるのか。
このことを踏まえながら最適な最適な選択をして 、充実した毎日を過ごしたいですね。
では。
建築士が実際に見てきた全国の優良工務店を掲載。
家づくり、土地探しに必要な情報はこちらにまとめています。家づくりの参考にどうぞ。
→土地探しから始める人のための、失敗しない土地の購入方法【絶対保存版】
→家を建てる前に必ず知っておきたい理想の家を建てる方法【絶対保存版】
→注文住宅を建てる前に必ず知っておきたい!注文住宅のメリットとデメリット
建築士が教える今日の問題解決
賃貸と持ち家はどちらがお得?
- 金銭面だけをみると、賃貸と持ち家はほとんど変わらない。
- 同じ金額なら家の質は持ち家の方がかなり高くなる。
- 生活スタイルと、家に求めるもののバランスを見ながら賃貸か持ち家を選ぶとベスト。